少女は闇夜に消える
更新は気まぐれです
この世界はいつも残酷だ。
悪い人が得をしていい人が損をする。
なんなら私だって悪いことをして得をするわ。
だって目の前には両親の亡骸が転がっているから...。
これで何度目だろう?
両親が殺される夢を見たのは。
はぁ、と溜息を出して体を起こす。
「まだ...2時なんだ」
少女は呟く。
そしてある事を思い出す。
私はある日この精神科に連れてこられた。
最初はなんで連れてこられたのかは分からなかったけど目の前には警察官と医者と看護師。
でも、覚えてるのはそこだけ。
なんで私はここに居るの?
「こんな場所にいちゃダメ。早く逃げないと...」
その瞬間、少女は病室を抜け出した。
寝静まった病院で響くのは少女の足音だけ。
ごめんなさい、私はこんな場所にいちゃダメなの。
「表口はやっぱり人居るよね…。警備室の裏口からなら逃げれるかも」
少女は音を立てないよに裏口に回る。
よかった、警備員はパトロール中で居ない。
裏口のドアを開けると少女は夜の街へと消えていった。
「っ...はぁはぁ...」
痛い。
裸足のせいで地面を蹴る足が痛む。
行く宛もなく永遠にさ迷うことは決まってるんだから野垂れ死にもいいかもしれない。そう考えた時だった。
ーグチャー
と生々しい音が路地裏から聞こえた。
それも何回も聞こえてくる音。
恐る恐る路地裏を覗くと女性と思わしき人が倒れてるのが分かった。
「っ...!」
慌てて口を塞ぐも遅かったらしい。
ピエロの仮面を被った人が近づいてくる。
1歩ずつゆっくりと。
足がまるで凍ったと思うまま動かない。
「見たな?」
「っあ...み...」
声が出ない。
やだ。
怖いよ。
お願い殺さないで。
「...お前俺が怖くねぇのか?」
えっ?
気がついた...私泣いてない。
なんで泣いてないんだろう。
怖いのに。
「物珍しい奴だな。嬢ちゃん家は?」
呆気にとられる。
この人本当に人を殺したの?
なんで平然として喋ってられるのかな。
「家...ない」
「ほーん。じゃあさ俺と一緒に逃げようか!俺が捕まったあとの人生は嬢ちゃんが決めてさ」
なにそれ。
私を連れてに逃げ回る気なの?
でも、家もないし病院から逃げてきた。
だからこの人の傍にいてもいいかな。
「ついて行きます」
「そう来なくっちゃな」
ピエロの仮面を被った男性と思わしき人は血濡れた手で私の手を握って夜の街を歩き始める。
血濡れてるのに暖かい。
人間の温度だ。
この人の傍に居れば多少は暮らしていけそう。
この日を境に少女の運命は大きく動き始める。
少女と男性を見つめていたのは満月の月だけだった。