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交換留学の案内
「交換留学?」
「そうだ、お前、興味ないか?海外の高校。今年はうちが生徒を留学させる番でさ。期間は半年なんだけど」
もうすぐ高校1年の終わりの3月1日、暖房の効いた職員室。
担任の安村は汗ばんだ禿げ頭をハンカチで拭いながらそう提案してきた。
「なんで俺、なんすか?」
「いやそりゃだってお前、あれだろ? 今学校楽しくないだろ?」
「そっすね」
部活も入ってない。友達らしい友達は一人としていない。
むしろいじめに近い迫害はクラスの数人から受けている。
「将来のやりたい事の欄で希望の大学も職業も書いてないし、それなら、環境を変えたらどうかと思ったんだよな」
「そっすね」
テストの成績も下の下。
行きたい大学もない、やりたい仕事もない
こんな問題がある生徒は教室に居たら教師としては面倒この上ない。
問題児・水上真樹也みかみ まきやは、交換留学に適任って判断したわけだ。
「検討してみます」
「うん、3学期の終わりまで待つから、気が向いたら連絡してくれ」
安村は溜め息をつきながら他の生徒の資料に目を向けた。
俺はウィンドブレーカーを着直して、職員室を出た。