48話─守るべき者のために! サモンマスタープライド誕生!
「感じる……このデッキに封じられていた、インペラトルホーンの喜びを。私と共に戦えるのが嬉しいのだな。ならば……これからは共に!」
『フィリール、感動するのは後にしろ。クモどもが来る、構えろ!』
「イ、ケ……ミステリアグル、グンダン……」
「ギシャァァァァ!!!」
焦点の合わない目でキルトたちを見ながら、サモンマスターミスティはクモのモンスター……ミステリアグルたちに指示を出す。
それを契機に、戦いが始まった。キルトとフィリールは、デッキホルダーからサモンカードを取り出す。
「フィリール様、僕がサポートします! 一緒に戦いましょう!」
「ああ、よろしく頼む。だが、そんなかしこまらなくていいぞ。これからはさん付けでいい。対等な仲間なのだからな、私たちは。では……行くぞ!」
『ランスコマンド』
フィリールは、金色の馬上槍が描かれたカードをカブトムシを模した勲章型のサモンギアに差し込む。すると、天から大きなランスが降ってくる。
右手で柄をキャッチし、構えるフィリール。槍の名手として名を馳せているだけあり、歴戦の猛者らしいオーラに包まれていた。
「お互い死角を作らぬよう背中を預け合うぞ! そうすれば、どこから敵が来ても対応出来るからな」
『我がいれば問題はないが……ま、ここはお前の顔を立ててやるとしよう。キルト、今回も大暴れだ!』
「うん! フィリール……さんとの共同戦線だ!」
『ソードコマンド』
「シャアアア!」
「食らえ! ドラグスラッシャー!」
フィリールと背中合わせになったキルトは、武器を呼び出して飛びかかってきたミステリアグルを両断する。
その後ろでは、フィリールがランスを操り敵を穴だらけにしていた。時に片手で、時に両手で。自在にランスを振るい敵を屠る姿は、『姫獅子』の異名に相応しい勇壮さだった。
『ほう、こやつただの変態だと思っていたが……。かなり強いな、ここまで出来るとは』
「ルビィお姉ちゃん、流石にしつれ……フィリールさん、気を付けて! サモンマスターミスティがいなくなってる!」
「クモに紛れて移動したか。不意討ちしてくるつもりだろう、警戒を強めろ!」
ミステリアグルたちを蹴散らすなか、キルトはクモたちの司令塔……サモンマスターミスティの姿が消えていることに気が付いた。
フィリールにそのことを伝え、警戒を強めた刹那。二人の頭上に葉を伸ばす木の枝から、ミスティが飛び降りてくる。
「うわっと!」
「頭上から襲い、分断する……いい判断だ、正気ではないだろうに頭が回るな、こやつは」
「ウ、グ、ア……!」
『キルト、見ろ。奴の持っているレイピア……ただの武器ではなさそうだ』
「うん……もしかしたら、武器タイプのサモンギアかもしれない。アイデアはあったんだけど、僕が在籍してた時には完成させられなかったんだよね……」
相手の攻撃から逃れるため、やむを得ず二手に別れたキルトたち。ミスティが狙いを定めたのは、キルトの方だった。左腰に下げた鞘からレイピアを抜き、斬りかかってくる。
鍔と一体化しているハンドガード部分に取り付けられた、クモの形をしたプレートが印象的なレイピア。それを見て、キルトはそう憶測する。
が、憶測を続ける暇もなくミスティが突っ込んでくる。切れ味鋭いレイピアを振るい、切り刻もうと猛攻を仕掛けてきたのだ。
「ふっ、はっ、たっ! 速い……この人、剣の扱いが上手い!」
「ウウ、アアァ……」
剣と剣がぶつかり合うなか、キルトは相手の技量の高さに舌を巻く。突きと斬撃を織り交ぜた、緩急のある連続攻撃に手を焼かされてしまう。
チラリとミスティの背後を見ると、そこではフィリールがクモたち相手に大立ち回りを演じていた。しばらくは加勢する必要はないと判断し、目の前の敵に注力する。
『キルト、後ろにクモどもが三匹回り込んできている。挟み撃ちにするつもりのようだ』
「糸を吐いて僕の動きを止めるつもりかな? そうはさせないよ。お姉ちゃん、クモが攻撃する素振りを見せたら合図して」
『ああ、任せろ!』
フィリールを襲っていたクモの一部が、キルトに気付かれないようこっそり移動してくる。もっとも、ルビィが見ているのでバレバレだが。
ミスティと斬り結びつつ、キルトは相棒にそう頼み込む。少しして、キルトの後ろに現れたクモたちが尻を向け、糸を放とうとする。
『キルト、今だ!』
「ありがとう! ミスティ、お前が糸を食らえ!」
「!」
「シャアッ!?」
ルビィの合図を受け、キルトは横に飛んで糸を避ける。クモたちは慌てて攻撃を止めようとするも、もう遅い。
主であるサモンマスターミスティに直撃し、彼女がネバネバの糸まみれになってしまう。これで機動力を大幅に削げる、と思っていたが……。
「ム、ダ……キカ、ナイ!」
『!? こいつ、糸が付着しているのに普通に動けるのか!』
「わっわっ、まずい! あっ!」
予想外のことに、キルトは対応が遅れてしまう。突きを食らって、剣を弾き落とされてしまった。拾いに行こうとするも、クモたちが邪魔をしてくる。
「トド、メ!」
「そうはさせない、私がいる限りキルトは死なせないぞ!」
『ヘイトコマンド』
クモたちをあらかた蹴散らしたフィリールは、キルトの危機を察知しサモンカードを取り出す。手にしたのは、羽根を広げ超音波を放つインペラトルホーンが描かれたカード。
それをサモンギアに挿入すると、彼女自身の頭上に大きな黄金色のヘラクレスオオカブト……インペラトルホーンが姿を現す。
「インペラトルホーン、敵の注意を私に向けさせろ! ナスティスピーカー!」
『ブゥゥゥゥゥゥン!!!』
インペラトルホーンが羽根を擦り合わせると、強烈な不快感を呼び起こす超音波が放たれる。効果対象を指定出来るらしく、キルトやルビィは被害を受けていない。
「今だ、剣を拾え!」
「フィリールさん、ありがとう!」
『敵意を集めるタイプの効果か……。上手く使えば、今回のようにかなり役立つな』
が、サモンマスターミスティやクモたちには効果てきめんなようで、全員悶絶している。キルトへの攻撃を中断し、全員がフィリールに殺到する。
「ソノ、オト……トメ、ロ!」
「ギャシィィィ!!」
「来るか? いいだろう、纏めて相手をしてやる。我が鉄壁の守り、崩せるものなら崩してみろ!」
『ウォールコマンド』
剣を拾いに行ったキルトが戻るまで、守りを固めて耐える必要がある。そこで、フィリールは三枚目のカードを取り出す。
黄金に輝くタワーシールドが描かれたカードを挿入し、大盾を呼び出すフィリール。左腕で盾を構え、クモたちを食い止めた。
「このエグゾスケルウォールは簡単に壊せん! 何匹掛かりで来ようとな!」
「オノ、レ……コザカ、シイ!」
「フィリールさん、お待たせ! 剣を拾ってきたよ! 今度はこっちが挟み撃ちにする番だ!」
『クモどもはもう、半分を切った。このまま一気に全滅させるぞ!』
フィリールが耐え忍んでいる間に、剣を回収し終えたキルトが敵の背後を突く。先ほどのお返しにと、今度は彼らが敵を挟撃する。
ミスティは形勢不利と見て、手下であるミステリアグルたちを残し木の上に飛び去る。生い茂る葉で身を隠しながら、右腰に下げたデッキに手を伸ばす。
レイピアを左手に持ち替え、魔力を流し込む。すると、クモの形をしたプレートが左右に割れ、下にあったスロットがあらわになった。
『スイングコマンド』
「ウウ、グ、ウウァ……」
ミスティが投入したのは、側面にクモの絵が描かれた群青色のヨーヨーが描かれたサモンカード。レイピアを鞘に戻した直後、彼女の両手にヨーヨーが現れる。
「コレ、デ……アイツ、ラ……タオ、ス」
クモの群れを殲滅しているキルトたちを見下ろしながら、サモンマスターミスティはそう呟く。彼女の手の上で、ヨーヨーが不気味な輝きを放っていた。




