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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第七十六話 再会

昼休み。オレは中庭で第76移動隊のみんなと仲良く昼ご飯を食べていた。ちなみに由姫と音姉、そして、浩平の姿はない。


由姫と音姉はクラスメートと一緒に昼ご飯を食べているからだ。浩平はリースに連れて行かれた。


「相変わらず周隊長の飯は上手いよな。どうやったらここまでになんだ?」


「日々の練習だ。つか、悠聖もまだ作れるだろ」


「周隊長と比べたら雲泥の差なんだけどな。つか、白百合家って料理上手いよな」


オレも由姫も音姉も普通に料理が出来る。それは、義理の両親が仕事に忙しく、自分達で料理を作っていたからだ。


ちなみに、音姉はどこぞの宮廷料理かと思えるような見事かつ繊細な料理を作ることが得意で、由姫は普通の家庭にある料理。オレは野蛮人の料理と評価されたことがある。


まあ、三人の中では由姫が一番上手いけど。


「昔からやってるからだよ。それに、オレの得意料理は孝治と同じだ」


「確かに、それなら俺も得意だ。だが、食事当番をお前達に任して良かったか疑問だな」


孝治がそう言いながら中村を見た。中村は瞬間よりも早く目をそらしている。孝治の言いたいことはわかるけど、ジェノサイドキラーに料理をさせない方がいいと思う。うん、絶対に。


オレの視線に気づいたのか中村がオレを睨みつけてくる。意味は絶対に言うなというところか。


「周、一度作らせたどうだ?」


「オレはまだ死にたくない」

ジェノサイドキラーの力を思い出しながら言う。


あの日、あの料理を食べたオレと由姫と時雨は腹痛で三日三晩の苦しみを受けた。その時から由姫の料理は格段に上手くなったけど。


「でも、料理下手なやつって萌えるよな? 孝治もそう思うだろ?」


「分かっているではないか、我が同士」


何故か無性にこの二人が殴りたくなったのはオレだけだろうか。


「お前ら分かってないな」


オレは小さく溜息をつく。


「想像してみろよ、生臭いカレーを。真っ黒に焦げたけど中身は赤い鶏肉を。明らかに色のおかしい野菜が並べられた食卓を」

臭いならまだわかる。焦げ臭いとかなら。でも、生臭いカレーは誰が考えることが出来るだろうか。さらには真っ黒に焦げた中身が真っ赤な鶏肉。明らかに殺意しか考えられない。そして、色とりどりを通り越しておかしな色しかない野菜の盛り合わせ。


これが同時に出た時は本気で死ぬかと思った。


「食べなければ殴られて、食べたらお腹を壊す光景。まさに、ジェノサイドキラーに相応しい食卓」


「海道?」


中村がゆっくり立ち上がった。その手に握られているのはレーヴァテイン。


いつの間にかオレの周囲には誰もいない。というか、距離を取って昼ご飯を食べている。


オレはただ顔を引きつらせるしかなかった。


「中村、落ち着け」


「これが落ち着いていられると思う? 散々言ってくれたよな?」


「大丈夫だ。全て事実だし」


オレはレヴァンティンを呼び出さない。こんな場所でレヴァンティンでも呼び出したなら戦闘でもする気かになる。


『天空の羽衣』には中村が打ち出すコピーを受け止める能力はない。つまり、絶体絶命のピンチ。


「そうかそうか。なら、文句ないよな?」


中村がレーヴァテインをオレに向ける。


ここで使うならあれしかないよな。だから、腰を落として身構える。


「周! 助けてくれー!」


その時、唐突に和樹の声が響いた。オレは構えを解いて声のした方を向く。すると、そこにいるのは女子に追いかけられている和樹の姿。


和樹はオレに駆け寄って肩を持った。


「まじ助けてくれ。友達だろ?」


「違うだろ」


オレは即答で返した。


「泣くぞ! ぐえっ」


そう叫んだ和樹の襟を追いついた女子が掴んで引っ張った。うん、追いかけてきた女子が全員クラスメートで殺気だっているのは面白いな。


「海道君ありがとう。とりあえず、篠宮は裁判にかけるから」


「冤罪だ冤罪! 周、助けてくれ」


「まあまあまあ。で、こいつが何をしたって」


助ける気が無かったオレの代わりに悠聖が和樹と女子をやんわり離した。そして、女子に尋ねる。


「女子更衣室に入った」


「有罪」


悠聖が動こうとした和樹の腕を捕まえる。決めるのが早いな。まあ、オレも有罪だとは思うけど。


「だから、冤罪だってば。周もなんか言ってくれ」


「はいはい、わかった。で、女子更衣室に入ったって言ってもどんなことが起きたんだ?」


「女子更衣室に篠宮の生徒手帳が落ちてた」


完全に確定だよな。


「盗まれたんだって。机の中に入れていたらいつの間にか無かった。本当だぞ」


「周隊長、とりあえず、裁判員裁判にでもかける?」


「中学生でやったら死刑が出るから。確かに盗まれたなら和樹は犯人じゃないよな。で、他に変わったことは?」


「入り口付近の一部の人のカバンの中身が漁られてた。無くなってはいないけど」


つまり、犯人の姿を見た人はいないのか。


「悪魔の証明かよ」


オレは溜息をつきながら呟いた。確かに、生徒手帳が盗まれたなら誰が犯人かわからなくなる。さらに言うなら和樹の言うことは嘘では無さそうだし。


「なんだそりゃ?」


「確か、存在しないものを証明することはできないってやつだな。周隊長が言いたいのは状況だけはあるけど肝心な証拠がないってとこだろ」


「ああ。確かに和樹を犯人とするのは簡単だ。だけど、状況があまりにも不自然だ。よく考えてみろよ。和樹が女子更衣室に入れる時間帯を」


さっきの授業は体育だった。オレは体育が終わった瞬間に中庭に来たので和樹がどういうルートで教室に戻ったかはわからない。


だが、授業が終わって和樹が女子更衣室に向かえる時間があったかどうかは難しい。


でも、不可能ではない。


「実現は不可能じゃない。ただ、簡単じゃない。つか、和樹の生徒手帳が盗まれたなら教室の方も何か盗まれたんじゃないのか?」


「いや、俺のだけだ」


さっぱりわけがわからない。つまり、どういうことだ?


どうして生徒手帳だけを手に入れる必要があったのかわからない。


「ちょっと待ってろよ」


オレはしゃがみ込んで手のひらを地面に押し付けた。そして、魔術陣を展開する。


発動する魔術は探査魔術。探すものはこの学校の生徒ではない人物。


「見つけた」


オレは顔を上げた。そして、立ち上がる。なんとなしにやってみたら誰かが敷地内にいた。場所は近い。


「ちょっと行ってくる。少しの間だけ待ってくれないか」


魔術陣の展開を見ていた悠聖が頷きながら指輪をはめる。第76移動隊のみんなはそれに気づくが、和樹達は気づかない。


「俺の冤罪を晴らしてくれよ」


「善処するよ」


オレは笑って走り出した。


今使った魔術は感度は高いが精度は低いもの。誰かがいたことはわかっても誰がいたかはわからない。


校舎の中に入り階段を駆け上がる。


一階を越えて二階を去りつつ三階に入る。そのまま屋上への階段を登る。そして、屋上の鍵を開けて外に出た。


そこにいたのは貴族派の双子であるベリエとアリエ。だけど、服装がドレス姿。見たことのあるドレス姿。


オレはそれを見て小さく笑った。


「そっか、あの時の」


ツインテールのアリエがにっこり笑った。


「うん。久しぶり。周お兄ちゃん」


それはあのパーティの時、エレノアと一緒にオレ達兄妹といてくれたあの時の双子だった。


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