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弥生ともう一つの世界  作者: Runa
第四話 弥生、スリジエと恋敵になる
16/51

弥生と現れた男・ベエモット

 このままじゃ、睦月さんが……取られちゃう!

 弥生は教室内で、スリジエが睦月とお弁当を食べようと誘っている場面を眺めていた。

 自分もかばんからお弁当を取り出してはみる。だが、取り出してどうするかはまた別の問題だ。

 しかし、スリジエをそのまま放って置くと睦月と一緒にお弁当食べることになってしまうだろう。それだけはなんとしてもさけたい。

 けれどすでに睦月さんに声かけている時点で危ない感が出ているし……やっぱ睦月さんに声かけてみるべき?

 う~ん、と首をかしげ悩みこむ。

 いや、悩んでいても仕方が無い! 一か八か勝負だ!

 何かを決めたように縦に首を動かすと前へ突き進む。向かうのはもちろん、睦月の席だ。

 睦月が座る席の前にスリジエが立っていた。その間に割り込むように立ち止まると一言。

「ちょっ、ちょっといいかな?」

 スリジエと睦月が同時に弥生の顔に視線を向ける。

 スリジエが最初に口に出す。

「一体何の用? 用なんてないはずでしょ?」

 弥生は気まずそうにスリジエから視線を逸らすと、睦月を一目いちもくする。

「あ……いや、スリジエさんにじゃなくて、睦月さんに用が……」

「俺にか? ……何か用か?」

 睦月は何かあったのだろうかというような、少々不安な目で弥生を見上げた。

「どうした? 何かあったのか?」

「たいしたことじゃ、ないんだけど……お願いがあって」

「お願い? なんだ」

「あ、あのっ……よ、よかったら……お弁当、私も一緒に食べたいな思って!」

 弥生が放った言葉にいち早く反応したのはスリジエだった。

「どうして、あんたも一緒に食べなきゃいけないわけ?」

 スリジエ眉をひそめ、警戒するように弥生を見つめている。自分と睦月がそれ以上仲が良くなるのが気に食わないからだろうか。かすかに歯軋りのようなこすれる音が聞こえた。

「不公平よ! おかしいじゃない! こんなの!」

「えぇっ」

 弥生はスリジエに不公平だといわれ本気で傷つき、ショックで身体が固まってしまう。

 スリジエと睦月の顔を交互に見ながら、言い訳するように反論する。

「そ、そんな……不公平だなんて。わ、私はそんなつもりじゃ……」

「そうでしょ! 絶対そうでしょ!」

 自分でさえも何故怒鳴られているのかわからない。なんだか話がずれてきているというか、ぐだぐだになってきているというか……。

 とにかく、スリジエさんは私の何かが気に入らないから怒っているかもしれないけど。

 そんな私とスリジエさんを傍観していた男子たちが噂をしはじめる。

「なぁ、スリジエちゃんが春野を怒鳴ってるぞ」

「すげー顔だなぁ、スリジエちゃん」

「案外嫉妬深い性格だったりして」

 男子たちが自分の噂をしていると気づいたのか、突如怒鳴るのをやめたスリジエ。

 ある意味助かった。これ以上ヒートアップしたらどうなるかと思った。

 ほっと胸をなでおろしたとき、睦月が口を開いた。

「――春野」

 弥生は振り返り睦月の顔を見下ろす。

「なぁに? 睦月さん」

「弁当、一緒に食べるんだろう? だったら、立ってないで誰かの椅子借りて座ったらどうだ。スリジエもそうだが」

「え……?」

 弥生とスリジエが同時に声を漏らした。

 それってつまり……。

「わ、私も一緒に食べてもいいって事!?」

「だからそうだといってるだろ?」

 睦月はやれやれとあきれるようにため息を漏らす。

「あ、ありがとう!」

 弥生に笑みがこぼれた。よかったぁ! これでなんとかスリジエさんのアプローチが少しでも防げるはず。

 弥生とスリジエは近くの席から椅子を借りるとお弁当を机に置く。スリジエの表情はどこか不満そうだ。

 弥生が椅子に座ったとき、教室の入り口が開く。担任の荒川先生だ。息切れが激しく、急いで走ってきたらしい。

 荒川先生は弥生たちに一直線にやってきた。一体どうしたというのだろう。

 お弁当の包みを開けている最中に弥生は荒川先生に声をかけられる。

「春野さん、お弁当食べようとしているところ悪いんだけど、ちょっといいかい?」

「荒川先生、何ですか? 何かあったんですか?」

 弥生の質問にどこか言いづらそうな荒川先生。よっぽどのことがあったに違いない。

 荒川先生が言葉を発した。

「実はね……春野さんにどうしても会いたいっていう男の人が来てるんだ。校長室に。だから校長室まで行ってくれないかな?」

「えぇ!?」

 弥生に頭をなぐられたような衝撃が走った。

 やっとお昼ご飯なのに! 睦月さんとお弁当なのに! なんで、なんで!?

 今さっき一緒にお弁当を食べる承諾をもらっただけに衝撃が収まることはない。

「あ、あのその男の人ってどんな人ですか? 名前とか……」

「ん~、確か『ベエモット・ムーン』さんだったかな? 四十台半ばって感じの優しそうな人だったよ」

「ベエモット・ムーンですって!?」

 何故か近くに座っていたスリジエが立ち上がった。立ち上がった拍子で椅子が床に倒れる。スリジエは椅子には目もくれていない。

「す、スリジエさん……どうかした?」

 スリジエにおそるおそる尋ねてみた。また怒鳴られるのではと思い、自分の声の感じはどこか怯えているように聞こえた。

 まぁ、確かにまた怒鳴られるかも? とか思っている自分がいるけど……。

「……別に。何でもないわ。急に大声をあげてごめんなさいね」

 スリジエは何事も無かったかのように椅子を元に戻す。そのまま座りお弁当を開き始める。

 あれ? 怒られない? 

 弥生は首を傾げた。スリジエに怒鳴られない理由を聞くのもどうかと思い、心の中でつぶやくだけにとどめた。

 荒川先生に視線を戻し、質問する。

「荒川先生。さっきの話なんですが、その男の人ってまだ校長室で待っているんですか?」

「あぁ。ずっと待ってるよ。だから悪いけど、今すぐに校長室に向かってほしいんだが」

 えぇ!? そんなぁ!

 しかし、待ち人を待たせるわけにはいかないし、それに校長室で待ってるということは校長先生も一緒にいたりするかもしれないから……。

「……わかりました。今すぐ校長室に向かいます」

 弥生に落胆のため息が漏れ出す。

「春野さん、悪いね。ほんとはお昼ご飯、食べ終わってからの方が良かったんだけど、相手の男性がとうしても今じゃないと駄目なんてごり押ししてくるからね。校長もさすがに戸惑ってはいたけど」

 睦月とお弁当を断念しないといけなくなった弥生に荒川先生の話は入ってこなかった。

 そのあと、とぼとぼとゆっくりと校長室を目指し、教室をあとにした。



       *



 まさか、本当に『あの男』がやってくるなんて……。

 スリジエは教室でお弁当を食べていたお昼休み時間。目の前にはもちろん睦月がいる。最初は春野弥生も一緒に弁当を食べるはずだったがとある男に呼び出され出て行ってしまった。私も春野弥生も、睦月と親睦を深めるために一緒に弁当を食べるわけだが。しかし、その弥生はいない。つまり実質睦月と二人でお弁当を食べるという目的は果たしていることにはなる。

 それなのだが、喜ばしくない。何故かちっともうれしくない。

 それはあの男がやってきたから。

 あの男とは。



 ベエモット・ムーン。


 私とチェリーお姉様、そして母親を捨てた父親。

 自分の私利私欲のために私達家族を捨てて、城から出て行った男。

 ベエモットの目的は「世界征服」だ。そのためならなんでもやる男だ。

 私達家族を捨てた男がある日、母親が失踪した直後に再び現れた。

 もちろん、目当ては母親の財産だ。許せなかった。一度は恋仲になった母親をまるでモノを扱うようにいいまわるあの男を。

 それから私達、私とチェリーお姉様をおもちゃのように扱うようになった。

 だから、私達はあの男から逃れるために南の海へ戻った。



 一度担任にあの男の詳細を聞く必要がありそうね……。

 スリジエは教室から出ようとする荒川先生を呼び止める。

「あの、荒川先生、ちょっといいですか」

 スリジエが声かけたことで荒川先生は立ち止まり振り返った。

「どうかしたかい? スリジエさん」

 スリジエは勇気を振り絞って荒川先生に質問を投げかけてみる。

「ちょっと聞きたいことがあるんです。春野……弥生さんに会いたい男の人について」

「春野さんに会いたい男の人? ……あぁ、あの人だね。それがどうかしたかい? その人とは知り合いなのかい?」

 荒川先生に逆に質問返しされ、ごまかし笑いを浮かべるスリジエ。

「えっ。え、えぇ、そうなんです。知り合いなんです。こう見えて」

「へー。意外だな。それで何が知りたいんだい?」

「あの、その男の人、先生に何か言ってきませんでしたか? その、春野弥生さんに会いたい理由……とか」

 荒川先生は考え込んでいたが、なにか思い出したのかしゃべり始めた。

「あぁ! そういえば言っていたよ。確か……『春野弥生さんにどうしても伝えたいことがあるから会わせてほしい』って言ってたな。どうしても伝えたい事っていうのが気に掛かったけど」

 どうしても伝えたいこと? まさかそんなはずはない。

 あの男と春野弥生が知り合いなワケがない。何せ、一度も二人とも会ったことがない知らない者同士だからだ。

 それに、他人のために動く性格じゃない。他人のために動くとしたらあいつらのためにしか動かない男だ。

 何が目的なの? あの男は。

 ベエモットの目的が気になり考えずにいられなくなる。

 考え事に集中するスリジエをよそに荒川先生と睦月が会話をし始めた。

「荒川先生、何かと大変ですね。急に来客に詰め寄られて……」

「まぁね。あの男の人の剣幕といったら、怖すぎるったらありゃしないね。娘がいるとかいっていたけど、あの言動じゃ本当に子供を愛している父親の目じゃなかったね。

 俺も一応娘がいるけど、あそこまではないよな」

「そうなんですか? そんなにひどいんですか? その人」

「まぁね。確か娘さんが二人いるって言っていたね。そのうちの一人が確かこの学校に……」

 荒川先生が言いかけたとき、スリジエが大絶叫して阻む。

「あ――――! そっ、そういえば、荒川先生。他になにか言っていませんでした? な、何でもいいんですけど」

 あの男と私が親子だなんて他人に知られてはまずい! あんな男が父親なんてばれたら、イメージダウンだ。

 それが知られる前に話を変えよう!

「そういえば言っていたというか……やたら聞いてきたことはあったなぁ」

 スリジエは考え深そうにする荒川先生に言い寄る。

「やたら聞いてきたこと? それは何ですか? 教えてください!」

「確か、この学校に『別の世界から王子』が通っているだろうから、その生徒の名前を教えろって」

 荒川先生の言葉でそのことが睦月のことを指していると一瞬でピンとくる。

 あの男が冬川君のことを知っているですって? まぁ、昔母さんが研究していたのがその別の世界のことだから、母さんから聞いたんだろうけど。

 でも、何故? 何故王子を探す必要があるの?

 その時、スリジエの背中に虫唾が走るような汗が流れた。

 まさか、冬川君を探すこともあの男の計画に入っているわけじゃあないわよね。

 よりにもよって私の父親が王子を狙っているだなんて知れ渡ったら大変なことに……。

 一応、春野弥生に会いたい理由は伝えたいことがあるとか言っていたらしいが、他にもなにか言っているはず。

 スリジエは荒川先生に質問した。

「荒川先生、春野さんに会いたい理由、他になにか言っていたり何かはしてたりは……」

「そういえば、『春野弥生がふさわしいものか確かめたい』とかワケわからないこと言っていたなぁ」

 なんですって!

 その言葉で父親の目的が春野弥生だという事に気がつく。

 あの男の目的は春野弥生が、夢石を継承するのにふさわしいか調べること。

 そのために……わざわざ自ら出向いて。そのついでに王子の調査だ。何か情報が見つかれば、幻といわれる『もう一つの世界』につながる大きな手がかりになるだろうと踏んだからだ。

 まずいっ! 春野弥生が危ない! 

 あの男はすでに校長室で待っている。そして、春野弥生は今校長室に向かっている最中だ。校長室に行けば校長が出たところで春野弥生を襲うだろう。あの男がいつもやる手だ。

 急いで校長室に向かわなければ!

 スリジエは立ち上がり、お弁当をほったらかしたまま教室を飛び出した。

「スリジエさん!? どうしたんだい!」

 荒川先生の声はスリジエには届かなかった。



       *



 校長室


「あの~、校長先生。一応来ましたけど……」

弥生はドアの前でおどおどしながら立っていた。弥生の目前に設置されている、校長室の備品であるソファーには校長先生と、1人の男が 座っている。年齢は四十代後半あたりだろうか。肩幅が広く胸板も厚そうだ。しかし顔は初めて見る顔だ。この人が何故私なんかに会いたいんだろう?

 弥生が戸惑っていると校長先生から話を切り出される。

「実はね、この人は君のクラスにいるスリジエさんのお父さんなんですよ」

「へー! そうなんですか!」

 この人、スリジエさんのお父さんだったんだ! だからスリジエさん、名前聞いたとき反応したんだ。

 ……あれ? でも、あの反応はどちらかというと…………。

「どうかしましたか? 春野さん」

「い、いえ! なんでもありません!」

 校長に声かけられとっさに何事もなかったかような顔でごまかす。

 弥生は呼吸を整え本題に入った。

「それであの、そのスリジエさんのお父さんが何故……」

「そのことについてはスリジエのお父さん本人に聞くといいでしょう」

「あの~何故……」

 弥生が言いかけたとき、男性は半ば強引に自己紹介を始める。

「自己紹介が遅れました。わたしの名前はベエモット・ムーンと言うものです」

 あれ? なんか、ごまかされた?

「ちょっとした研究をしていましな。昔は一人で遺跡や洞窟などに調査しに行ってたのですが、今は妻に手伝ってもらいながら今の研究に励んでいるところです」

 具体的なことがないため、どこからつっこんでいいのか困り果てる。しかも内容がぐちゃぐちゃのような気が……。

「――それで、娘は元気にしてますかな?」

 弥生は「えっ」と声を漏らし、ベエモットの顔を見つめる。

 私のことかと思ったら今度はスリジエさんのことに? 一体この人は何者?

 校長がこの場にいることもあってか、軽く答えた。

「はい。元気に登校してます。クラスの人気者です」

 というか、これは担任の役目なのでは?

 その時、気のせいだろうか。ベエモットさんが歯軋りをしたように見えた。

 どこか悔しそうな感じだ。まるで娘に嫉妬しているかのよう。

 しかし、校長は全く気づかない。笑顔でベエモットと会話している。

 その校長が立ち上がり一言、弥生に告げた。

「ここからは春野さんとベエモットさん、二人きりで話したほうがよろしいでしょう」

 えぇ!? ちょ、校長先生!?

 驚きというより、待ってほしいという感情が真っ先に噴出す。

 待って、待って! この人とはまだ二言、三言しか話してないのに自信がないよ!

 もうちょっと盛り上げてから出て行ってよ~! 私どうしたらいいの!?

 弥生が心の内で叫んでいるうちにも校長はあっさりと校長室から出て行ったしまった。

 でも、なんだろう。この胸騒ぎは。なんか嫌な予感がする。以前遭ったような厳しい戦いに再び遭う気がする。

 スリジエさんのお父さんだから? それとも――――。

 ベエモットが口元に笑みを浮かばせる。

「やっと……二人っきりになれましたな」

「え?」

 弥生が振り返ると、ベエモットが立ち上がった状態でこちらをにらみつけた。

 な、何? 何? もしかして、私の予想当たっていたりなんかは……しないよね?

 予想があたったら嫌だからね! 絶対。

 けれども、不運にもその予想は当たってしまった。

「これで、あなたが本当に夢石の継承にふさわしいか確かめられる!」

 ベエモットは戦闘の構えをしたかと思うと、弥生の足元に魔法陣が浮かび上がった。

 みた事のない魔法陣だ。闇が弥生を喜んでいるかのようだ。

 魔法陣の中から光のつるが数本伸びると弥生の身体にからみつく。

 しまった!

 ふりほどこうとするもふりほどけない。相手はスリジエ以上の実力をもっているかもしれれない。魔法陣を呪文を唱えず現せるのは相当な高度の技術が必要になるからだ。

 な、なんとかしなくちゃ。でも、どうしたらいいの?

 光のつるをふりはらおうとする弥生を見て、ベエモットが感心の声をあげる。

「ほぉ……。なかなかやりますな。さすが、北の海の王女様だけの事はある」

 弥生は思わずベエモットの顔を見て反応してしまう。

 何故それを? どうして私がラリアだと知っているの? 誰にも話したことはないのに。

「何故自分の正体を知っているのか、そんな顔をしてますな」

 まるで私の心の中を読んだような口調だ。

「どうして、どうして知ってるの!」

「どうしてって……あなたがラリア王女の生まれ変わりだと、海の世界ではほとんどで知れ渡っていることだからですよ。ラリア王女」


 私の、正体が……すでに海の世界に知れ渡っている?


「まぁ、当然でしょうね。あれだけ派手にシャルロットと戦っていたのだから」

 シャルロットのことも知っている!? つまり以前のことはみんな知っているということになる。

 でも一体何者なの、この人は。油断は出来ない。

「目的は何なの? 何が目的で私に会いに来たの?」

「おやおや、相当警戒されているようですな。まぁ、いいでしょう。そんなに気になるのならば教えて差し上げます。教えないでおくと、あとで暴れられたりでもされてはこまりますからな」

 その笑顔はどこか新月のような暗黒の部分が顔を出したように見えた。

「とあるお方に頼まれましてな。春野弥生を調べてこいと。まともに夢石を扱えないくせに夢石を壊し、それでもなお『継承者の座』についているのはおかしいとね。生まれ変わって無駄な知識を溜め込んで損しておられるようですし」

 夢石が壊れてもまだ私が『夢石の継承者』? それはどういうこと? 前世で国王様から聞いた話だと一度夢石が壊れると『夢石の継承者』ではなくなると。一度継承者でなくなるともう二度と『夢石の継承者』にはなれないと。それなのにまだ私が『夢石の継承者』だなんて。

「だから、あなたのためにも夢石の力はこちらがいただこうと思いましてな。夢石が壊れたといっても、すでに夢石の力はあなたの魔力と一体化されておられるようですし」

 ベエモットはそうしゃべると、魔法陣の魔力を増やし、力を強めた。魔法陣が強くなったことで、光のつるもより深く弥生の身体に絡まる。

「ということであなたには『夢石の継承者』からはずれてもらいますよ。いまさらその光のつるから離れようとしても無駄です。あきらめなさい」

 そんな……。そうなると私は、私は……どうなるの?

 私は、私は……………………。

「断るわっ」

 弥生はベエモットの目を見据えて断言した。

 夢石を渡すものか。私の分身ともいうべきものを、得たいのしれないに奴に渡すものか!

 守ってみせる、夢石を!

 弥生とベエモットのにらみ合いが続いたのだった。

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