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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第八十二話 敗北

亜紗は最速で地面を蹴った。


音姫が開けた結界の穴に最大出力を出した由姫の力が結界を無理やりこじ開けて、中に亜紗、孝治、悠聖が入る空間を作り出した。


「亜紗は先に行け。悠聖の召喚が終わったらすぐに向かう。外部と内部からの同時破壊魔術なら効くはずだ!」


孝治の言葉を背中に受けて亜紗は地面を蹴る。握っている刀を鞘から抜いて肩に担いだ。そのまま加速する。


亜紗の最速は第76移動隊の中で最速。世界で見れば50番内に入る速度だ。だけど、今はそれが遅い。


周が亜紗からの応答に答えなくなって少し時間が経っている。だから、亜紗は急ぐ。


校庭を見回して敵がいなことを確認した瞬間、結界が破壊されるのがわかった。亜紗はそのまま中庭に回り込む。


そこには周を抱きかかえるエレノアと七葉を壁に寝かす千春の姿が亜紗の目に映る。


亜紗は刀を構えた。


「動くでない」


エレノアが周に杖を向ける。周の体はボロボロで来ている制服はいたるところが破けていた。


周を人質に取られた以上、亜紗は動けない。


「そのまま刀を下ろしじっとしておれ。余は殺したくないからな」


エレノアの言葉に亜紗は素直に従う。そうしなければ周が傷つく可能性を考えると亜紗は何も出来ない。


エレノアは満足そうに頷いた。


「クラリーネ」


「わかっているよ」


亜紗は目を見開いていた。エレノアの声に反応したのまもちろん千春。クラリーネというのは『水帝』。つまり、都の近くにいた都の親友が敵だったということだからだ。


クラリーネはそのまま都に近づいて額に手を当てた。たったそれだけで都が崩れ落ち、クラリーネが抱きかかえる。


亜紗はスケッチブックを取り出した。


『都さんをどうするつもり? 天宮千春』


「ボクはもう天宮千春じゃないよ。『水帝』のクラリーネ。君達の敵だから。都は生贄に使う。狭間の鬼の生贄に」


亜紗は刀を握りしめた。周は一番誰かが犠牲になることを嫌う。だから、この場で止めないといけない。でも、その周が人質だ。


動きたいのに動けない。どうすれば、


「エレノア様、撤退準備が完了しました」


クラインの言葉と共にエレノア達の姿が闇に沈み始める。


「逃がすか!」


孝治の声が聞こえてくると同時に黒い閃光が空間を切り裂いた。それをエレノアは杖で弾く。その瞬間に亜紗は走る。


一歩目からトップスピード。そして、二歩目には限界を超える高速移動。距離にして15の距離を亜紗は一瞬で駆け抜けた。


エレノアが反応するより早く抱きかかえられた周を奪い返し、離脱する。離脱すると同時に亜紗がいたところを頸線が砕いた。


「亜紗! 追撃だ!」


亜紗は周を起き走り出そうとした。だけど、すでにエレノアは胸の部分にまで闇に浸かっている。


「カーニバルを楽しんで」


その言葉と共にエレノア達の姿が消え去った。都と一緒に。


「周! 無事か!」


「七葉! 大丈夫か!」


孝治と悠聖が周と七葉に駆け寄る。


いたるところで破壊された痕跡があるということは周はたった一人で抵抗したのだろう。そして、負けた。


亜紗自身がいつの間にか精神操作されていたから。


「亜紗、大丈夫?」


光の声に亜紗はようやく自分が刀を握らない手のひらから血が出ているのがわかった。強く握りすぎて爪が皮膚に食い込んでしまったようだ。


亜紗はスケッチブックを片手で捲る。


「私のせい」


「それは違うと思うで。海道も音姫さんも完全に精神操作されていたみたいやから、亜紗一人のせいやない」


『でも、私が一番気づけたはずだった。私が気づいていたら、周さんは、あそこまでならなかった』


周の体はボロボロだ。ようやくやって来た由姫と音姫が慌てて周に駆け寄るのもわかる。


亜紗の目から涙が流れる。これは誰の目からもわかるほどの敗北。周が起きたら一体何と言うだろうか。


「浩平か? 俺だ。今、どこにいる?」


由姫と音姫がやって来たことで周から離れた孝治がこの場に唯一いない浩平に連絡を取っていた。


『孝治か? 良かった。かなりヤバい事態だ』


「何かあったのか?」


浩平の声がいつもと違うことに気がついた孝治が浩平に尋ねる。


『学校から東にある山に魔物が出現! 数は大体6000くらいか? 貴族派も今現れた。やべぇぞ。今、リースはアル・アジフに連絡してる。周は?』


孝治はチラッと周を見た。


由姫と音姫が必死に治癒をしているが意識が戻る様子はない。こういう時に孝治がすることは一つだけ。


「これより『GF』移動課第一部隊第76移動隊副隊長花畑孝治は副隊長権限により隊長になる。浩平はリースと一緒に『ES』に合流。音姫さん、すぐに市役所に向かって避難命令。亜紗と由姫に悠聖は二人を病院に。俺と光は偵察に出る」


周が動けない以上、孝治が隊長として動くしかない。だが、今の状態では確実に全滅するのがおちだ。


「周、早くそろ。お前が起きるまで俺達は持っていてやるから」


その言葉と共に孝治は光と共に空に飛び上がった。


次からが第一章前半終わりの戦いが始まっていきます。狭間市で最も長い1日と言われる戦いになる予定です。

意識を失った周と七葉。完全に動揺している亜紗。誘拐された都。誰もが平常心でいられない中、戦いが始まります。

由姫が決める決意の覚悟。亜紗と孝治の持つ神剣の力。ほとんど活躍していない悠聖と精霊達。アル・アジフの本気。未だにほとんど活躍していないメンバーからちょっとしたヒントを残してそのままにしている人物やすでに活躍しているメンバーまで総力戦で書いていく予定です。

ちなみに、一番活躍する予定なのは由姫と悠聖です。


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