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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百九十七話 デスペルタルVSティルフィング

二つの栄光と一つの破滅を内包する精霊武器ティルフィング。


ディアボルガが持つ精霊武器でありその能力はディアボルガとルカの二人の口からしか聞いたことはない。


持ち主が望む未来を作り出すためにあらゆる障害をも砕く刃。だが、その黄金色に染まるティルフィングの刃はすでに二回振るわれている。


一度目は精霊の世界においてとある事情から命を失う寸前だったルカを救うためにディアボルガは初めてティルフィングの力を使った。


ティルフィングの刃によりルカの命は救われその代償にティルフィングは破滅へと近づいた。


二度目は元闇属性最上級精霊セルファーとの戦いにおいてだ。セルファーとの戦いでディアボルガは二度目のティルフィングを抜いた。


そして今、模写術士コピーライターの手の中には黄金色に輝くティルフィングが握られている。


オレは小さく溜め息をついて模写術士コピーライターを見る。


模写術士コピーライター。お前は知らないようだけど、ティルフィングはすでに二度振るわれている。三度目の力は己を滅ぼすぞ」


「三度目。これが本物なら確かに危険ですね~」


「なるほど」


ダヴィンスレイフ、血塗れた宝剣アバランシェ、エッケザックス、そして、ティルフィング。


模写術士コピーライターは四つの力を使っている。三重装填トリプルストックが可能な模写術士コピーライターは三つしか作れない。


ダヴィンスレイフ、エッケザックスはセルファー、ルカのもの。つまり、血塗れた宝剣アバランシェかティルフィングかだが、どうやらティルフィングは偽物らしい。


「作り物にしては気配が強烈であることを見ると、一回だけの使い捨てか?」


「そうですよ~。栄光だけを掴み朽ちる。本来のティルフィングの力です」


「本来か。ティルフィングは本来、そういう力じゃないんだけどな」


ティルフィングの力の意味を模写術士コピーライターは理解していない。いや、理解しようとしていない。


「道具は人が使うもの。白川悠聖。あなたもそうじゃありませんか~? 精霊を武器として扱っている」


「確かにそうかもな」


まあ、間違ってはいない。間違ってはいないが、正しくもない。


「そういうことですよ」


「他人から見れば精霊使いってのは異質だろうな。ぶっちゃけ、他力本願と言ってもいいクラスだ。精霊使いは契約した精霊によって強さが決まると言っても過言じゃない。まあ、端から見ればそうなるだけなんだけどな」


模写術士コピーライターがティルフィングを構える。


奥の手を出した以上、すぐに勝負を決めるつもりだろう。だけど、模写術士コピーライターは勘違いしている。


「アルネウラ、優月、準備はいいか?」


『いつでもどうぞ』


『サポートは任せて』


ティルフィングは確かに当たれば一撃必殺の技を持っている。その威力は周が展開するファンタズマゴリアや『天空の羽衣』は簡単に砕け散るだろう。


剣で物質を斬るのとは法則が違うからだ。ティルフィングが斬るのは斬るものを構成する概念。


ファンタズマゴリアは受け流し、『天空の羽衣』は吸収する効果があるがその効果を破壊して直接ダメージを与えるのだ。


模写術士コピーライター。お前に教えてやるよ。ティルフィングの本当の破滅ってものを」


「全てを切り裂け、ティルフィング!」


「『破壊の花弁デスペルタル』!」ティルフィングの刃が『破壊の花弁デスペルタル』とぶつかり合う。


普通ならティルフィングの刃は障害物を切り裂くだろう。だが、ティルフィングは『破壊の花弁デスペルタル』を破壊出来ない。


「そん、な」


模写術士コピーライター。あんたはティルフィングの使い方を一切わかっていない。そんな使い方を間違ったティルフィングに」


破壊の花弁デスペルタル』がティルフィングを弾き飛ばす。


「オレ達が負けるわけがない」


模写術士コピーライターの手の中でティルフィングが朽ち果てる。一回だけの究極兵器はその役目を十二分に発揮することなく消え去っていた。


模写術士コピーライターがその場に膝をつく。


「そんな。負けた」


模写術士コピーライター。もう大人しくしていてくれ。オレ達はお前を殺すつもりは」


その瞬間、オレの体全体が総毛立った。


その気配に思わず動きを止め、その気配がする方を振り向く。


「甘いな、白川悠聖。貴様にそいつの絶望はわかるぬよ。だからこそ、間違える」


その手にあるのは黄金色に輝く栄光の剣ティルフィング


「黒猫」


あれは本物だ。模写術士コピーライターが作り出して紛い物なんかじゃない。正真正銘のディアボルガから取り出した最強の精霊武器。


「のこのことこの場に出てきて、あんたはオレ達に勝つつもりか?」


「儂を誰だと思っている? 砕け散れ、エターナルコフィン」


「俊也!」


「っつ! はい!」


俊也が一瞬で模写術士コピーライターとの距離を詰めて抱き上げるとそのまま急上昇する。それと同時に周囲が氷の結晶により包まれた。


広域封印魔術エターナルコフィン。


世界最強クラスのアル・アジフですら長い詠唱を必要とすると言われる氷属性の特殊な結界。


それを黒猫はいとも簡単に発動した。


「さすが、冬華の師匠、というべきか? 黒猫、いや、『絶対零度』の異名を持つ黒猫さん」


「児戯を褒められるのは悪くはないが、嬉しくもないの。しかしだ、白川悠聖。お前は儂がここに来ると想定していたか?」


「想定していたさ」


「ほう」


実は想定していません。


七葉が見た未来では黒猫は来ない、そのはずだった。


「ならば、これから起きることもわかるだろう。儂がこれからやろうとしていることを」


「そんなことをする前にレーヴァテイン一斉掃射や!」


いつの間にか黒猫の背後に移動していた光がコピーしたレーヴァテインを一斉に全て放つ。だが、レーヴァテインは全て空中で止まった。


「んな」


「甘いの。儂が持つ精霊武器はティルフィングだけではない。儂が持つのはこれもじゃ」


その手にあるのは見慣れた刀。


「雪月花か」


ティルフィングと雪月花。


どちらも最上級精霊が持つ精霊武器であり、その能力はどちらも高い。


危険性は極めて高い。だが、これはあまりにも好都合な状況だった。


「アルネウラ、優月、準備はいいか?」


薙刀を構えてオレは不適に笑みを浮かべる。


『いつでも大丈夫だよ』


『サポートは任せて』


「それじゃ、行くぞ!」


背中の『破壊の花弁デスペルタル』の翼に力を込めて黒猫に向けて接近する。対する黒猫はちょうど同じくらいの速度でぶつかり合ってきた。


激突する。ティルフィングと刃先を『破壊の花弁デスペルタル』に包まれた薙刀が。


「儂の覚えでは、接近戦は苦手では無かったか?」


「確かに苦手さ。第76移動隊の中だとな!」


ティルフィングを弾き飛ばしながら体勢を崩した黒猫に向かって『破壊の花弁デスペルタル』を纏ったチャクラムが左右から迫る。


だが、チャクラムはいとも簡単にチャクラムを弾き飛ばした。いや、弾き飛ばせるように誘導された。


「投擲武器が効かないなら接近戦しかないからな! 接近戦はある程度練習しているんだよ!」


『今回は私のチャクラムは効果がないみたいだね』


『相手が悪いよ。アルネウラは中級精霊だけどフェンリルは最上級精霊だし』


「だが、甘い!」


黒猫が雪月花を振り抜くと同時にダガーが迫ってくる。それを『破壊の花弁デスペルタル』で防ぎながら薙刀で雪月花を受け止めた。


黒猫は世界最強クラスの氷属性の術者。それ以上に恐ろしいのは、



「貫け、無限刃」


破壊の花弁デスペルタル』で防いだダガーが一瞬にして大量に分裂しオレに向かって降り注ぐ。


オレはそれを見て小さく笑みを浮かべた。


「『終始の星片オラトリオ』」


オレの体を『破壊の花弁デスペルタル』の塊である『終始の星片オラトリオ』が包み込みダガーを全て防ぐ。


黒猫が最も危険なのは光と同じ物質投影能力を持っていること。そして、暗殺者のように暗器を使うところ。


周や孝治にオレみたいなそういう奴らを相手にした訓練をしていなければ簡単にやられていただろう。


しかも、今はティルフィングに雪月花すらある。


こんな黒猫に勝てるのはオレか孝治くらいだろう。


「今のを防ぐか」


「悪いな。オレの接近戦の師匠は周や孝治に冬華なんだ。何とかさばききれるぜ」


終始の星片オラトリオ』無かったら死んでいたけど。


「ならば、その殻を儂が破ってやろう」


そう言いながら黒猫がティルフィングを振り上げた。それと同時に懐から何かが覗く。


それは正八面体の結晶に包まれたサイズの小さなディアボルガの姿。


見つけた。


「ティルフィングよ。我が前に勝利の栄光を照らし出せ!」


「勝負は一瞬」


まともに受ければ『終始の星片オラトリオ』すら砕かれるだろう。だから、勝負は一瞬だ。


ティルフィングが黄金色に輝き、眩いまでの光を照らしながら『終始の星片オラトリオ』に狙いを定める。


「周。お前の真似をさせてもらうぜ」


「砕けよ!」


ティルフィングが振り下ろされた瞬間、『終始の星片オラトリオ』を全て解いた。そして、ティルフィングに対して『破壊の花弁デスペルタル』を当てる。


莫大な力を持つティルフィングが『破壊の花弁デスペルタル』にぶつかり『破壊の花弁デスペルタル』が弾き飛ばされる。


だから、オレはその流れを読み、そして、ティルフィングの軌道を逸らした。


「なっ」


黒猫が目を見開く。それを笑みを浮かべて見ているオレは凄まじい勢いで体が回転する。


破壊の花弁デスペルタル』をファンタズマゴリアのように受け流すよう改造し、殺しきれない勢いは周からさんざん習った体術の応用で体を使って受け流す。


「これで」


絶対の一撃だったティルフィングを回避され固まる黒猫に向かってオレは用意していたものを叩きつけた。


それは正八面体の結晶。その名も精霊結晶。それをディアボルガが入った精霊結晶に叩きつけたのだ。


中にセイバー・ルカを入れた状態で。


「返してもらうぞ! 友を!」

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