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第一章 5 『私の名は』②

「ダニエラ!嬢ちゃん!」


そんな優しい光景の中に飛び込んできた1人の男。いくつもの傷跡を肌に見せる男、ルビアスだ。急いできたのか、髪を乱し、額に汗も滲ませている。


「驚かせてすまない。」


「どうしたんだい?ルビアス。」


ダニエラがルビアスに問いかける。


「あぁ、色々あって少々手間取ってしまったが、ダニエラ、お前さんが正式に嬢ちゃんの身元引受け人になって良いと国政軍が受諾した。」


驚いたように目を丸くするダニエラ。その姿は小さく身を震わせいつもの強さではない何かを感じさせる。少女はルビアスの発言の意味がわからず、黙ったまま彼を見据えている。


「だが·····」


ルビアスは少しばかり険しい表情に変わり、一呼吸置いた後言葉を続けた。


「それにあたっていくつか条件を提示された。」


それを聞き、眉間に皺を寄せるダニエラ。


「まず1つ目、嬢ちゃんはしばらくの間、国政軍の上層部、俺、ダニエラ以外との直接的な接触を禁ずる。接触者が現れた場合、即刻、軍に報告すること、その接触者は極刑に処す。」

「2つ目、嬢ちゃんの帝国外への逃亡、又はそれに準ずる行為が発覚した場合、嬢ちゃん、俺、ダニエラ、の3名は帝国軍全勢力をもって極刑に処す。そしてことが起きた場合、これを最優先事項とする。」

「そして3つ目、嬢ちゃんは年明けより軍に所属し、軍所属後半年以内に『力』の理解・制御を確実とすること。その管理は俺が一任されたこと。『力』の理解・制御が期限内に完了しなかった場合、2つ目に同じ、3名を極刑に処す。」


それを聞いたダニエラはそのルビアスの言葉を噛み砕き飲み込む。が、突如立ち上がり、ものすごい剣幕でルビアスの胸ぐらを掴む。その勢いでルビアスは壁に背中をぶつけ、そのルビアスの傷面をダニエラは鋭く睨みつけている。


「·····ルビアス。あんた、あの子がこれからの人生どう生きるかって権利を奪うのかい?あんまりふざけた事言うんじゃあないよ!」


ダニエラのその黒い瞳に憎悪が揺れる。否、それよりもっと強い自責のような、痛みに似た何か。

ダニエラは割れてしまいそうな程に奥歯を噛み締め、ルビアスの胸ぐらを掴む手は震えている。


「·····すまない。ダニエラ。俺の力不足だ·····。だが·····いやいい。とりあえず手を離してくれ。後で、詳しく説明する。」


ルビアスは突然そういった態度をとったダニエラを責めることはなく、悲哀を思わせる表情で返答した。一瞬何か含ませたような言い草だったが、言われダニエラは力を入れ過ぎて白くなったその手をゆっくりと離す。


「··········後で、ちゃんと聞かせなよ。」


しばらく沈黙が続き、意外にもそれを破ったのは少女だった。


「·····あの·····。」


少女は静かにルビアスへと声を掛ける。


「俺か?嬢ちゃんどうした?」


「あの·····名前、教えて貰えますか?」


「あ、俺もしかして·····そういや名乗っていなかったか。あぁ、これはダメだな。名前聞く前に先に名乗るべきだよな。すまない。」


額に手をあて、首を左右に振りながら自分が今まで名乗っていなかったことに反省の色を見せる。


「改めて、俺の名は、ルビアス・レインスコール。しょ、大佐だ。」


「·····ルビアス・レインスコール・ショタイサー·····さん·····。」


「違う違う。ショタイサーじゃなくて大佐だ。あーっと仕事での階級の事だ。それと、__」


そう言ってルビアスは何かを思い出したように、懐から黒い布を取り出す。


「これ嬢ちゃんにやるよ。元々俺の母親の物なんだが、結構伸縮性も良いし、まだしばらく使えるはずだ。」


ルビアスが取り出したのは手袋だった。少し古さを感じる一対の手首迄覆える黒い手袋。

少女はそれを言われた通り受け取る。何故かその手袋から暖かみを感じたようだった。


「着けてみたらいい。」


顔の傷に触れながらルビアスは優しく笑いかけた。少女は小さく頷きその手袋にゆっくりと指を通す。


「いいと思う。似合ってるよ。」


ルビアスはそう言って少女の目の前に手を差し出した。


「いつしかの握手だ。」


「··········。」


「大丈夫。俺を信じろ。」


「··········。」


少女は差し出された彼の手を見るも、自身の両手は固く握り、彼の手を握ることが出来ないでいる。

ルビアスは深く息を吐き再び少女に笑いかけると少女の翠碧の瞳を真っ直ぐに見つめたまま、左手で少女の右手首を掴み引き寄せ、無理やりにその小さい手を握った。

その行為にびくっと驚いたように反応した少女だが今度は固く目を閉じ、ゆっくりと本当にゆっくりと固く握った手を広げ、ルビアスの掌と合わせる。

ただ普通の握手が行われた。


「··········!」


少女は薄く目を開き、その事実を恐る恐る確認する。2人が握手をしているその眼前の光景は紛れもない事実で、現実だった。


「··········!」


「な?言っただろ。これからもよろしくな。」


ルビアスがそう告げると、少女は彼の手を握ったままその場に大声で泣き崩れた。

※作者から大切なお願いです。


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今後も更新を続け書籍化の夢への『大きな励み』になりますので、どうか何卒よろしくお願いします。



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