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災悪 イプスン・ステリオ(後半)

 アイネスはステの暴走について部下と議論していた

「今回のステ君の暴走の原因はなんでしょうか....」


「まさか、災悪じゃ....」


 災悪。それは個人の超巨大的魔力暴走のことである。その暴走した魔力の量は魔王に匹敵するほどであり、その周辺の村などは一日以内に全て破壊される。災悪発生から一週間くらいたつと発生者は魔力が底をつき衰弱死する。


「そのまさかだよ。私は見てしまった。この目で確実に見てしまったんだ。目は赤く染まり、魔力にも特徴的な乱れがあった」


 災悪発生者には共通点がある。目は赤くなり、その人の魔力の周りに小さな渦巻きが無数に存在する。


「しかしなぜステ君が災悪を引き起こしてしまったのでしょうか?」


「それはステが無意識に魔法を撃っているからだ」


「無意識..ですか?」


「私がステと初めて対峙した時にステは無意識に防御していた。無意識に。自分の意志ではないから魔力の制御ができていない状態だったということ。今回、ステが無意識に反撃する時にいつもより多くの魔力を使った。それにより魔力の制御か効かなくなったんだろう。今はステの最大の魔力が出ていると見ていいだろな。全く。魔力を制御するために訓練していたのにこれじゃ本末転倒じゃないか。」


「そしたら戦っても私たちじゃ....」


「どうやって対応するか.....」


「魔法を奪うというのはどうでしょう」


「魔法を奪うとは?」


「一時的にステ君が魔法を使えないようにするんです。そうすることによってステ君の魔力を瞬時に全て奪うことが出来るので災悪が収まるかもしれません」


「できるのか?」


「はい。しかし今のステ君の魔力量じゃ厳しいので少し弱らせられれば....」


「いずれにしても戦う必要があると.....」


「そうですね...」


「いや、待てよ...今、ステの周りに対魔法結界が張られていたな....」


「はい、それがどうかしましたか?」


「その対魔法結界は一部分だけを開けることはできるか?」


「はい。可能ですが....」


「よし、よし!!思いついたぞ!名案だ!」


 アイネスが思いついたという作戦を部下たちに説明した。

 作戦の概要はこうだ。

まず、ステを覆っている地面の底の対魔法結界を一部開ける。

そこから、攻撃魔法を撃つ。土の一部が棘となって対象へ向かう魔法だ。

その魔法でステが弱ったところに、アイネスたちの援護のもとステに一時的に魔法を使えなくする魔法をかけて、拘束する。


「いいですね!名案です!!こちら側の被害を最小限に抑えられるかも!」


「よし、すぐに準備に取り掛かるぞ。時間がない皆急げ!」


「はい!!」


 指示から30分位すると、もう準備が完了した。

対魔法結界の周りにたくさんのアイネスの部下が杖を構えて攻撃準備をしている。


「アイネス様。全員準備完了しました」


「あぁ、わかった。作戦開始!!」


アイネスが合図を出した。


「対魔法結界、底の一部解除します!」


「よし、撃て!!」


「はい!!」


 続々と魔法を撃つ。ステの立っている地面の下から土の棘が突き上がってきた。しかし、ステはその棘を次々と破壊していく。四方八方から集団となってくる棘も一瞬で破壊する。


「全て破壊されています....」


「棘の数が少なくなってもいい。一つ一つの棘に魔力を多く込めるんだ」


少し攻撃のペースが下がってきた。しかし、棘の速さはとても速くなり攻撃力も上がっている。

ステも破壊できない棘も出てきた。


「よし、この調子だ。このままいけば...」


ステは地面に手をつけた。対魔法結界の隙間から反響魔法を対魔法結界にくっ付けるように張る。


「反響魔法.....!!皆攻撃をやめろ!!」


反響魔法は攻撃魔法の持っている魔力を反響させて威力を落とす防御魔法の一種である。

反響魔法では、魔力を反響させるだけで攻撃魔法を完全に消すことはできないため、反響魔法と防御魔法のセットで使われることが多い。

攻撃魔法の魔力が強い分反響魔法が跳ね返す魔力の量も強くなる。


「あ゛あ゛あ゛あ゛....」


(こちらの巨大威力の攻撃魔法に至近距離の反響魔法...頭の切れる判断だ..クッソ)


「おい、大丈夫か!」


アイネスが横を振り返ると、被弾した部下を猫が順に回復魔法をかけて治療していた。


「はい....猫が回復魔法をかけてくれたので大丈夫です」


「注意しろ。普通の災悪じゃない」


「普通じゃないとは?...」


「頭で考えることができている」


通常、災悪は魔力の暴走であるため思考などの行動は行われずに魔力が体を動かしている。


「普通の災悪ではなさそうですね。もしかしたら誰かに操られてるとか....」


「その可能性もあるかもしれんな。まぁ、今考えても仕方ない。こうなった以上、このままの戦い方じゃダメだ。これからは皆でステを攻撃する。ステが防御に気を取られている隙に、魔法を奪う。くれぐれも連続して攻撃魔法を撃つな。また反響魔法でこちらが被害を受けることになるぞ」


「わかりました」


 部下が皆に伝えて回る。ほとんどがステに向かって空中攻撃を始めた。

ステは最初は華麗に避けたものの、しばらくすると避け方が雑になってきた。左にぶれたり、浮遊魔法のコントロールが途切れて急降下することもある。


「そろそろだ!準備しろ!」


アイネスがそういうと、一人が魔法詠唱を行う。今回の大トリだ。


「今だ!魔力を込めろ!!最大出力だ!!」


 何百もの高威力攻撃魔法が一斉にステに向かう。ステの前方は防御できたものの、後方は反応しきれなかった。


「当たった...今だ!!いけ!!」


「はい!!」


ステの背中に手を当てこう唱える


「アウト・マジック!!」


 その瞬間ステからものすごい量の魔力が抜け出た。この場にいる全員の魔力を足しても足元に及ばないくらいの魔力だ。

浮遊魔法が使えなくなりステが地面に落ちる。

そのステの目は元の綺麗な青色に戻っていた。



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