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序章 『始まりと終わりと星の選択』

まだ·····感じる·····。


「____ 」


冷たい。コンクリート、金属。光は·····分からない。


「·····って·····から。」


声がする。聞き取れない。遠い。


「·····いつまでも·····待っているから。」





星暦1635年


__何、これ。


背中が熱い。割れた家屋の木壁が少女の背中の柔肌をいとも簡単に、しかし、雑に切り裂いていた。

だが、意識は燃えるように熱い背中ではなく、眼前の光景に噛みつかれ、本来なら他へむけられるはずのその意識を離してくれない。

手が震え、骨と内臓を伝い脳まで響く自分の心臓の脈動がうるさい。


____怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。


足も腰も文字通り立たない。背中を真っ赤な紅血が伝い、額に滲む汗すらも重く感じた。

喉が渇く。呼吸をしようとする度に張り付いた喉頭が無理やりに剥がされ、何度も血の味が返ってくる。


「·····ごめ·····ん·····なさい·····。」


少女の目の前に横たわる1人の大柄の男。その奥に1人、2人·····目が霞んで正確には数えられないが、まだ小さい、10歳前後であろう人間が何人か、大柄の男と同じように横たわっている。


「··········い·····の·····いるか!」


突如、視界の奥、声と共に目の前の扉が蹴破られ、1人の男が入ってきた。男の声と蹴破られた木の扉が割れる音に意識を引き戻される。木製の家屋はいとも容易く燃え、豪炎に焼ける肌と肉の臭いが、鼻腔を刺し殺す。


「生き残っているものは__」


__いるか!おそらくそう言葉を続けようとした男は少女の存在に気付き駆け寄ってくる。少女は安堵、まではいかないが、助けて欲しいと願った。願うことが出来た。しかし、その欠片の意識の緩みがもたらしたのは先程とは比べられない、形容できないほどの痛み。もたれかかっている壁が熱い。否、壁ではなく裂かれた背中が、その痛みを焼けるような熱で危険信号として発している。それでも


「ハァッ!」


もう一度張り付く喉頭を引き剥がし息を吸い、必死に願いを声にしようとする。声を発そうとした瞬間、少女の口から最初に零れたのは血塊だった。


「ゴボッ!ゲホッ!」


苦い鉄のような味と、焼けた空気と煙の味、どれもが一層に吐き気を催す割に意識を掻き消そうと襲いかかる。

それでも、一縷の望みに賭けたった一言を絞り出す。


「·····たす·····け·····て·····。」


聞こえたかどうかは分からない。だが少女は熱も痛みも耐え、口の中から下顎までもを赤に染めながら紡いだ。そのたった一言を。


「嬢ちゃん!俺が必ず助けてやる!名前は?」


届いていた。そして男も少女の下へ辿り着く。豪炎に壁が床が天井が、ひび割れながら今にも崩れ落ちるかのように叫んでいる。男は少女の正面に横たわる大柄の男を一瞬見やると奥歯を噛み鳴らした、が、直ぐに少女に目を向け抱き上げた。煙で汚れ、顔面にまで無数の傷を負い、髪も乱れたまま男は笑いかけ、少女の口元を分厚い傷だらけの手で拭う。


もう一度深く息を吸い、男の問いかけに答えたかった。だが、こんどこそ訪れた安堵は意識を連れ去ろうと少女の後ろ首を掴み確実に深淵へと引きずり込む。


「·····わ·····たし·····」


少女は朦朧とする意識の中、ひとつの疑念を不安を確かめたかった。


「·····わたし·····は」



____?



男の腕の中で金色の髪の少女は翠碧の瞳をゆっくりと閉じ



意識を失った。


※とても大事なお願いです。


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