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ウラギリモノの英雄譚  作者: ぬくぬくぬん
プロローグ
7/19

タビダチ――九重里里ノ決断


 カナメの家の最寄駅まで、要をグイグイと引っ張ってきた莉子リコだったが、

「準備があるから先に行っとって」

 突然、矢の如く消えていった。


「ていうか、何であの人は僕の家を知ってるんだよ……」

 門を潜る。

 玄関のドアを開けようとしたところで、鍵が開いていることに気がついた。

「あれ? 閉め忘れたのかな……?」

 要は、何気なく玄関の引き戸を開いた。

 カラカラカラ、と子気味の良い滑車音かっしゃおんと共に扉が開き。


「兄さぁぁぁん!」

 家の中から、目の色を変えた里里サトリが飛び出してきた。

 鍵が開いていると思ったら、里里が家に来ていたのか。


 グワシッ!

 思いっきり肩を掴んだ里里サトリが、要の顔を覗き込む。


「聞いたよ。昨日、怪人に襲われたんだって? 怪我しなかった?」

「は、はい……。あの、ちょっと肩が痛いです……」

「夜に一人歩きなんてしたら危ないじゃん。バカ。今度からは夜に一人歩きなんかしちゃダメだよ。どうしても出なきゃいけない時は、私が付き添うからね」

「それじゃあ、僕が里里さんを送った意味が……痛い! 肩が脱臼だっきゅうしそう!」


 そして里里は要の体をパンパンと触り、外傷がないことを確かめるとハァとため息を吐いた。

「怪我がなかったなら何よりだけど……本当に気をつけるんだよ」

「心配してわざわざ見に来てくれたんですか?」

「畜生……わたしの家族に手を出すなんて許せねぇ……。許さねぇ……」

「話を聞いて下さい」

 里里の目は逝っていた。


「兄さん!」

「は、はい!」

 この場における兄さんとは、兄弟子の意味だ。

「突然で申し訳ないのですが、一身上の都合により、九重コノエ 里里サトリはこの道場を卒業したいと思います」

「え……っ」

 突然の申し出に、要が目を丸くする。

 今まで要が何度勧めてもこの道場から去ろうとしなかった彼女が、いったいどういう風の吹き回しだろう。


「そんな顔しないでよ。別に要兄さんと縁を切るって言いに来たワケじゃないんだから。ここを辞めた後も、遊びには来てもいいよね?」

「ええ、それは構いませんが、急だったもので少しびっくりしました。いったいどういう風の吹き回しですか?」

「はは……大したことじゃないんだけどさ。ちょっとヒーローになろうと思って」

 ヒーローになる。

 それはつまり、既にヒーロー認定試験に合格している彼女が、プロヒーローとしての活動をするという意味だった。

 しかし、里里はプロヒーローになることにそれほど積極的ではなかったはずだ。いったいどうしたのだろうか? 要が問う。


「本当は大学を卒業する頃に考えればいいやと思ってたんだけど……、ちょっとぶっ飛ばしたい怪人が現れちゃったからね。……わたしの家族に手を出したら、どういう目に合うか……教えてやるんだ……」

 里里の目がギラリと光った気がした。 

「だから、要兄さんを襲った仮面の怪人。あれを討伐とうばつするための編隊へんたいに入れてもらうことにしたんだ。しばらくは私も銃の腕を磨かなきゃになるから、道場はしばらくお休みしようと思ってね」

「それは……」

 要に気を使ってのことなのだろうか。

 少しだけ、言葉を選ぶ。

「里里さんの意思ですか?」

「うん。自分のため」

 里里は即答した。

「別にヒーローになるかならないかは置いといても、私の家族に手を出されたのは我慢ならない……。だから、私は私の敵をぶん殴りに行くんだ」

 それだけ言うと里里は玄関で靴を履き、要の家から一歩外に出た。

「じゃあ、兄さん行ってくるね」

 振り返らずに手を振られる。

「分かりました。気をつけて」


 その背中に、「いってらっしゃい」と声をかけると、里里は歩き出し、去って行った。


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