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あの頃  作者: 桐谷 優牙
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失敗から

「ーえ………。」


息が止まる。


3月16日。大阪府立高校入試合否発表日。


最終模試までこの高校の合格可能性は常にAランク。


それほど賢い高校でもなかったが、

かといって偏差値50を下回っている訳でもない。


その高校に、楠本 健(くすもと たける)は落ちてしまった。


健はもう一度自分の受験票の番号と発表の紙を見比べた。


1793や…。1793やぞ…。


1787……1791……1792………1794


完全に落ちている。間違いではない。


膝の力がガクッと抜ける。


絶望だ。


この一年。真面目にコツコツ頑張ってきてこの結果。


自分にも嘘はついていない。本当に、真面目に。



「努力は嘘をつかない」


その言葉を、健が二度と信じられなくなった瞬間だった。





四月一日。


あれから二週間が経過したが、未だ悪い夢は醒めない。


それどころか、朝目覚めるたびに、

刻々と迫る滑り止めの高校の入学式が現実として徐々に迫ってくる。


その日も朝から鬱だった。


インターホンが鳴り、健は玄関へ向かう。


「オッス!元気?」


おちゃらけた様子で健の前に姿を現したのは、


健の先輩でバンドマンの、平野 淳(ひらの じゅん)だ。


健が目指していた高校でバンド活動をしている、健のあこがれだった。


「ま、別にうちの高校でなくとも、バンドはできるしな!」


背負ったギターがどこかにぶつからないよう気にしながら、

淳は健の家にお邪魔した。


「ほれ、このギター貸したるし!元気出せよ!」


そう言うと、淳は赤いストラトキャスターのギターを健に渡した。


「お前ボーカルやったよな?いや…ドラムもできたか…。

まー、ギターなら俺が教えられるし、やってみ!」


健は淳と同じ高校でバンドができないことを身にしみて

こぼれそうになる涙をただひたすらこらえていた。



これが四月初め。


後に語られる楠本 健のバンド人生最初であり、最初の障害であった。

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