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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第八十話 周VS『炎帝』

オレが地面を蹴ると同時に七葉の頸線がエレノアとクラリーネに襲いかかる。だけど、その全てはクラリーネの頸線によって絡め取られた。魔力の量はクラリーネの方が上だから七葉の頸線は千切れる、はずだった。


だけど、お互いに頸線を引っ張り合って均衡する。


「周兄! 『炎帝』をお願い!」


「言われなくても!」


地面を蹴り飛び上がる。そのまま魔力で足場を作ってさらに飛び上がる。


エレノアはオレに向かって炎弾を放つ。『炎熱蝶々』がただの属性翼として違う点をやっぱり使ってくる。


それに対してオレはさらに足場を蹴った。迫り来る炎弾をレヴァンティンで何とか弾いていく。ここでようやくエレノアの顔に焦りが浮かんだ。


さすがにこの弾幕を突撃することには勇気がいる。でも、この弾幕の量なら耐えれる。さらに凄い奴を知っているから。


「死ぬ気か!?」


「死ぬ気ならこんなことはしない!」


足場を作り出して跳躍しレヴァンティンを一閃する。だけど、そこにエレノアの姿は無く距離を取られていた。


すかさず燕閃を放つがエレノアは簡単に避ける。このままじゃ埒が開かない。


「レヴァンティン、行けるか?」


『大丈夫です。ですが、モードⅢ以降は使用しないでください』


「わかってる。モードⅡ」


レヴァンティンが剣から槍に変わる。それをオレはエレノアに向けた。


「モードⅡカノン」


槍の穂先が割れ、そこから砲身が現れた。


モードⅡの最大の特徴が砲撃槍と呼ばれる槍と砲撃杖の合体したものである点だ。


砲撃槍はオレが考えた二重変化デュアルシフトの原型となるもので少なからず砲撃槍の使い手はいる。ただ、数は少ない。


エレノアはオレのレヴァンティンを見て虚空から杖を取り出した。だけど、遅い。


レヴァンティンからエネルギーの塊が放たれる。放たれると割れた穂先の間から蒸気が吹き出した。


砲撃槍の最大の弱点がこれだ。砲身に熱が籠もりやすく冷却を必要とする。だけど、威力は十分に高い。エレノアに当たった瞬間に爆発するから。


「レヴァンティン、チャージまでの時間は?」


穂先を戻し砲身を隠す。すぐさま足場を蹴って次の足場に飛び移った。


今までいた足場に炎弾が直撃する。


『約20秒です』


「限定解除を行ったからな」


足場から足場に飛び移るのを止めて壁キックの応用で不規則に空中を飛び回る。エレノアが放つ炎弾はオレを狙って来るが、反射神経というより勘で全てを回避する。


エレノアは典型的な魔術師だ。だから、距離を詰めればこちらに分がある。


「かかった」


だが、距離を詰めたオレに対し、エレノアはにやりと笑みを浮かべた。


『マスター!』


レヴァンティンの声と感覚が最悪のアラームを叩き出す。そして、反応するより早く、オレの周囲に魔術陣が出来上がっていた。


浮遊機雷。


浮遊機雷の全てが一斉に爆発する。多重に展開した防御魔術は一瞬で砕け、とっさに展開した『天空の羽衣』に衝撃が叩きつけられる。


だが、魔術の衝撃破を受け止めることは出来ずダメージを受けた。その最中、突如として『天空の羽衣』が消え去った。


「なっ」


防御魔術の展開が間に合わず爆発による衝撃破が体を打つ。


『天空の羽衣』が消えたわけではない。だけど、まるで処理限界を超えたかのような消え方だった。


痛みのあまりに意識が飛びかける。だけど、オレは歯を食いしばって大きめに作り出した足場に背中から落下した。


体のいたるところが痛い。確実に何ヶ所か折れている。レヴァンティンが『強制結合』を操作していなければ確実に意識が飛んでいる。


どうして『天空の羽衣』が消えたかわからない。何か致命的な弱点があったというのか。


「かはっ」


痛みのあまり息を漏らす。だけど、オレはゆっくり起き上がった。


「どうして、立ち上がる?」


いつの間にか近づいてきていたエレノアがオレに杖を向ける。対するオレは槍から剣に戻してレヴァンティンを構えた。だが、手は震えている。


「負けられないんだ」


守ると誓ったから。都を救うと。


「倒れて、たまるか」


「お願いだから、立ち上がらないで」


エレノアはもう『炎帝』としての尊厳を取らず普通に話しかけてくる。これ以上立ち上がるなら倒さなければいけないと言うように。


「守りたいものがあるんだよ。レヴァンティン、四番から八番まで解放」


『これ以上はマスターの体が危険です! 引いてください』


「後悔したくないんだ」


レヴァンティンを握りしめる。


「オレは『赤のクリスマス』を引き起こした。そして、それを理由にオレは変わった。だけど、本当のオレを見てくれる人達がいる。そいつらを守れなくて、強くなった意味なんてないんだ!」


レヴァンティンを鞘に戻す。


戦えたとしても後一撃。後一撃入れたら確実に無理だろ。だから、オレが一番練習したことを最後の一撃とするだけ。


「わかった。だったら、本気だから」


エレノアが杖を振り上げる。そして、展開される魔術陣。


オレは足場を蹴った。


「うああぁぁぁっ!!」


足場を蹴りレヴァンティンを鞘から解き放つ。


「紫電」


「プロミネンス」


オレとエレノアの声が重なる。


「一閃!」


「レーザー!」


オレの紫電一閃とエレノアのプロミネンスレーザーがぶつかり合い爆発する。その爆発を受けてオレの感覚はほとんど無かった。でも、オレは腕を動かす。


何回も練習した技。紫電一閃の後の技。


白百合流抜刀返し『紫電逆閃』。


レヴァンティンが何かを捉えた感覚がする。


「君の気持ち、届いたよ」


エレノアの優しい声と共にオレの意識は闇に落ちた。


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