百均店長、夢を見る。
変なオッサンに指輪を貰った後、帰宅した俺は明日からの仕事やこれからの生活なんかの事を考えて…る間に眠ってしまった様だ。だから、これは夢なんだろう。夢に決まっている。
薄暗い道を歩いている俺。霧が出ているのか遠くは見えない。周りに建物も無ければ人の気配も無い。なんだ、やっぱり夢じゃんと思いつつも歩いていると何やら見覚えのある景色が。アレ?ココって俺んちの近くのネオン街じゃね?何で急に…まぁ夢だしそんなもんか。
などと独り言ちていると、一人の男が前方からこちらに向かって来るのが分かった、見た目は50歳代くらいで筋骨隆々。チリチリパーマをロン毛にしたような髪型を後で束ね、厳つい顔には髭を蓄えている。子供の頃にビデオで見たプロレスラーのブル○ザー・ブ○ディみたいな男だ。そして古代ローマとかギリシャとかを連想させるような白いローブ?的な衣装を纏っている。グラディエーター風とでも言えば分かりやすいだろうか。
その厳つい男が俺に声を掛けてきた。
「ほっほ、さっきぶりじゃの!」
見た目とは真逆の何の緊張感もない口調に思わずズッコけた。そして思わず突っ込んでしまった。
「てか、アンタ誰だよ!!んで、何でそんな格好してんの?」
いや、歳上相手にこんな口調で返すのは失礼なのは分かってますよ?分かってるんだけと突っ込まずにはいられなかった!どうせ夢だし怒られたりしないでしよ。
「ワシじゃよ。さっき指輪をあげたろう?」
厳つい顔に似合わない笑顔。ちょっと和むかも。
「ってあぁ、さっきの露店の?わかんなかったっすよ。」
そりゃそうだろう。さっきは服装なんて見てないし、フードを目深に被ってたから顔なんて見えなかったし。それにこれは夢だもんね。俺の頭の中で勝手に想像したものが見えてるだけなんだろうから…。そんなことを考えてると、徐に男が話しかけてきた。
「さっきの約束を果たしてもらおうと思っての。」
「次に会うことがあったら話を聞いてくれってやつですか?」
「そうじゃ。いいかの?」
まぁ、夢の中だしそのくらい良いか。
「で、どんな話なんです?」
「ふむ、何から話そうかのう…。実はワシ、風の女神カルデア様の眷族での。」
…そうきたか。
「はい。それで?」
「ワシと一緒にワシのおった世界に行ってくれんかの?」
「えーと…アナタの世界って?」
「おお、そうかこの世界の者は自分たちの世界のことしか知らんのじゃったの。そうじゃのう、お主達から言えば違う世界、異世界ということになるかの。」
ハイッ!異世界キマシター!!って誰が信じるんだよんなもん。まぁ夢に突っ込んでも仕方ないから続きを聞こう。
「どうして俺なんです?俺なんて特に何か優れた所があるわけでもないですし。」
「さっき指輪をやったろう。今も着けておるじゃろ?」
そういえば外すの忘れてた。
「それはワシが封じられておる指輪での、契約者になり得る者が現れる迄は人の目には映らん。じゃからあの指輪がお主に見えた時点でお主かその極近くに居った者が契約者になり得るということじゃ。」
あの時近くに人は・・・居なかったよな。
「どうじゃ、ワシと契約してワシのおった世界に行ってみんか?」
どうせ夢だしな。色々聞いてみよう。
「因みに契約するとどうなるんですか?」
「そうじゃのう、まず一つないし幾つかの特殊な力が使えるようになるのう。そしてワシらは契約者の寿命が尽きるまではその身を守る盾になるのじゃ。」
寿命が尽きるまでって・・。まぁ、夢だしな。おっとラノベ好きとしてはこれだけは聞いとかなくちゃな。
「魔法も使えたり?」
「ふむ、適性があれば使えるだろうのう。あちらの世界は魔素も豊富じゃし人間も何割かは魔法が使えたはずじゃ。」
ほうほう、やっぱりか。夢だしな。よしよしじゃあ次の質問だ。
「やっぱり一度そっちの世界に行くと帰って来れないんですよねぇ?」
「ん?そんなことはないぞ。大体ワシは自分の意思で此方に来とるでの。往来くらい何時でもできるぞい。」
あれ?そーなの?意外!それなら行ってもいいかもな。どうせ夢だしな。
「それで、どうじゃお主。ワシと契約してくれるかの?」
「わかりました。」
「おおっ!そうか!では早速!!」
「分かりましたけど、最後にこれだけ聞かせて下さい。どうしてそんなわざわざ違う世界の人間と契約して連れてくなんてことしてるんですか?」
「ワシら神の眷族の寿命はほぼ永遠とも呼べるものじゃ。じゃから短命な人間に付き合ったところでたかが知れとる。ほんの戯れよ。」
あー、要するに寿命が永すぎて暇だからってことか。分からなくはないけど。わざわざ違う世界に来てまですることかね?夢だけど。
「それで、契約ってどうやれば出来るんですか?」
「無論このままでも行えるがやはり覚醒してからが良いじゃろう。夢現で後で文句を言われても困るしのう。そうじゃ、お主名は何と言う?名が分からんでは契約は出来ぬでのう。」
「二郎、甲斐田二郎といいます。」
「そうか、ではジロー。夜が明けたらまた会おう!」
そういってオッサンは消えてった。まあ、夢だから目が覚めたら忘れてるんだろうけど中々面白かったな。ちょっと厨二的だったのは最近ラノベとか携帯小説ばかり読んでたからかもな。
そんなことを考えてたら夢の中でも意識が遠のくのが分かった。