村中、徒然。
「——おいおせぇぞ、レン! テメェもっとてきぱき運びやがれ!」
山の奥深くにぽつんと存在する、周囲を木々に囲まれた村の中。その小さな村の中で、巌のような身体をした男の叱責の声が響いた。
片目に傷を持ったその大男は腕を組み、声を荒らげて続ける。
「ただでさえお前は一本ずつしか運べねぇってのに……んなちんたらしたペースで運んでたら日ィ暮れちまうだろ! 聞いてんのか!? あぁ!?」
「…………」
レン、と呼ばれた少年は何も答えない。ただ黙って、身の丈ほどもある丸太を背負い運んでいる。しかし、その細い体躯にかかる負荷は相当なもので、息は乱れ、足腰はぶるぶると震えていた。滴り落ちた汗が地面に染みを作り、短い黒髪がべったりと肌に張り付いている。
「返事ぐらいしたらどうなんだよ!!」
「がぁっ……!」
怒鳴り声をあげるが早いか、男の繰り出した蹴りがレンの鳩尾を捉え、その身体を大きく吹き飛ばした。
衝撃で丸太を落とし、苦悶の声を漏らした少年は腹を押さえて蹲る。
嘔吐く声が聞こえたが、消化物が胃に入っていなかったのか、地面に吐瀉されたのは血と胃液だけだった。
「…………」
ひゅー、ひゅー、と息を漏らし、口端から滴る血を拭いつつ顔を上げた少年はしかし、腹を蹴られ血を吐いてなお、男を睨むだけでそれ以上に何か反応を見せることはなかった。
黒洞々たる瞳に宿した感情を窺い知ることはできない。そこにはただ、光を灯さないがらんどうとした闇だけが広がっている。
「……チッ、仕事は遅ぇ、ろくに反応もしねぇ。なんだってこんな奴と仕事しなきゃならねぇんだよ……」
先の巨漢がレンを睨みながら舌打ちし、毒づく。鍛え上げられた肉体を持つその男は、レンの背負う丸太と同等の大きさを持つそれを、一本、二本、三本と片肩に担ぎ運び出した。
「そう言ってやるなよ、ニル。俺達でさっさと仕事終わらせりゃ済む話じゃねぇか」
「そうだぁ。無駄口叩く余裕あんならおめぇもう一本担いでけぇ~」
周囲の仲間からニルと呼ばれた巨漢に諌止の声が飛んだ。見れば、その二人も丸太を両肩に一本ずつ担ぎ運んでいる。緑の鉢巻きを頭に巻いた男と、あご髭を生やした男。
ニルと比べてしまえば一回りほど身体は小さいが、それでも十分に屈強な身体の持ち主達だ。
「わかった、わかったよちくしょう……ああくそっ、腹立つなぁ……!」
心底気に食わないといった表情に顔を顰めたニルは、再度レンを睨み大きな舌打ちをした後、担ぐ丸太を数本追加しずかずかと足音を立て去って行った。
立ち上がり、服に付着した土を払い落とすレン。蹴りのダメージが大きいのか、微かに膝が震えていた。
「……おい、レン。おめぇ腹大丈夫か? 無理せんであとは俺達に任せて休んでていいぞ」
「かわいそうになぁ。何も腹蹴ってまで怒らんでもいいだろうによぉ」
助けてくれた二人が、心配そうにレンの顔を覗き込んだ。その声には同情の色が強く見て取れる。
「……ありがとう」
か細く掠れたその声はしかし、二人の耳にはしっかりと届いていたようで、
「気にすんな。逆におめぇのその体でよく頑張ってるもんだよ」
「まぁ確かに仕事のペースはちと遅ぇけどなぁ!」
笑いながら、その男達は体を弾ませ丸太を担ぎなおし、ニルの後について行った。
「…………」
レンもその背中を見送り、腹に手を当て少し身をかがめながら歩き出す。
頼りなくふらつく足取りととぼとぼ歩く後ろ姿が、情けない哀愁を漂わせていた。
2
「……クソ、痛ってぇ……!」
先ほど蹴られた痛みの引かない腹部に手を添え、ふらつく足でなんとか踏ん張り木の根元まで辿り着いた。呼吸のたびに骨が軋むせいで、息継ぎすらも苦痛に感じる。
「ニルの野郎、また思いっきり蹴りやがった……肋何本か逝ったんじゃねぇかこれ」
レンは木にもたれかかり、ずるずると幹に背中を擦りながら腰を下ろした。先ほど自分の腹を蹴り抜いた大男に向けて、小さく恨み言をこぼす。
「ゴウさんとモウさんには感謝しねぇと……。あの調子だと間違いなくあと三発は入れられてた」
ニルに暴力を振るわれたのは、これが初めてのことではない。というより、レンが今日のような力仕事をすることになった日は力自慢のニルも大抵そこに居合わせるため、毎度のように拳や足が飛んでくる。鳩尾を蹴られたとはいえ、あの二人に助けられたおかげで一撃のみで済んだ今回は、相当に運がよかったと言える。
目を瞑って落ち着きを取り戻せば、いくらか痛みも和らぐだろう。レンは腹部を優しくさすりながら深呼吸を試みる。
が、休息に入れたのも束の間、軽蔑混じりの笑い声が後方から聞こえてきた。
「——ねぇ、またあの子、あそこでサボってるわよ。ほら、あそこ」
「はぁ……。まったく、どうしてあいつはあんなにも役立たずなのかねぇ」
「力仕事ができなけりゃ炊事もろくにできない。そのくせ飯だけは食おうってんだから、いいご身分だよ本当に」
木にもたれるレンの後方、耳を刺したのは村の女達の話し声。果たして陰口を装っているのかいないのか、まるで隠そうともしない声量で話し合っている。軽蔑したような目で、話す口をわざとらしく手で隠しながら。
「…………」
直接的な危害はないとはいえ、こうも憚らずに侮辱されては流石に気分も悪くなる。
レンはため息を一つつき、未だ痛む腹に手を添えゆっくりと立ち上がる。そのまま彼女達の方を見ることもなく、逃げるようにその場を後にした。
人の目につかない森の中へ場所を移したレンは、再度木の根元に座り込み、改めて腰を落ち着けた。
湿った土の、そのひんやりとした感覚と草木の匂いを受け、先ほど吐いたものとは正反対の穏やかなため息が出る。自分を柔らかく包み込む開放的な自然を見上げながら、レンは安らぎを胸いっぱいに吸い込んだ。
森の悠然とした空気で肺を満たし、胸中に溜まった鬱憤を吐き出すように深呼吸を繰り返す。
何か嫌なことがあった時、レンはいつも決まってここに来る。
ここなら、誰にも虐げられることはないから。何にも怯えることはないから。
森の中でこうして自然に浸っている間だけは、少しだけ現実を忘れる事ができた。レンがいつの間にか植物を好むようになっていたのは、あるいはそれを現実逃避の手段として見ていたからなのかもしれない。
「いつまで続ければ、報われるんだろうな……」
何度目かのため息混じりに独り言ちるレン。思いを巡らせるのは村について。
村の連中から日常的に受ける迫害、浴びせられる讒謗。
力仕事に赴けば釣り合わない重労働を強制され、少しでも気に食わなければ殴られ蹴られ。
かといって女達に混じって炊事や洗濯の仕事をしても、教えられてもいないことや一人では到底こなせない量の仕事を命じられ、できなければ張り手や罵声が飛んでくる。
そして最後には決まって、蔑んだ冷ややかな目で見られるのだ。
その目は何よりも雄弁に敵意を語っている。「お前などいらない」と。「早く消えてしまえ」と。
——もう、うんざりだった。
寄って集って痛めつけてくる村の連中も、今を変える力も勇気も持っていない自分も。
生きているのは辛いけど、死ぬのは怖いからなんとなく生きている。そうして曖昧に浮かんでいるだけの現状は、果たして死んでいることと何が違うのか。
レンは地面に座り込んだ状態から仰向けに態勢を変える。視界の先には、上へ上へと伸びる木、空を覆う緑葉と、それらの間から零れる木漏れ日が広がっていた。
ぼんやりと眼前の光景を眺めているレンの脳裏に、ふと懐かしい記憶がこみ上げてきた。
懐かしく色褪せた、古い昔の記憶。
にこにこと笑う老婆と手を繋ぎ、その皺くちゃな手で頭を撫でられている。
かつて赤ん坊だったレンを育ててくれた、この村に住んでいた老婆だ。
いつも幸せそうに笑っている、とても元気な人だった。
レンはこの村で生まれた人間ではない。というのは、その老婆が教えてくれたこと。
レンの両親は王国の調査員として各地を旅しており、その中で赤子のレンを連れてこの村を訪れ、滞在することになった。
そんな折、両親は当時王国で問題になっていた流行り病に冒され、そのまま帰らぬ人になってしまった。だから、両親を失ったレンを自分が引き取り、女手一つで育てることにしたのだ。
——と、老婆が頭を撫でながら教えてくれたことを覚えている。
ほかの村人からは「よそ者の赤子を村で育てるなど」と反対されたそうだが、彼女はレンを我が子のように可愛がり、終生に渡って深い愛情を注ぎ続けた。
その老婆の没後は、先ほど助けてくれた双子であるゴウとモウが、何かとレンの世話を焼いてくれている。
『お前さんは誰かを助けられるような、強くてかっこいい男になりんさいよぉ』
『男の子なんだから、辛いことがあっても我慢して耐えなきゃいけんよ。怖がってもいい、泣いたっていいから、立ち向かうこと。何かを守るためなら尚更よ。ほれ、勇気が出るおまじないしよ』
レンは右手で胸を二度叩き、胸に手を当てながら笑ってみせる。
いつだったか老婆が教えてくれた、勇気が出るおまじないだ。生憎と、未だ効果のほどを実感できたことはないが。
その老婆には他にも色々な話を聞かせてもらった。
この世界でかつて起きた、竜と人間との戦争の話や、その戦争が終結した後に竜人が誕生した、という話。
今となってはレン自身、それは作り話だと理解しているが、子どもの頃はその手の話をされるたびに目を輝かせて聞き入り、何度も何度ももう一度とせがんだものだった。
思い出巡りに耽っていると、次第に柔らかな草の匂いと風に揺れる葉の音につられて、睡魔がすすと這い寄ってきた。どうせ村の仕事も休んでいるのだ、このまま眠ってしまうのもいいかもしれない。
眠気のせいか、腹部の痛みも先ほどと比べ随分とましなものになっている。
瞼の重みに抵抗することなく目を瞑ればそのうちにだんだんと思考も鈍り、レンの意識は深い暗闇の中へと落ちていった。
3
「……~い、レン……起き……。おい、起きろ~」
ゆっさゆっさと、体を左右に揺さぶられる感覚でレンは目を覚ました。
頭上から声が聞こえてくる。
「……こいつ眠ったふりしてるだけで本当は死んでるんじゃねぇのかぁ? ほら、胸の上で手ぇ組んでるしよぉ」
「死んでたら眠ったふりも何もできねぇだろ」
目を開けると、肩を掴んで横に揺らしてくるモウの姿が視界に映る。
その後ろでは、ゴウがこちらを覗き込んでいるのが見えた。
「……あれ、ゴウさんとモウさん、何をしにここに……?」
寝ぼけたレンの言葉に苦笑しながらゴウが答える。
「いや、お前が晩飯の時間になっても集会所に来ないから探しに来たんだけどな」
「……え?」
レンの口からとぼけた声が出た。続けざまに背中を冷たい汗が伝う。
首を回して辺りを見れば、先ほどまでの明るい緑あふれる光景とは打って変わって、日は沈み景色はすっかり夜に染まっていた。
「メシよそって食う前に探し始めたけど、だいぶ時間食っちまったから多分ほかの奴らは食い終わってるんじゃねぇかぁ?」
言いながらモウの腹が鳴る。その言葉を聞いた途端、レンは血の気が引くのを感じた。
夕食を食べる前にレンを探し始めたということは、つまりこの二人はわざわざ自分達の食事を差し置いて来たわけで。
ニルから助けてもらい、仕事を休ませてもらって。その上夕食の時間を割かせてまで自分のことを探す手間をかけさせたという事実に、目の前が暗くなる感覚を覚えた。
「ご、ごめんっ! ごめんなさい! お、俺……」
顔面蒼白の面持ちで頭を下げるレン。
老婆の死後、周囲から迫害され蔑まれ孤独に苛まれていたレンに手を差し伸べてくれたこの二人は、レンにとって唯一無二のかけがえのない存在だった。
常々世話になっている恩人にとんでもない迷惑をかけてしまった。思考が焦りと罪悪感で埋め尽くされていく。
「んん……。まぁ休めって言ったのも俺たちだしな。気にすんな」
頬をぽりぽりと掻きながら笑うゴウ。怒ってはいないようだが、だからといってレンの気が済むわけでもない。
「そんなことより早く戻ろうぜ。腹減ってしょうがねぇよぉ」
「おぉ、そうだな。レン、お前が好きな果物と肉も残しとけって言ってあるからな、食いっぱぐれたなんてことはないから安心しろ。そこはちゃんと感謝しろよ~?」
「……ありがとう」
屈託なく笑うゴウとモウ。
レンも二人に手を引かれて立ち上がり、三人は手を繋いでその場を後にした。
森の中から戻り、集会所まで歩いてやってきた三人。
「…………」
「…………」
「…………」
その三人の顔は今、暗く沈んだ表情をしていた。
それは集会所の中、食卓に並べられた盛り付け皿に、何も残っていなかったから。
ゴウとモウが言いつけておいたはずの、レンに残されている分の料理は、少量の残飯のようなものを除いて何もありはしなかった。
「あいつらは性懲りもせずにまた……」
「レンを虐めて何が楽しいんだっての……」
ゴウとモウが重いため息をつき、呆れと怒りの混じった声で呟く。
「でも、今回は休んで寝過ごした俺が悪いから……」
幸い、既によそってあるゴウとモウの分は無事だったが、残飯を集めたとしてもレンがありつけるのは一口にも満たない量だろう。
それでも仕方ないと諫めるレンに対して、しかし二人は引き下がらない。
「そんなもん蹴ったニルの野郎が悪いじゃねぇか」
「そうだよな、そもそもあいつが蹴ったのが悪いんだからよぉ。ごめんなぁレン……俺らもな、何度もやめろって言ってはいるんだがよぉ」
落ち込み、しゅんとするゴウとモウを見て、レンの心がちくりと痛んだ。大好きな人が落ち込んでいるのを見て、気を良くする人間などいないだろう。
二人のこんな顔は、見たくない。また一つ、気分が落ち込んだ。
「……よしっ、しょうがねぇ! レン、これ分けてやるから我慢してくれな!」
この場の空気をよくないと判断したのか、ゴウが手をパンとたたいて大げさなくらいに明るい声を出す。そのままの勢いで、ゴウはレンの皿に自分の取り分の肉をよそった。
「そうだな! 嫌なことは美味いもん食って忘れるのがいちばんだ!」
それに乗じて、モウも自分の皿に載った赤い果物をレンの皿におすそ分けしてくる。
その量もなかなかのもので、二人がくれた分だけでも普段の食事より少し多いかもしれない。
「……え!? いやいや、流石にこれは申し訳ないって! 俺は全然大丈夫だから……!」
「バカ野郎お前そんな量で体持つわけねぇだろうが! 食え!」
「せっかく俺たちが分けてやったんだ。奪い返されないうちに食っちまえ! ほら、美味ぇぞ!」
二人の勢いに押されて、返すに返せなくなったレン。申し訳なさそうに「……ごめん」と小さく呟いた。
「気にすんな。でも、いつかはお前も困ってる奴を助けられるような人間になるんだぞ? ……それが恩返しだ」
「謝る必要なんてねぇぞぉ。こういうのは『ありがとう』だけで十分だ」
穏やかに眦を下げ、満足げに笑うゴウとモウ。
「……いつかは、俺も……困ってる人を助けられるようになれるのかな……?」
「なれるさ、きっと」
優しく、ゴウがレンの頭をぽんぽんと撫でる。
そのごつごつとした大きな手を乗せられ、レンは再びいつかの老婆のことを思い出した。
もしかすると、この二人もかつてあの老婆に助けられていて。レンと同じように『人の役に立て』と教えられてきたからこそ、ここまで人に優しくできるのかもしれない。
——だからきっと、自分だって。
心地よい重量感を頭に感じながら、レンはそんなことを考えた。
帰宅後、自宅にて。
「ふぃ~、気持ちよかった~……」
「レンも風呂入っちまった方がいいぞぉ~。あ、腹は大丈夫なのかぁ?」
「え? あぁ、うん。痛みはだいぶ引いたかな」
集会所から家に帰り、浴室から風呂を済ませたゴウとモウが出てきた。
老婆の死後は、大きな家で一人暮らしは寂しかろうと、ゴウとモウが一緒に過ごしてくれるようになった。三人で住んでもなお余りある、ちっぽけなこの村には不釣り合いなほどに大きな家だが、三人暮らしということもあって寂しさはない。
ゴウとモウは熱い風呂が好きなのでいつも焚き抜けで入浴しているが、レンは熱い風呂が苦手なので、二人の入浴後に入ることにしていた。
風呂から上がったレンは、外に出ての夜風涼みもそこそこに、少し早めに床に就くことにした。
腹部の痛みもほとんど引いており、強く押しでもしなければ痛みが走ることもない。どうやら大事はなかったようだ。
布団を被り目を瞑る。身体の力を抜いて耳を立てれば、夜の涼やかな風が草をなでる音に乗り、虫の声がチリリリ、チリリリと耳に入る。その音に身と心を預ければ、そう時も経たずして睡魔が首をもたげはじめた。
息を吐くたび布団に沈む体を他所に、レンの意識は深く深く、どこまでも続く夜の闇へと沈んでいった。
4
「……げろ! はや……逃げ――!」
「あっちだ! 逃げ……げ急げ! 早くッ‼」
未だ空が夜闇に支配された深夜、普段ならば皆寝静まっているであろうその時間に、外から聞こえてくるけたたましい叫び声でレンは目を覚ました。
睡眠から強制的に起こされた落差で、体が鉛のように重く感じる。半覚醒の頭の中で先ほど聞こえた悲鳴が反響し、状況が頭に入ってこない。
体を起こし、寝ぼけ眼を擦りながら玄関の方に目をやると、何やら外がやけに明るいことに気が付いた。
月明り由来のものではない。
あれは——火だ。
「逃げろ! 早く、早く逃げろっ!!」
「急げ、あっちだ! 早く!」
ようやく聞き取れるようになった外からの声には、避難を促す叫び声の他にも、つんざくような女の悲鳴や鬼気迫る怒号も交じっていた。
眠いなどと呆けたことを言っている場合ではない。慌てて外に転がり出る。
果たして、そこでレンの目に飛び込んできたものは——、
「なんだ、これ……!?」
日常が、音を立てて崩壊する瞬間だった。




