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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百七十九話 未来視の希望神

本音を言うなら予定よりかなーり話が伸びています。当社比50%(現在の予想)くらい。

コンコン。


部屋が控えめにノックされる音が鳴り響く。その音にオレはゆっくりと目を開けた。そして、ちょうど目の前でオレの腕を枕に寝ているリリィの顔が入る。


とても幸せそうな寝顔だ。幸せそうな寝顔なんだけど、オレの背中は嫌な汗が山ほど流れていた。


「ヤバい、かな?」


コンコン。


また、部屋が控えめにノックされる。そして、かけられる言葉。


「ロリコン。早く開けなさい」


冬華の声だった。明らかに処刑数十秒前。


「本気でヤバいな。リリィ、起きろ」


「ゆう、せい?」


リリィがゆっくりと目を開ける。そして、目の前にいたオレを見て満面の笑みを浮かべた。


「おはよう」


天使の様な笑みを浮かべながらリリィがオレにキスをする。いわゆる、おはようのキス。


「って、冷静にそんなことを行っている状態じゃなかった。早く起きて着換えろ。さもなくば、オレの命がもう」


「風前の灯だよ」


何故か、部屋の中で七葉と優月、そして、アルネウラの姿があった。七葉だけが呑気に朝食らしいパンを食べている。


ちなみに、ほか二人は顔を真っ赤にして手で顔を覆っている。が、お約束というべきか隙間からこちらを覗き込んでいた。


こいつら、よく一緒に寝ているのにこういう行為には耐性無さすぎだろ。


「七葉。一応、聞いておくが、どうやって結界をこじ開けた?」


七葉対策に今まで以上に頑固な結界を『破壊の花弁(デスペルタル)』を使って展開していた。それなのに、七葉達は悠々と部屋の中にいる。それはつまり、七葉がこじ開けたということ。


その疑問に七葉は笑みを浮かべて答えた。


「悠兄から。正確には、未来の、ほぼ無傷で生還する予定だった悠兄の口から結界の仕組みを聞いたんだよ。いやー、希望の未来を見る力ってかなり便利だよね。絶対に悠兄が教えてくれないような未来すら見ることが出来るんだから」


「極悪すぎるだろ」


まあ、そういう能力があったからこそ、今日の作戦を組み立てられたんだろうけど。


「リリィは早く服を着た方がいいよ。それまでは私達が食い止めて見せるから」


『でも、このまま扉を開けた方が』


「悠聖が死ぬと思うよ?」


その言葉にオレは小さく息を吐きながらベッドから起き上がった。そして、頭を押さえながら今度をシュミレーションする。


「今日は絶対に眠れないよな」






死屍累々。その表現が一番正しいだろう。


たくさんの整備員が、ゼルハートを含むベイオウルフの改造を行っていた整備員が全員倒れている。昨日から一夜にして改造されたベイオウルフは想像以上だった。


フォルムはソードウルフを大きくした姿。ベイオウルフみたいなずんぐりとした体型ではなく従来の人型。さらには変形機構にも改造が加えられているからか両手両足の装甲がいくつか変えられている。


その背中にあるのはブースターパック。ただし、かなり特殊なメインブースターのみのブースターパックだ。


そんな新しいベイオウルフに向かってリリーナがゆっくりと歩を進める。


その体には厚いパワードスーツが着せられており完全に被弾前提の装備だった。


「リリーナ」


通常のぴっちりとしたパイロットスーツを着た鈴がリリーナに話しかける。リリーナはその言葉に小さく息を吐いた。そして、口を開く。


「最高だよ。新しいベイオウルフ。私がどこまで使用できるかわからないけど、これさえあれば戦える。私はアレキサンダーを圧倒出来る」


「でも、また、進化されたら」


「大丈夫だよ」


アレキサンダーが進化できるのは技術的に可能な能力のみ。シールドビットや今回のベイオウルフの改造点は特に技術的に不可能なのだ。


「アレキサンダーごときに真似されるとは思えないから」


「それは、私もそう思うけど、だけど、もし」


「もしはないよ」


そう言いながらリリーナはベイオウルフに向かって歩き始める。


「その時は、このベイオウルフの最後の時だから」






『朝っぱらからするもんじゃないと思わないか? 親友』


『うるさいぞ、クーガー』


『少しは静かにしたらどうですか? 問題児』


『問題児って俺のこと?』


『それ以外に何がある?』


『そうですね』


リマ、ラルフ、クーガーの三人の声を聞きながらルーイはアストラルファーラを起動していく。メインブースターからサブブースターまでの機動は異常なし。四肢の連絡系統に異常は無し。


なめらかに動くアストラルファーラは今までとは違う。だが、ルーイにとっては物足りないものだった。何故なら、アストラルファーラよりもアストラルルーラの方がルーイにとっては合っているのだから。


だが、アストラルルーラは今使えない。


『お前達はいつもこうなのか?』


セリーナの呆れたような通信がルーイに入る。その言葉にルーイは小さく息を吐いた。


「いつもそうだ。特に、戦いの前はな」


『緊張を解きほぐすのが目的、とは思えねえな』


『でも、こういうやりとりは見ていていいと僕ちんは思うよ。もちろん、音ちゃんの次くらいに』


『俗物が』


お前らも同じようなものだぞ、と言いそうになるルーイは必死に言葉を呑みこんだ。そして、ゆっくりと真っ先にアストラルファーラを先に動かす。


「先に出る。少しだけ慣らしておきたいからな」


『了解。同じ指揮官機としてこっちをどうにかする』


セリーナが疲れたような声を返してくる。その言葉を聞きながらルーイはそのまま格納庫の外にアストラルファーラの機体を出した。


「セリーナが乗る機体よりも10%重くなったからか、やはり、地上での動きは鈍いな。だが、それでいい」


背中のブースターを起動してアストラルファーラが飛び上がる。そして、目的地に向かって飛翔仕様とした瞬間、街の一角、しかもすぐそばで爆発が起きた。


襲撃。


その言葉がちらっと頭の中に浮かぶが、あの場所に誰がいるか思い出してルーイはため息をつくことにした。襲撃があっても襲撃者が撃退された音なのだから。


アストラルファーラが爆発した場所に近づく。すると、煙の中から悠聖が『破壊の花弁(デスペルタル)』の翼で飛翔しながら飛び出してきた。


『冬華! てめぇ! 問答無用か!?』


「相変わらずだな、悠聖」


ルーイが呆れながら路上に着地する。悠聖はそのままアストラルファーラの肩に降り立った。


『よっ、ルーイ。準備は万端か?』


「ああ。こちらとしても今回の作戦ばかりは失敗できないからな」


『そりゃそうだ。じゃ、オレ達も向かおうか、アルネウラ、優月、七葉。行くぞ』


アストラルファーラの肩で悠聖が笑うのと同時に近くの格納庫からイグジストアストラルとベイオウルフが姿を表した。


今までとは違う姿のベイオウルフにルーイは一瞬驚きながらすぐさま真顔に戻りつつ悠聖が飛び立ったのを確認する。


「では、敵の罠に跳び込ませてもらうとしようか」






フルーベル平原。


本来ならただの平原であるはずの場所に十九機のアストラルファーラとアストラルレファス、イグジストアストラル、そして、ベイオウルフの二十二機がいた。その全てが決戦用の特殊装備をしている。半分がEX装備だが、ルーイ達の装備は少し目立っていた。


『しかし、上手く行くのか?』


セリーナが不思議そうに尋ねてくる。それに答えたのはリマだった。


『今回の訓練は秘密裏に行われます。大丈夫です。今回の作戦は敵に気づかれません』


『そうだったらいいがな』


ナイトが周囲を見渡す。周囲には誰もいない。だからこそ、安心できない。


『こういう時は何かあると踏んでおくべきだ』


『警戒心の強さはさすがだけどよ、肩の力を抜かないとすぐに死んじまうぜ』


『クーガー。その言葉は逆に力を抜きすぎて死ぬぞと言っておく』


『酷くないか? 親友』


『お前達、いい加減にしろ』


ルーイの声で思い思いに周囲を見渡していた全ての機体がルーイの機体を見る。


『今回の作戦を説明する。作戦開始はこれから10分後。チームに分かれ敵との戦闘を想定した訓練を行う。今回は秘密裏に一部の人間にしか知らせていない。そのため、動きは最小限にして移動しろ。わかったか?』


『『『了解』』』


返事と共に十一機ずつ分かれて動き始める。


それを観察していた人物は通信機に口を当てた。


「作戦は十分後だ。相手は内通者の存在を気づいていないみたいだぜ。見える範囲に敵の数は無し。本当に簡単な仕事だぜ」


通信機の電源を切りその人物は息を吐いた。そして、笑みを浮かべる。


「全く。内通者がいるのに主力フュリアスだけで呑気に訓練とは、まるで撃墜してくださいって一得るようなもんじゃねえか。本当に、今回の作戦は内通者様々だな。クロラッハ様まで出てるから相手は全滅確実」


その人物は楽しそうに笑みを浮かべる。


「こういう状況を何て言ったんだっけ」


「そうやな。鴨がネギを背負っているって言った方がいいな」


「そうそう。鴨がネギを、えっ?」


その言葉にその人物が振り返るより早く意識が暗闇の中に呑みこまれた。


「本当に、フュリアス部隊だけやったら鴨がネギ背負って鍋を抱えているようなもんやけど、その鴨、重武装した人すら狩る特殊な鴨やねんで」






『A組作戦位置についた』


『B組作戦位置についた』


ルーイの声にセリーナが言葉を返す。それを聞いたオレも言葉を返した。


「C組作戦位置についた」


『D組作戦位置についたよ』


『E組も到着、かな?』


『F組、到着よ』


『G組は到着したよ』


オレは笑みを浮かべる。そして、作戦開始の命令をする。


「じゃあ、作戦を始めるぞ。ワルキューレ殲滅作戦、開始!」


その瞬間、ルーイ達のアストラルファーラ部隊を挟んだ向こうで七葉が真っ先に動いた。そして、頸線が空間を薙いだ瞬間、何もいなかった空間から三機のワルキューレが細切れにされて落下する。


「さて、希望神が見た未来視の予言。てめえらに刻み込んでやるよ!」


その言葉と共に現れるワルキューレ。その数100ほど。だけど、こっちの戦力はアストラルファーラ達だけじゃない。


「第76移動隊、出撃!」

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