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見学会は踊る

「忍者部とは、すなわち、忍者道を極めるクラブなのよ!」

 無駄に力を込めて、右の拳まで握り締めて、叫ぶ明弧。そもそも、忍者道なる単語が一般的なのか、何かに影響されて明弧が言いだしたのか、定かではない。初瀬も反応に困ったが、何とか質問を続ける。

「極める、とは具体的に?」

「初瀬君。人は忍者と聞いて、まず何を想像する?」

(これ、めんどくさいパターンだー)

「手裏剣とか……?」

 小声で答える初瀬に、ドヤ顔の明弧は、

「そのとおり! やっぱり、手裏剣は基本だよね。」

目を輝かせて頷く。

「そ、それで、手裏剣がどうなるの?」

「よくぞ聞いてくれました。ほら、このように!!」

 明弧が左手を軽く振ったように見えた瞬間――ひゅん、と微かな音を届けて、初瀬の右側を何かが飛び去った。遅れて、背後のドアから、トスンという軽い音。

「常に、手裏剣を投げる練習をするの。」

 恐る恐る後ろを振り返ると、手裏剣がドアに深々と突き刺さっていた。背筋に冷たいものを感じながら、初瀬は明弧に視線を戻す。

「い、いやいやいや! 危ないじゃないか。」

 顔に刺さったらタダでは済まないことは、間違いない。当然ながら、初瀬は抗議した。

「大丈夫だよ、いつも練習してるから。来る日も、来る日も、一人で……」

 明弧は、しゃべっているうちにドヤ顔をおさめて、自嘲気味に視線を逸らす。

(あかん、全然話が進まへん……)

「手裏剣以外には、どんな活動を?」

「こういう忍者装束を作ったり、忍者のことを調べたり、まあ色々だよ。一口に忍者と言ってるけど、実際には様々な種類に分類されるしね。そして、日本の場合、明治期以降に――」


「――これに対して、海外の忍者像というものは実にいい加減なの。ハリウッド映画に代表されるような、虚像が――」

 5分ほど経過したところで、

(副会長、どうしましょう?)

話が止まらない明弧に困り、市歌に目配せをする初瀬。そろそろ、昼休みも終わりに近づいている。市歌は片目で初瀬にウインクして、おもむろに口を開き――

「ねえ、メイちゃん。私、飽きちゃったんだけどー」

(いや、ストレートすぎるだろ!)

 これなら、自分で何とかした方がマシだったと後悔すれど、既に遅い。

「あ、飽きた……。やっぱり、私の話、詰まらないですよね。だから、部員を募集しても全然……」

 機嫌よく長話を続けていた明弧の顔が、たちまちにして歪む。

「っていうか、別の話が聞きたいってことですよね、副会長?」

「別の話って言っても、もう昼休み終わっちゃうしなー」

 左手をひらひらさせて、顔に風を送りながら、市歌は平然と述べる。

(この人、絶対わざとやってるだろ……)

「では、続きは放課後ということで。」

「「え?」」

 忍者部の説明が始まってから、ずっと沈黙を保っていた咲楽の言葉に、初瀬と市歌の声が重なった。

「メイくん、まだ続きがあるのだろう? 今日は幸い、生徒会に緊急の用件はないからな。心ゆくまで、説明するがよかろう。」

「ちょっとサクラ、私は演劇部の練習が――」

「昼休みに、これだけ時間を取れているのだ。放課後も少しくらい、遅れても差し支えないであろう。」

 はーい、と苦笑する市歌。さすがに、明弧で遊びすぎたことは、自分でも自覚があったのか、それ以上何も言わなかった。

 そんなわけで、咲楽の裁定で、生徒会役員一同は、放課後も忍者部に集合することになったのであった。

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