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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百七十五話 シンクロの先

真の力に覚醒した、と言ってもいいくらいに体から放電を行う俊也を見ながらオレは『破壊の花弁デスペルタル』と光の翼をはためかせて正のそばに移動する。


正はその手に気絶した委員長を抱えていた。


「まさか、君が来るなんて」


「フィンブルドの気配を感じたからな。正こそ、この未来を知っていたよな?」


「あくまでこの覚醒は本来のものだからね。場所は違えども必ずやってくれるとは思っていたよ」


そう言いながら正は委員長に治癒魔術をかける。見た目は怪我をしていないが、おそらく、いや、確実に模写術士コピーライターによって操られていたのだろう。


模写術士コピーライターからどうやって委員長を取り戻したかは分からないけど、俊也はこれで思う存分戦えるはずだ。


『ねえねえ、優月。今の俊也って』


『うん。私達と同じ感じがするよね』


同じ感じ?


オレは二人の言葉に疑問を抱いて言葉を返した。それに二人が頷きを返してくる。


『うん。精霊、って言った方がいいのかな? ただのシンクロやユニゾンはあくまで人が精霊を扱っているんだよ。大なり小なり人間の感じはする。確実にね』


『でも、今の俊也君、人間じゃなくて精霊の感じがする。まるで、人間から精霊になったかのように』


シンクロとユニゾン自体が相容れないものだからな。ダブルシンクロ並みの性能は他のシンクロでは出来ない。


俊也が辿り着ける可能性として考えていたけど、まさか本当にやるとはな。


『あれ? 悠聖は最初からわかっていたんじゃないの?』


あのな、俊也は精霊召喚師としての潜在能力はオレをも超えるんだぞ。本来、精霊召喚師は複数と契約しない。だけど、オレや俊也は複数と契約する。


冬華みたいな精霊召喚師があくまで通常の精霊召喚師だ。単体と契約して共に戦う。支援型なら二体と契約することはあるが、オレみたいに九体や俊也の五体は普通はない。


特に、俊也は五体の最上級精霊と契約する。はっきり言うなら現状の精霊召喚師より上位の存在になれるような才能だ。


オレは精霊の帝王、精霊帝。ある意味精霊みたいなものだけど、俊也の場合は精霊召喚師の上でも精霊を扱う存在。オレとしては想像出来た範囲だ。


『悠聖が相変わらずすごいってことだけはわかったけど、勝てるのかな?』


『『破壊の花弁デスペルタル』の準備は出来てるよ』


二人の言葉にオレは首を横に振る。


「俊也なら、たかが模写術士コピーライター程度に負けるわけがないだろ?」






模写術士コピーライターがダヴィンスレイフを俊也に向けて放つ。だが、俊也はそれを軽々と避けて行く。だが、近づいて行くことはない。


『大体50m近くってところだな』


『自動誘導性もある。さすがは元最上級闇属性精霊というべきか』


二人の言葉を聞きながら俊也は一瞬にして百にも及ぶノートゥングを展開した。そのまま模写術士コピーライターに向けて放つが模写術士コピーライターはダヴィンスレイフでノートゥングを弾いて行く。


模写術士コピーライターの表情は憤怒に染まっており、俊也が値踏みするかのように模写術士コピーライターを観察しているのがわかるのだろう。


『誘導性は俊也の魔力に反応しているのか?』


『そのようだ。魔力に対してダヴィンスレイフが自動で動く。いくらかは任意で動かせれるが、反射よりも早く動いているのを見るとそうとしか考えられない』


『残像とかは効果が無いみたたいだな。だけど、だんだんわかってきた』


三重装填(トリプルストック)の制限をな』


俊也もわかっていた。俊也が模写術士コピーライター)から距離を取って戦っている中で模写術士コピーライターはダヴィンスレイフしか使っていない。模写術士コピーライターには気配なく近づいてくる方法があるのに。


「ミューズ、フィンブルド。ちょっとだけ力を出すよ」


『風の制御は任せろ』


『雷が我が集めよう』


「ありがとう」


その言葉と共に俊也はその手のひらにノートゥングを収束させた。そして、ひと塊りになったノートゥングを模写術士コピーライターに向かって放つ。


「トールハンマー!」


俊也のトールハンマーは数十のノートゥングを重ね合わせた単発砲撃。だが、収束している分威力は高い。模写術士コピーライターはとっさにダヴィンスレイフで受け止めるがその瞬間に紫電が空中で弾けた。


青白い光が飛び散り反射よりも早く動いたダヴィンスレイフが模写術士コピーライターを守るために壁を作り上げる。それを俊也は狙っていた。


「全てを包む大気よ」


だから、俊也は視界が塞がれている模写術士コピーライターに向かって照準を定めて詠唱を開始する。


「世界を罰する稲妻よ」


ダヴィンスレイフを解いた模写術士コピーライターは目を見開いて俊也を見る。


「ここに集いて全てを消し去る天災となれ」


展開される魔術陣の大きさは通常とは明らかに違っていた。その大きさは全天を覆うかのように巨大で、そして、まがまがしいまでの真っ黒な空を作り出していた。


大災害を引き起こしかねない天災を作り出す魔術。


それだけを言うなら簡単だろう。だけど、それは不可能なはずだった。


どれだけ頑張ろうと魔力が絶対的に足りない。そして、そこまで世界に作用させる方法がまず存在しない。


一瞬だけの突風なら可能だが、それを持続させるのが無理なのだ。それを広範囲に大災害と呼ばれるほどまで拡大することも不可能。神剣の力なら出来る可能性は残っているが、そこまでいくとそれはもう魔術ではない。


「ありえない」


模写術士コピーライターが呟く。確かにそうだろう。だが、俊也は完全に天候を操っている。


「広域天災魔術。本来なら使うつもりはないけれど、あなた相手なら十分だよね?」


「くっ、血塗れた宝剣アバランシェ!!」


「トールハンマー・ノートゥング!!」


模写術士コピーライターを中心に振り注ぐ莫大な量のトールハンマー。そして、模写術士コピーライターを中心に発生する巨大な竜巻。降り注いだトールハンマーは地面にぶつかった瞬間に周囲に紫電を飛び散らし、竜巻は紫電を巻き込み雷を横に降らしている。


もう、これは魔術ではない。ベリエとアリエが放つ雷神装填(レクスティア)が児戯に等しく見えてしまう広域天災魔術だった。


この魔術はフィンブルドの力で大気を操作して飛び散る紫電を防いでいるが、もし、それをしなければ最大数kmに渡って紫電を飛び散らせる。しかも、その紫電は元はトールハンマー。こんなものを都市部に打ち込めば一瞬にして都市が壊滅してしまうだろう。


だが、俊也はわかっていた。まだ、模写術士コピーライターが生き残っていることに。


「決めるよ、二人共」


『ああ』


『わかった』


俊也が紫電を纏う。そして、風を纏う。


「これで」


照準は血塗れた宝剣(アバランシェ)で必死に耐えている模写術士コピーライター。そこに向かって俊也は加速した。


「終わりだよ」


俊也が駆け抜けると同時に紫電の刃が大地を砕いた。雷速の速さと共に駆け抜けながら攻撃する特殊な移動技レクスクロス。


駆け抜けると同時に大気を乱されたためかトールハンマー・ノートゥングが消え去った。だが、模写術士コピーライターはまだ立っている。その体中から血を流して。


「名山、俊也!!」


模写術士コピーライターが俊也を睨みつける。そして、睨みつけながら姿が薄くなっていく。


「次は殺す!! 絶対に殺してやる!!」


そして、模写術士コピーライターは消えた。それこそ、あらゆる全ての感覚から。


『消えた?』


『三つ目の能力みたいだな。我らに気づかれずに近づかれた能力だ』


『そういうことか。かなり、厄介だな』


「でも、終わりだよ。シンクロ、ユニゾン解除」


その言葉と共に俊也の近くにミューズとフィンブルドが姿を現した。そして、俊也はフィンブルドを抱きしめる。


「お帰り」


『お、おう。ただいま、俊也』






「いやはや、まさか天災魔術とはね」


「知っているのか?」


「天災魔術を使えるのは神の中でも限られた者だよ。もちろん、簡単に使えば他の神に消される。大地が消え去るような天罰という大災害は基本的に神の仕業だよ」


「それを俊也が人間の身で使ったってことか」


その言葉を呟いたオレは思わず苦笑してしまう。


「神に狙われるかと思ったけど、あの俊也なら大抵の神に勝てるんじゃないか?」


「そうだね。僕や七葉みたいな相性の問題が無ければ大抵は勝てるよ。だから、神には狙われない」


「これが、シンクロの先なんだね」


笑いながら言う正の表情はどこか嬉しそうだった。


「この力があれば、世界を変えられる」


「間違った道に進まないようにオレが指導するしかないだろ」


「それもそうだね。頼りにしているよ。精霊帝様」


「おいおい」


オレは苦笑しながら視界の遥か向こうで抱き合う二人と一人を見つめる。後は、取り戻すだけ。決戦の中で取り戻すだけ。


「さてと」


だから、オレはその手の中にあるものを持って禁書目録図書館(アリスライブラリ)に移動した。そして、検索を開始する。


「これの解析でも本格的に開始しますか」


完全な初期状態のフィンブルドが捉えられていた結晶。これさえ解析できればディアボルガを取り戻す作戦を組み立てられる。


模写術士(コピーライター)の思い通りにはいかないぜ」

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