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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第三百二話 絶望と希望と

「何なのよ、こいつ」


肩から血を流すルネが空を見上げながら呟いた。


「化け物っすね」


肩を大きく動かして息をする刹那が呆れたように口を開く。


「まさか、ここまでとはな」


精根尽き果てたかのようにほとんど無防備で立つアーク・レーベ。三人の誰もが地上に下り立ち空を見上げていた。


三人とも飛べないことは無い。だが、すでに魔力の尽きかけている三人は空を飛ぶことすら出来なかった。飛んでいるのは三人だけ。


ディアボルガとセイバー・ルカ、そして、孝治の三人だけ。


『化け物め』


『ルカ。無事か?』


『そろそろ魔力が尽きかけているけど、まだ、大丈夫』


気丈に振り舞いながらもエッケザックスを構えるルカ。それを支えるように隣ではディアボルガが錫杖

を構えている。


どちらも疲労が酷いがまだまだ戦えるようだ。その二人の前にいる孝治は静かに運命を構えながら空を見上げている。


空を覆い尽くさんばかりに巨大な姿。黒猫が竜化(ドラグナイズ)した姿。全長100mにも及ぶフュリアスすら凌駕する巨体。


「もう終わりか? 第76移動隊副隊長花畑孝治」


「まだまだいけるが?」


「減らず口を。すでにお前達の半数は魔力が尽きておる。足手まといと共に戦えるとでも思っているのか?」


孝治は答えることなく黒猫を睨みつける。誰がどう考えても絶望的な状況だ。


悠聖が離脱してから六人でなんとか倒そうとしたのだがこの形態の黒猫にダメージを負わせることが出来たのはほんの少しだけ。しかも、各々の全力の一撃でも軽く傷つけるほどだった。


「諦めろ。貴様らでは儂には勝てん」


その言葉と共に黒猫が動く。腕で空を薙ぎ払った。孝治達は急上昇と急下降することでそれを避ける。


当たれば一撃。だからこそ、気が抜けない。


「勝てないか。こういう時なら周はどういうだろうな」


そう笑みを浮かべながら孝治は飛翔する。


「あいつならきっと、勝てなくても負けない戦いをすればいいって言うに決まっているな!」


「だから、諦めろと」


飛翔する孝治に向かって黒猫が叩き潰さんばかりに腕を振り上げた瞬間、


「うちら第76移動隊には諦めの悪い人間しかいないねんで!」


「周君だけじゃなく、私達もね!」


その腕にエネルギーの奔流が突き刺さり腕の約一割を抉り取っていた。


エネルギーが放たれた先にいるのは楓と光の二人。その周囲に浮かぶのは大量のレーヴァテイン。


「孝治、待った?」


「ナイスタイミングだ!」


孝治の運命が砲撃によって抉られた部分に突き刺さる。


「斬り裂け、運命!」


そして、運命の漆黒の刃が黒猫の腕を半ばから立ち切っていた。


「貴様!」


すかさず黒猫はもう片方の腕を振り上げる。


「行くぜ、リーズ」


「うん」


「「雨霰(セントリア)」」


その腕を雨霰のように降り注ぐ魔力が貫く。


空中で手を繋ぎ、二人で巨大な竜言語魔法の魔法陣を展開する浩平とリース。その姿を見た孝治は笑みを浮かべるしかなかった。


刹那もアーク・レーベもルネもそれぞれの世界でトップクラスの実力だが単発火力が高いというわけではない。もちろん、単発火力が高い技はあるものの三人が得意なのは集団への攻撃。


ディアボルガやルカは単発への火力は高い技はある。だが、悠聖がいないためそこまでの大技が出来ない。だからこそ、どんどん不利になって行った。


だが、今は違う。


「へっ、周囲の安全は確認済みだ。悪かったな。待たせたみたいで」


「結界も展開した。これで、私達が本気を出せる」


あれから浩平達が戦いに加わらなかったのは彼らが全力を出しても周囲に危険がないようにするためだった。だから、出ていながら戦力として動かなかった。


「四人増えたみたいだの」


「余裕だな」


「当り前だ。何故なら」


黒猫が膨れ上がったと思った瞬間、運命が斬り飛ばしたはずの腕が一瞬にして修復していた。


「貴様らのような小さなもの攻撃、今の儂には効きはせんよ」


「今のなんや? 一瞬で修復?」


「まるで修復する間に時間を止めていたように思えたけど」


「まあ、うちらには関係ないか」


朗らかに能天気に笑う光を見た浩平が呆れたようにリースを見る。


「なあ、リース。あいつ、バカだよな?」


「浩平にバカ呼ばわりされるのは末期」


「リースさん。その地味な言葉は恋人の俺の胸に突き刺さるのでやめてもらえません?」


「お前ら」


戦場にいながら能天気な空気を出す仲間に孝治は呆れたように息を吐いた。黒猫も呆れたように動きを止めている。


「第76移動隊とはこういうものなのか?」


「俺に尋ねるな。ただ、お前が一瞬で修復するならこちらは一瞬でお前を倒せるようになればいいだけのこと」


「無理やり元に戻そうと言うのか。まあ。いい。だが、お前達の攻撃では儂を滅ぼすことは出来、なっ」


黒猫が目を見開くのと同時にまたもやエネルギーの奔流が黒猫の体を直撃していた。


今までよりもはるかに大きく、黒猫の全長の半分に近い大きさの奔流に黒猫の体が吹き飛ばされる。


「今だ。貫け、運命!」


その隙を見た孝治はすかさず運命を放っていた。運命の刃は寸分違わず黒猫の胸を貫く。


『人の身が小さいというならフュリアスの攻撃ならどうかな!?』


『リリーナ。今、味方巻き込んでても放とうとしてたよね』


『さすがにベイオウルフとイグジストアストラルの攻撃ならあんな巨体でも吹っ飛ばされるよね』


『話を聞いてよ』


ベイオウルフに乗ったリリーナとイグジストアストラルに乗った鈴。その二人の登場にさすがの孝治も驚きを隠せなかった。


「お前達はクロラッハの相手をしていたのではなかったか?」


『いやー。クロラッハはルーイの奴が追い払っちゃって。鬱憤溜まってるんだよね』


『リリーナがいつになくハイテンションだから怖いよ』


どうやらそういうことらしい。あまりに上手く作戦が行き過ぎて余剰戦力となった二人がやってきたのだ。その二人を追いかけるようにオルタナティブ試作一号機の姿も見えることから七葉が呼びに行ったらしい。


「貴様らまで。時間をかけすぎたか」


「黒猫。投降しろ。これ以上はお前に勝ち目はない」


「勝ち目はない? 違うな。勝ち目はないのは貴様らのほうだ!」


そう言った瞬間、黒猫の体が弾けたように見えた。孝治はとっさに防御魔術を前方に展開する。いや、展開したはずだった。


展開した防御魔術を一瞬で蹴散らし孝治の体が吹き飛ばされる。それは楓や光、浩平やリースも同じこと。


防御魔術を砕き吹き飛ばされながらも孝治は空中で姿勢を変えて着地する。


「全方位、ダウンバーストか」


きしむ体を感じながら孝治は小さくつぶやいた。


全方位かつ広範囲であるためか威力は幾分か下がっている。だが、その威力は下がっていて尚十分な力を持っていた。


ベイオウルフはイグジストアストラルを盾にしてなんとか凌いでいるが、二機とも地面に落されている。


「終わりだ。花畑孝治!」


黒猫の口が開く。その口には灼熱の炎が灯り、一瞬にして全てを灰燼とするような炎を吐こうとするのは明白だった。対する孝治はまだ動けない。


誰もが絶望を感じた。誰もが孝治を助けられないと思った。そう、その場にいる誰もが感じた。その場にいいないものを除いて。


『させない!』


その声はどこからだっただろうか。その声と共に巨大な光の刃が黒猫の体を右肩から左腰まで一瞬にして切り裂いていた。


「なっ、バカな」


黒猫の体がずり落ちるとともにその体を維持できずに陽炎のように薄れて消えて行く。そして、薄れたそこにいるのは七枚のエネルギーの翼を背中に持つ一機のフュリアス。


『無事ですか? 孝治さん』


「その機体は、悠遠、なのか? つまり、悠人か」


「間に合ったようじゃな。僥倖僥倖」


その言葉と共にダウンバーストでダメージを受けた孝治の体に治癒魔術がかけられる。孝治はすぐに声のした方向を振り向いた。


「アル・アジフか」


「間一髪、というところかの?」


「助かった」


孝治が軽く礼を述べて黒猫を見る。黒猫の竜化は解除され、元の老人の姿に戻っている。あれはあれで危険ではあるが先ほどまでと比べれば十分に弱い。


「しかし、アル・アジフ。あの機体は?」


悠遠(エターナル)じゃ。我らが作りし最高傑作にして全ての希望を詰めた過去、現在、未来その全てにおいて最強の機体」


悠遠(エターナル)が黒猫から離れる。黒猫は雪月花を抜き放ち孝治を睨みつけていた。


だから、孝治は運命を握りしめて前に出る。いや、前に出ようとする。


「黒猫と戦うのは私よ」


そんな孝治に変わるように突如として現れた冬華が孝治の前に下り立った。その横にはミルラとラウの姿まである。


冬華の姿を見た黒猫は楽しそうに笑みを浮かべた。


「雪月花を奪い返しにきたのか?」


「フェンリルを返しにもらいに来たわ。ミルラ、ラウ、手出しは無用よ」


冬華がどこからか調達した刀を握りしめて一歩前に踏み出す。


「本来なら僕達は邪魔をする立場のような気がするけど」


「お姉様の邪魔をするなら私はラウを殺すから」


「元から邪魔をする気はないけど変わり身がすごいね」


冬華は小さく息を吐いた。そして、刀を構える。


「行くわよ、黒猫」






「いいの?」


黒猫に向かって走り込む冬華を遠くで見ながらギルバートは隣にいる音姫に尋ねた。


「いいのって、何が?」


「光輝を貸し出して」


音姫の腰についた鞘には光輝の姿がない。そう、光輝を冬華に貸し出したのだ。本来の武器である雪月花が黒猫に持たれている以上、それに匹敵する、または、それ以上の同じ形状の武器となるとラファルトフェザー、シュナイトフェザー、光輝しかないが。


その言葉に音姫は頷いた。


「だって、これは冬華ちゃんがちゃんと終わらせないといけないから。黒猫の本当の狙いはギルも気づいているよね?」


「薄々は。こんな無茶な行動を取ってまで彼のやりたかったことなんて一つしかないよ」


「だよね。だから、私はそれを手伝いことにしただけ。大丈夫、負けないよ。だって、冬華ちゃんは」


信頼する笑みを冬華に向かって浮かべながら音姫は口を開いた。


「第76移動隊で三番目に剣技が上手いんだから」

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