新しい訓練
災悪から一ヶ月ほど経った。魔法の訓練は一旦中止し、訓練の代わりに自分の体に魔力を流して体を魔力に慣れさせるということをやっていたが、今日からは、いよいよ実際に魔法を撃つ訓練に移行する。
「この人が、今日からステに魔法を教えてくれる人だ」
アイネスが新しい魔法の教師を教えてくれた。見た事のある顔だ。
「あ、アイネスの部下の」
「はい。まだ名前の方をお伝えしていませんでしたね。私はテイアー・シャルと申します。シャルとお呼びください」
「うん。よろしく。シャル」
アイネスとは全く印象が違った。アイネスは金髪なのに対し、シャルは青髪のまさにも清楚という感じがする。
「で、今回からはどういう訓練をするの?」
「はい。今回からは、私がステ様の体に魔力接続をします。魔力接続を維持したまま私が魔法を撃つと、ステ様も同期して魔法を撃つようになります。これにより、魔法を習得します。これをすることによって他の魔法も習得しやすくなるでしょう。大抵は習得するのに四ヶ月はかかりますが、ステ様の場合は事前に体に魔力を送っておいたので、一、二ヶ月あれば完璧に習得すると思います」
シャルは僕の手を握った。
「では早速始めます」
シャルが上斜めに手を伸ばす。すると僕の手も上斜めに伸びた。これが同期というやつだろう。シャルが右を向けば体も右に動き、顔を下に向ければ、顔が下に向く。
「では、魔法を詠唱します」
シャルが魔法を詠唱し始めた。シャルが魔法を詠唱し始めると、僕の頭の中にとっても鮮明に火球が写る。とても熱くて、とても明るい。
「ファイス」
それを言った瞬間に、目の前に頭の中に映った火球と同じものが手の先に現れて飛んでいった。
「すごい...」
「私とステ様は今、魔力接続をしています。なので、自分が魔法詠唱をして魔法のイメージをすると、そのイメージがステ様にも伝わります。そして、魔法を撃つ撃った感覚と魔法のイメージが体に刻み込まれるということです」
「すごい....すごい!!魔法が打てた!!やった!!」
「や、やったな」
アイネスは少し引き気味で返事をする。姉と比べられる魔法に関してはステの執着がとても強かった。
姉は魔法使いとして一流であるにもかかわらず、自分は基礎さえできない雑魚扱い。そんな環境で10年も生きてきたのだ。
「今日はこれで終いです。続きはまた明日やりましょう」
「うん!わかった!」
ステは満ちた声で返事をした。
すっかり夜になり、ステが食堂から自分の部屋に帰ってきた。
「あぁ、ステか。夜食を食べてきたのか」
「うん。そういえばさ、ずっと気になってたんだけど、なんで最初から今日みたいなのにしなかったの?」
「そっちの方が簡単に強大な魔法を早く使えるようになると思ったんだ。けど、ステの場合はそうはいかなかったみたいだな」
「そうなんだ。ちなみに今やってる訓練だと、アイネスと初めて戦った位のレベルにはどれくらいでなれるの?」
「そうだな。個人差は結構あるが、ステだと大体6年くらいが妥当だな。姉と同じくらいになるには3年くらいだ。ステはアルシヌから与えられた強大な魔力を持っている。魔力を多く持っている人は魔法が上達しやすいからな」
「そう。じゃあ、間に合いそうかな」
「何にだ」
「約束だよ。あの日、転生したとき。天に誓った約束だよ。使命を果たさなきゃね」