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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 破魔弓

これは『幕間 断章VS里宮姉妹』と同時間に投稿していますが、戦いが同時に進行しているだけです。

破魔雷閃の一撃をテオロさんは大きく後ろに下がることで回避した。おそらく、破魔雷閃だけではなく他の技のリーチも知られているはずだ。


里宮本家の一番怖いところは今までのデータが全てあるところ。オレ達がテオロさん達に対策を練っていたように、テオロさん達はオレ達の今までの過去を知って対策を立ててくる。その精密さが一番危険だ。


「兄さん。まずは私が」


「お兄ちゃん。まずは私が」


由姫と茜の二人の声が重なる。そして、二人は視線をぶつけ合った。


「由姫姉は私に譲ってくれてもいいんじゃないかな?」


「いえ。ここは私が戦った方が勝ち目がありますから」


「どうかな? これでも新しい魔術を淡々と作り出しているんだよ」


「新しいと言ってもテオロさんには勝てません。テオロさんはその上をいきますから」


「大丈夫。私が倒すから」


「私が倒します」


「私!」


「私!」


「茜が倒すって言ってるんだよ!!」


「私が倒すって言っているでしょ!!」


オレは呆れたように二人から視線を話してテオロさんを見た。


「なんか、申しわけない」


「いやいや。若人の言い争いなんてなかなか見れないからね。僕達は実年齢はもうあれだから見た目は若者でも精神がちょっとね。だから、新鮮味を感じることには感じるけど、戦場でのその余裕は」


「二人を倒させるわけにはいかないんでね」


レヴァンティンを構えて前に踏み出す。距離は約10m。


駆ければ一瞬。だが、テオロさんが放つ矢も一瞬で届く。条件は同じように見える。だけど、テオロさんの手にあるウィズダムブレイクは甘く見ていると貫かれるだろう。


「本当に、厄介な弓だよ」


『そうだね』


そうオレに頭の中に語りかけながら亜紗が二本の小太刀、綺羅と朱雀を構えながら横に並んだ。もちろん、この綺羅と朱雀はあの里宮姉妹の名にあやかっている。


本来ならこの二本を使うのは相手が自分より速いか手数が上かの時くらいだ。昔ならいざ知らず、今の亜紗の速度は世界最高峰。もちろん、手数の多さも豊富だ。一撃の威力も侮れないものが多い。だから、あまり使う機会はなかったのだが、これを亜紗も使わざるを得ないか。


手合わせ、したみたいだな。


オレは苦笑しながら語りかけた。そして、テオロさんが矢を構えるのを見ていつでも動けるような体勢を取る。


『圧倒された。負けはしなかったけど破魔弓に』


だろうな。破魔弓はオレ達みたいな手数じゃどうにもならないくらい凶悪なものだし。全く、テオロさんが完全に敵に回る心配がなくてよかった。


『周さん?』


こっちの話だ。それより、来るぞ。


「世間話はそろそろいいかな? こちらも準備が整ったし、本気で行かせてもらうよ」


その瞬間、矢が放たれた。オレはその矢を弾こうとレヴァンティンを振り抜こうとした瞬間、炎の壁が出現してその矢を受け止めていた。


「ちょっと! 由姫も茜も戦闘中なんだから相手の動向を見てよ!」


「「見てます!!」」


「いや、だから睨み合ったまま言われても説得力はないから」


『驚いた』


そんな光景を見ながら亜紗は目をぽかんと開けて驚いていた。


メグが二人に怒っているからじゃない。テオロさんが放った矢を受け止めた炎の壁について驚いているのだ。


炎の壁の向こうにいるテオロさんも驚いている。


破魔弓の仕組みを理解していれば自ずと出てくる答えの一つだ。まあ、こっちが不利なことには変わりはないけどな。


『同時に攻める?』


行くぞ。


オレ達は地面を蹴り、そして、一気にテオロさんに向かって駆けだした。レヴァンティンを鞘に入れるわけじゃない。だけど、紫電一閃を放てるような体勢で駆け抜ける。


「ようやく攻めてきたね。でも、そんな攻めで僕を倒せるとでも思わないこと!!」


テオロさんが後ろに下がる。後ろに下がりながら矢を放つ。


だから、オレはレヴァンティンの鞘を投げつけた。鞘と矢がぶつかり合い、鞘が大きく弾かれる。だけど、テオロさんは笑みを浮かべている。


この勝負は完全に読み合い。どれだけこちらの駒を出しきれるかが勝負の鍵だ。


「一つ!」


その瞬間、ウィズダムブレイクから予備動作のない矢が一発放たれた。オレはそれをギリギリで避ける。対する亜紗は真っすぐ前に進んでいる。


「二つ!」


さらに放たれるもう一本の矢。今度は亜紗を狙う。亜紗はそれを綺羅と朱雀を交差させて受け止めた。そして、大きく吹き飛ばされる。


「三つ!!」


そして、放たれる三本目の矢。狙いは完全にオレだ。オレはそれに向かってレヴァンティンを振り抜いた。レヴァンティンと矢がぶつかり合いオレが大きく後ろに下がる。


これで、ウィズダムブレイクの蓄積されたコピーは完全に、


「四つ!!」


「なっ」


完全に無防備なところに四本目の矢が放たれた。オレはそれをレヴァンティンで受け止めてさらに大きく吹き飛ばされる。


「四本目?」


「ウィズダムブレイクがいつ三本しかストック出来ないといったかな? そして、僕の限界は何本でしょうか?」


「甘い顔して騙されたよ」


何とか受け止めることができたものの、これでこちらの不利は大きくなった。ウィズダムブレイクの特殊能力。一つの矢の効果をストックすること。その能力自体が連射出来ないはずの破魔弓をさらに凶悪なものとしている。


「そうかな? 僕も予想外だよ。だって、彼女」


テオロさんが視線を向けるのはメグ。メグは不思議そうに首を傾げた。


「真っ先に潰させてもらうよ」


「ちっ。由姫、茜、メグを守れ!」


オレはレヴァンティンを握り締めて前に駆けだそうとした瞬間、亜紗が動いていた。七天失星の柄を握り締めて前に駆けだしている。


亜紗の狙いはもしかして、


「そういうことか。予定変更。由姫、茜。プラン通りに頼むぞ!」


「了解!」


由姫が前に向かって飛び出す。それに応じるようにオレもテオロさんに向かって飛び出した。


「苦し紛れだね!」


「どうかな?」


オレは笑みを浮かべながら叫んだ。


「レヴァンティンモードⅦ!」


剣状態からブーメラン形態、というより巨大な手裏剣の形が一番近いけど返ってこさせるからブーメランでいいや、になったレヴァンティンをテオロさんに向かって投げつけた。


弾いてもすぐにモードⅧに変えれるこの形態の対抗策は少ない。テオロさんが取るであろう選択肢もこれまた少ない。だから、全てにおいて最善の方法の上を行く最高の手段に向かって全てを動かしていく。


「くっ!」


テオロさんはすかさず矢をレヴァンティンに向かって放った。だから、オレはレヴァンティンモードⅦを一瞬にして分解させる。


「モードⅧ!」


拳にみについたナックルの感覚を感じつつ拳を握りしめながらテオロさんに向かって距離を詰めた。


オレ、亜紗、由姫。三人が同時に攻撃をしかけた場合、テオロさんが取る手段は二つ。もし、ここで外れたらオレ達は負ける。


「外れだよ」


その言葉と共にテオロさんが飛び上がった。やっぱり、これが来た。


「破魔弓の恐ろしさを再度身に味あわせて上げるね」


「それはどうかな」


オレがそう笑みを浮かべた瞬間、オレ達は同時に後ろに下がった。予想外の行動だったのだろう。テオロさんは目を見開きながら矢を地面に向かった放つ。それと同時に巨大な爆発が起こり粉塵が周囲を覆い尽くした。


本来ならここで突撃してあの攻撃を受けて吹き飛ばされているところに粉塵の中から矢を射られただろう。だけど、オレは最初からそれを予測していた。


だから、ここで最大の切り札を使う。


「メグ!」


「この中に飛び込むって聞いてないわよ!!」


炎獄の御槍を握り締めてメグが粉塵の中に飛び込んだ。オレはレヴァンティンを通常の剣形態であるモードⅠに戻す。


「さあ、援護するぞ、レヴァンティン」






炎獄の御槍を握り締め私は粉塵の中に飛び込んだ。


周から聞かされていた里宮テオロが持つスキル。それに対抗出来るのは七葉さんか光さんか私とも言われた。


確かに私は強くなった。だけど、あの里宮テオロと戦えるほど強くなったとは思えない。


「っつ!」


とっさに炎の壁を周囲に作り出す。防御魔術に防御魔術をいくつも重ねた複合魔術。周の話によると私の炎は密度が高いため重ねた場合は強力な防御障壁になるらしい。


とっさに展開した炎の壁に大量の矢が突き刺さる。敵の姿が見えない以上、こちらが不利。


「だったら、吹き飛ばす!」


炎獄の御槍を握り締めて振り抜いた。周囲の粉塵を吹き飛ばし、視界に里宮テオロを収める。


「見つけたよ!」


里宮テオロは私に向かってウィズダムブレイクを構えた。ウィズダムブレイクと共に矢が構えられる。


周から聞いた里宮テオロの対抗策。出来るかわからないけど出来なければやられる。


「ぶっつけ本番!」


私は炎の壁を消しながら前に踏み出した。里宮テオロとの距離は5m。どう頑張っても駆け抜けて攻撃するのに一秒はかかるだろう。それでは遅い。遅いから私は炎獄の御槍に炎を重ねる。


防御に徹していればやられない。だけど、勝てない。だから、周に言われたように私は前に踏み出す。


「これで、終わりだよ!」


里宮テオロが矢を放った。それに向かって私は炎獄の御槍を振り抜く。放たれた矢と炎獄の御槍がぶつかり合い炎獄の御槍を纏っていた炎がかき消され微かに後ろに下がる。


今のじゃ駄目だ。こんな炎を重ねるだけじゃ駄目だ。


前に踏み出しながらさらに強力な炎を重ねる。だけど、それも里宮テオロが放った第二射によってかき消された。さっきと同じように後ろに下がる。


これでも駄目。だったら、私は炎を作り出す。この空を照らす太陽のような莫大なエネルギーを持つ炎を炎獄の御槍に重ねるしかない。


「炎獄の御槍!」


私は叫んだ。叫びながら炎獄の御槍を放たれた三本目の矢に向かって振り抜いていた。そして、灼熱の熱気が矢を消し去る。


そこには炎の剣があった。炎獄の御槍ではなく柄から先まで炎によって形取られた剣が。


「何、これ」


私の動きが止まる。それ以上に前にいる里宮テオロは驚いていた。


「それは、まさか。いや、ありえない。そんなものは」


「まあ、いい」


今がチャンスだ。驚いている里宮テオロに向かって斬りかかる。


だけど、里宮テオロは大きく後ろに下がりながらウィズダムブレイクを構えた。


バックステップして回避しながらの最大威力の射撃。


弓を使う者にとって基本的な動きであり孝治さんも弓での戦闘に限定した場合ではよく使う攻撃だ。


距離の関係もあって回避されることはまずない。さらには、隙をつけば確実に当たる上に受け止められても大きく後退させれる。しかも、里宮テオロの場合は破魔弓だ。


本来なら絶対の矢と成り得るが、今の私、というかこの謎の剣と一緒なら大丈夫。


「これで」


放たれた矢に合わせて炎の剣を振り抜く。案の定、炎の剣によって矢は消し去られ、里宮テオロが驚いたように目を見開いた。そんな里宮テオロに向かって剣を振り抜く。


鈍い音と共にぶつかり合う炎の剣とウィズダムブレイク。


「破魔弓の弱点を突いてくるなんてね」


「圧倒的手数か超高密度の粒子、でしたっけ?」


「そう。七葉や光なら負けるとは思っていた。でも、それ以外なら負けないと思っていた。そうじゃないんだね」


里宮テオロがぶつかり合うウィズダムブレイクに矢をつがえる。私はとっさに後ろに下がりながらタイミングを読んで放たれた矢を上に弾いた。そして、再びウィズダムブレイクとぶつかり合う。


「超高密度の炎。それこそ、個体のように使える密度。まさか、実現出来ているとはね」


「だったら、このまま」


「どうかな?」


その瞬間、私の体が後ろに引っ張られた。それと同時に私がいた場所に大量の矢が降り注ぐ。


「大丈夫か?」


その言葉と共に抱き留められる私の体。


「周、ごめん」


「いや、いいさ。メグはちょっと休んでろ」


そう言いながら周は前に向かって駆けだした。そして、里宮テオロが放った破魔弓を破魔雷閃で撃ち払う。


「その間に準備は整ったからな」






レヴァンティンとウィズダムブレイクがぶつかり合う。そして、大きく弾かれ合った。


テオロさんはすかさず矢を装填するがオレはそれをギリギリで回避して一気に距離を詰める。


「一人でのいいのかな?」


「そろそろだからな」


「そろそろ?」


お互いが一瞬だけ離れ会いお互いに武器をぶつけ合う。そのまま至近距離で魔術と破魔弓をぶつけ合った。


「破魔弓。破魔の矢を放つスキル。破魔は敵対する行動全てを指し、あらゆる攻撃を無効化し弾く。ウィズダムブレイクは一本だけ攻撃を複数回放てる分チャージする。本当に、それは厄介だったよ」


「まるで、勝ったみたいに言うね。でも、こちらはまだ破れていないよ。僕は近接戦が苦手だ。だけど、並みの相手に負けないくらいに近接戦は鍛えている」


「ああ。テオロさんの実力だとこのまま押し込む前にあの二人が駆け付けてくるだろうからな」


「まさか、周は」


「都が耐えられる限界がそろそろだ。さすがに、あの二人相手にして都が勝てるとは思っていない」


「信じていなかったの?」


「いや、都自身も、本気、じゃないからな。だから、勝てないのはわかっている。だから、そろそろだ」


オレはテオロさんから距離を取った。そして、都がいる方向に手を向ける。


「お前の思い、引き継ぐぜ」


その言葉と共にオレの手の中に一本のレイピアが握られる。


「それは、まさか」


「都の心。断章の力を持つ神剣。星剣『グラム』。勝負はこっからだぜ」

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