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こんにちは、これは私の初めての仕事くださいと判断います。ᕕ( ᐛ )ᕗ

木の上に座っていた。

いや、正確には――木に避難していた。


目の前の地面には、四匹の狼がうろついている。

俺は両手で頭を押さえながら、学校の授業でよくやるように、疲れたような姿勢でただじっと待っていた。


「……うん、そうだよ。これが今の俺。間違いない。俺は今、木の上で狼が立ち去るのを待っている」

「ここがどこかって? そして、なんでこんなとこにいるのかって? ああ……」

「カッコつけたかったんだよ。誰かの目に、少しでも“英雄”みたいに映ればって」

「だからこそ、半分世界をまたいで、こんな場所に来た」

「でも、まさかこんな状況になるなんてな――」

「……あれは、三週間前のことだった」


俺は成績優秀、語学も三か国語ペラペラ、そしてかなりのイケメン。

もうすぐ働き始めて、一人暮らしもスタートさせるつもりだった。

三ヶ月前に18歳になったばかり。将来にはでっかい夢があった——

…いや、嘘だ。夢なんてなかった。


今も親と一緒に住んでるし、バイトすらしてない。

一日中スマホいじってダラダラしてるだけ。

正直、自分でももう飽きてる。でも、どうすりゃいいのか分からない。


確かに学校では優等生だったよ。でも…それが今の生活に役立ってるか?全然。

同級生たちも似たようなもんだし。


そんなある日、公園から帰ってきたら——

家に客が来てた。


俺の父はロシアに属するカフカス山脈の出身で、いわゆるカフカス系の民族に属している。

今日、父の友人とその家族が家に来た。

父の話によると、その家族は一年前にカフカスから日本に引っ越してきたらしい。でも、末っ子の息子だけは一緒に来なかったという。


俺は軽く挨拶して、自分の部屋に戻った。

最初は穏やかな雰囲気だった。両親はお客さんたちと和やかに話していた。


……だが、やがて会話の空気が重く、沈んだものになっていった。

父の友人の声が、悔しさと悲しみに満ちていた。


「分かってる。あいつはもう子供じゃない。でも……でも……俺は、連れてくるべきだったんだ……」


「分かるか、アリ? あいつ、ずっと黙ってたんだ。でもいざ飛行機に乗るって時、突然パスポートを破いたんだ。

俺は何でもする。金でも、家でも、土地でも。息子にもう一度会えるなら、何だって……。

あいつはパスポートだけじゃなくて、俺たちとの全ての繋がりを断ち切ったんだ……

今、あいつはどこかの野生みたいな場所にいる……」


しばらくして、客たちは帰っていった。


それは父にとって、かなりの衝撃だったようだ。



父は俺と話すことにしたらしい。

たぶん、俺が同じ世代の若者だからこそ、説得できると思ったのだろう。

正直、最初は絶対に断るつもりだった。だけど──


その「提案」の仕方が問題だった。


「彼の名前はスレイマンだ。ス・レ・イ・マン。

もしお前がダゲスタンの留学生交流プロジェクトに参加してくれたら……

それだけじゃない。もしスレイマンを説得して、マハチカラの大学で一緒に学ばせることができたら、

東京の中心にある家を、お前にプレゼントしよう」


……父は続けた。


「彼の父親は、俺の命を救ってくれた人だ。

だから頼みたい。何かをさせたいわけじゃない。ただ学んでくれればいい。

スレイマンを説得して一緒に大学に通うようにするだけでいい。

たとえば、“ロシア語が分からないから一緒に学ばせて”とか、何でもいいんだ」


──そう、分かってる。

俺は金に釣られたんだ。


……でもよく考えてみて?

海外に行けるんだよ?生の「世界」を見られるんだ。


ああ、俺って本当に──

なんて、ナイーブだったんだろうなぁ〜。


一週間の準備期間を経て、いよいよ出発の時が来た。

空港で両親に別れを告げて、俺は飛行機に乗り込んだ。


待っているのは、乗り換え二回、合計十六時間のフライト。

──うん、最高だね。

気を確かに持たなきゃ、マジで頭おかしくなりそう。


あ、そういえばまだ名乗ってなかったな。

俺の名前はヌリチュ・アリヴァスだ。

どのように私の仕事が好きですか? 何かを書く

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