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守りたいもの…

作者: 翅桜
掲載日:2009/04/12

どうして

どうして

どうして

どうして…?


どうしてこんな事になってしまったの?

私の右手はもう空っぽで。

ねぇ、お願いだから目を覚まして―――…




「おそーい。」

「わりぃ!」

遅刻魔の朔《さく》は、その日もやっぱり遅れてきた。

セットした髪も乱れるくらいに走って来た朔は、もうし訳なさそうにいつも謝る。

「しょうがないなぁ。」

いつも朔のペースに巻き込まれる。


「ありがとう。」


そう言って、私の右手をとって握ってくれる。

私が話して、朔が聞いてくれて。

そんな然り気無い優しさも大好きだった。


「暎《あき》。」

「屋上行こっ。」

昼休み、手を繋いで屋上に行く。

冷たい風が私と朔の頬を撫でる。

「はい、お弁当。」

いつも朔のお弁当は私が作っていた。

「おぉ、サンキュ。」

満面の笑みで、美味しそうに食べてくれる朔を見ると自然と笑顔になれた。

「今日、ミーティングだけだし、一緒に帰ろ。」

部活で遅い朔とは、たまにしか一緒に帰れないけど、朔は私が寂しくないようにその分一緒にいてくれた。

「うん、教室で待ってるね。」



ポツリと窓に雨があたる。

「雨…?」

傘なんて持ってない。

そう思いながらでも、朔と帰る事ができると思うと嫌でもなかった。

「暎。」

教室のドアから朔は手を出した。

その手をとり、繋いだ。


傘はなく、二人で走った。

「あ、おい!」

朔の手を離し、走った。

「サッカー部!捕まえてみなさい!」

「なめんなよっ!」

軽い追いかけっこをした。


「っ!?暎!」

「…へ?っ!!」

朔の声で、驚いて立ち止まると眩しくて目がくらんだ。

車が猛スピードで走ってくる。

ヤバい。

そう思ったときには体が動かなかった。


その時、強い力で抱き締められた。


ガンッ


鈍い音と、衝撃を感じる。

強く体を地面に打ち付ける。


ゆっくり目を開けると朔が私に覆い被さっていた。

「朔…?」

「だ、い…じょ…う、ぶか…?」

「っ、朔血がっ!私は大丈夫だから、!」

朔は走って、私を抱き締めかばってくれていた。

素人でも分かる酷い怪我で。

それでも、私が大丈夫だと分かると朔は嬉しそうに笑った。

「大丈夫ですか!?」

運転手が走り寄ってくる。

「救急車っ、救急車呼んでください!」


動揺する私の腕を朔は強く掴んだ。

「朔!」

大丈夫だから、そう言うように朔は笑った。

「やだよ、朔…。傍にいてよ…。いやだ…、嫌だぁ!」

涙がとまらない。

私は覆い被さる朔を押し上げ、座り込んだ。

今度は私が朔を抱き締める。

朔は私の涙をあまり自由のきかない手で拭いた。

「朔っ、朔!さ、く…、さく…。」

「      」


朔の口が微かに動く。


「朔?聞こえないよ。」

「      」


朔の口に耳を近づけた。

言い終わると、手が地面に落ちた。

「さ、く?」

軽く揺すっても反応は無くて。


「いやぁぁぁああ!!」





朔にそっと触れるといつもの暖かさはなくて。

「さく…。」

呼びかけても、私を見てくれなくて。

「あきちゃん。」

朔のお母さんに肩を叩かれる。

「これ、朔のポケットに入ってたの。」

朔のお母さんは私に小さな箱を渡した。

事故で汚れた箱をゆっくり開けた。


指輪―――…


それは、ずっと前から私が欲しいと言っていた指輪で。

指輪には、『AKI&SAKU』と彫られていた。

「さ…く…。朔、朔、朔…!!」

涙が溢れてくる。

冷たい朔の手を握る。

「あ、きちゃん!」

朔のお母さんは私を抱きしめた。

「ご、めん…な、さい!私のせいで朔はっ!」


朔のお母さんは更に強く私を抱きしめた。

「貴女のせいじゃない。だって朔は貴女と出会えて、とても幸せそうだったもの。」

涙で震えた声は、力強かった。

「いつも貴女の事を話すときは嬉しそうで、楽しそうで…。

朔は貴女のことを最後に守れて、嬉しかったに決まってるわ…。」

私を抱きしめる腕は震えていた。

「貴女は、朔の分も幸せに生きてちょうだい。

お願いよ……。」

「…は、い…――。」



ねぇ、朔。

私は朔という貴方に出会えて幸せだったよ。

さり気無い優しさも、ぜんぶ、ぜんぶ好きでした。

まだまだ話し足りないよ…。

朔に話したいこと、いっぱいあるんだよ…。

朔のお母さんに言われたとおり、私は朔に助けてもらったこの人生を

精一杯生きるね?

それで、そっちに行くときは楽しい思い出をいっぱい持っていくから、

待っててね…。


朔、いっぱい、いっぱいありがとう。




最後に力を振り絞って言ってくれた言葉。

ちゃんと聞こえたよ…


        




           「―――…あき、愛してる…」



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― 新着の感想 ―
[一言] 書き方や、間の取り方がとてもいいです。もうちょっと先も、気になってしまうくらいです。 これからも執筆をがんばって下さい。 お粗末ながら、緋桜 閏でした。 よろしければ、検…
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