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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百八十四話 希望の翼

「ふむ、白騎士か」


真っ先に固まった空間の中から我を取り戻したのはさすがというべきか天王マクシミリアン。続いてオレがすぐに我を取り戻す。


「ちょっと待て。ちょっと待て。ちょーっと待て。なあ、冬華。カメラはどこだ?」


「ドッキリじゃないわよ。まあ、あんまり口外しないことね。光がキレるから」


「さすがに驚くッスよ。あんな女の子があの白騎士だなんて」


「全くだ。可愛い女の子なのにあれほど勇ましいのか。聖天神、何故私の脇を引きちぎらんばかりに抓るのだ?」


「それくらい自分で考えたらどうですか?」


こりゃ、あれだな。レイリアはアーク・レーベのことが好きだがアーク・レーベはそれに全く気づいていない。面白い関係だ。


「孝治さん、孝治さん」


オレ達が呆然としているとニーナが孝治を読んだ。孝治は不思議そうにニーナに近づくとニーナは孝治の手を手に取った。


孝治とニーナの関係は複雑だ。まあ、より複雑なオレと比べたら全然だけど孝治は今まで光一筋だったのによくなびかせたよな。


「何故だ。何故、こんなにもモテる奴はモテるのだ」


今にも血の涙を流しそうにナイトが言うと冬華がわき腹を人差し指で突いてきた。


「悠聖、どうにかしなさい」


「無茶を言うな、冬華。童貞野郎には」


「童貞じゃないわい! 素人童貞だ!」


「素人童貞には卒業済みな奴の慰めは逆効果なんだよ」


「何だろう。ただの童貞よりさらに虚しくなってきたぞ」


そもそも、自分から素人童貞を言うだけでその場の全員は引いている。特にレイリアはナイフを取り出してアーク・レーベに取り上げられていた。


「みんな、いいか?」


ナイトにドン引きしているオレ達に孝治が話しかけている。


孝治のそばにいるリリィ達の表情はどこか不安げな様子だ。まるで、今から話すことを怖がっているかのように。


「マクシミリアン、ギルガメシュ。お前達二人の目から見て、ミスティーユ・ハイロスは人間か?」


「人間ではないな」


「同じだ」

マクシミリアンとギルガメシュの二人が答える。それに驚くのはナイト。ナイトは同じレジスタンスにいたからか驚くのは無理もない。


「我らの同類、いや、魔界の血も混じっているな」


「だが、天界の血も混じっている」


「ちょっと待て、孝治。どういうことだ?」


「それは私が説明する」


孝治に尋ねたオレの言葉にリリィが動く。リリィは緊張した面持ちで息を吸った。


「悠聖はどうしてアークというシステムによって世界の王が決められるか知ってる?」


「それは一番強いからだろ?」


アークの戦いに勝ち残れば全てのアークの力を使える。それは六つのレアスキルを操れるのと同じ意味だ。しかも、一つ一つが強力なレアスキルを。


はっきり言うならそれはあまりにも強すぎる。今回の場合だと絶対防御すら可能なほどに。


「それもあるんだけど、アークの戦いは王を決めるというよりも神を決める、という表現が正しいのかな?」


「神を決める?」


「うん。天界か魔界かどちらかの世界で神に近い存在を作り出す儀式。だから、その参加者は」


「魔界か天界のどちらか」


確かにリリィもリリーナも刹那もアーク・レーベもアークセラーも天界か魔界の住人だ。だが、白騎士だけはその素性は謎に包まれていた。


「うん。だから、それを調べてもらうにはいい状況だと思ったから」


「調べる?」


「神に近い存在となるアークの勝利者は見極める力を持つから。その世界の人を」


「確かに王となるならそういう能力があってもおかしくないよな」


さもなくば暗殺されてしまうだろう。確かに、それはわかるが。


「なんでこいつらはすごい暗い顔をしてるんだ?」


天界魔界問わず全員が苦々しい顔になっていた。


「えっとね、天界と魔界のハーフってどちらの世界でも忌み子扱いされてるから」


「大丈夫だよ、ミスティ。最後まで私達は味方だから」


おそらくすでに四人で話し合っていたのだろう。種族のことも、忌み子のことも。


「マクシミリアン。何故、忌み子なんだ?」


この中でまともな答えを言いそうなマクシミリアンに尋ねる。マクシミリアンは苦々しい表情で口を開いた。


「我ら天界は遥か過去から魔界と戦い続けていた。それが原因だ」


「なるほどね」


単純明快な答え。そして、単純すぎるくらいの絶対的な理由。


「私、いらない子、なんですか?」


ミスティが口を開く。それにマクシミリアンもギルガメシュも顔を逸らした。


二人共くだらないと思っているはずだ。天界も魔界も関係ないと。だが、天界は今不安定な状況にあり魔界も盤石とは言い難い。


否定することは簡単でも否定することで生まれる騒乱を考えれば簡単には否定出来ない。それは五神や五帝も同じ。


「そんなことはないから、ミスティ。私達は絶対にミスティの味方だから」


「そうだよ。絶対にそんなことはさせない。言わせないから」


「生まれた時から必要とされなかった命なんてありません。私が保証します」


だが、ミスティの顔は晴れない。この状況を打ち破る方法はある。だけど、オレが言っても意味はない。天界か魔界の誰かが、


「ああ、もう。まどろっこしいッスよ! 魔界とか天界とかどうでもいいッス!」


「どうでもいいって、お前五帝だろ」


刹那の言葉に誰もが呆然とする。だけど、それでも刹那は口を動かすのを止めない。


「五帝が何ッスか? こんなか弱い女の子を守れないなら五帝なんて返上するッスよ! 五帝になったのは守れる存在が増えるから。そこに天界も人界も音界も関係ない。俺は守りたいものを守るだけッスよ」


そう言いながら刹那はゆっくりとミスティに近づく。そして、ミスティの前で自ら身につけていた指輪を外した。


「それに、これからの希望ッスよ」


「希望?」


ミスティが半信半疑の表情で刹那を見る。


「これから天界は大きく変わるッス。その新たな可能性。その可能性にかけるッスよ。だから、砕いて」


そう言いながら刹那はミスティに指輪を差し出した。


「アークユーラ。希望の翼を託すッス」


「刹那、お前」


ギルガメシュが刹那に声をかける。刹那は笑いながら振り返った。


「魔界としてはリリーナに渡す方がいいかもしれないッスけど、希望の象徴に託したいッスよ。素晴らしいじゃないッスか。魔界と天界が手を取り合うって」


「いい、の?」


「いいッスよ」


「大事なもの、なのに」


「大事なものッスから希望に託すと決めたッスよ」


「わかった」


ミスティが指輪を掴む。そして、その指輪をそのまま左手の薬指につけた。その事に誰も何も言わない。何故なら、それはあまりにも神聖な儀式だったから。


「ありがとう」


そうミスティが笑った瞬間、ミスティの背中に綺麗な白銀の翼が生まれていた。


天界が至高とする純白よりも遥かに綺麗で美しい翼。それを見た刹那が一瞬だけ驚いて、そして、笑みを浮かべる。


「綺麗な翼ッスね」


「違います。アークユーラの力だから」


そう言いながらミスティは大事に指輪を抱え込む。


でも、普通はありえない。天界の住人にとって翼は最初から存在するもの。アークユーラをつけたら、まるで、隠されていたものが見つかったかのように白銀の翼が生まれていた。


「なあ、刹那。アークユーラの力ってもしかして」


オレの言葉に刹那は頷いた。


「秘めたるポテンシャルの解放。そして、そのポテンシャルの極限強化ッスよ」

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