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妹の出産

 妹のヤエが出産した。オレは確かに赤ちゃんが泣いているのを聞いた。オレとお父さんとお母さんは、しばらくその赤ちゃんの声を聞いていた。部屋に入ると妹のヤエはベッドの上で横になりながら赤ちゃんを撫でて見つめている。その表情は笑顔だった。そばで立っている看護師も笑顔だった。オレとお父さんとお母さんはイスに座る。オレは笑顔で幸せそうな妹のヤエにとりあえずおめでとうと言った。お父さんとお母さんも作ったような笑顔でおめでとうとヤエに言う。赤ちゃんの名前はミユと決まった。オレは半分安心したのと半分怒りがこみ上げている。本当ならば、ここに妹のヤエの旦那がいるはずだ。居ない。お父さんとお母さんは笑顔で赤ちゃんの名前を呼んでいる。オレと妹のヤエの視線が合った。妹のヤエは目に涙がたまっていた。オレはその涙の理由がわからない。妹のヤエはオレに笑顔を向ける。その時に妹のヤエの目から涙がひとすじ。オレも笑顔を妹のヤエに向ける。すると妹はこう言った。

「お兄ちゃん、私頑張ったよ」

 そのヤエの一言にオレは何も言えなかった。ただ笑顔を妹のヤエに向けることだけしか出来なかった。

 妹のヤエはミユの母として家に帰ってきた。オレは妹の旦那が憎いと思っている。実は妹のヤエが妊娠時にその旦那が逃げたのだ。オレはそのことを考えては怒りがこみ上げている。お父さんとお母さんは赤ちゃんのミユにいろいろ笑顔で話しかけている。オレは妹のヤエにこう言った。

「何かあったらオレに言ってくれ。オレはヤエの味方だからな」

「どうしたの? お兄ちゃん」

 妹のヤエがクスクスと笑っている。オレに言えることはそれだけだ。オレは赤ちゃんのミユの顔をじっと見つめる。どうしても、妹の旦那が憎いと思う。なんで逃げたんだよ。オレと妹のヤエは、お父さんとお母さんにミユの子守りをお願いして、オレの部屋に二人入る。

「お兄ちゃん? どうしたの? そんなに怖い顔をしてさ?」

「あっ、悪い。ちょっと考えごとをしていたよ」

 妹のヤエはまたクスクスと笑っている。オレは自分を落ち着かせようと、なるべく逃げた男のことは考えないようにする。これから、オレと妹のヤエと赤ちゃんのミユ、両親と五人で暮らすことになった。

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