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第一章 3 『不本意の味』②

「んー、本当に美味しい。なにこれ、もう一個買って帰ろうかな。」


騒然とする店内。突然の来訪者に驚き緊迫する店員達と他の客々。しかしビビアンハートは横目で視認し気づいてはいるものの相変わらず呑気に持ち帰り用を買うか悩んでいるのだった。


「静かにしろよ。騒ぐんじゃねぇ。」


そう言いながら強盗は店員のひとりを人質にとりナイフを人質の頸動脈に押し付け、金品を強要した。ダニエラも少しうろたえている。が、自分の店の従業員になにかあってはいけないと、要求通りに貨幣を指示されたカバンに詰めようとしていた。さっきまで我関せずとしていたビビアンハートは「ご馳走様でした。」と両手を合わせると


「おにーさーん。今なら見逃してあげるから、物騒なものしまって帰りなよ。」


と強盗に喋りかけた。


「っ軍人かよ。関係ねぇ、女ひとりで何ができるってんだ!!」


より一層人質に押し当てるナイフに力が入る。しかし冷静なビビアンハートは瞬時にその場を眼だけで見渡し人の配置、空間の把握を行う。


「痛い目見るよ〜。第一白昼堂々1人で強盗、しかも街のしがないケーキ屋にとか打算すぎでしょ。」


挑発的に話しかけるビビアンハート。その挑発にまんまとかかる強盗。


「っだまれよ軍の雌の犬が!」


その強盗の怒号と同時に彼女は持っていたフォークを寸分の狂いなくナイフを持つ手に向かって投げ、前方へ駆ける。投げられたフォークに気を取られ叩き落とそうとする為に人質への意識が緩む。左腕で人質の胴を抱え右手にナイフを持ち人質に押し当てていた強盗の体が少し開いた。フォークを右手で叩き落とす瞬間、ビビアンハートは左手で彼の手首を掴み流れるようにナイフをもつ強盗の手をねじり掴み、そうしつつ右手で、人質を掴む彼の手を後ろに巻き込み自らが強盗と人質の間から後ろへ回り込むことで人質を引き離した。一瞬で両腕を拘束され自らのナイフを今度は自分の首に当てられる強盗。


「はい、形勢逆転。制圧完了。だから言ったのに。痛い目見るって。」


その言葉の軽さとは裏腹に細身の少女から想像もできない力と表情は冷酷と言うか、少しばかり楽しそうであった。

彼女が手を離したかと思うと


「痛ぇ。痛ぇよ·····あんまりだ!!」


強盗は言いながらその場にみっともなく泣きうずくまる。そののちダニエラによって呼ばれた民警団に強盗は連行されて行った。この街の小さな騒動をどこから嗅ぎ付けたのかアルマノフも民警団と一緒にやってきていた。


「少佐!何やってるんですかこんなところで!」


「あ、いやぁー·····色々ありまして·····」


呆れながらも上官であろうがきっちりと叱るアルマノフとバレてしまった·····とでも言わんばかりに苦笑を浮かべるビビアンハート。アルマノフは両手を組み仁王立ちでビビアンハートの前に立ち塞がっている。

暫くガミガミと、目立つなとか民警を呼んで任せればいいとか仕事が残ってるとか、立場を気にしろとか彼らしいいかにも真面目な言葉で責めたてていた。言われるがままのビビアンハートが


「ごめんなさい·····」


と、最初はどうやってこの場を撒こうか考えていたが素直に謝ると、


「まぁもう終わったことですし仕方ないです。ただ、強盗ごときにやりすぎですよ。両肩を外すなんて。」


そう、ドルビアを襲った強盗は両肩を外されたためにうずくまっていたのだ。彼女には幾分か武力を行使する際やりすぎてしまうきらいがある。


「誰も襲われてもいないし、金品も盗られていないのにたかだか強盗にそこまでするなんて、過剰防衛だと訴えられても知りませんよ。」


「だってあのままじゃ誰かが傷ついていた!私が止めてなかったら血が流れていた!民警なんて間に合ってなかった!!」


弁解をしようとするビビアンハート。アルマノフは彼女から視線を外すと一瞬目付きを鋭くし歯を食いしばる。そして


「·····分かってください。一介の兵士に権限なんてない·····国の·····この帝国のやり方の中でしか生きられないのです。··········さ!行きますよ。そろそろ15時になります。」


ビビアンハートは一瞬の彼の表情を見逃さなかった。何故、彼がそのような表情を浮かべたのかまでは定かではない。しかし今は深入りすることもないと判断し、彼と共にこの場を後にした。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



帝国軍 隠密機動大隊(仮) 中央司令室


14:56 ビビアンハートとアルマノフそのほか3名程この部屋に集まっていた。その他3名とは所謂、爵官と呼ばれるお偉いさんという奴だ。コネや賄賂、二世三世と言った具合の血の流れる戦場で死体を目に焼き付けたことも無い、既得権益者である。


「まったく。レインスコールのやつ。新たに隊を増やしおって。」「加えて大隊長がこんな小娘とは、聞いて呆れる。」「何が特軍だ。もともと私は反対だったんだ。」「陸海に絞り肉壁にした方が幾分かマシだ____」


ぶつくさ四の五のと御託を並べる既得権益者の隣に座っていたビビアンハート、そのまた隣に立つアルマノフは


「お言葉ですが!__」


と時間ギリギリになっても無駄に口を開き続ける彼らを止めようとするも、ふと視線に入ったビビアンハートが先の言葉に被せかき消し言う。


「貴重なご意見ありがとうございます。私もレインスコール大佐よりこのお話を頂いた時より隊が増える、更にいえば大隊規模となると余計に裂かれる人員も資金も必要になるので、なぜ必要かと考えました。」


「おぉそうか少佐。お前さんはまだ若くそれなりに綺麗どころの女だ。どれ、私の側近に置いてやろう。」


「しかしながら、今決めました。必ずや我が帝国の為陸海以上の戦果を挙げ功績を残そうと。それに私は傷物です。掌は血で汚れその血をまた血で洗いながら生き、人知れず人を殺すことが特技となりました。あなた方には到底見合いません。」


そうすらすらと言うビビアンハート。その様を眺めていたアルマノフは恐怖を覚えた。

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