表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

呪いの一族と一般人

言の葉集め2



***この出会いを例えるなら(バイキングで朝食中)***


日和(ひより)「このステーキ美味しい! ねえ、碧真(あおし)君。これ食べてみてよ!」

碧真「朝からそんな重たいものが食えるか」

日和「こんなに美味しいんだよ!? 今食べないと損だよ!」

碧真「別に牛肉なんて、いつでも食えるだろう」


日和「牛肉は、いつでも気軽に手を出せる物じゃない! 庶民にとっては、高嶺の花的存在だから!! それに、この美味しいソースと絶妙な焼き加減が奇跡のコラボレーションを果たした牛肉には二度と出会えないかもじゃん! 今の碧真君を例えるなら、綺麗になった幼馴染の女子が、クラスの他の男子に告白されるのを見て、ようやく自身の恋心に気づいた男子高校生だよ。いつでも側にあると思っちゃダメだよ! 手遅れになる前に、自分の想いを伝えないと!」


碧真「意味不明な例えをしてくるな」


日和「今の碧真君を例えるなら、大好きな先輩が卒業する日に、勇気を出して告白出来なかった男子高校生」


碧真「変な例えでゴリ押ししてくるな」



***「あーん」して食べてもらおう(バイキングで朝食中)***


※碧真は飲み物を取りに行った為、離席中。


日 和「説得も虚しく、牛肉を食べて貰えませんでした。こんなに美味しいのに」

壮太郎(そうたろう)「ピヨ子ちゃんが、チビノスケに”あーん”して食べさせてあげたらいいんじゃない?」


日 和「いや、流石に碧真君は、まだ介護が必要な年齢じゃないですからね?」

 (じょう) 「……何故、そこで介護が出てくるんだ?」

日 和「え? だって、小さな子供相手や看病か介護の為に食べさせるならわかりますけど、健康な成人男性にはしないでしょう?」


壮太郎「いや、恋人同士とか、食べさせ合いっこしてるじゃん?」


日 和「??」

壮太郎(宇宙の真理を聞かされた人みたいなグニャッとした顔になってる)


日 和「あ! 食べさせられると言えば、私、碧真君に復讐出来てないです! 卵ボーロの恨みを晴らさないと! あーんして、無理やり食べさせるのも有りですね!!」


 丈 「??」

壮太郎(ピヨ子ちゃんの迷走っぷりに、丈君が宇宙人に遭遇したみたいな顔になってる)



***日和の復讐(バイキングで朝食中)***


日和「碧真君。わらび餅だよ。美味しいから食べてみて」

碧真「何だよ急に」

日和「はい、あーん♡」

碧真「気色悪い」

日和「ちょっとぉ!? いいから食べてよ! せっかく大量に載せたきな粉が落ちちゃうじゃん!」


碧真「何を企んでいるんだ?」

日和「え、いや、えっと……な、何モ無イヨ。日頃の恨……感謝を込めて、碧真君に食べてもらおうと思ってさ」


碧真「大方(おおかた)、昨日の菓子の恨みを晴らす為に、それを俺に食べさせて()せさせようとしてたんだろう?」


日和「何でわかるの!?」

碧真「日和が馬鹿だからだろうな」

日和「馬鹿じゃない! 今のは少し作戦負けしただけだよ」

碧真「作戦と呼べるモノでもないだろう」


 日和はムスッとした顔で、わらび餅を食べて盛大に()せる。碧真は憐れな生き物を見るような目で日和を見て、溜め息を吐いた。



***セクシーポーズ(景子(けいこ)とお出かけ中)***


日和「色気欲しい」

景子「唐突」


日和「いや、私は十年以上も色気が欲しいと思い続けたからね。年季が入った強い思いだから。突発的な衝動だと切り捨てないで」


景子「むしろ突発的な衝動の方が、まだその場限りの馬鹿な発言で流せるよ。継続的な考えなら、もう年季の入った馬鹿そのものだからね」


日和「でも、私も欲しがってばかりで手をこまねいていた訳じゃないの。ネットでグラビアアイドルさん達の写真を見て、セクシーポーズを学んできたから」


景子「ヒヨは本当に何やってんの?」

日和「見てて!」


 日和は両手を両膝に添えて前屈みのポーズをする。


景子「……屈伸かな?」

日和「何でっ!?」


景子「いや、こっちのセリフだから。それの何処がセクシーポーズなの?」

日和「セクシーポーズだよ! ほら、この写真を見てよ」


 日和は景子に携帯のスクリーンショットの画像を見せた。


景子(あー。胸を寄せて上目遣い。確かに、このグラビアアイドルならセクシーだけど……。どうしてヒヨがやると、お遊戯中の幼稚園児に見えるのかな??)


日和「もしかして、私にはセクシー難易度が高すぎた?」


景子「うん。今のヒヨより、まだゾウリムシの方がセクシーさでは格上だわ」

日和「ゾウリムシに色気あるの!? てか、比較対象が微生物なの!? え!? 私、微生物より色気が無いの!?」



***色気と希望***


日 和「壮太郎さんは色気があっていいなあ。もぎ取りたいなあ」

壮太郎「ピヨ子ちゃんは色気が欲しいの?」

日 和「欲じいでずぅっっ!!!」


壮太郎「え。食いつきすぎじゃない? 僕、かなり引いちゃったよ」

日 和「そりゃ、十年以上願っている事ですからね。年齢を重ねたら、色気は自然と(にじ)み出てくるって聞いてたのに!!」


壮太郎「確かに、ピヨ子ちゃんは色気皆無だよね。言動も思考も全て子供っぽいし。最初に会う前に年齢を聞いていなかったら、学生と思ったかも」


日 和「大人のお姉さん要素は感じなかったですか?」

壮太郎「一ミクロンも感じなかったなあ」


日 和「一ミリより小さな単位で(えぐ)ってくるとか、慈悲はないんですか!?」

壮太郎「ヨクトとか、もっと小さな単位で表現しなかっただけ優しいと思うけど?」


日 和「優しさって何だろう?」

壮太郎「哲学だね。まあ、色気なんて感覚的な物だし。ピヨ子ちゃんに将来恋人が出来たら、その人に色気を感じてもらえればいいんじゃないの?」


日 和「……私に恋人が出来るとお思いですか?」


壮太郎「ピヨ子ちゃん。目から光が消えてるよ。子供が見たら、泣いちゃうレベルの(ほの)(ぐら)さ」


日 和「色気も恋人も手に入らない。私の人生って何だろう?」

壮太郎「人生に対する希望を、簡単に捨てるのは勿体無いよ。大丈夫。恋人なら、いつか出来るよ」


日 和「……色気は?」

壮太郎「あはは」

日 和「笑って誤魔化さないで下さい!! 希望を持つ事すら許されない程に、私は色気が無いんですか!?」



***祭りに行った理由(祭りの日の朝の会話)***


壮太郎「チビノスケも祭りに行くでしょ?」

碧 真「行きませんよ。そんな意味不明な祭り」


壮太郎「じゃあ、チビノスケだけお留守番かあ。僕と丈君とピヨ子ちゃんで行ってくるから、いい子にお留守番しててね」


碧 真「……勝手にどうぞ」

壮太郎(あ、ちょっと拗ねてる。本当に面倒臭いなあ)

   「じゃあ、ピヨ子ちゃんの相手は、他の誰かに頼もうかな」


碧 真「相手?」


壮太郎「うん。お世話になった人達が祭りに来るから、僕と丈君で挨拶回りに行こうと思ってさ。知らない人達の中に連れて行かれるのは、ピヨ子ちゃんも気まずいだろうし、途中まで別行動しようかなって。その間はチビノスケに頼むつもりだったけど、逆に丁度いいかもね! 一族の未婚の男性達や、人と結婚したい妖達から、”女性を紹介して”って、しつこく言われてたし。この際、誰かと引き合わせようかな」


碧 真「は?」

壮太郎「ピヨ子ちゃんみたいな子が好きな人や妖もいるし。ピヨ子ちゃん、モテるだろうね」


碧 真「……日和がモテるわけないでしょう? あんなバカで色気皆無の人間なんて、需要無しです。日和を紹介したら、壮太郎さんに見る目が無いと思われるから、やめた方がいいですよ」


壮太郎「えー? でも、昨日本家でピヨ子ちゃんのことを当主様に聞いている妖がいたよ? 一緒に祭りを回りたいみたい。あの妖は結婚願望が強いから、一気に関係が進みそうだね」


碧 真「……」

壮太郎「顔怖いよ。チビノスケ。じゃあ、僕は恋のキューピッドになってくるよ」

碧 真「俺も祭りに行きます」

壮太郎「えー? 何で?」


碧 真「馬鹿な日和に振り回される被害者を出さない為です。慈善活動ですよ」

壮太郎「ははは。チビノスケ。言い訳にしか聞こえないよ」

碧 真「……っ! とにかく、俺も行きますから!」



***着物を着た理由(祭りの日、結人間家で妖達に別室へ連行された後)***


碧真「おい! いい加減に離せ! 何なんだよ一体!」

八重(やえ)「祭りを楽しむ為に、着物に着替えな無愛想坊主」

碧真「はあ? 着替える必要なんてないです。俺は付き添いで来ただけですから」

八重「アンタへの解呪の指導代として、私の言う事を聞きな。普通なら、こっちは百万円以上請求しても良いくらいだ」


碧真「は? 勝手に教えたんじゃないですか。言っていることが悪徳商人ですよ」

八重「こんないい女が、悪徳商人に見えるかい?」

碧真(つうか、それにしか見えないんだが……)


八重「着物着るだけで、指導代をタダにしてやる。善意でしかないだろう?」

碧真「金で解決しましょう」


八重「可愛くない奴だね。ダメだよ。お代は体でしか受け付けない。拒否をするなら、人体実験に付き合ってもらおうか」


碧真「……何をさせる気ですか?」


八重「丁度、垢嘗(あかなめ)という妖の力を使って、(けが)れや邪気を祓えないか実験をしていたんだ。無愛想坊主には、邪気を浴びてもらった後、垢嘗に全身を舐められてもらう。唾液まみれになるけど、痛くは無いから大丈夫さ。おいで、垢嘗」

 

 襖に隠れて、半分だけ顔を出した緑色の妖怪が現れる。碧真を見ると、垢嘗は赤く長い舌をダラリと垂らし、頬をポッと赤く染めた。

 

碧真「着物を着ます」

八重「最初から、そう言えばいいんだよ」

垢嘗(これが世に言う出オチ!?)



***ヨーヨー掬い(碧真と日和、二人で祭りを回り中)***


日和「あ! ヨーヨー掬いみっけ! ちょっとやってもいい?」

碧真「そんな事をして、何か意味があるのか? 取れてもいらないだろう」


日和「確かに、家に持って帰った後は、扱いに困る物だけど。やる時に楽しいからいいの。じゃあ、行ってくるから。……碧真君、ちょっと手を離して」


碧真「また(はぐ)れるだろうが」

日和「三歩の距離で逸れる心配されるとか、私どんだけ信用ないの?」

碧真「散々探し回らせた事を忘れたのか?」

日和「あー……。と、とにかく、逸れないから信用してよ」

碧真「信用できる人間になってから言えよ」


日和「ヨーヨー掬いをやりたいだけなのに、求めるテーマが人生かけるレベルの壮大さじゃない? 碧真君が今この瞬間に、人を全面的に信用する人間になってよ」


碧真「日和相手には無理だな」

日和「そう言うと思ったけど。じゃあ、碧真君は誰なら信用できるわけ?」

碧真「丈さん」

日和「反論の余地もない人を答えないでよ」

碧真「じゃあ諦めろ」


日和「いやだあ! ヨーヨー掬いやりたい! 赤いヨーヨー欲しい!!」

碧真「ガキかよ」


日和「碧真君の方が、私より年下だからね! てか、碧真君も一緒にヨーヨー掬いやればいいじゃん!」

碧真「はあ?」


日和「お金なら私が出す! だから、やろう!」

碧真「やる訳が無いだろうが。何でこんな事に意地を張ってるんだよ」


日和「碧真君こそ。手を離すか、一緒にヨーヨー掬いしてくれたらいいだけなのに、何で意地を張ってるの? ……あ! もしかして、ヨーヨー掬いが下手だから、やりたくないとか?」


碧真「ああ、そうだ。わかったら行くぞ」

日和「待って!? 違うでしょ! ここは、『そんな訳が無いだろう?』『じゃあ、勝負だね』みたいな流れじゃないの!?」


碧真「したり顔で挑発出来ると思っている可哀想な奴の相手が面倒だった。あと、その顔やめた方がいいぞ。マジでキショイ」


日和「ちょっと!? キショイって言うのはやめて!! 心をナイフで刺された気分になるから!」


碧真「怖気(おぞけ)がする程に気色が悪い」


日和「より深く抉り取りに来ないでよ!! 心をチェーンソーで斬りつけられた気分だわ! てか、ヨーヨー掬いしたいだけで、何でこんなに言われてるの私!? ちょ、引っ張って行かないで!!」



***審議(帰る日の朝。壮太郎と丈が泊まっている部屋の中での会話)***


※日和のみ離席。


壮太郎「チビノスケがピヨ子ちゃんに手を出さなかったみたいで安心したよ。何かあったら、僕が丈君に怒られちゃうところだった」


 丈 「怒る、怒らないの問題では無い。未婚の男女を同室にするな。何かあったら、どうするんだ」


壮太郎「その対策に、呪いの人形を送り込んだんだよ。ピヨ子ちゃんが被害に遭う前に、チビノスケの息の根が止まるだけだから問題ないでしょ?」


碧 真「問題しかありませんよ。人の息の根を止める物を仕向けないで下さい」

壮太郎「手を出さなければ、害は無いからいいじゃん」


碧 真「俺が手を出さなくても、その人形自体が害悪だと思いますよ。その人形、日和の……服の中に潜り込んで、体を触っていましたから」


 丈 「な!? 壮太郎、どういう事だ!?」

壮太郎「へ? 待ってよ。この子は学習機能付きだけど、僕はそんな事は教えてないよ!?」


呪いの人形『主人よ。私は、そのようなことをしておりません。このケダモノの言う事など、信じないで下さい! この男は、自分がした変態行動を揉み消す為に、私に罪を着せようとしているのです!』


 丈 「あ、碧真が変態行動を?」

碧 真「丈さん、惑わされないで下さい! 俺がそんな事をする訳が無いでしょう!!」


呪いの人形『そのケダモノは、私のおっぱ……ゴホン。失礼。私が守る娘が眠っているのをいい事に、欲望のままに抱きしめていました。私が駆けつけなければ、今頃ケダモノの手によって、娘はあられもない姿に!!』


 丈 「碧真! それは本当なのか!?」

碧 真「違います! 日和が掛け布団の上に寝ていたから、布団の中に押し込む為に持ち上げようとしただけで、別に、手を出した訳じゃ……」


呪いの人形『わざわざ娘を抱える必要は無い。起こせばいいだけだ。お前は娘の体に触りたかっただけではないのか? このムッツリ・ガッツリスケベめ!!』


壮太郎「チビノスケ。無言で銀柱(ぎんちゅう)を出さないで。ここで爆発術式を使ったら、ホテルの人に怒られるからね?」


 丈 「壮太郎。怒られるどころの話ではないぞ」


呪いの人形『私は変態の魔の手から守る為に、娘の側に移動しただけ! 私の目を見て下さい! 嘘を吐いているように見えますか!?』


壮太郎「プラスチック製の目で語られてもなあ」


呪いの人形『主人! 私はあのケダモノから、娘が持つ二つの宝を守ったのですよ!? 手に吸い付く程に潤った肌で作り出された神秘の白いふわふわおっぱいを、我が身を(てい)して守った私を信じてくださらないのですか!?』


碧 真「壮太郎さん。そのクソ人形を、こっちに渡して下さい」

壮太郎「チビノスケ。顔が怖いよ。今にも八つ裂きにしてやろうと思っているでしょう?」


碧 真「それだけじゃ足りません。この世界に(ちり)一つ残らなくなるまで焼き尽くします」


壮太郎「この子は咲良子(さくらこ)のお気に入りだから、それは困るな。大人しくさせるから落ち着いてよ。君も少し眠ってもらうけど、いいよね?」


呪いの人形『……わかりました。主人。その前に、少しだけお時間を下さい』


 呪いの人形は、碧真の左肩の上に飛び乗って、耳元に囁く。


呪いの人形『あの娘の胸は、左より右の方が大きいぞ。揉むならみぎゅぅぃっ』


壮太郎「あ! チビノスケ! パーツと術式が変形しちゃうから握り潰さないでよ!」


碧 真「いっそ全部壊れて消えればいい」

壮太郎「こんな事で闇堕ちしないで」



お読み頂き、ありがとうございます!

良かったら感想や評価、いいねなどを頂けると、執筆活動の支えになりますのでお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ