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決闘

「ちょっと待ってくださいジークさん、タクトさんは魔法が使えないのにCランクのギドーさんと戦うのですか?」


「どっちみちどのくらい戦えるか見るんだし、二人とも戦う気満々だからちょうどいいじゃないか。俺もそのタクトってやつ気になるしな」


 ニーナさんと一緒に来た人はジークと言う名前でからんできた奴はギドーと言うらしい。ランクのことを聞いていないのでCランクがどのくらい強いかわからないがまあ大丈夫だろう。しかしジークは何故俺のこと気になるんだろうか?


「それじゃ訓練場に行くとするか。俺はギドーを連れて行くからニーナはタクトを連れて行っていくれ。その道中で決闘について説明してやれ」


「わ、わかりました」


 ジークはネコを持ち上げるかのようにギドーの背中を片手で持ち上げてギルドを出て行った。やっぱり力はあるんだな。


「ユートさん、本当に決闘をするんですか?」


「決闘がどんなものか知らないけど美咲に手を出そうとしたんだからお返ししないと」


「では説明しますのでその後でも拒否することはできますからね。決闘とは魔導師同士で何か問題があった時に話し合って解説できなかったときに戦って解決する方法です。勝った者が負けた者の言うことを聞く、というわけではないですが決闘前に相手に勝った場合の要求を言うのです。例えばタクトさんの場合だと勝ったら美咲さんに謝れ、とかですね」


「それってどんなことでもいいの?」


「審判が両者公平だと判断しないとだめですし、両者の同意がないとだめですね。先ほどのタクトさんの命令に対しギドーさんの命令が奴隷になれだと公平ではないですし、タクトさんもそれは嫌ですよね」


「確かにどれだと釣り合わないな。それで決闘はどのように行うんだ」


「両者離れて審判の合図の後、相手に魔法でも何でも1発当てれば勝ちです。もちろん魔法障壁がありますので怪我をすることはありません」


「剣道みたいなものかな。弱くても当たればいいの?」


「けんどうと言うものがどんなものかわかりませんが、怪我をするくらいの威力でないと勝ちにはなりません。すごく小さな炎が靴にあたったとしても勝ちにならないと言うことです」


 剣道とほぼ同じだな。防具にあたったとしてもそれが1本になるとは限らない。判定も審判か魔法障壁がするのだろう。


「後は危険な魔法や会場にいるほかの皆さんに影響がある魔法を使ったりすると反則になります。その辺はタクトさんは魔法が使えないので大丈夫だと思いますが」


「これを使うには問題はない?」


 俺は腰につけている桜花を指さした。もしこれが使えないとなると素手で戦うことになるが。


「大丈夫ですよ。今は剣を使う人はいませんが、魔法を使う方で魔法書や杖を使う方もいますので。たまに杖で相手を叩いて勝った人もいるくらいですから。着きましたよ。ここが訓練場です」


 訓練場はコロッセオのような見た目だが大きさは体育館を少し大きく、丸くした感じだ。


「では待機室まで案内します。手続きが終わり次第決闘が始まりますのでお待ちください」


 待機室に案内され入ると、木でできた椅子と小さな机があり、広さはそれなりにある。およそ12畳くらいか。


「お兄ちゃん、さっきのギドーって人に何を要求するの?」


「それはもちろん美咲に近づくな、だよ」


「でも負けたら私たちが何か要求されるんだよね」


「負けないから大丈夫だ。しかし魔法がどのようなものかまだ見ていないし、Cランクがどのくらいできるのか気になるな。よし、レティシアに聞いてみるか。おいレティシア」


 困った時の神頼みということでレティシアを呼んでみる。今は部屋にいるし誰かに見られることはないだろう。聞かれる可能性はあるが。


「はーい、意外と女神使いが荒いですね。でも全く呼ばれないよりはいいですけど」


 なぜか俺たちの目の前にレティシアが現れた。声だけではなかったのか?


「おい、なんで目の前にいるんだ?念話しかできないって言ってなかったか?」


「あれ?そんなこと言いましたっけ?確かに念話の方がいつでもできますがお二人だけの時は姿を現しても大丈夫ですよね」


「もしこの部屋に誰か入ってきたらどうするんだ?」


「それは大丈夫です。お二人にしか見えていませんから」


 そういうことが出来るならなぜ森の中ではなぜ念話だったのだろう。というより絶対声だけと言っていた。


「まあいいや。Cランクってどのくらい強いんだ?」


「そうですね……まずランクの話をしますと、魔導師登録をした時点でFランクです。そこから依頼を受けてランクを上げていきます。それでCランクですと一つ下のランク、Dランク50人が攻めてきても一つの魔法で倒せるくらいですね」


 その説明だとDランクがどのくらい強いのかわからないと意味ないと思うが。とりあえずかなり強いと言うことだけ分かった。


「それで俺はあいつに負ける可能性は?」


「ないと思います。ただしうまく使えればの話ですが」


「桜花のことか?」


「いえ、桜花のことではないですし念話だと説明しづらいのでわざわざ姿を現したのですよ。それでは説明しますね――――――」




『決闘の準備ができましたので決闘者は中にお入りください』


 ニーナさんとは違った女性の声がどこからか聞こえてきた。魔法で声を届けているのだろうか?それと同時に扉が開きニーナさんが入って来た。


「ではタクトさん。案内しますので付いてきてください。ミサキさんも付いてきてもいいですが入口の内側で待機することになりますよ」


「少しでもお兄ちゃんの近くにいたいので付いていきます」


 ニーナさんに付いていき、訓練場の中、と言っても床がグラウンドのように土で覆われていた。すでにギドーとジークがいたので早歩きで中に入る。ミサキは入口近くからこちらを見ている。ニーナさん曰く訓練場の中にも魔法障壁が貼られているので安全らしい。そして訓練場の中の周りには観客がいた。ちょっとした野球場のようだ。ギドーの前、少し離れたところに立つとジークが何やら金属のようなものでできた伝瓶を出した。


「では両者そろったので要求の確認をする。まずはギドー」


「お前が俺の前で土下座しながら『私は魔法が使えないゴミです』と言え」


「では次にタクト」


「俺は二度と美咲の前に出てこないで欲しい」


「両者ともにその要求で異議はないか?」


「ねーよ」


「ないです」


 そういうとジークが持っていた天秤がほのかに光った。一体何なんだろう。


「ではこれから決闘を始める。すでにルールを聞いていると思うから大事なところだけ。相手に魔法でも武器でも体のどこかでも1発当てたら勝利とする。また審判の判断で危険、反則だと判断された場合そのものは失格、負けとする」


「いいからさっさとやろうぜ」


「では両者ともに……始め!」


『大いなる炎の――――――』


「そこまで!勝者、タクト」


 ギドーが始まるやいなや魔法を発動させるための詠唱を始めたが発動する前に俺の桜花がギドーの首近くで止まっていた。それを見たジークは驚きもせず勝者を宣言し、その声にやっとどういう状況か気付いたギドーは目を見開いたまま崩れ落ちた。



 なぜ勝てたかと言うと、話は待機室まで戻って


「ユートさんは魔法が使えませんがスキルを使うことが出来ます」


「スキルって毒無効とか職のことか」


「そうですね。そういうものもありますがユートさんのスキルは技と言った方がいいかもしれません。ユートさんには『縮地』、『空歩』、『剛力』があります。まず縮地は目に見える範囲の場所にならすぐに行くことが出来ます。空歩は地面がないところも歩くことが出来ます。剛力は力をためる時間に比例して強い力を発揮することが出来ます」


「縮地っていうのはいわゆるワープか?」


「いえ、もし行きたい場所とタクトさんがいる間に障害物がある場合、たとえば壁ですね、壁の手前で止まります。もっと簡単にいいますとすごく早く走ることが出来ると思ってください。走るときに壁があったら止まらないといけないですよね」


「それって障害物がないとするとどこまでも行けるの?」


「はい、直線でないとだめ、と先ほどのように障害物があるとだめですが制限はありません。もちろん上にも行けますよ」


「上だと行った後落ちるだけじゃ……ああ、それで空歩があるのか」


「はい、空歩は踏み込めば空でも歩けるのです。ただ立つことはできません。なので歩くと言うよりジャンプし続ける感じですね」


 立ち止まることなく動き続ければいいのだろう。止まった瞬間落下するとなるとかなり怖いが。なので決闘では使わない方がいいだろう。練習やどういった条件など調べてから使うとしよう。


「それで剛力は力を貯める時間が長いほど2倍、3倍といったようにいつも以上の力を発揮することが出来ます。力を入れる前では壊せなかったものも簡単に壊せるようになったりしますよ」


「今回の決闘だと当てればいいだけだから剛力は必要ないな。この中だと縮地だな。ちょっと試してもいい?」


「はい、もし障害物があっても障害物の前で止まるのでぶつかることはありませんので安心してください。イメージで発動しますのでタクトさんがわかりやすいイメージでやってみるといいですよ。もちろん行きたい場所は目で見ていてくださいね」


 俺は机と椅子を壁に寄せて窓際からドアの手前まで縮地を使ってみる。大体5メートルあるかないかで普通に歩いて3秒くらいで行けるが。ドアの前を見ながら頭の中で『縮地』と言ってみる。すると一瞬でドアの前にいた。走った感覚はなく全く疲れていない。


「今回は短い距離なので凄さを実感できないかもしれませんが、障害物さえなければ敵の前まですぐに行くことが出来ますよ」


「これは慣れればかなり使えるな。ありがとう、レティシア」


「いえいえ、魔法が使えないタクトさんへのサービスです」


「でもなんで今になってスキルのことについて教えてくれたんだ」


「それはそのー……忘れていました。神様に言われて気づいた時にちょうどタクトさんから呼ばれたので」


「……ほかにまだいっていないことはないよな」


 俺はレティシアをジト目で見ながら言う。レティシアは俺に目を合わさないまま


「それはないと思います。神様にも『スキルのこと言い忘れておるぞ。さっさと伝えてこい』と言われただけですので」


 たぶん神様はレティシアの上司のようなものだろうな。その神様もスキルのことだけ言ったのだから大丈夫だろう。


 

 ということがあって俺は開始と同時に縮地を使いギドーの首に桜花を当てたのだ。説明にはなかったが縮地が発動している間に桜花を出すこともできたのでギドーの横に着くと同時に当てることもできた。

 俺が桜花を鞘に戻したところでジークがあの天秤を持って近づいてきた。


「さすがだな、タクト。これでお前の要求通りギドーはお前さんの妹、ミサキに近づくことはできない」


「どうやって近づかせることが出来なくなるんですか?」


「ん?ニーナから聞いていないのか?この天秤は魔法具でな。勝った者の要求を魔法で実行させるんだ。今回だと決まった距離内に入れないようになるな」


「かなりすごいものですね」


「ああ、だが絶対実行されるから決闘の時には必要なんだ」


 そんなことを話していたらギドーがやっと立ち上がって


「こ、こいつは反則をしたんだ。そうじゃないと魔法が使えないやつが俺に勝てるわけがない!」


「魔法が使えないやつがどう反則したか逆に聞きたいな、ギドー」


「そ、それはあいつだ。お前の妹が何かやったんだ。あんな近くにいるから何かやったんだろう!」


「ここには障壁が貼ってあるから外から魔法は使うことはできない。しかしそんなことを考えるよりこの後のこと考えたほうがいいぞ」


「こ、この後って?」


「ギドー、お前は魔導師資格剥奪だ。お前が撃とうとしていた魔法は反則級の魔法だぞ。お前は魔導師としての資格はない!」


「そんな……そしたら俺どうやって生きていけば……」


「だからそれを考えろって言っているんだ」


 ギドーは再び崩れ落ちた。それをジークが片手で持ち上げ


「これで決闘を終わりにする。タクトとミサキはニーナと一緒にギルドの俺の部屋に来てくれ。おいニーナ、もう一度案内を頼む」


「わかりました!」


 ニーナさんが美咲と一緒にこちらの方に来た。何とか決闘に勝ち、ギドーは美咲に近づくことはできなくなった。しかしジークは一体どんな人なんだ。ニーナさんに命令しているから上司だとは思うが。とりあえずギルドに戻るとしよう。




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