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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百五十一話 至高の翼

大空を駆ける風のように視界が過ぎ去る。精神感応によって感じる空気の中を駆け抜けながら横に三回転だけ回ってみる。すかさず機体の至る所から粒子を吐き出して一瞬で制御を取り戻す。


取り戻した瞬間にすかさずレバーを動かして変形を解いた。空気の壁にぶつかる感覚を感じつつもコスモドライブを最大まで駆動して駆け抜ける。


右に左にせわしなく動きながら僕は『創聖』の力で両手にエネルギーライフルを作り出した。


「アン! ダミーバルーンをお願い!」


『了解や』


アンの返答が聞こえてくると同時に地上からギガッシュの姿をしたダミーバルーンが浮き上がってくる。


それを見ながら僕は不適に笑みを浮かべた。


「鈴。アンカーの制御はお願いね」


「了解。でも、大丈夫かな?」


後部座席に座る鈴はそこら辺のスイッチやパネルを操作しながら不安そうな表情になる。その首には精神感応用の細い首輪が巻かれていた。


イグジストアストラルは精神感応の機構が無いから身につけて無かったから心配なんだろうな。だけど、大丈夫。鈴ならきっと大丈夫。


「大丈夫だよ。さあ、やろう」


「うん。了解だよ」


ダミーバルーンが一定高度まで上がった瞬間、僕は悠遠エターナルを動かした。






「うわぁー、模擬スコアがすごいね」


アンが操作する画面を見ながらリリーナは苦笑しながら言葉を放った。


悠遠エターナル


悠人の新たな機体であり世界最強とアル・アジフが豪語した機体。今回は初乗り+戦闘能力調査だが、悠人がシュミレーションで叩き出した結果よりも遥か上を行っていた。


「一秒間にダミーバルーンを三体か四体。エネルギーライフルを二丁持ちとは言え命中率を100%に保っているとは」


ルーイもモニターを見ながら戦慄を隠せないでいた。もちろん、悠人だけがすごいわけじゃない。


悠遠エターナルの周囲を飛び回る二つのアンカーの先。それは悠遠エターナルの両腕についたエネルギーシールド発生装置に付属するスラッシュアンカーだ。それを独立して起動しているのだがそれを操作しているのは鈴。


「後部座席に座る電子戦要員がおらんかったから鈴にしたけど、どうやら当たりみたいやな」


「悔しいくらいにコンビネーションが出来ているね」


エネルギーライフルから放たれるエネルギー弾だけでダミーバルーンが割れるわけじゃない。悠遠エターナルの死角となる位置のダミーバルーンは的確にスラッシュアンカーによって割られていた。


「スラッシュアンカーの操作は並のパイロットでは出来へん。後部座席で様々なモニターを見ながら頭の中でスラッシュアンカーを操作するからな。どっちかが疎かになる。やけど、鈴はどっちも両立している。悠人に指示をしながら死角のダミーバルーンを破壊していってる」


「確か、本来なら鈴はイグジストアストラルの後部座席に乗る予定だったな」


「うん。そういう風に訓練していたって話は聞いているよ。まさか、ここまでだなんて」


「みんな、話はそこまでやで。これから悠遠エターナルの真価が発揮されるんやから」


その言葉と共に今までと比べ物にならない量のダミーバルーンが発生する。その量はいつもの十倍近く。それが湧き出る水のように絶え間なく発生する。


悠遠エターナルは超攻撃型の機体や。速度と攻撃力と手数を整え防御力を極限まで落とした機体。悠人なら確実に使いこなせるから」


その言葉と共に悠遠エターナルが動く。背中の翼の上についた砲を前に向ける。それぞれが独立しているかのように別々の場所を向いているが。


「さあ、見せてみ。あんたらの実力を」






腰についたアサルトレールガンが360°回転することを確認する。下向きだから180°回転して放つことはない、というか腕に当たって止まるため360°ではないけどほぼ360°回転することを確認する。


「鈴、高収束エネルギー砲の方は?」


「エネルギー供給は問題なし。出力を最大の5%にするから機動力の影響もないかな。ただ、これとスラッシュアンカーを同時に九個操作するから上手く出来るかわからないけど」


「最悪スラッシュアンカーは放置で。一対多なら高収束エネルギー砲に集中した方が強いから」


「ううん。頑張る」


そう言いながら鈴は拳を握り締めた。その姿が可愛くて思わず笑ってしまう。


「ありがとう」


ダミーバルーンが一定高度に到達する。僕は小さく息を吐いてエネルギーライフルを握り締めた。そして、コスモドライブを最大限まで駆動させる。


「行くよ!」


その言葉と共に悠遠エターナルの機体を一気に急降下させた。そのままアサルトレールガンの砲口の向きを変える。


アサルトレールガンは収束したエネルギー弾を高速で放つ武器だ。高速で放つため射程は短くアサルトの名前がつくように近接向きだが前後左右に撃ち分けられる上に下への攻撃が行いやすい。


エネルギーライフルを握り締め、ダミーバルーンに向かって四つの引き金を引く。ダミーバルーンに着弾を確認するより早くペダルを踏み込み粒子を吐き出しつつ悠遠エターナルの位置を変えながらさらに引き金を引く。


続けざまに破壊するダミーバルーンを見ながらありとあらゆるモニターを確認しつつアサルトレールガンの向きを変更していく。


今回のダミーバルーンの量は桁が違う。計算上一秒間に三十体破壊しなければならない。二丁のエネルギーライフルと二つのアサルトレールガンでは到底無理だろう。だから、たくさんのダミーバルーンが悠遠エターナルを上に上がった瞬間、七翼全ての先についている高収束エネルギー砲からエネルギー弾が放たれた。


一斉に放たれたエネルギー弾は確かにダミーバルーンを貫き割る。それと共に頭上をスラッシュアンカーが駆け回る。


それを確認しながらエネルギーライフルとアサルトレールガンの引き金を引き続ける。


鈴に出来るだけ無理をさせてはいけない。だから、破壊出来るダミーバルーンを全て破壊する。一秒間に七回引き金を引けばいいだけの話。簡単だ。


僕はそう笑みを浮かべながら時にはダミーバルーンを蹴って破壊しつつエネルギーライフルの引き金を引いていく。






「化け物か」


その戦闘能力に呟いたルーイの言葉を誰も否定しなかった。


一秒間にダミーバルーン45体撃破。


もちろん、ダミーバルーンは際限なく湧き上がっているし悠遠エターナルが本格的に動く前からダミーバルーンが湧き出ていたため一秒間に湧き出るダミーバルーンより量が多いのは不思議ではない。


だが、恐るべきところはそこじゃない。ダミーバルーンを破壊した砲門ごとの数値だ。本来なら一番数が多い高収束エネルギー砲になるだろう。だが、その一秒平均が問題なのだ。



エネルギーライフル(二丁)…17体


アサルトレールガン(二門)…17体


高収束エネルギー砲(七門)…8体


スラッシュアンカー(二個)…3体



これだけでわかるように本当に桁が違う。本当に。


「予想外も予想外や。秒間8.5連射可能やねんな」


「僕達をあんな化け物と比べないでくれ」


さすがにそこまでいくと桁違いすぎて答えられない。


「これなら、何がきても戦えるな」


「問題は鈴を後部座席に乗せるかどうかだけどね。悠遠エターナルの後部座席には鈴が一番だと思う。だけど、イグジストアストラルのパイロットである鈴は必要。イグジストアストラル自体が決戦では必要不可欠だからね」


正確にはエース級がいない部隊の中でイグジストアストラルの防御力と攻撃力を兼ね揃えた機体は必要だということだ。


「こういう所にアル・アジフさんがいてくれたらな」


「そう言えば彼女はどこに行っているんだ?」


「ポイントΔE-67やったっけな。大事な戦力を調達するって」


「案外近いな」


ルーイが遥か向こうにある山を見る。ちょうどアル・アジフ達が向かっているポイントΔE-67がそこだからだ。


「そう言えば、リリィが心配そうにアル・アジフと一緒に悠聖を見送っていたな。七葉と緒美もいたような」


「一体四人で何をしに向かったのやら」


「あそこらへんは古代遺跡があるからな」


アンの何気ない一言に全員の視線が集まった。アンは不思議そうにルーイの顔を見る。


「知らんかったん?」


「僕は知らないぞ。そもそも、古代遺跡ってなんだ?」


「古代遺跡というよりボロボロになった研究所って言った方が正しいな。麒麟工房とは比べ物にならないくらいの研究所やねん。ボロボロだけど。まあ、そこが発見されたからフュリアスが開発されたんやけどな」


そう言いながらアンは苦笑した。


「研究所はセキュリティーが生きてるらしく何とか持ち帰ったデータがフュリアスの設計図。それがフュリアスの始まりや」


「そうだったんだ。周がそんな話をしていたような」


「第76移動隊の隊長は化け物か」


ルーイの言葉にリリーナは苦笑しながら肩をすくめた。


「周は推測するのが上手いからね。でも、アル・アジフが行くってことは確かな兵器があるんだよね」


「盗賊団すら諦めたって話やからアル・アジフ達も」


アンが言葉を止める。


そもそもアル・アジフは世界最強クラスの魔術師だ。さらには攻防一体の『破壊の花弁デスペルタル』、どれだけ離れても通信が可能な『絆と希望の欠片ライペルタル』を使える悠聖、希望する未来を見れる七葉、一撃の威力の高さはアル・アジフを凌ぐ緒美。


火力も防御力も過剰すぎる面子にアンが心配する事柄が変わる。


「古代遺跡、大丈夫かな?」


それにはリリーナもルーイも心配そうに視線を向けるしか出来なかった。

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