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弥生ともう一つの世界  作者: Runa
第十三話 弥生と竜の大暴走
41/51

弥生とドグマと竜の少女

ここから先、節の数が5つに増えます。字数も、いつもより1000字から2000字少ない、6000字程度まで減ると思われます。

ご理解のほど、よろしくお願いします。


気がついたら、まさかの半分消滅していたという状況に陥り、改めて書き直しました。なので、前回と違う箇所があるかもしれませんが、ご了承ください。はぁ、悲しい(T_T)

 ベエモットは苦々しい顔つきでドグマの目を見据える。ドグマの行動に想定外だったのか、目を見開きながら迫りくる危機に焦っている様だった。

 ベエモットが戸惑っている内に、ドグマが距離を詰め寄ると、手剣を高く振りかざす。

「死ねええええぇぇぇぇ!!!!」

 と、奇声を上げながら手剣を振り下ろしたドグマ。

 ベエモットは後ろを一歩下がり、剣先が体に触れるか触れないかぐらいの距離で攻撃を避ける。

「くっ……!!」

 ベエモットの口から、悲痛な声が漏れた。


 弥生、睦月、スリジエの三人は、固唾を呑んで二人の戦いを見守っている。弥生に至っては、複雑な心境で光景を見つめていた。

 スリジエが、睦月の顔を見て、心配そうな声色で質問を投げかける。

「冬川君、あの二人、どっちが強いか分かる?」

 睦月は首を横に振ると、スリジエの質問に答えた。

「いや、分からない……二人共に“ライアン先生と同等の実力”を持っていることぐらいしか……。はっきり言えば、二人の強さは五分五分だろう。どちらにせよ、激しい戦いになるのは間違いない」

 睦月の言葉を耳にし、弥生とスリジエは不安げな瞳で戦いを見つめる。


 ドグマが再び手剣を振り回しながら、ターゲットであるベエモットに詰め寄っていく。けれども、ベエモットは一歩後ろに下がり、攻撃をかわした。二人から流れ出す、切羽詰まった空気が広場全体に漂っていく。


 二人の戦いを、心配そうな顔つきで見続ける弥生。

 ――ベエモットさん、ドグマさん……!

 弥生は両手を組んで、願うように二人の無事を祈り始めた。


 弥生の心境など知らないドグマは、殺意に満ち溢れた目つきでベエモットを凝視する。

「ベエモット! 殺してやる、殺してやる、殺してやる!」

 一歩一歩、足を少しずつ動かしながら、前へと突き進んでいった。途中で走りに切り替え、スピードを急加速させていく。水の流れに沿って進んでいる為か、スピードはみるみる内に加速していった。

 ベエモットは苦々しい表情で、ドグマの動きを注視している。ドグマが攻撃体制に突入した瞬間、ベエモットは逃げるように走り出した。ドグマからの攻撃を受けないために。

 しかし、水の流れに乗っているドグマが、逃げるベエモットに追いつかないはずはなかった。案の定、一分も経たない内にベエモットとの距離を縮めると、ターゲットに向けて三度目の攻撃を繰り出す。

 しまった――! と、ベエモットは瞬時に直感した。そして、ドグマの手剣が、無防備なベエモットの背中に深く食い込む。

 ほぼ同時に、ベエモットの顔が歪んでいき、思いっきり声を荒げた。

「ぐはっ……!!」

 ベエモットがしゃがみ込んだ時、何かに反応するかのように、ベエモットの鼓動が大きく脈を打ち始める。彼は思う、絶体絶命かも知れないと。

 ドグマから攻撃を受けたことによって、自分の中に眠っていた呪いが発動するのではないか、ベエモットはそう感じていた。

 ドグマは不敵な笑みをこぼし、仁王立ちしている。ベエモット、これで終わりにしよう。と、言っているかのようだった。

 ベエモットが息苦しそうに、睨みながら立つドグマを見上げる。

 ――終わり、か。果たして、お前に出来るかな? 終わらせることが……。

 ベエモットとドグマの様子を、不安げな瞳で伺っていた弥生は、間もなく起ころうとしている“危機”を場の空気で感じ取った。

 ドグマさんがとどめを刺そうとしている! いけない、止めなければ!!

 弥生は全速力でベエモットの所へ泳ぎだす。

 ドグマ手剣を振り下ろした時、弥生が防御魔法の呪文を唱えた。

「アクア・シールド!!」

 小さな水の塊が出現したかと思えば、徐々に集まっていき、巨大な盾へと変化を遂げる。弥生の全身を覆い隠すほどの巨大な水の盾は、振りかざしたドグマの手剣を受け止める。けれども、呪文を唱えた弥生の魔力は残り少なく、いつ魔法が消えてもおかしくない状況だった。その為なのか、全身が小刻みに震え始めている。前に付き出した両手の指先までもが震え出していた。

 弥生は精一杯「ドグマさ――――」と名前を呼ぶも、ドグマの奇声にかき消される。

「ぐおおおおぉぉぉぉ!! 邪魔を、するなあああぁぁぁぁ!!」

 ドグマは手剣に力を込め、水の盾を壊そうを試みた。丈夫そうな盾に見えても、少ない魔力で作り出された盾はもろい。特に弥生に至っては、魔法に関してはほぼ初心者と変わらない実力であるため、時間稼ぎにしかならない。

 ドグマが水の盾に手剣を押し込んだ直後、もろい水の盾は一瞬で粉々に砕け散る。距離を詰め寄っていくドグマに、弥生が声をかけた。

「ドグマさん、正気に戻って下さい!! 闇の声に耳を傾けては駄目です!!」

 心の底から思った、嘘偽りのない、真の言葉。ドグマに届いてほしいという願いも込められている。

 けれども、弥生は理解していた。声をかけただけでドグマの中に潜む闇を払拭させることはできないことを重々承知の上で、それでもなお声かけずにはいられなかったのだ。


 ――どうしたら、どうすればいいの……!?


 弥生がドグマを助ける為の案を巡らせている中、ドグマは笑いながら思いの丈を声に出してぶつけた。

「ふっ、ふははは! どうせ、俺には……未来の光なんて、ないんだあぁ!!」


 弥生は、ドグマの言葉を耳にし、引っかかることがあったのか、何かに気付く。

 ――未来の、光……? 光…………光、そうだ!! 光の魔法!!


『ラリア、対象者に植え付けられた闇を払拭させるには、対を成す属性でしか消え去ることはできない。その闇の魔法に対抗出来るのは、“聖なる”光の魔法だけ。それをよく覚えておくんだよ』

 人魚だった頃――幼少期に父、国王から教わった言葉。


 光の魔法。闇の魔法に唯一対抗出来る魔法であり、かつ、闇の魔法と対を成す属性でもある。ただし、闇の魔法もそうだが、ある程度魔法を使いこなせる者でないと発動せず、極めて難易度高い魔法なのだ。

 光の魔法は光の魔法でも、“聖なる”光の魔法ではない。おそらく、発動させても意味はないだろう。だとしても、魔法を使うことしか案は見つからない。やるしかないのだ。


 ドグマは不敵な笑みをこぼすと、少しずつ足を動かし始めた。

 闇に心を囚われたドグマを元に戻す為、弥生が光魔法の呪文を口にする。

「ディオサ・ルーチェ・エスペランサ!」

 直後、弥生の足元に魔法陣が出現し、強烈な光を放った。光が弥生を包み込んだかと思えば、すぐさまドグマの元へと直行する。


 しかし――――。


 ドグマの中に潜む心の闇があまりにも強大なのか、光は寸前でピタリと停止し、闇の力によってかき消された。魔法が無効化された様だ。現状が変わった訳でもないので、ドグマの瞳に、光は戻っていない。


 ……やっぱり、“聖なる”光の魔法じゃないと意味ないんだ……通常の魔法じゃあ……。聖なる光を浴びないことには……。

 弥生は、がっくりとうなだれながら深いため息を吐く。


 弥生が激しく落ち込んだ時、ドグマは叫んだ。

「俺の、邪魔をするなぁ!!」

 弥生めがけて、手剣を振り回しながら迫っていくドグマの様子は、まさにモンスターのようだった。

 ドグマが手剣を勢い良く振り回した反動で、弥生は尻餅をついて倒れる。

「ドグマさん……」

「ベエモットぉ……殺してやる……! 終わらせてやる……!!」

 しゃがみ込むベエモットを目指し、ドグマが再び歩き出すと、弥生は「ドグマさん!!」と叫びながら立ち上がった。ドグマを止めなければいけない。弥生の脳内にはそれしか浮かんでいなかった。


 弥生がドグマを止めるべく動き出した直後、泳ぎ始めた弥生の背後で、誰かが呪文を唱える。声の主は弥生が聞いたことのある声だった。

「チエーラ・ツァイト」

 瞬間、ドグマとベエモット、両者の動きが封じられた。特に、動き出していたドグマは、拘束魔法によりその場で強制的に停止させられる。

「ぐぐぐぐっ……!」

 うめき声を上げながら弥生を凝視しているドグマとは対照的に、ベエモットは苦しそうな表情でうつむいていた。


 チエーラ・ツァイト。消滅したライアンが、黒の人魚族派遣隊に使った、対象者を一時的に呪縛する拘束魔法だ。魔法を発動させた主は誰なのか、気になった弥生が振り返ると、そこには、魔法を発動させた張本人、睦月が立っていた。

 弥生は「睦月、さん……!?」とつぶやきながら、睨みつける睦月を、呆然と見つめていた。まさか睦月がここで魔法を使うなど予想だにしていなかったのか、大きく目を見開き、立ち尽くしている。

 睦月は、冷静さにかけている彼女に向けて、一喝した。

「何を考えている! 今俺らが止めるべき相手はドグマじゃない。ペルロマ様だろう!」

「じゃあ、睦月さんはドグマさんを放っておけとでも言いたいんですか!?」

 弥生の問いに対し、睦月が静かに言い放つ。

「そうは言っていない。ただペルロマ様を止めるのが最優先だと言いたいだけだ。春野、目を覚ませ!! 冷静になってよく考えろ!」

 弥生は横に首を振り、睦月を睨んだ。

「イヤです! 私は、ドグマさんを助けます!」

「春野!!」

 睦月の制止を無視して、弥生が泳ぎ始める。

 スリジエが弥生の元に泳ぎ寄り、弥生に「春野さん!!」と声をかけ、続けて言った。

「ペルロマさんを止めないと、ここにいる全ての者が死ぬことになるのよ!? 春野さんはそれでもいいの!?」

「ペルロマ様の力は強力だ、世界だって滅ぼすことだって出来るんだ。それが何を意味するか、春野には分かるだろう?」

 スリジエと睦月、二人の言葉によって、頑なになっていた弥生の心がほぐれていき、徐々に冷静さを取り戻していく。

 弥生は動きを止めて、何かに気が付いた。そして、二人の言葉が脳内で繰り返される。


 ――ここにいる全ての者が死ぬことになる。

 ――世界を滅ぼすことだって出来る。

 そう、ペルロマを止めない限り、ドグマを助けることすらできなくなる。そして、弥生達も命を落としかねない状況であるということを、弥生は思い知らされる。


 弥生の唇がゆっくり動き出す。

「睦月さんとスリジエさんの言う通りだね。ドグマさんを助けたい一心で周りが見えていなかった。ごめんなさい。そうだね、ペルロマさんを止めなくちゃね」

 弥生は、スリジエと睦月の顔をそれぞれ一見し、荒げるようにつぶやく。

「止めよう、ペルロマさん、いや、ペルロマ様を!」

 三人は力強く頷き、ペルロマが浮いている城の方向を、しばらく見つめていた。




 弥生は不安げな面持ちでペルロマを凝視する。

「思ったんですけど、睦月さん、ペルロマさんを止めるにはどうすれば……」

 睦月は「その前に、二人に言っておきたいことがある」と言い、城の上空で魔力を放出し続けているペルロマを横目に、説明し始めた。

「弥生とスリジエは知っているか定かではないが、ペルロマ様は二つの能力を持っている。世界を破壊してしまう能力と、代償と引き換えに願いを叶える能力だ。今は願いを叶える能力が発動しているだけだが、世界を破壊してしまう能力が発動してしまえば、取り返しがつかない事態になる。その前にペルロマ様を止めなければいけない」

 無表情で視線を注ぐ彼を、弥生とスリジエは困惑したような顔色で見つめている。

「そこで二人の力を借りたいんだ。俺らアクアワールドの住人はペルロマ様に対して攻撃魔法を使うことは禁じられている。けど、いざという時のために、睡眠魔法をかけて足止めすることはできるんだ」

 スリジエは、睦月が何を言いたいか、一瞬で理解した。

「要するに、ペルロマさん……じゃなくてペルロマ様に私と春野さんが攻撃魔法を使って、ペルロマ様の気を引かせていればいいのね?」

「そういうことだ。二人が魔法を使っている間に、背後に回って睡眠魔法をかける。うまくいくか分からないが、やってみるしかないんだ。時間はもう残されていないからな」

 睦月は苦々しい表情で歯噛みしながら視線を逸らすと、再び二匹の人魚に視線を戻した。

「二人共、やってくれるか?」

 彼の問いかけに対して、二人の心は既に決まっていた。弥生とスリジエは、自身の思いを告げる。

「もちろんっ! ペルロマ様を止めなきゃ、だもんね!」

「当然よ! というより、春野さんだけじゃ心配なところがあるもの。私もやるわ!」

 スリジエの発言を耳にし、弥生はショックを受けたような顔で、発言者である彼女を見ていた。

「スッ、スリジエさん、そこまで言わなくても……」

 自分でも魔法に関して心配なところがあると充分に理解していたが、それを他人に率直に言われると凹んでしまう。

 落ち込んでいる弥生をよそに、睦月が号令をかけた。

「もう時間がない。急ぎながらも慎重に行くぞ。作戦開始だ!」

 睦月の掛け声を合図として、弥生、スリジエ、睦月は作戦を開始する。

次回の投稿予定は未定ですが、年内にもう一回投稿できたらしたいです。頑張ります。

そう言えば、目標の年内完結、できなかったなぁ(汗) 完結するまで、もう一つの世界に専念します! はい。

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