表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

百均店長、なんとかボアを売りに行く。

テルさんが狩った【なんとかボア】を売るには誰かに聞くのが一番なんだけど、誰に尋ねれば良いのやら。取りあえず通りがかりの人に聞いてみよう。優しそうな人が良いな。うん。



などと考えていると、いかにも好々爺然とした印象のお爺さんがいたので尋ねてみる事にした。



「すみません、魔物を買い取ってくれる所ってこの辺りにありますか?」



「魔物の買取かい?ならそこの角のアツィオ精肉店でやってるんじゃないかな。」



「アツィオ精肉店ですね。有難うございました。」



礼を言って教えてもらった方の角を目指す。すると数十メートル程で【アツィオ精肉店】と書かれた看板を見つけることが出来た。ってか、どうして異世界の文字が読めるんだろう。テンプレっちゃテンプレなんだろうけど後でテルさんに聞いてみよう。そんな事を考えながらアツィオ精肉店の扉を開いた。



「こんにちは!此方で魔物の買い取りをして頂けると聞いて来たのですが。」



カウンターに誰も居なかったので大きめの声で尋ねてみた。すると奥からいかにもな感じの髭マッチョなおっさんが出て来た。どうやら店主らしい。店主らしいおっさんはニコリともせずぶっきらぼうにこう言った。



「買い取かい?ウチは初めての客の持ち込みはあまり扱わないんだが・・。まぁ、モノが良ければ買い取らない事も無いな。で、モノは何なんだい?」



初対面なのに結構なタメ口だな。これもテンプレかな。



「なんて魔物だったかな。テルさん、なんだったっけ。」



「ワシも思い出せんでのう。なんとかボアじゃったとは思うんじゃが。」



「おいおい、しっかりしてくれよ。猪型の魔物なんだろうが種類で金額は違うんだからよ。それなら実際に持ってきて貰わんと査定も出来ねえじゃねえか。」



「いえ、持って来てはいるんです。テルさん、あれって出す時はどうやんの?」



「収納する時と同じじゃ。手をかざして念じれば良い。じゃが此処の広さじゃあれは無理じゃぞい。ご主人、何処かもっと広い場所はあるかの。」



「なら、裏の解体用のスペースがあるからこっちに来な。で、モノは何処にあるんだい。取りに行くなら早めにしてくれよ。こっちも暇じゃないんでな。」



「えっと、魔物は収納魔法で持って来てるんで、出せる場所まで案内して頂けますか。」



「へえ、収納魔法たぁ珍しいな。まぁいい。こっちだ。」



店主に促され、俺とテルさんはその後に続いた。



「ほら、ここなら良いだろう。どんな大物か知らんがさっさと出してくれ。」



「分かりました。」



俺はテルさんに言われた通り手をかざし、なんとかボアが出るように念じた。が、出てこない。収納する時は簡単に出来たのに、出す時は何かコツが居るのか?ちょっと慌ててテルさんの方を見る。すると、



「なんでえ、冷やかしならお断りだぜ!ったく暇じゃないって言ったよな!」



俺がもたもたしてると店主のおっさんが怒りだした。そりゃ当然だよな。飛び込みで来て買い取りを頼んでおいてモノが出て来ないじゃ俺だって怒るよ。このおっさん程じゃないにしても。



俺が焦っていると、テルさんはあご髭を触り何か考えるような素振りをすると「ふむ」と小さく呟いた。そして俺に向かってこう言った。



「ジローよ、念じるだけではイメージが湧かんのかも知れんの。何でもええから出すというイメージがしやすい言葉を唱えてみるんじゃ。」



「出すイメージの言葉・・ねえ。出ろ?アウト?プット・・・テイク・・・なんか違うな。えーと。」



言葉を選ぶのに色々考えたけど、中々イメージに合わない・・・。悩んでいたら何となく口から一つの単語が出てきた。


「リリース」


俺がそう唱えると淡い光とともになんとかボアが解体作業場に出現した。良かった、これで店主のおっさんにこれ以上怒られなくて済むよ。そんな事を考えながら店主のおっさんの方を見ると何故か無言でフリーズしている。よく見るとわなわなと肩が震えているようだ。もしかして激怒のあまり言葉を失ってらっしゃる?大した魔物じゃなかったのかな。一応謝っておいた方が良いかもな。



「えーと、すみません。無理なr」



無理なら帰りますと言おうとした瞬間、店主のおっさんのフリーズが解けた。



「こ!こりゃあ、レッドボアじゃねえか!」



へえ、この猪の魔物はレッドボアって言うんだ。



「そうじゃそうじゃ、レッドボアじゃった。やっと思い出せたわい。」



テルさんも店主のおっさんの一言で思い出せたらしい。良かった良かった。でも、買い取りは無理っぽいしなぁ。店主のおっさん怒らせたみたいだし。



「お騒がせしてすみませんでした。これで失礼しますね。テルさん行こう。」



俺は再びなんとかボア改めレッドボアを収納魔法に収めようと手を伸ばした。すると、



「ま、待ってくれ!買う!買わせてくれ!レッドボアの、しかもこんな大物は初めて見たぜ。絶対に俺に売ってくれ。だがこの大きさ、俺んとこだけじゃ資金的に無理だ。なあ、あんた。良かったら商業ギルドか冒険者ギルドまで付き合ってくれんか。」



まくし立てるように早口で話す店主のおっさん。俺はいきなりの展開に思わず呆然としてしまったよ。



「なあ、兄さん。ここじゃ纏まる話も纏まらねえ。とにかく俺と一緒に来てくれねえか。」



「はあ、まあ、買い取って頂けるなら・・・」



俺が戸惑っているとテルさんが店主のおっさんにこう言った。



「のうご主人。我らはこのレッドボアを買い取って貰えればそれえでええんじゃが、出来るだけ高く買い取って貰った方が有難い。商業ギルドと冒険者ギルドなら何方が高く買い取ってくれるかのう。」



ナイス!テルさん。俺だけなら絶対勢いに負けてその発言は出来なかったよ。流石は神の眷属!ってかテルさん人間でもないのに人間の経済事情に詳しいのね。



まあそこんとこは置いといて、店主のおっさん(アツィオさんというらしい)曰く、商業ギルドだと商売ベースでの話になるので価値を知らないととんでもなく安く買い叩かれる事も有るそうだ。(当然と言えば当然か)逆に冒険者ギルドなら、余程のことが無い限り適正な値段で買い取って貰えるらしい。冒険者の利益保護が最優先されるからなんだとか。



という事で、俺とテルさんは冒険者ギルドで買い取って貰う事にした。買い取りを了解した時のアツィオさんの喜びっぷりは最初の印象と真逆で満面の笑みだったよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ