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ウラギリモノの英雄譚  作者: ぬくぬくぬん
プロローグ
3/19

ソウグウ――仮面ノ怪人

『次のニュースです。

 仮面の怪人に、またヒーローが一人、やられました』

 道場の隅に置かれたテレビ。無造作に流していたニュース番組の中で、最近巷を騒がせている怪人のニュースが話に上がった。

 また仮面の怪人が現れたらしい。

「またこの怪人のニュースか……」

 つい数カ月前から姿を見せるようになった怪人だ。

 全身を黒いマントに包み、顔には真っ白な表情の無いお面を付けていることから、これは仮面の怪人と呼ばれている。

 非常に強力な怪人だ。今回を含めて八人のヒーローがこの怪人に敗北し、病院送りとなっている。

「相変わらず、プロのヒーローしか襲わないんだなぁ」

 今回、仮面の怪人が出現した現場は、人通りの多い街の商店街だ。当然、一般人も多くいただろうが、負傷したヒーロー以外に怪我人がいることは報道されていなかった。

 不思議なことにこの怪人は人を襲わない。物を壊さない。

 この怪人はプロのヒーローのみを襲う。

 本来、出現すれば見境なしに破壊活動を続けるはずの怪人だが、この仮面の怪人はその特性故に、被害が著しく少なかった。

 幸いやられたヒーローの中にも重傷者はいない。

 ただ、この怪人が出没している地域が、要の住む街の近所であるため、少しばかり、この怪人が気にはなっていた。


「着替えたー。じゃあ、帰るねー」

 カジュアルな私服に着替えた里里が柔道場に戻ってくる。

「ああ、お疲れ様でしたー」

「うん、おつかれー。うわ、真っ暗じゃん」

「もうすっかり日が短くなりましたね。……送りましょうか?」

「え?」

 里里が目をパチクリさせる。

「要がそんなことを言うなんて珍しいね。どういう風の吹き回し?」

「いえ、まぁ……なんとなくですけど……」

「でも、お構い無くー。私が相手なら、不審者も返り討ちだぜ」

「それはそうですけど……」

 プロのヒーローのみを襲う怪人。果たして、資格だけを持ってる里里は、プロヒーローの枠組みに入るのだろうか。

 直前にニュースを見たせいか、どうしてもそのこと気になった。

「やっぱり送っていきますよ」

「そう? じゃあ、帰りに駅前でクレープ食べよう」

「あそこの店は先月からクレープをやめました」

「え!? 美味しかったのに何で!?」

「ケーキとサンドイッチだけでも十分流行っているからじゃないですか」

「ぐぁー。私の高校時代の思い出クレープがぁー」

 二人で道場を出る。

 クレープが二度と食べられなくなったことで、すっかり意気消沈してしまった里里は、帰路の最中終始静かだった。

 電車に乗って瓦町の駅で降り、暫く進むと里里のアパートがある。

 駅前には、『第27回ヒーロー認定試験 最終試験』のポスターが貼られていた。

 ヒーローの最終試験は、変身後の審査員と変身後の志願者が実践形式で戦う試験だ。ヒーローの超人的な力のぶつかり合いが観れる機会は多くはない。この最終試験は、一般客にも有料公開されるちょっとしたお祭りだった。

 本年度の試験は要の地元で行われるということで、県の方でも幾らかのPRをしているらしい。

「そういえば今年は大串半島ですね」

「ねぇー。私の時は北海道まで行ったのに……」

「…………」

 今回の試験の応募締め切りは、今週の末だった。

「……ほら、行こう行こう」

 思わずポスターをじっと眺めてしまった要の背中を、里里が押した。

 里里の家まではすぐに着いた。

「上がって麦茶でも飲んでいく? 沸かしてから八日目だけど」

「お構い無く」

 里里の誘いを断って、要が来た道を引き返す。

 地方の電車は本数も少ない。瓦町駅から再び最寄り駅へ戻る頃には、すっかり人も少なくなってしまった。

 歩道のない川沿いの道路を歩いて行く。

 車も通らないのは珍しかった。

 ふと、目の前を何かが横切った。

「猫?」

 黒い子猫だ。

 要はその猫の動きを目で追って、道の先へ視線を向けた。

 そこに、――仮面の怪人が立っていた。

「…………」

 あれは何時からあそこに立っていたのだろうか。

 仮面の怪人――顔の全面を覆う白い無個性な仮面、フード付きの白いマントで全身を覆っており、あれが男か女かは分からない。

 ニュースで見聞きした仮面の怪人と全く合致する人物が、目の前に立っていた。


「仮面の……怪人?」

 要が身構える。

 仮面の怪人、仮面の向こうの瞳は確かに要を見ていた。

 ニュースに触発された悪ふざけの偽物か、それとも本物の仮面の怪人か。

 どちらにせよ焦る必要はないと、要は思った。

 偽物であれば、恐れる必要はない。一般人の愉快犯に負ける要ではないからだ。

 仮に本物であったとしても、要はヒーローではない。ヒーローしか襲わないこの怪人が要を襲うことは無いはずだ。

 要に危険はない。


 後ずさりながらスマートフォンを取り出す。

 パスコードでロックを解除したところで、緊急電話はロック解除が必要なかったことを思い出す。

 落ち着け。言い聞かせて電話アプリを起動した。要がスマートフォンを耳に当てる。

 怪人のマントが僅かにめくれ上がったように見えた。

 突如、今まで感じたことがない悪寒に全身が包まれ、要は本能的に身を縮めた。

 身を縮めた要の頭を掠め、真っ黒な触手が突き抜けていった。

 この触手はどこから飛んできた?

 要は仮面の怪人に目を向ける。

 仮面の怪人までの距離はゆうに三十メートル。めくれ上がったマントの下から、ペットボトル程の太さの触手が一直線に伸びていた。


 怪人と目が合う。

 めくれ上がったマントの下には、無数の触手が蠢いていた。

 危険はないなどという安易な考えを払拭する。

 本物の怪人を目にするのは、これが二度目だ。そこに在るだけで何かを壊す、怪人独特のプレッシャーを肌がヒシヒシと感じていた。

 その時、伸びた触手が首に巻き付いてきた。

 咄嗟に手で首を庇う。

「っ……しまったっ」

 庇った拍子にスマートフォンを落としてしまった。

 だが、そんなことに気を取られている場合ではない。

 巻き付いてきた触手が首を締めあげてくる。

 すさまじい力だった。

 何とか振り払おうと腕に力を込めたところで、要の体がふわりと浮いた。

「嘘だろ……くそっ!」

 怪人の触手は、要の体をいとも簡単に持ち上げ、川の中へと投げ飛ばした。

 殆ど水底がむき出しの浅い川に投げ込まれ、水底の小石で肌を切った。

 全身が鈍い痛みを訴えたが、ここで寝ていては格好の的だ。

 要は即座に立ち上がった。

 怪人が川の中に飛び込んでくる。

 干上がった川で両者が対峙する。

 まるで試合をするかの如く、怪人と要が見合っていた。

「ヒーローしか襲わないんじゃなかったのか?」

 怪人は人間の言葉を解したりはしない。

 現在、要と怪人の距離は僅か十メートルも無い。

 仮面の怪人のリーチは少なくとも三十メートル以上、一目散に逃げ出しても、背中から攻撃されるのがオチだろう。

 目はそらせない。

 だが、相手の触手を目で追えないことはない。

「一発一発を躱しつつ、後退……」

(大丈夫、それぐらいなら出来る)

 要は自分に言い聞かせ、戦う意志を示すように構えた。

 しかし。

 仮面の怪人のマントの下から、無数の触手がその姿を現した。

「嘘だろ……一本じゃないのかよ」

 その一本一本は長く太い。あれだけの触手がどうやってあのマントの中に隠れていたのか。


 暴力の質量が露わにされ、要は自分の浅慮を戒める。

 相手はプロのヒーローを何人も病院送りにしている怪人だ。ヒーローにすらなれない自分が対処できるような相手ではなかった。

 ――どうすればいい?

 思考は無価値だった。

 要は、悲鳴を上げる間も無く、無数の触手に絡め取られて消えていった。


舞台背景というか、主人公のキャラをエピソード混じりで説明するのって凄く苦手です。

というか、主人公を読者の分身に変えるのが苦手です。

みなさんはどうやって主人公のキャラをアピールしているのでしょうか。


もっとわかりやすい特徴のある主人公にすればよかったと少し後悔……。

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