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ホワイムーン  作者: 思多斗芦
仮説1.恋とは罪悪
3/15

3


騒いでいた謎の四人組はようやく落ち着いたのか、改めてこちらに向き直った。

壁に激突した少年が咳払いを一つして、にこやかに笑いかけてくる。


「失礼、情けないところを見せたね。」


「いや、そんなことは…。あの、鼻もう大丈夫?」


「大したことは無いよ。」


何やら斜めの角度からドヤ顔をリーシュに見せつけてくるが、あれは決め顔のつもりなのだろうか。鼻の両穴にちり紙が詰め込まれている状態ではまったく様になっていないが。


「ごめんなさい。いきなり肩掴まれそうになったから、つい避けちゃって…。」


「うぇ!?全然、気にしてないから、安心、してくれ……。」


言葉とは裏腹に、少年の顔は強張っているし語尾も尻すぼみになっていっていた。というか、何故こんな不審人物に何の非も無いリーシュが謝ってやらねばならないのだろうか。


「ほら、だから言ったじゃん。初対面の人間に肩触られたら誰でも普通に嫌だって。」


「で、でも父さんは『男は多少強引な方がモテる。』って!」


「それ、それなりに好感度が高い相手だった場合だからね?あと『お父さんの言うことは話半分に聞きなさい。』っておばさんに言われてるだろ?」


「うぐっ!」


「ウッディどんまい!」


「うるさい!ウッディって呼ぶな!」


また、やいのやいのと少年達が騒ぎ出した。おかげでロン達は待ちぼうけだ。

もう無視して 行っても良いのでは無いのだろうか。リーシュの肩を掴もうとした不届き者にこれ以上慈悲をくれてやる必要などなかろうに。


「あの、皆?あの人達、ずっと待ってるよ……?」


ずっと後ろでオロオロしていた少年が遠慮がちにそう言うと、他の三人はハッとしたようにこちらを見た。

やはりもう立ち去っても良いのでは無いか。ハウルなどすっかり立ち寝を決め込んでいる。

ロンは困り顔のリーシュの眼をしっかりと見つめてはっきりと告げた。


「横の阿呆の鼻提灯を叩き割ってさっさと行こう。おそらく前の阿呆共は関わらない方が良い類いの連中だ。」


「いやでも、話も聴かずに行くのは何か悪いし…。」


「おい!そこのチビ!誰がアホだ!」


「ウッディ、いちいち噛みつかないで。また話が進まないから。」


タダでさえ目付きが悪いのに更に眦が吊り上がった少年は眼鏡の少年に諌められると、バツが悪そうにまた咳払いをした。どうやら礼儀だけではなく芸も無いようだ。


「改めて初めまして。僕はウッドロウ=マースだ。君の名前は?」


癇に障る笑みを浮かべ、リーシュだけに向けて手を差し出してくるが、ロンがリーシュの前に出て阻むと露骨に不愉快そうに眉を顰める。


「何なんだお前は?そこを退け。邪魔だぞ。」


「退く気は無いし我々はそちらに名乗る程の名は持ち合わせていない。」


「何だと?僕はその子に訊いているんだ。しゃしゃり出てくるな。」


「失礼、どうやら正しく伝わっていないようなので言い直そう。お前らのような怪しい集団に名乗る必要は一切無いと言っている。」


「なっ!?誰が怪しいって!?」


瞬間、沸騰したように怒りで顔を真っ赤にした少年がまくし立ててくる。


「僕はマース商会の御曹司だぞ!!大都市フォレスティアで一、ニを争う大商会であるあのマース商会の!!三日前に王都の一等地に越して来て、今年から名門王立学園に入学予定だ!!何も怪しくなんて無い!!」


自分で御曹司とか言うか普通。今年入学ならばリーシュ達の一学年下になるのか。こんな脳味噌発酵野郎が新学期からリーシュと同じ学舎に通うのかと思うと不快指数が天元突破しそうだ。


「証拠は?」


「しょ!?証拠!?」


「マース商会なら王都でもそこそこの知名度だ。そこの息子の名を騙る不埒者の可能性が無いとも言えない。」


「そこそこ!?不埒者だと!?」


「ウッディは怪しくねえぞ!」


「そうだよ。ウッディはただ昨日その子を見かけて今日僕らも巻き込んでずっと探し続けてやっと見つけたのに、仲良くなり方を致命的に間違えただけだよ。」


「レッドお前何を言ってんだぁああーーーーーー!!わあああーーーーーー!!」


ウッドロウ某が叫びながら眼鏡の少年の口を塞いだが時既に遅し。今ので事情は大体察せられた。まあ無理も無い。王都に来て間も無いお上り野郎がリーシュの可憐さを目にしてしまえば、のぼせ上がって愚かな真似をしてもおかしくは無い。愚か過ぎて言葉も無いが。


「話は分かった。つまり吐いて捨てる程いる身の程知らずだ。さっさと行こう。」


「えっ、でも…。」


ケツの青い小僧ごときがリーシュを口説こうなど片腹痛い。構ってやる必要が微塵も無い。


「ちょっと待て!!」


リーシュを連れてさっさと離脱しようとしているのに、鬱陶しくもまだ呼び止めてきた。


「そもそもお前!召し使いが主人にそんなぞんざいな口を利くとは礼儀がなっていないぞ!」


そう叫んでロンを指さした。先程、隣の眼鏡がボサボサ頭に注意していただろうにもう忘れたのかこの鶏頭。

しかし、なるほど、どうやらこの小僧はロンを使用人か何かと勘違いしているらしい。

薄汚れた作業着にキャスケット帽と、見るからに出稼ぎ労働者風の格好のロンに対し、リーシュは淡い緑の流行りのワンピース、ハウルは卸したてのシャツに青いベストと、見るからに良家の子女らしい仕立ての良い服を着こなしている。ロンと二人では比べるのもおこがましい程に服装において格差がある。

ただ、これはロンと二人に金銭的格差がある訳ではなく、単にロンの師が弟子の服装にも頓着せず、適当にその辺にほったらかした服を見繕って与えてきた産物である。今日の服装も、物置と化した兄弟子達のかつての私室から引っ張り出してきたお下がりだ。


「まったく、こんな無礼な下男を雇っていては主人の品格が疑われてしまうよ?」


また斜めに傾けたニヤケ面をリーシュに向けてくる。あの角度がお気に入りなのだろうか。


「もしかして、そっちの彼の家の下男なのかい?ちなみにその彼とはどういう間柄――――――」


「ロンは私達の大切な友達だよ。」


力強い断言に被せられて、うだうだ野郎の口が思わず止まる。横を見れば、無表情のリーシュが冷ややかな眼差しで少年達を見据えていた。瞳や言葉から静かに怒りを迸らせるリーシュに、失言を悟ったか、少年はサッと顔を青くした。

リーシュは友人を見下されて黙っているような性格では無い。自分が馬鹿にされた以上に怒ることの出来る子だ。

さすがはリーシュ。そしてそんな彼女に大切な友人という枠組に入れてもらっている事実が温かな気持ちとなって胸を満たす。大変良い気分なので、『私』ではなく『私達』という、ハウルもおまけで含まれていることに関しては目を瞑ろう。

そもそもこの二人の家の使用人ならば、ロンの年代物の作業着などよりもっと小綺麗な格好をしているだろうに。

まあ、良家の子女らしいと言っても今日の二人の服装は特別豪奢な訳ではない。むしろ本来の身分からすれば質素すぎるくらいだ。良くて下級貴族か大商会の子供に見えるといった所か。ゆえに目の前の阿呆が勘違いしてしまったのだろう。最も、例え本当に二人が下級貴族か大商会子息でも、そこに勤める使用人はもっとまともな服を着ているはずなので、最初から見当外れなのだが。

リーシュを怒らせてしまった阿呆は、謝るでも無く、焦った顔でロンを指さした。


「お前!彼女とはどういう関係だ!!」


一度目はボサボサ頭だったが、これで通算三度目だぞ。次はその指折ってやろうか。と、物騒なことを考えつつ、ロンは正直に答えてやった。


「お前ごときとは歴史の深さが違うとだけ言っておこうか。」


「何ぃいいーーーーーーーーーー!!?」


ロンとリーシュは初めて会ってから、かれこれ七年の付き合いの幼馴染みである。嘘はまったく言っていない。まあ産まれた時から、何なら産まれる前からの付き合いのハウルには長さも濃さも負けている訳だが。その事実を思い出す度に年中寝ボケ野郎の顔面に拳を叩き込みたくなるが、今はやめておこう。

障害となるのはハウルだけのはずなのにロンまで参戦してきたと、勝手に思い込んだらしい的外れ野郎はわなわなと身を震わせる。


「くっそ~~、馬鹿にしやがって!おい!お前も魔導士だろう!」


「それがどうした。」


悔しそうにロンを睨むウッドロウの言葉に、特に隠すことでも無いので肯定する。どうやら安定した体外魔力から魔導士と察するくらいの技量はあるらしい。


「フッ、それなら話は早い。」


急にニヤニヤし出したと思えば、またもやロンに指を突き付けた。本当に折ってやろうか。


「お前に決闘を申し込む!従魔バトルだっ!!」


誰にも阻まれなかった阿呆が高らかに宣言する。だが聞かされたロン達は揃って目が点になった。


「ええっ!?それはまずいよウッディ!」


「ウッディ!ここ街中だよ?ちょっと落ち着いて!」


「止めるなお前ら!男には闘わなければならない時があるんだ!あとウッディって呼ぶな!」


取り巻き達が焦って止めようとして深刻な雰囲気を醸し出しているが、こちらは言えばそのノリに完全に置いてかれていた。怒っていたはずのリーシュでさえポカンとしている。


「待て四馬鹿。」


「誰が四馬鹿だ!!何だ?怖気づいたか?」


そんな訳があるか。決闘というまた凄まじく古い慣習を持ち出してきたのと、あまりにも耳慣れない単語を堂々と言い切るものだから面食らっていただけだ。何だ従魔バトルって。


「いや、少々確認事項がある。従魔バトルとは名前から察するに、お互いの従魔を戦わせ勝敗を決する模擬試合のようなものだろうか?」


主従契約を結んだ魔獣のことを、 従魔、または使い魔、召喚獣とも言う。魔導大国ステラリアならば珍しくも無い存在だが、そこにバトルがくっつくと話は変わってくる。


「当たり前だろう。」


そうか。当たり前なのか。少年達はそれを常識と信じて疑っていない様子だが、十一年と数ヵ月のロンの人生を振り返ってみてもそんな造語は一度も耳にした記憶が無い。

フォレスティアといえば、王都とは魔霧の森を挟んだ向かい側に位置し、従魔の飼育産業で有名な街だ。もしや、それゆえに地元独自の競技が発達したのだろうか。


「えっと…。フォレスティアではそういうのが流行ってるの?」


「えっ?王都では従魔バトルしないの?」


「今日初めて知った…。」


「嘘おお!!?あんなに盛り上がるのに!?」


少年達は自分達が熱中しているものがご当地競技だったことに衝撃を受けているが、それはこちらも同様である。生まれも育ちも王都である生粋のミスティアっ子の三人が知らないのだから、おそらく王都では誰にも知られていないだろう。


「馬鹿な…!従魔バトルを知らないなんて……!!」


「ちなみに試合規定は従来の模擬試合と変わらないのだろうか?」


仮にもロンは大賢者の弟子。未知の物に対してはそれが例えどんなに下らなく見えても一定の興味を抱くものである。


「ルールは制限時間十分以内に場外か降参させた方が勝ちで、初級治癒魔術で治らないような大きな怪我をさせたら失格負けになるよ。」


ロンの質問に眼鏡が簡潔にルールを説明する。

制限時間は短いが一般的な魔導士同士の模擬試合とあまり違いは無さそうだ。


「なるほど。だが我々三人は誰も従魔契約を交わしていないが、この場合未契約の従魔でも試合をすることは可能なのか?」


「ほ~う~~~~!誰も従魔を持っていない、だと?」


カルチャーショックからにわかに立ち直った山猿がやけに嬉しそうに確認してくる。鼻の穴を膨らませ、ニタニタと笑う姿は明らかにこちらを小馬鹿にしていた。また鼻血が出るぞ。


「そうかそうか!従魔一匹さえも持てないような家の人間なのか!ちなみに我が家では小型、中型、大型合わせて五十頭は下らないがな!」


「ウッディん家の獣舎めっちゃデッケェんだぜ!」


「ウッディって呼ぶな!」


「へ、へえ~…?」


従魔未契約と伝えただけでここまで得意気に見下してくるとは、フォレスティアでは従魔契約がステータスなのだろうか。

まったく、こんな下らない自慢話でリーシュに相槌を打たせるとは何事だ。早々にカタをつけねば。


「未契約の従魔で良いのならその申し出を受けよう。」


「えっ!?ロン!?」


「よし!!ではまず、お互いの従魔を呼び出すぞ!!ルールだからな!!」


ルールと言いながらやたら嬉しそうなのは、自分の従魔を見せつけて自慢出来ると思っているからだろうか。少年達四人がそれぞれ詠唱を唱えると、地面に四つの召喚陣が展開された。

召喚陣から迸る魔素の仄かな光を纏いながら、各自、少年達の前に従魔が現れた。お山の大将は電撃鼠、取り巻き共は火吹き蜥蜴、鉄砲亀、毒霧蛙という布陣だ。

攻撃力が高く従魔としても、なるほど人気な魔獣種ばかりである。ただし、魔術の補助的役割としてだが。


「子供は子供用の従魔しか契約出来ない決まりでもあるのか?」


「どういう意味だ!!従魔に子供用なんてあるか!!」


そんな当たり前なことはもちろん知っている。こちらは本職だ。だがそうも言いたくなる。何せわざわざ大仰な召喚陣まで使って呼び出して現れたのが、手乗りサイズの小型魔獣四匹である。きちんと躾されればペット扱いで未熟な子供でも契約出来るような種だ。

召喚陣と言えば飛竜が呼び出される様を見慣れているリーシュなど面食らっている。


「僕のピエールⅢ世を馬鹿する気か!?」


「お前のことは馬鹿にしているがお前のピエールⅢ世とやらは馬鹿にしていない。むしろ主人の馬鹿に巻き込まれて憐れに思っている。」


「お、お前ーーーーーーーーー!!!どこまで僕を馬鹿にすればーーーーーーーーーー!!!」


「落ち着いてウッディ!」


「ウッディって呼ぶな!」


「ちょっとロン!」


血管が切れそうな程に顔を真っ赤にした山猿とそれを宥める取り巻きを冷ややかに見やっていると、リーシュが声を潜めて話し掛けてくる。


「何で決闘受けるなんて言っちゃったの?従魔はどうする気?」


「大丈夫だ。当てはある。」


「ほんとに?許可も無しに勝手に師匠や兄弟子の人達から借りて来るとかじゃないよね?」


最近、この友からの信頼が底辺にまで落ちているように感じる。度々師や兄弟子の魔導具を無断拝借しては説教されている姿を見られている所為だろうか。信頼回復の為にも早急にこの問題を処理しなくては。


「ではこちらの従魔を紹介しよう。」


心持ち声を張ると、騒いでいた連中もこちらに注目を向けた。集まる視線の中、ロンは隣の自身の身長より高い位置にある襟を遠慮無しに掴んで引っ張る。

途端、鼻提灯が割れてハウルはやおら目を開けた。月色の瞳に正面から射貫かれて、四人は共に仲良く固まった。それはもう圧倒的強者を前にした弱者の如く。


「こちらの従魔だよろしく。」


「いや人間じゃねえか!!」


即座にウッドロウが食ってかかるが、ロンに言わせれば「だからどうした。」である。


「魔力を持つ生物には変わりないだろう。」


従魔は魔獣が一般的だが、定義としては魔力を持つ生物全般が含まれる。ゆえにこの無駄に体力の有り余った寝ボケ男とて未契約の従魔と主張すればその通りになるのだ。


「それ、こじつけじゃ…。」


「規定を順守した上でその穴を突くのは戦略的に正しく何ら咎められることでは無い。」


「ええ~……。」


清廉なリーシュが納得のいかない顔でこちらを見つめてくるのは大変心苦しいが、目の前の馬鹿共を黙らせるにはこれが一番手っ取り早い。


「これは決闘だぞ!?ふざけるのも大概にしろ!!」


一々噛みついてキャンキャン吠える馬鹿が納得のいっていない様子でもこちらは心苦しくとも何とも思わない。


「そちらには未契約の従魔でも良いかと事前に確認を取っている。」


「誰が従魔バトルに人間を出してくると思うんだ!!」


「己の貧困な想像力を他人のせいにするなと言いたいところだがならば四対一で構わん。一斉にかかって来い。ちなみにこの男は魔術を一切使用しないと付け加えておく。」


ハウルの首根っこを今一度持ち上げて示す。またその際軽く揺さぶっておいて居眠りを防いでおく。だが効果が無いのか瞼がほぼ閉じかけていく。この野郎。


「それはさすがに…。」


「男らしくないというか…。」


立ち寝野郎をもっと強く揺さぶっていると、取り巻き共がやんわりと何かほざいてきた。


「どうした?怖じ気づいたか?」


「なっ!!?何だと!!?」


「ちょっと待ってウッディ!」


「望む所だ!!ケチョンケチョンにしてやる!!」


「あ~、またウッディがやっすい挑発に…。」


「ちょっと顔が良いからって調子に乗るなよ!!」


これはハウルに対する純然たる本音だなと、小者臭い言い回しを聞き流しながら、ロンは辞書の角をハウルの脳天に叩き込む。


「起きろ。」


「…………?」


また表紙ではどうせ痛くも痒くも無いだろうと角にしたが、またもや奴は平然とした様子で目を開けた。石頭が。


「いいか。お前の仕事はあそこの魔獣四匹を戦闘不能にすることだ。」


「……はあ。」


状況を理解しているか定かでは無いが、とりあえず気の抜けた返事は返ってきた。

双方、所定の位置に着き、唯一の不参加者として審判に抜擢されてしまったリーシュが間に立つ。


「えっと、それでは試合開始!」


リーシュの号令を聞き、少年達が初手を出す為、各自従魔に指示を発しようとするその刹那、勝敗は既に決していた。

まずハウルは一番前に出ていた電撃鼠を片手で掴み上空にぶん投げた。その小さな姿は綺麗な放物線を描いてすぐ星になる。


「ピエールⅢ世ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


ウッドロウが従魔の消えて行った方向に向かって叫ぶ中、他の三匹も断末魔を上げる暇も無く続々と星になっていく。


「ヒューレックスーーーーーーー!!」


「ゼットゼットJrーーーーーーーー!!」


「フォスキアヴェレーノーーーーー!!」


先手必勝。あちらに一切の攻撃を許さない完全勝利である。というか全員何だその名前。


「全員場外でこちらの勝利だな。」


「いや何してくれてるんだお前らーーーーーー!!」


呆然と上空を見上げていたウッドロウが批難がましい目で見てくるが、こちらは正々堂々と相手をしてやっただけである。責められる謂れがまったく無い。


「行くぞ!スパン、レッド、ハイド!ピエールⅢ世達を助けに!!」


「待ってよウッディ!」


「だからウッディって呼ぶな!」


同じく呆然としていた三人が再起動を果たし、少年達は慌てて従魔達を探しに走って行った。


「覚えてろーーー!!」


途中、道の向こうで振り返って捨て台詞を叫び、少年四人は完全に見えなくなった。最後まで小者臭い奴だ。

そもそも従魔は契約主が呼べば戻ってくるのだからわざわざ助けに行かなくてもいいのだが、忘れているのだろうか。まさか知らない訳ではあるまいに。


「しかしお前の一族譲りの顔立ちと馬鹿力はこういう場合に役に立つな。」


「?」


顔面で畏れ煽り、腕力でねじ伏せる。ハウルの一族のお得意の戦法である。本人達に自覚は無いが。


「何か、あの子達が可哀相になってきた…。」


リーシュが哀れみのこもった眼差しを人のいない道の向こうに向ける。


「絡まれたのはこちらで被害者なのに何故?」


心底訳が分からないという顔で問いかければ、リーシュのいつもの「ほんとロンってロンだよね。」が返ってきた。何故?





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