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弥生と真の力を発揮した夢鏡

約二ヶ月ぶりの投稿となります星原ルナです。……む? それ以上かもしれない。

ってことで、今回はムーン家がメインのストーリーです。明かされていく真実のストーリー、お見逃しなく?

お待たせしました。ではどうぞ!

 スリジエは、体を小刻みに震わせ、心の奥底でため込んでいた本音をぶつける。

「分からない……どういうことなの、説明してよ!」

 娘と思っていなかったはずの男が謝罪の言葉を口にした。スリジエの脳裏に、『逃げる』という選択肢が浮かび上がる。この場を去ればいいのだが、血のつながった実の父親を、今にも死にそうな負傷者を、見捨てて逃げることなんてできない。でも、真実を知るのが、怖い。どうすればいいのだろう。

 スリジエが思案している中、ベエモットの唇がゆっくりと動き出す。

「すべては、雪江の……ためだった……。雪江を、見つけて、やりたかった…………」

 ――すべては雪江の為だった。雪江を見つけてやりたかった。

 ベエモットの発言により、スリジエの中で、長年抱えていたベエモットへの疑念が少しずつほぐれ始めいく。

「お、お母様の為……? 見つける……? どういうこと……? 本当の目的って、アクアワールドを消すことなんじゃあ……」

「きっかけは、雪江が、人界のどこかに入り口があるという、謎に包まれた異世界……『もう一つの世界』に興味を示したことから始まった……当初、雪江はもう一つの世界なぞ……興味を示して、いなかった……私達は南の人魚国の国王と王妃という立場になってから……古代遺跡や異世界など、巡る回数は減っていた。それでも忙しい合間を縫って、近場の古代遺跡などを巡っては心の糧としていた。チェリーやスリジエが生まれ、物心がつき始めた頃はほとんど行けなくなっていた……そんな、時だ。奴等が、黒の人魚族が、雪江に、異世界『もう一つの世界』の情報を教えたのは……」

 語りだした父親の口から、まさか黒の人魚族の名前が登場するとは思っていなかった様で、スリジエは、大きく目を見開きながら「えっ!?」と声を漏らす。

 黒の人魚族!? どうして、奴等の名前が!?

「もう一つの世界に行きたいって行ったのは、お母様の本心だったんじゃあ……!」

 スリジエの質問に、父親はゆっくりと話し始めた。

「今……思えば、奴等の、計画だったのだろうな…………確実に、城を手に入れる為に……雪江がいなくなれば、必ず私が何かしらのアクションを起こしてくるだろうと……」

 ベエモットの口から明かされていく真実に対し、彼の娘は「そんな……」と驚きが隠せない様子でつぶやく。母親の死に、奴等(黒の人魚族)が関わっていた。その事実は、スリジエの心を大きく揺さぶった。

 ベエモットがか細い声でブツブツ言った直後のこと。スリジエの視界が漆黒に染まっていき、時間が巻き戻され始める。父親が隠し続けた、真実が眠る、記憶の夢まで――。




 ベエモットの過去夢。南の人魚国、大広間。

 国王としての仕事が一段落ついた頃、その時は突然訪れた。

 普段はおっとりと家族を見守る落ち着いた女性なのだが、この日に限っては、子供のように無邪気な笑顔ではしゃぎながら泳ぎよる雪江の姿があった。

「あなた、あなた、今時間大丈夫かしら? 話したいことがあるのよっ!」

「雪江、一体どうした? 何かうれしいことでもあったのか?」

 ベエモットの問いかけに、雪江は「うふふっ」と笑みをこぼした。

「新しい可能性を見つけたの! というか、教えてもらったのよ!」

 何を言っているんだ。ベエモットは怪訝そうな顔つきで妻を見つめる。

「んん、新しい可能性……? 何を言っている、雪江。教えてもらったってどういうことだ」


「もう一つの世界! 一回だけ話したでしょう? その異世界に行く方法が分かったのよ! だから、お願い! もう一つの世界に行かせてほしいの!!」


 妻の言葉に、ベエモットの脳内に衝撃走った。今までそんなこと言わなかった妻の懇願に、戸惑いを隠せない。何故行きたいのか理由は定かではないが、一体何があったのだろうか。

「雪江、君はもう王妃だ。1人の母親だ。娘と国を見捨てる気か!?」

「一度だけでいいの! 行ってみたいのよ!」

 ベエモットの言葉に耳を傾けず、ひたすら頼む雪江の姿は、異様とも言える光景だった。

 しばらく妻を凝視していた彼は、雪江の首元に魔法陣のような小さい紋章が刻まていることに気がついた。その紋章は一度見れば忘れられない、スリジエの胸元にも刻まれた証と全く一緒のものだからだ。それは、奴等――――黒の人魚族が関わっているという何よりの証拠。

 ……まさか、奴等の仕業か? ベエモットの脳裏に一つの可能性が浮かび上がる。

「あなた、お願い! 行かせてほしいの!」

 一方で妻の雪江は、夫の思案を気にもせず、祈るように頼み続けていた。

 ベエモットは「ううむ」と言葉を詰まらせる。許すか否か、どちらの判断が正しいか。

「分かった。許可しよう……ただし、できるだけ早く戻ってくるように……」

 許可しない、その判決ができなかった。けれど、許した事実が後に、ムーン家を苦しめる羽目になってしまう。

「ありがとう! あなた! すぐ戻ってくるわ!」

 満面の笑みをこぼす雪江に向けて、ベエモットは僅かに微笑んだ。雪江が喜んでいるのなら、それでいいのだと。けれども、その判断は間違っていたと気付かされることとなる……。


 南の人魚国の王妃が姿を消してから半年が過ぎようとした頃。事態は動き出す。

 ベエモット国王の元に黒の人魚族の族長が訪問したのだ。

「何の用だ? お前達の計画に手を貸すと約束した。娘達も引き渡す。それ以外で何か不服なのか?」

「ああ、不服だな……ベエモット国王が今もなお、国王の椅子に座り続けていることがな」

 族長の言葉を耳にした直後、ベエモットの顔色が急激に変化する。

「――――!? まさか……この城を引き渡せと!?」

「物分りが良い国王で助かったよ。そういうことだ、ベエモット。もう一つの世界に行ったまま戻らない王妃を待つよりかは、いいと思うがな。そう、思わないか?」

 族長は不気味な笑い声を出しながら、王妃席を凝視した。族長の仕草、言葉で、すべてを悟った。

 やはり、あの紋章は奴等の仕業だったか! すべてはこの時の為に仕組まれていたのか……!

 ベエモットが、ギリリッと歯噛みした。後悔先に立たずとはこのことなのだろうか。後悔してからじゃ、もう遅いのか。

 それならば――――私にも考えがある。それならば――――。




 時は戻り、現代。意識が現実へと引き戻されたスリジエは、座り込んだまま父親を見つめていた。先ほどまで夢によって“見せられた”過去の真実に、衝撃を受けている様だった。

 スリジエが「そんな……」と声を漏らした時、ベエモットの唇が再び動き出した。

「あの時、雪江の様子はいつもの雪江とは違った…………奴等の紋章が刻まれていることに気がついた時、まさかそんなはずはない……そう、思った……」

「じゃあ、どうして、お母様を止めなかったの……? 止めることだって、できたはずでしょ!!」

 スリジエの激しい叫びに、ベエモットは更なる真実を話し始める。

「雪江と、約束……した。私を止めないで欲しい……と。その代わり、自分が戻って来なかったら……娘達を、守って欲しい……と。雪江と約束を交わした以上、止めることなんて、できなかった……雪江には……いつまでも笑顔で、いて、欲しかった……」

 スリジエはそこでようやくベエモットの本心を見抜いた。父親は今もなお、娘を、妻を、家族を愛しているということを。全ては黒の人魚族から守るための偽りの姿だったということを。

 分かった時、スリジエの右目から一筋の雫が溢れ、頬を濡らしながら落ちていく。

「どうしてよぉっ…………どうしてぇ!! なんで言ってくれなかったのよぉ、馬鹿親父ぃ!!」

 泣きじゃくる娘に、父親は静かに告げた。

「今まで……本当にすまなかった……スリジエ。お前は、私の大切な娘、だ…………」

 ベエモットの体力が限界に達し、彼の意識は途絶えていく。同時に、永遠の眠りに向けてのカウントダウンが始まった。

 その瞬間、スリジエは全てを理解した。何もかも。父親の本当の目的が、アクアワールドが消滅さえすればそれで良かったということを。アクアワールドが消滅することすなわち、黒の人魚族の計画破綻を意味しているからだ。しかし、黒の人魚族の計画について、現段階では解読できない。

「死ぬなんて、許さない……生きて、償ってよぉ!!」

 スリジエがただ叫んでも、ベエモットの意識は回復しない。どうすれば、意識が回復するのだろうか。思考を巡らせ、解決策を練り上げていく。どうすればいい。限られた時間の中で脳をフル回転させる。

「そうだ……!!」

 スリジエはある一つの結論に行き着いた。


 ――回復魔法だわ!! 回復魔法を使えばいいのよ!!


 対象者の傷を癒やす魔法。意識が消えかかっている者を癒やすかは定かではないが、一か八かやってみる他ない。絶体絶命だからこそ、やらなきゃいけないのだ。

 スリジエの口が動き出し、淡々と回復魔法の呪文を唱え始めた。意識が戻ってほしい。ただそれだけを願って。

 数秒後、スリジエとベエモットを覆うように、地面から魔法陣と強烈な光が放たれた。光は親子を覆いかぶさり、ベエモットの傷を癒やし始める。開いていた傷口は少しずつ閉じていき、傷ついた体を回復させていく。

「これなら、なんとかなるかもしれない……!」

 スリジエは、ほんのり希望を胸を抱いた。僅かな可能性にかけながら。そして、気付いた。意識が回復していないことに。傷を癒やす回復魔法で意識を取り戻すことまではできないことに。

 ……やっぱり、傷を癒やす魔法は傷を癒やすことしかできないのね。当たり前のことだけど。

 それなら、とスリジエの脳内に浮かび上がるのは、次の一手。回復魔法は他にもある。自分が覚えている回復魔法を発動させてみるしかない。だがそれは、危険な『かけ』でもあった。

 スリジエは、回復魔法を発動させては失敗、そのサイクルが繰り返される。何度やっても結果はかわることない。ベエモットにかかった死のカウントダウンが取り消されることはなかった。

「なんで、なんで、駄目なのよぉ――――――――!! 阿呆ぉ――――――――!!」

 スリジエが思いの丈声を荒げた時、離れていた弥生と睦月が慌てた様子で駆けつける。スリジエの声が、二人の耳に届いたらしく、心配になって駆けて来た様だ。

「スリジエさん!!」

「スリジエ!!」

 二人の声に気がついたのか、スリジエは背後に目を向ける。見上げた先には、眉をひそめてスリジエを見つめる、弥生と睦月の姿があった。

 スリジエが声をかけようとした――――が、体に衝撃が走る。強い電流が流れたような激しいしびれが起こり、声帯を麻痺させた。視野は狭まっていき、はっきりしていた意識は徐々に朦朧とし始める。そう、この時がくるのではと予見していたことが起こり始めたのだ。スリジエに何が起こったかは、誰もが理解した。


 ベエモットの死に際と同時に、止まっていた時間が、スリジエの消滅という悲しい運命が動き出す。


「ス、スリジエさん……! 駄目、死んじゃ駄目だよ……!」

 辛うじて弥生の声は届いているのか、スリジエは何か言いたげな瞳で弥生の姿を探していた。

 ――最後まで、迷惑をかけて、ごめんなさい……。

 父親の死、自身の死よりも恐れが大きかった。怖い、死んでほしくないという思いがスリジエの中で渦巻く。何故、ここまで父親にこだわるのか、何故嫌いなはずの、憎んでいるはずの父親に死んでほしくないのか。今まで理解できていなかったが、ようやく“分かった”気がする。


 自分が今もなお、父親を大切に思っているということを。たった一人の大切な家族ということを。


 スリジエが心中で、父親に死んでほしくない、と強く願った時だった。彼女の魂が、呼応するかのように、ドクンと大きく躍動し始めた。それは、何か強い力との共鳴にも見て取れる。

 数秒後、どこからともなく発生した光によって、広場全体が包まれて行く。光の出現で、ドグマとペルロマの戦いは一時停止となり、双方の動きも完全に封じられた。

 広場の中央に、光の中から一つの鏡が姿を見せ始める。それは誰もが待ち望んでいた、アクアワールドの秘宝だった。

 夢鏡の登場に、弥生と睦月は、驚きの声を発した。

「えっ、えええええ!?」

「なっ……光の中から夢鏡だと!?」

 二人の声に、反応したスリジエが何事かと僅かな力で意識を集中させる。二人は急に声を出して、何かあったんだろうか。けれども、光が強すぎて何も見えない。

 光に眼が慣れ、意識がはっきりした時、弥生らが驚いた理由を一瞬で理解した。

「――――!? ゆ、め……か、がみ……? どう、して……?」

 ワケがわからなかった。光が起きたと思えば、夢鏡の出現。今まで出現の兆しが一切現れなかっただけに、現在の状況が呑み込めずにいた。

 一方で睦月が、状況を飲み込むため、夢鏡が何故現れたのかを考え込み、ポツリと言った。

「まさか、スリジエの思いに反応して現れたのか……!?」

 睦月もまた状況が呑み込めず、戸惑っている一人でもある。ましてや、今まで一度も起こったことのない、想定外の現象。理解できずにいた。

 睦月はしばらくの間、夢鏡とスリジエを交互に凝視し続ける。

 見ていて何かに気付いたのか、悟ったような表情で心中思った。

(まさか……そんなことってあるのか!? いや、まだ可能性の話でしかない。まさかな……)

 一文字に口を結び、思案し続ける睦月。



 そんな中、弥生達と対照的なのが、城の上空にいるドグマであった。彼は、見初めるかのような瞳で、神々しく光を放つ夢鏡を見つめていた。初めて眼にした夢鏡の姿に、黒黒と染まったドグマの心に、僅かな光が差し込む。

 ドグマは虚ろな眼のまま、夢鏡を目指し、ゆっくりと前へ進み始めた。



 夢鏡の周囲を見回していた弥生が、ドグマの異変にいち早く気がついた。

「あっ、ドグマさんが……!」

 弥生の声が耳に入ったようで、考えるのをやめ、睦月は顔を上げる。

「春野、声を出したりして、急にどうした」

 弥生は見たまんまの風景を、睦月に伝えた。

「そ、それが、ドグマさん、ゆっくりと夢鏡に向かって進んでいるみたいで……!!」

「なっ!? まさか!?」

 睦月は、すぐさま目の色を変え、ドグマがいる方向へと目を向ける。視線を変えた先には、弥生が言った通り、ドグマがゆっくりと夢鏡を目指している光景が目に止まった。

 ……まずい! 浄化していないドグマが夢鏡に触れたりしたら、夢鏡が暴走してしまう……!

 睦月が、脚を動かし、ドグマを止めるべく、行動にでた直後。


 睦月の行動を遮るかのように、夢鏡が二度目の光を放つ。光は真っ白に輝き、広場を癒やしていく。放たれた二度目の光こそ、窮地を助ける、聖なる光だった。



次で第十三話が終了。いよいよ最終話へ突入致します。なるべく残された謎を明かしつつ、ハッピーエンドにできたらなと思います。

次話投稿予定は……未定(汗) とりあえず、来月末までに投稿できるよう頑張りたいです。

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