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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百六十四話 言葉

音姫の話を聞いていた全員がぽかんと口を開けている。仕方ないことだろう。


あの音姫が嬉しそうに頬を赤く染めて惚気話をしていたのだから。


「ギルが私のことを守りたいって言うんだよ。共にいたいって。そんなこと言われたら思わずぐっときちゃうよね。きゃー、私、ちょっと恥ずかしいことを言ってる? 言ってるよね?」


「お姉ちゃん、うざい」


心底呆れたような表情で七葉が無情にも言い放つ。それに音姫は傷ついたかのよう後ろにゆっくりと下がった。


「う、うざい?」


「うん、うざい。そんな惚気話を聞かされても正直うざい」


「本当のことなのに~! リリーナちゃんならわかってくれるよね?」


「えっと、私も、七葉と同じ意見かな?」


「ハイロスちゃんは?」


「知るか!」


「がーん」


音姫が真っ白に燃え尽きたかのようにその場に両膝をついた。確かにうざい。


七葉は呆れたようにため息をついて禁書目録図書館(アリスライブラリ)へと移動する。そこなら考えれる時間がたくさんあるからだ。だが、禁書目録図書館(アリスライブラリ)には先客がいた。


「やあ」


片腕を上げてギルバートが七葉に挨拶をする。その姿をみた七葉はまたため息をつく。


「待ち構えられていた?」


「そうなるのかな。君ならここに来るだろうと思っていたから」


「『伝承神』。全ての過去が見ることが出来る神剣『伝承』を持つ人間禁書目録図書館(アリスライブラリ)


「誤解しないように言っておくけど、別に僕は音姫を騙しているわけじゃない。僕は本気だよ」


「わかっているよ。ギルバートさんは真面目だから。だから、お姉ちゃんはギルバートさんと共にいたいと思ったんじゃないかな? 信頼関係はこれから築いて行けば?」


「ちょっと投げやりだね」


ギルバートが苦笑しながらも楽しそうに笑う。それに七葉は小さく息を吐いた。


放しただけでわかる。ギルバートの言葉にウソはない。過去にどんなことがあったかわからないけど、ギルバートは最初から嘘をついていないというのはよくわかった。


「あらま。珍しいお客さんがいるな」


「悠兄?」


その声に七葉が振り返るとそこには不思議そうな顔をした悠聖の姿があった。悠聖は七葉とギルバートの二人の顔を見て、納得したように頷いた。


禁書目録図書館(アリスライブラリ)なら密会にぴったりだよな。じゃあ、オレはこれで」


「ちょっと待った。悠兄が何を勘違いしているかわからないけどそんなことはないから」


「僕は彼女に惚気話を聞かせていただけだよ」


そう言いながらギルバートが楽しそうに笑う。それに悠聖は小さく息を吐いてその手に一冊の書物を取り出した。二人が話している間にすでに禁書目録図書館(アリスライブラリ)から書物を見つけ出していたらしい。


それを開きながら悠聖が無関心であるかのように言う。


「ギルバートさんも大切にしろよ。音姫さんは嫉妬したら斬り殺されかけるから。ソース周」


「ちょっと待った。悠兄は音姫さんとギルバートさんが付き合っていることを知っていたの?」


「いいや。ギルバートさんほどの実力となると釣り合う人が少ないだろ。それに、音姫さんもギルバートさんの剣技は認めている節があった。そもそも、音姫さんが付き合うとなるとギルバートさんぐらいしか相手がいないんじゃないか? あまりに実力がありすぎて告白というより憧れで終わってしまうって聞くし。ソース孝治&浩平」


「それは周も気づいているのかな?」


「おそらくな。まあ、あいつなら驚きこそすれ納得するだろ。っと、あったあった」


「何を調べているの?」


七葉が悠聖の調べている書物を覗き込む。その書物はどうやら結界魔術が書かれているらしくその結界魔術の中でも悠聖が欲しい結界魔術のようだ。


結界魔術に関しては七葉も知識がある。頸線なら結界魔術を簡単に描けるからだ。だから、様々な結界魔術を会得しているが悠聖が調べていた結界魔術に聞き覚えが無かった。だから、眉をひそめる。


それを不思議に思ったギルバートが二人の後ろから書物を覗き込んだ。


「これは、全ての肉体的ダメージを精神ダメージに転換する結界だね」


「デバイスを使った処理ではなく、結界を使った処理で不測の事態に対応したいからな。オレに七葉、音姫さんの三人で結界魔術を組めばそれだけで普通じゃ壊れない強度になるしな」


「それ、普通どころか壊せないと思うんだけど。でも、こんなものを使ってどうするつもり?」


七葉の疑問に悠聖は少しだけ顔を曇らせて頷いた。


「アークの戦いに決着をつける。そのための結界魔術だ」






「そっか」


未だに寝ているリリィを膝の上に乗せて音姫はリリーナとハイロスの二人から事情を聞いていた。むしろ、無理矢理話させていた。


リリーナもハイロスもあまり話すことに乗り気ではなかった。何故なら、怒ったら止められないから。


「なら、仕方ないかな。無理をするのは止めるけど、三人が決めたことなら私は何も言わない。でも、リリィみたいに無理はしないでね」


そう言いながら音姫はリリィの頭を優しく撫でる。


「リリィは追い詰められているんだと思うよ。私はアークベルラを失ってもベイオウルフがある。ハイロスは剣か鎧のどちらかが破壊されたらアークの戦いから退場するみたい。だから、戦う力は残る。でも、リリィは」


リリィがアークレイリアを砕かれた場合、戦う力を無くす。それは、リリィが悠聖と共に戦えないことを意味していた。


だから、あそこまで覇気迫っていたのだ。音姫が無理矢理止めようとしてしまうほどに。


「リリィの気持ちはわかるよ。でも、だからといって私達は勝つことを諦めない。だって、私達もやらなければならないから」


「うん。そうだね。だから、私は止めない。それが自分で決めたことなら私は何も言わないしみんなをサポートする。でも、このままじゃ危ないかな」


そう言いながらリリィを心配そうに見る音姫。


もし、リリィがアークの戦いから脱落してしまった時、リリィがどうなるかはなんとなく想像出来たからだ。


おそらく、昔の周と同じ。生きる意味を失った周と同じことになると。


「悠聖君ががつんと言ってくれれば解決するんだろうけどね」


そう言いながら棒立ちになったままの七葉を見る。


七葉が禁書目録図書館(アリスライブラリ)に行っているため動かない。これほど長時間行っているということは調べものが難航しているか禁書目録図書館(アリスライブラリ)内で何かを練習しているか。


「やっぱり、愛の力は偉大だから」


「あー、はいはい。音姫はそれがいいたいだけだよね?」


「だが、そう簡単に上手く行くものか」


「大丈夫だよ。悠聖君がリリィに愛の告白をすれば解決するんだから」


その言葉に周囲が静かになる。そして、胡散臭い目で音姫を見るリリーナとハイロス。


「あれ? 私は」


何とも言えない沈黙の中、リリィがゆっくりと目を開ける。そして、目の前にいる音姫を見つめる。


「そっか、私、音姫に」


「リリィのバカ!」


リリーナは目が覚めたばかりのリリィを抱き締めた。そして、骨が軋むほどの力でリリィを締め付ける。


ある意味、殺す気満々に見えなくはないがこれもリリィを心配してのこと。ハイロスが全力でリリーナをリリィから引き離したが。


「なんでそんなに思い詰めちゃうのかな!? 友達だったらちょっとくらい話してよ!」


「だって、私とリリーナは、ライバルで」


「ライバルで親友じゃなかったの!? 私はそう思っているよ! 今も、これからも!」


「だって、私は勝たないと駄目だから、悠聖のそばにいるためには勝たないと駄目だから!」


リリィの瞳から涙が零れる。


「私は悠聖と共にいたい。ずっとずっと、だから、私は」


「ったく。お前は気にしすぎなんだよ」


その言葉にリリィは振り向く。そこには呆れたような表情の悠聖が優月とアルネウラを連れて来ていた。優月もアルネウラも悠聖の隣で楽しそうに笑みを浮かべている。


悠聖の肩にはルナが羽を休めておりリリィがルナに視線を向けると同時にルナがリリィの肩に飛び移った。


「アークの戦いの決着をつける時が決まった。明後日に首都で行う。立会人は音姫さんで音界にいる第76移動隊が全力で援護する」


「明後日、なんだ。私は」


アークレイリアを握り締めたリリィを悠聖は笑みを浮かべながら頭を撫でた。


「なあ、リリィ。音界での戦いが一段落したら一緒に暮らさないか?」


「えっ?」


「アルネウラや優月に冬華も一緒だけどさ、一緒に暮らさないか?」


悠聖の言葉にリリィが固まる。


「プロポーズだね」


「しかも、ハーレム宣言だね」


「男として恥ずかしくないのか?」


「お兄ちゃんは反対です」


「悠兄、さすがなのかな?」


外野の声を聞きながらもリリィはゆっくりと悠聖に向かって手を伸ばした。


「私で、よければ」






そんな様子を見ながらギルバートは小さく息を吐いて彼らを見つめる。正確には、悠聖を。


「悠聖。君は何をしようとしているんだ?」


ギルバートがこういうのも話は少し前に遡る。


禁書目録図書館アリスライブラリでの一幕だ。


結界術式についてあれこれ話していた悠聖、七葉、ギルバート。そんな最中、ギルバートは悠聖に尋ねた。


「悠聖。君はどうしてルナを、幻想種であるケツアルコアトルの子供を儀式結界術式に捉えたのかな? 君なら結界内で守りながら戦えたのではないのかい?」


「可能だと思う。でも、ギルバートさん。幻想種は神の眷属だよな?」


「例外は無いよ。神の眷属だからこそ幻想種なんだ」


「だったら、幻想種と契約出来たらそれは神にならないか?」


そのような会話を思い出しながらギルバートは鋭い目つきで悠聖を睨みつける。


「白川悠聖。君はどんな未来を夢見ているんだ?」

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