家庭教師
あの件から一週間後。山ほどに積み重ねられた宿題を抱えて僕の教室に向かう。
扉を開けると、アイネスが椅子に座って待っていた。
「おう、ステか。ちゃんと宿題はやってきたんだろうな」
「ガンバッタ」
「見せてみろ」
持ってきた宿題を机に置く
「ほう、魔法の基礎知識はあるようだが、応用や発展の分野は悪いな。それ以外は全て平均的と言ったところだな」
僕がアイネスから渡された宿題の内容は、紙一面に印刷された魔法に関する知識の確認問題や応用問題だっった。
「うむ、では早速やっていこう。ついて来い。別室に行くぞ」
しばらく歩くと3畳くらいの小さい個室についた。真ん中には端には長机が置いてある。
「まずは、魔法学の種類だ。魔法学にはたくさんの種類がある。これからお前が学ぶのは、
魔法物理学と魔法史の二つだ。魔法物理学は君の姉がよく使っている攻撃魔法などの研究をする分野だ。魔法史は言葉通り、魔法の歴史を勉強する分野になる。今日やるのは魔法物理学だ。」
目の前に長く、そして薄い結界が現れた。記録結晶というやつだろう。術者が結界を張れば結界内の出来事を記録できるという代物だ。中には二人の魔法使いが対峙している。一方は騎士らしき風貌をしていてもう一方は黒いローブを纏っている。
「先日アルセーグル郊外で起きた騎士と罪人の魔法戦闘だ。いい例になると思って記録しておいた。」
すると、罪人が攻撃魔法を騎士に放ったのが見えた。しかし直撃することなく騎士が剣で振り払った。
「今、罪人が攻撃魔法を放ったが騎士が剣でその魔法を振り払った。それは騎士が剣で魔法の中にある魔粒子の流れを変えたから起きたことであって、これは魔法物理学の転用したものだ。剣あらかじめ、魔法を超高密度にかけておく。すると、それよりも密度の小さい攻撃魔法などは超高密度の魔法の反発力に負けて軌道がずれる。・・・・・」
こんな感じで、ただひたすらこのような授業が2時間くらい続いた。そして授業が終わった時アイネスが聞いてきた。
「そういえば、君の家はここからかなり離れたところにあったな。馬車でどの位かけて来ているんだ?」
「そうだな、一時間半くらいかな」
「そんなにかかっているのか。疲れないのか、馬車は結構揺れるだろう」
「もちろん疲れるさ。毎回二回は吐いている」
「そうしたら私を家庭教師として家で雇えばいいじゃないか」
「できるならすぐにやりたいけど..母に聞いてみなければ」
「そうか、では聞きに行こう」
「けど今から行ったらアイネスが帰れなくなるよ」
「ちょっと、我慢してくれよ」
するとアイネスは僕の腰を掴んで持ち上げた。その瞬間、力強く飛んだ。目の前に見える山よりも高く飛んだ。そのまま僕の家の方向へと飛んでいく。しばらく飛んでいると僕の家の近くの山に着いた。二尾猫姿大神を見つけた山だ。
「よし、着いた」
馬車で一時間半かかる距離を一飛びだ。僕の家へアイネスと一緒に向かう。
「今母親はいるか?」
「多分、いつもこの時間は家にいる」
「私は後ろからついて行くから、案内してくれ」
「わかった」
僕の家の門を開けて歩き始める。すると図書室から出てきた母を見かけた。
「お母さんー!先生からお話があるってー」
「あら、ステ。帰りが早いわね。それで先生からお話って何?それとその後ろの方は?」
「僕の先生だよ」
「お初にお目にかかります。ステリオ君の担当教師を務めさせております。エルと言います」
「あら、お世話になっております。それで話というのは一体なんでしょう」
「ステリオ君の家庭教師になりたいと思いまして」
「えぇ、ステの家庭教師ですか...まあ、良いですよ」
「でしたら明日より、ステリオ君の家庭教師とならせていただきます」
「はい、おねがいいたしますね。部屋はこちらで支配させておきます。」
「では」
そう言うと、アイネスは門から家を出ていった。こんなにあっさりと決まるものだろうか。
「ほら、ステ。行くわよー」
「あ、うん」
ーーーーーー明日ーーーーーー
アイネスの到着を門の前で待っている。しばらくすると馬車が見えてきた。
「今日より、ステリオ君の家庭教師をさせていただきます」
「えぇ、よろしくお願いしますね。エル先生」
アイネスがやってきた