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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第九十四話 全てを切り裂く矛の神

亜紗の神剣である『矛神』が出ます。

音姫達は走る。


すでに山の麓近くまで到達し、後は登るだけだ。だが、麓にはたくさんの魔物が集結している。


相手もわかっているのだろう。ここを抜かれたらかなりマズいということに。それは航空戦力を見るだけでわかる。


孝治は一度地上に降りた。


「どうする?」


「突破するしかない。でも、このままだったら追いつかれる」


音姫はチラッと由姫を見た。


音姫の作戦だとこういう状況で由姫を置いて突破することになるが、やはり、心の奥底では由姫を囮にすることには抵抗がある。


だから、由姫は頷いた。


「私を置いて行って」


「でも」


「お姉ちゃん。私言ったよね。だから、私を囮にして。それに」


由姫は身構えた。そして、地面を蹴る。


迫って来ていたトロルの懐に入り込み殴り飛ばした。そのまま横にいたトロルに清浄を叩きつけて吹き飛ばす。


「今、この場で囮になった方がいいのは私だから」


「わかった。由姫ちゃん、お願い。みんな、突撃するよ」


そして、音姫が地面を蹴ろうとした瞬間、近くの広場で何かが動いたのがわかった。


空を飛んでいた光がレーヴァテインを向ける。


「召喚陣や。サイズはかなり大きいで」


「このタイミングで、召喚陣!? まさか、最初から」


「お姉ちゃん!」


由姫は迫ってくる魔物を殴り、そして、投げ飛ばしながら叫ぶ。足を払い、蹴り飛ばし、攻撃を受け流し、カウンターを叩き込む。


由姫は流れるような動きで道を開けていた。


「ここは私が食い止めるから、だから」


オーガの斧を片手で受け止める。


「戦って!」


「うん」


音姫は地面を蹴った。光輝を鞘に収めて軽やかなステップで由姫の横を駆け抜ける。そして、鞘から光輝を抜き放った。


その刃はいくつもの閃光となり群れを削り取る。そのままさらに一歩を踏み出して光輝を返した。


残った群れが衝撃波によって駆逐される。


「ヤバいな」


孝治は弓から黒の剣に持ち替えた。そして、飛び上がる。孝治の視線の先にいるのは二体のドラゴン。さすがに、光も無理だと悟ったのか孝治の横まで後退していた。


「どうする?」


一体は市街地に向かい、もう一体はこっちに向かってくる。孝治は黒い剣を振り上げようとした時、目の前にスケッチブックが舞った。


『任せて』


限界までそう書かれたスケッチブックが孝治の目に入り、孝治は地上を見た。


亜紗が刀を構えている。ただ、ただの刀ではない。いつも使っている刀は鞘に収まったままだし、その刀からは何とも言えない力が離れていてもわかった。


魔剣、というべきだろうか。見た目はただの刀だが。


亜紗は一歩を踏み出し、その刀をすくい上げるように振る。だが、そんな場所から届くわけがない。


奇妙なことが起きた。その光景を見た誰もがそう言うだろう。そして、あまりのことにドラゴンの方を見た誰もが言うだろう。


急にドラゴンの首がズレたのだ。まるで、元から斬られていたかのように。ドラゴンは血を撒き散らしながら倒れる。


誰もが固まっていた。


孝治は黒い剣を振り上げたままだし、光はレーヴァテインのコピーを展開したまま。


由姫は目の前にいるリザードマンを殴ろうと腰をひねったままで、近くにいる音姫は光輝を振り下ろそうとして固まっている。


それは貴族派の魔物達も同じだった。攻撃する手すら止まっている。


動いているのは亜紗だけ。亜紗は握っていた刀を鞘に収めると落ちてきたスケッチブックを掴み取った。


魔界最大の生物であるドラゴンが文字通り瞬殺された。それは、動きを止めるには十分。


そして、亜紗は動き出した。そのまま音姫の近くまで駆け寄ってさっき使った刀ではなく、いつも使っている刀で固まっていたゴブリンを斬り裂いた。スケッチブックを音姫に見せる。


『今』


「あっ、うん。みんな!」


その言葉に孝治と光が動き出した。


二人は弓とレーヴァテインのコピーであっという間に道を開ける。その道を音姫と亜紗は駆け抜けた。


「亜紗ちゃん、さっきのは?」


『矛盾の話を知ってる?』


矛盾。


それは中国に伝わる故事の一つだ。簡単に言うなら最強の矛と最強の盾を売っていた商人がどっちが勝つかという質問に答えられなかったという話。


それは音姫も知っている。最強の矛と最強の盾がぶつかり合えばどうなるかは知らないが。


『その矛の力。全てを斬り裂く矛の神』


「もしかして、矛神?」


その名前は音姫が特に聞いたことのある神剣だった。


刀の形状をする神剣の中で光輝と矛神は常に二強と言われるほど突出したものだ。その後にとある人物の持つ二本の刀が続く。


光輝は対象者を神格化させて身体能力を上昇させる刀。その威力は光輝を持つ音姫自身が一番よくわかっている。


対する矛神は身体能力を上昇させる効果は無いが、とある一点だけが極限まで高められた武器。


切断能力。


矛神の前に断ち切れぬものは同じ神剣の中でも強力なものしかないと言われ、『全てを斬り裂く矛の神』という異名すらある。ただ、その姿を見た物はいない。


噂だけが一人歩きする神剣。それが矛神だった。


確かに、噂通りならドラゴンの首を落とせたことは納得出来る。リーチの面を除いて。


『噂通りの力は持っていないけど、大型の敵相手には有効だから』


「亜紗ちゃんはどうして矛神で戦わないの?」


亜紗はすぐにスケッチブックを捲った。


『矛神の力が使えるのは1日に、というより24時間以内に3回だけ。それ以上はただの脆い刀』


切断能力を極めて高めた結果、矛神は打ち合うことが出来ないようだ。でも、力を使えばそんなことは関係ない。


『狭間の鬼との戦いに残しておくから』


「わかった。亜紗ちゃんなら大丈夫。私と一緒に到着するよ」


そして、二人は同時に地面を蹴った。


矛盾の話はかなり短くしました。かなり有名なので知りたい方はネットへ。


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