表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

桜花の秘密

前回の続きなので少し短めです。

「桜花さんは普段は剣ですが、人の姿にもなれるのです。その理由は桜花さんは昔は人だったからです」


「人が剣になるのか?」


「誰でもできることではないですが桜花さんを作った人、桜さんが特殊だったのです。桜さんは拓斗さんと同じ世界から来ました。そして桜さんは武器、特に剣を作るのに長けていたのです。魔法がまだ栄えていないときだったので桜さんは武器を作りながら生きていき、やがて結婚、子供が生まれました。その子供が桜花さんです。しかし魔法が使われるようになり、代わりに剣が使われなくなってきたころにある事件が起こり、桜花さんは桜さんが作った剣で殺されてしまうのです。悲しんだ桜さんは命と引き換えに桜花さんの遺体を使って剣を作りました。それが今の桜花さんです」


「うーん、なんだか重要な部分が抜けている気がするが、桜花を渡された時の言葉の意味もなんとなく分かった気がする」


「『この剣は心優しき人に渡してくれ』ですね。拓斗さんはむやみに人を殺すことはしないと思ったからです……たとえ桜花さんの力が強力なものだとしても」


 レティシアの最後の言葉はかなり小声だったが、部屋がそれほど広くないので聞こえた。レティシアにとっては聞こえないと思ったのだろうが。


「ん?桜花はなんの能力もないと言っていたが?」


「あ……そ、そうですね。剣が人になることを隠していたのでそういったのです。もし剣が人になったらみなさん驚くじゃないですか」


「まあ確かにな。そういえば桜花を誰かに渡そうとしたら弾かれるんだがなぜだか知っているか?」


「それは桜花さんからお願いします」


 レティシアが桜花の方を見て言った。俺も桜花の方を見るとあくびをしていて、急に話を振られたせいか慌てていた。


「あ……えーと、何の話でしたっけ?」


「桜花さんが拓斗さん以外の人に渡そうとしたら弾かれる理由ですよ」


「あ、それはだな……」


 桜花は顔を赤くしながらそっぽを向いてしまった。何か答えたくないのだろうか?


「桜花さんが答えないのなら私が答えてあげましょう。弾かれる理由は拓斗さん以外の人に触られたくないからです」


「いうなバカー!」


 桜花がレティシアをぽかぽか叩いている。こうして見ると桜花があの刀のようには見えない。


「更に桜花さんはあの事件のせいで人間不信なところもあるのですが、拓斗さんには心を開いているということにもなります」


 レティシアがそういった瞬間、叩いていた桜花は崩れ落ちていった。とどめを刺されたようだ。今にも泣き出しそうな顔をしている。


「なんでそこまで言うんだよ……」


「私がせっかく隠していたことをばらしてしまうからですよ。これでおあいこです」


 桜花の姿を見てなぜか勝ち誇った顔をしているレティシア。意外と根に持つタイプなのかもしれない。


「そういうことなら仕方がないが、せめて妹の美咲には持たせてやってもいいんじゃないか?」


「……拓斗がそう言うなら美咲が持ってもいい」


「だってさ美咲」


 美咲の方を見てみると美咲はベッドの上で寝てしまっていた。なかなか話に参加してこないなと思っていたが。しかしこのままだと風邪をひいてしまうのできちんと布団をかけてやらないと。


「おやおや、美咲さんは寝てしまいましたか。拓斗さんが亡くなって色々あった中、異世界に来たので疲れたのでしょう」


「そうだな、桜花のことは追々聞かせてもらおう。そういえば桜花は寝るのか?」


「そりゃもちろん寝るよ。人間だもの」


 有名な詩人のセリフを知っているのだろうか。こういう姿を見てしまったせいか刀という物ではなく一人の人間なんだと認識された。


「ということは人間の姿でだよな。だがベッドが二つしかないし今から美咲のベッドに桜花を入れるのは悪いから……桜花はもう一つのベッドで寝てくれ。俺は椅子で寝る」


「え、そんなことしなくても一緒に寝ればいいじゃん」


「は?こんな狭いベッドで二人は厳しいだろ」


「私はその……ち、ちっちゃいから大丈夫だよ」


「おお、桜花さんが自分のこと小さいと認めましたよ。いつも『小っちゃくない!』言って認めてないぐふっ」


 ベッドに座っていたはずの桜花がいつの間にレティシアの前にいて腹パンをした。音がしなかった、つまり衝撃のすべてを受けたということ。もしくは形式的に、かもしれない。レティシアがうつ伏せに倒れ、動かなくなっている。


「あんな駄女神ほおっておいて寝ましょ」


「わかった。桜花がそういうなら一緒に寝るとしよう」


 レティシアがこちらを助けを求めるよう見ていたが無視することにした。そしてすぐにレティシアの姿が消えた。たぶん戻ったのだろう。


「さすがにちょっと狭いが大丈夫そうだな」


「うん、私は大丈夫。じゃあ明かりを消すね」


 桜花は魔法を使ったのか明かりが消えた。異世界に来て色々あったせいか俺もすぐに寝てしまった。


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ