~プロローグ~
この物語はフィクションです。実在の個人・団体とは一切関係ありません。またタグも付けてますが、残酷な描写や最強設定もあります。そういった設定が苦手な方は、ご注意ください。
私立龍ヶ峰学園。
16歳以上19歳未満の者を対象とした、三年制の高等学校である。生徒数367人。教員数59人。全寮制。男子生徒と女子生徒の比率は約6:4。
これだけ聞けば、至って普通の高等学校をイメージする方が多いだろう。
だが、この龍ヶ峰学園には一つだけ、他の高校と全く違う事がある。
それは、「教育方針」。この一項目のみが、他校と比較して圧倒的に異なっているのだ。
龍ヶ峰学園の教育方針。それは、「超能力者の保護・育成」である。
世界にはごく少数、生まれながらにして特異な力を持つ者がいる。
炎や水などを体から発せられる者。物質を別の物質へと変換できる者。果ては、天候すらも支配してしまうような、使い方を誤れば人類の存亡すら危うくしてしまうような者まで存在している。
そういった特異体質を持つ者達を「超能力者」と呼んでいるのだ。
だが、力を持っていたとしても、それを行使出来るかどうかは、また別の話。
先ほども言ったように、能力の使い方を誤れば、気分次第で人類をどうこう出来る恐ろしい力なのだ。
現に今、世界は超能力犯罪に悩まされている。世界各地で超能力者によるデモや殺人事件、酷い所ではテロや戦争にまで使われている。
その様な超能力者にならない様、また超能力者を止めるための人材の育成こそが、龍ヶ峰学園の存在意義なのだ。
行う授業は、教育法で義務付けられている高等教育の授業に加え、能力行使の方法や注意点を座学で学ぶ「能力知識」と、実践を通して能力をより深く知り、能力を使いこなせる様にする「能力実技」がある他、実際の事件解決に赴き、本物の犯罪者を相手にする「任務」もある。
任務を行う場合、A~Eまであるクラスの中で、Aクラスに近づくほど危険度・難易度が高くなり、学年が上がるに連れても、難易度を増していく。
クラスは生徒が持つ能力に左右され、能力の実用度が高い程、高クラスへ配属される。
ただ、一つだけ。
「任務」へ赴く事を、原則として禁じられているクラスがある。それが、「Fクラス」
そこに集められるのは、数多ある超能力の中でも「実用的ではない」と判断された超能力者たち。
つまる話、「実践では使えない超能力を持つ者たち」である。
生徒たちの間では「落ちこぼれクラス」などと呼ばれ、酷い者では「ゴミ溜め」などと揶揄する者までいるほどだ。
Fクラスのみ、1~3学年がまとめて一つの教室で学んでいるが、それでも生徒数はたったの12人である。
そんなFクラスに、一人の少年が転校する。
名は、菅原航太郎。年は17歳。学年で言うと高校2年生。
〝また、ゴミ溜めに一人捨てられるそうだ〟
A~Eクラスの面々はそう言い、相手にもしないような少年。世界の超能力者の中でも、劣等の中の劣等に位置する者。星で言うところの、六等星。
だが、彼の転校により、龍ヶ峰学園は、大きく変わろうとしていた。
これは、社会から「劣等生」と見なされるFクラスの生徒たちと、そこに転校してくる一人の少年を中心とした物語である。