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見学会

 そういうわけで、忍者部の部室である。

「外も中も、普通だと言いたいんでしょ?」

「いや、普通というのか、何ていうのか……」

  明弧は、口調こそ普段と変わらないが、ややご機嫌斜めに見える。これに対し、初瀬は口ごもるだけで、適切な言葉が見つからないでいた。

「初瀬殿。僭越ながら、『もっと忍者っぽい内装やら仕掛けやらを想像していた』、ということを、はっきり申し上げた方がよろしいかと。」

「い、いや、そういうことでは……、そういうわけでもあるんですが……って、会長?」

 煮え切らない態度に終始する初瀬。生返事をしてから、はっと振り返ると、そこには咲楽の姿があった。昼ご飯を一緒に食べた後、「用事がある」と言って、忍者部見学に同道しなかったのである。

「結局、会長も来られたんですね。」

「予想よりも早くに用事が済みましたのでな。」

「とか言って、初瀬君とメイちゃんを二人にするのが気になってたんじゃないの?」

「そ、そんなことはござらん!」

 少し顔を赤くして、顔をそむける咲楽。口調も、普段よりも堅苦しい。市歌が、初瀬の後ろにさりげなく近寄り、ささやく。

(咲楽は、職員室に例の文書の追加説明に行ってたのよ。)

 なるほど、と初瀬も心の中で頷いた。

「ときに、会長。なんで、ジャージ姿なんです?」

「次の授業が体育なのです。」

 みやこ高校の体育の服装は、特に指定がないため、学校の名前の入ったジャージを着ている生徒が一番多い。もちろん、女子のブルマが禁止されているわけではないが、さらに言えば、男子でも禁止されていないが、幸か不幸か、好き好んでブルマを着用する生徒はいなかった。

 いずれにしても、昼下がりの忍者部に、生徒会役員が勢ぞろいたした……のはいいが、ジャージ、西洋風のドレス、忍者装束ときて、制服なのは初瀬だけであった。第三者の目から見たら、なかなかにシュールな光景だったに違いない。


「さて、皆さん。改めて、我が忍者部の見学会にようこそ。」

 若干、置いてけぼりを食らっていた明弧だったが、気を取り直して、深々と一礼。場を仕切ろうとする。

「私、別に見学に来たんじゃないんだけどねー。ただの道案内だよ。」

「ちなみに私もだ。初瀬殿のお供なので。」

 しばしの静寂。

「いや、そんな悲しそうな顔しないで! ちゃんと俺は見学に来たから、うん。」

 空気の読めない発言をする二人をフォローすべく、初瀬が慌てて、手を振る。

「そ、それでは。まず、我が忍者部の歴史から。」

「それは知っている。我が高校の泡沫クラブの一つとして、――なに、気にするな。決して、けなしているのではないぞ――今年の5月に誕生。現在で創設4か月になるな。」

「構成部員は――」

「ずっと、メイちゃん一人だけだよねー。」

「こ、顧問の先生ですが……」

「顧問の先生は、クラブが乱立しているせいで、未だ、見つかっていないのだ。このあたりも、理事会にきちんと説明せねばなるまい。」

「……」

「み、みなさん! ちょっと、俺の方から質問してもいいですか?」

 そろそろ明弧が泣きそうな表情になっているのに気付いた初瀬が、場の空気を変えるように、大きな声とともに、右手を挙げた。同時に、左にいた市歌を軽く睨む。市歌は、ぺろりと舌を出した。ちょっとやりすぎた、ということか。

「うん、初瀬君、何かな?」

 初瀬の言葉に顔を明るくした明弧。勢いで言っただけなので、実は、初瀬も大したことは言えない。

「そうだね……。うん、忍者部って、何をするクラブなの?」

「いい質問です! それでは、お答えしましょう!」

 明弧は、気を良くしたのか、元気に口を開いた。

珍しく連日の投稿になります。

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