アンドロイドも疲れはする。
研究所にハッキングしてきた悪い奴を軽くやっつけたウィズは、
マスターに頼まれて七杯目となるコーヒーを運んでいた。
いくら機械の身と言っても、疲れを知らない訳では無いのです。
合計一キロも歩けばバッテリーが0.1%減ります。
いい加減にしてほしいです。
マスターのワガママは、本当に面倒です。
あ、ココはマスターに見られるとマズい、、、
本編と別に保存しておこう、、、
ウィズ
薄暗い廊下の中、コツコツと軽い足音を鳴らし一人の女性がコーヒーを運んでいる。
と言ってもどうやらこの女性は、人間ではなくアンドロイドの様だ。
そんなアンドロイドの彼女は、まるで人間のように独り言を始めた。
『ふう、、、さて、ここからが問題ですね。。。
マスターの物は良いとして、
流石にお客様のお飲み物を地面に置く訳には、、、いけないですよね、、、』
どうやら今彼女はお盆を持ったまま、
どうやって重厚な扉を開けるのか考えているようだ。
だがしかし、マスターのも置くなよ!と言う突込みは彼女には届かないようだ。
『、、、はぁ、相変わらずマスターもアンドロイド使いが荒いですよね、、、
この施設の中をお盆を持って歩き回るのがどれだけ大変か全く持って解ってない。
、、、まあそんな事を言えば確実に隣の採掘所送りになるので言いませんが。。。』
そう言って彼女はブツブツ文句を言いながら、どうやって扉を開けるのか決めたようだ。
『うーん、、、
ここは他の扉と違って近くにお飲み物を置ける場所も無いですし、、、仕方ないですね。
キネシス!からの、ステイシス!!、、、これで多分手を放しても、、、大丈夫!OK!!』
そう言いつつ彼女がお盆から手を放すと、何とお盆が宙に浮いたではないか!
これは彼女が先ほど叫んだ、[キネシス、と、ステイシス]の効果である。(詳しくは後書き参照。)
『、、、あちゃぁ、流石に同時発動はマズかったかな?
バッテリーがガクッと減っちゃいました、、、
おっと、こんな事を言ってる暇は無いんでした!
速く効果が切れる前に扉を開けないと!!』
そう言って彼女は急いでドアのロックを解除し、
マスターと先生が待つ、談話室へ急ぐのであった。。。
「コンコン」と今回は轟音では無く、軽い音がドアから聞こえてくる。
『ウィズです、お飲み物をお持ちしました。』
『やあ!やっと来たかいウィズ!
、、、いやなんでも無い、速くコーヒーを置いてデテイッテクレ!』
『、、、マスター?
普段と態度が違うと言いますか、、、
白々しいと言いますか、、、
クッキーとコーヒーをお持ちしたのでどうか機嫌を治してください。』
『、、、、、クッキーとか歯にくっ付くから好きじゃ無いし!』
そう言ってマスターは今ウィズが置いたばかりのコーヒーを、グイッと一気に飲み干した。
『そうですか、、、ではお下げしm』
『でも持って来たんならいい。
食べてやるからコーヒーのお替りと、歯ブラシを持ってきてくれ。』
そんな大人気ない態度のマスターに見かね、とうとう先生と呼ばれていた男がウィズに助け船を出す。
『、、、ビス?もういいだろう。
彼女はもうこことキッチンを7回も往復したぞ?
それに男のツンデレが許されるのは小学生までだ、、、
いくら顔が良いお前でも流石に、、、キモイぞ。』
そう言われ、自分の子供の様な態度を指摘された上に、
キモイと言う最強のワードウェポンまで使用され、
マスターが顔を真っ赤にして反論する。
『先生?二つ言わせてください!!!
まず一つ!
何度も言いますが、ビスって呼ばないでください!
私にはちゃんとした名前があるんです!
そして二つ目!
私はツンデレじゃないっ!!!
だから、、、その、、、
はぁ、、、悪かったよウィズ。
取り敢えずここに居てくれ、先生から話があるそうだ。』
そう言って、マスターは向かいの椅子を指さした、
どうやらそこに座れと言う事らしい。
ウィズは、
今持って来いと言われたコーヒーを持ってくるべきか迷ったが、
(面倒くさいので)おとなしく椅子に座ることにした。
『私にお話ですか?』
『いや、なに、、、ちょっとした世間話じゃよ。
まぁ、行き成りこんなおいぼれと話すのも気が重いだろう。
ここはまず、久しぶりに会ったんだし自己紹介と行こうじゃないか。
記憶が正しければ昔から今まで、私は君に先生としか名乗っていなかったしね。』
『分りました。』
ウィズはデータ上ではファウストに資料を貰っていたが、自己紹介を聞く事にした。
だがそこで、突然マスターが叫んだ。
『じゃあ僕が一番最初に名乗らせてもらう!』
どうやらファウストは[ビス]と呼ばれるのが相当嫌らしい。
『名乗らんでいい!お前の名前は知っとるよ!!』
『いいえ!知りません!!私の名前は、ビスでは無く!
[ビスマルク・ファウスト]と言う凄い名前があるんですからね‼
こう見えてもあの大魔術師、、、か何かの子孫ですよ!意外に凄い人なんですからね!』
そう言って、マスターは先生の制止を無視して自分の名前と先祖の自慢をさっさとしてしまった。
これには先生も呆れて無視する事にしたようだ。
『、、、分ったよビス。。。
ではウィズ君、私の名前を名乗らせて頂こう。
私の名前は、[エイブラムス・シャ-マン]だ、シャーマンと呼んでくれ。
この名前を付けてくれた親に感謝しとる。』
『、、、、[エイブラムス・シャーマン]、、、素晴らしい名前ですね、、、』
『羨ましいかい?』
『ええとても。。。
っと、いけませんね。
私も自己紹介させて頂きますね。
私の名前は、ウィズ・チハ式01号機です。積載量は、、、』
と、ウィズがどこかの国の愛くるしい車両の名前を名乗ろうとした所で、
ウィズの名付け親であるファウストが全力で突っ込みを入れる。
『いやオイィ!分るよ!分るよその気持ち!でも君はウィズだからね!
百歩譲って01号機でもチハ式じゃ無いからね!?てか積載量って何!?
しかもここ日本じゃ無いんだけど!!』
『申し訳ありません、マスター。』
『まっ、まぁいじゃないか、ビ、、、ファウスト。
そんな事より早く本題へ入ろう。』
そう言ってシャーマンがマスターを落ち着かせ、姿勢を正した。
どうやらココからは真面目な話になる様だ、それに合わせ、ウィズも姿勢を正す。
(と言ってもウィズは元々姿勢を崩してはいなかったが。)
『急に話が遡って済まないが、ウィズ君?君はいちばん最初にコーヒーを持って来た時に
かなり時間がかかったけど如何したんだい?何かあったのかね?』
『すみません、、、喉が渇いているのは解っていたのですが、少し野暮用が、、、』
『いや良いんだ、そんな事よりその野暮用が気がかりでな。
どうやらこの辺りでクラッカーが悪さをしたらしいんだよ。
その事と何か関係でもあったんじゃ無いかとね、、、違うかい?』
『、、、、驚きました。
流石ですね、その通りです。
先ほどまで、この研究所のカメラからメインコンピューター、さらにお二人も含め
私以外、全ての物や人の情報が盗まれていました。』
『な!?、僕と先生の情報ってどういう事!?』
そう言って、マスター《ファウスト》が身を乗り出す。
『お前、、、本当にこう言う分野には鈍いの、、、最近ニュースで話題のアレじゃな?』
『その様です。
最近開発された人の心を手に取るように盗み見る事が出来るナノマシーン、、、
通称ナノダイバーを使っての犯行のようです。
最近有名な、カメラなどをハッキングし、映像や音声データを収集した後に、
ドラマ風の編集を加えてより視聴者を引き付け、
情報の拡散を目論むタイプのクラッカーが犯人のようです。』
『待ってくれ!確かに開発されたのは知っているが、何故それがクラッカーの手に?』
『、、、これは昨日のニュースで得た情報ですが、どうやら盗まれていたようなのです。』
『その通りだ、私も詳しくは無いが、
どうやら複製転売系のかなり大きなグループに盗まれたようなのだ。』
『そうだったんですか、、、
まあでも、今こうしてウィズが普通って事は、もうここは安全って事だよね?ウィズ?』
『いや、安心は出来んぞ、実はウィズ君はすでに乗っ取られている可能性も考えねばならん。
こんな事は考えたく無いが、ウィズ君もアンドロイドだ。』
『御心配には及びません。
今ちょうどここを乗っ取っていたクロッカーが無事に確保されたとの連絡が届きました。』
そう言って、ウィズは自分の服のポケットから携帯を取り出し、二人に画面を見せる。
『あれ?ウィズが携帯を使うなんて珍しいね?』
『はい、久しぶりに持つので少々戸惑っております。
ですがこれもウィルスに侵されないための手段です。
現在私の通信状態は、強制的オフライン状態です。
ウィルス対策にはこの手段が一番手っ取り早くて良いのですよ。』
『そうか、流石ウィズだ!これで私達も安心ですね先生!』
『いや、まだ一つ問題が残っとるぞ。』
『え?それは何ですか!?』
『ウィズ君が大丈夫でもわしらの中にあるナノマシーンはまだ除去しておらん。
このまま外に出れば考えとる事が全てだだもれだぞ!』
『その点でもお心配には及びません。』
『何故だ?』『なんで?』
行き成りの事に話が呑み込めない二人の声が重なる。
『先ほど私が駆除したからです。』
『駆除?何時?どこで?まさか僕らが気付かない内に駆除は出来ないよね?』
『はい、それは当然です、その証拠にマスターもお客様も相当痛がっておりましたよ。』
『『あ~、、、(納得)』』
そこで、少し前の激痛を思い出し、二人が納得する。
『だからワシにも同じ電流を流したのか、、、』
『はい、出来ればお客様には無駄なご心配をお掛けしたくなかったので。』
『でも痛かったよアレ、、、』
『マスターは駆除の為だけでは無いので少し多めに流しました。。。』
『、、、ウィズ?酷いよ、、、』
『ビス、あれはお前が悪い。。。
まあ、何事も無くて良かったじゃないか、平和で何よりだ。』
『と言っても、撃退したとはいえ、サイバー攻撃されてる時点で平和もクソも無いんですがね、、、』
『確かにそれもそうだな!』
そう言って二人が笑い出す、その状況を見て、ウィズもクスッと笑みがこぼれそうになったが、
先ほどコーヒーを頼まれていた事を思い出し、直ぐに自分の仕事に戻るのであった。
その後も二人は軽く雑談を交えながら最近の研究の話などを30分程交わした後、
そろそろお開きにしようという話になり、先生と言われた男は帰って行った。
今日も研究所は平和です。
[アンドロイドの私と。]一時休息
ウィズの軽い暴走の、その後です。
誰も読んでないと分りつつの更新は心が痛い。
でも面白くない話でも、コツコツ書けばいつか身になると信じて頑張ります。
それにどんなに更新が遅くても、
これから読み始める人には関係のない話ですし。
あ、もしかするとこの小説を自分で近い内に漫画化するかもです。