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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 断章VS里宮姉妹

これは『幕間 破魔弓』と同時間に投稿していますが、戦いが同時に進行しているだけです。

「いきます!」


綺羅と朱雀。二人に向かって駆けながら都は断章を握り締めた。


この作戦はここに来る前から決めていたのだ。そうなるように都がお願いしたと言っていいだろう。


都は今までのあらゆる戦いにおいて危険な状況、あるいは負けかけた状況はあまりない。ある意味反則な狭間の力を利用した都は負けることのない勝負をし続けていた。


だからこそ、都は望んだのだ。負ければ周にとって大事な情報が手に入らなくなるこの戦いにおいて力を試すために。


「フォトンランサー!」


「うちらも舐められたものやな!? たった一人でうちらを倒そうだなんて!」


朱雀が地面を蹴る。まるで距離を無視したかのように距離を詰める朱雀に都はフォトンランサーを放った。だが、フォトンランサーは放たれた瞬間に一瞬にして弾かれる。


「朱雀ちゃんはやらせへんで~」


フォトンランサーの収束点に防御魔術を展開していたのだろう。フォトンランサーを防ぐには一番有効な手段だが、都が展開するフォトンランサーは数十。その全てにピンポイントで防御魔術を展開出来る技量は並みじゃない。


弾幕を封じられた都に向かって朱雀が殴りかかる。


「まずは一人!」


「フォトンブラスター!」


飛びかかってきた朱雀に対して都はとっさにストックしていた魔術を展開した。光弾が散弾となって朱雀を狙う。だが、その瞬間に朱雀が笑ったのを都は見ていた。


都の背中を駆け抜ける悪寒。だから、都はとっさに後ろに下がっていた。


「里宮本家八陣八叉流奥義『疾風迅雷』」


朱雀が肩からの体当たり、チャージが一番わかりやすい、をした瞬間、加速した。


都が放ったフォトンブラスターを全て弾きながら都に向かって朱雀が突撃する。都は後ろに下がりながらも断章を構えた。


「里宮本家八陣八叉流奥義『一騎当千』」


朱雀の拳が断章にぶつかった瞬間、都はその威力の低さに一瞬だけ驚いた。だが、それは次で驚愕に変わる。


一瞬にして吹き飛ばされる都。拳を突き出した体勢のまま朱雀は小さく息を吐いた。


「里宮本家八陣八叉流奥義『疾風迅雷』は相手の攻撃を弾きながらチャージする技や。対する里宮本家八陣八叉流奥義『一騎当千』は一撃が千の打撃となる里宮本家八陣八叉流最強の攻撃。一撃は軽いけどそれに騙される人はたくさんおる。まあ、後ろに下がられてたから威力はかなり下がったけどな」


里宮本家八陣八叉流奥義。


由姫が使う里宮本家八陣八叉流の中でもトップレベルには難しく並の使い手では使用することすら出来ない強力な技。


ちなみに、由姫は一度も使用していないが由姫はちゃんと継承してもらっている。


「次で終わらせる。うちは今、機嫌が悪いねん」


「それが里宮本家八陣八叉流奥義ですか。由姫さんのものと同じくらい、いえ、それ以上にすごい技になってますね」


そう言いながら都がゆっくりと立ち上がる。そして、小さく息を吐いて断章の先を左手で握った。


「里宮本家八陣八叉流。こちらで過去をあらかた探してみましたが、その起源は調べきれるほど浅いものではありませんでした。その技も途方もない年月の積み重ねによって出来た技なのでしょう」


「そうやな。うちはただ継承しただけや。お爺ちゃんから慧海と一緒にな。里宮本家八陣八叉流は戦うための拳技やない。守るための拳技や。本来ならな。里宮家の情報を守るために先人が積み上げてきた技術の力。あんたも古くからの名家やけど里宮家にはかなわんわ」


「そうでしょうね。それこそ、科学時代の情報を持っていると言われる里宮家にはどこの名家もかなわないと思いますが?」


「へぇー、噂集めも得意みたいやな」


「親友にそういうことが得意な人がいるんです。本当に感謝しています」


そう言いながら都は静かに手を広げた。まるで断章の持つ部分が鞘のように引き抜かれる一本のレイピア。それを見ながら朱雀は小さく息を吐いた。


「年季が違うと言うなら、こちらもこちらで同じ積み重ねたものを使用するだけのことです」


「ようやくやな。ようやく、本気を出してくれんねや。狭間の巫女」


「ええ。あなた方と戦うためにこの力を出し惜しみしていたら負けるとわかっていましたが、出し惜しみしている隙はありませんね。生身の人間、いえ、神様相手に私は本気を出していなかった」


「あの金色の鬼の力の一つ。あらゆる狭間、ものとものの間に存在する空間、を利用する究極クラスの星剣『グラム』。断章のままやったら戦いやすかったんやけどな」


そう言いながら朱雀は楽しそうに構えた。それに対して都が両手でレイピア、いや、グラムを構える。


「私もこれは使いたくなかったです。この力は強すぎる。でも、あなた方相手ならこの力は相応しい」


「嬉しいわ。うちも綺羅も負ける気はないで。うちらの最強のコンビネーションを見せたる!」


「行くで~、サンダーフォール~」


綺羅の言葉と共に都の周囲に稲妻が駆け抜けた。一定範囲を敵味方関係なく撃ち抜く魔術だが、綺羅はその範囲だけを絞り都に向かって叩きつけた。


だが、都には当たらない。まるで、都の周囲にだけ壁があるかのように。


「確かにあなた方は強力です。里宮姉妹のコンビネーションは周様と孝治さんのコンビネーション並に強力です。ですが、今の私には適いません」


「言うわ。うちも綺羅もまだまだ本気じゃないねんで」


「ならば、本気で行かさせてもらいます!」


その瞬間、都が移動した。狭間を詰めて一瞬で朱雀の横まで移動する。


朱雀ほどの格闘家なら音姫やギルバートクラスの速度でも対応出来ただろう。だが、都の移動はそれ以上に早い。文字通り、距離を詰めるのだから。


反応出来ない朱雀に対して都がグラムを振り抜く。だが、振り抜いたグラムは朱雀の近くに展開した防御魔術にぶち当たった。すぐさま防御魔術を砕くがそれは朱雀が反応するには十分な時間を稼いでいた。


「里宮本家八陣八叉流」


「フォトンシュート!」


朱雀が踏み出すより早く都は単発の光弾であるフォトンシュートを放っていた。朱雀ではなく自分自身に対して。


朱雀の攻撃が空振る。対する都はより少ないダメージで朱雀から距離を取っていた。


「今の動きに反応されるとはな。なかなかの反射神経や」


「朱雀ちゃ~ん。テオロ君がピンチかも」


その言葉に朱雀がテオロに姿勢を向けた。そこにはテオロと激しくぶつかり合う炎の剣を握り締めたメグの姿が。


その剣を見た朱雀が微かに目を細める。


「あれは。なるほどな。どうりで」


「もらいました!」


余所見をした朱雀に向かって都がグラムを振り抜く。だが、そのグラムの切っ先は防御魔術によって受け止められていた。


都が目を見開く。それと同時に朱雀の拳が都の体を打ち上げていた。


「残念やったな。うちじゃなくて綺羅を狙えば勝負は変わって」


「この瞬間を待っていたんです!」


その言葉と共に朱雀の体に光の紐が巻きついた。すかさず力任せに千切ろうとするが千切れない。


「朱雀ちゃん!」


すかさず綺羅が光の紐を切ろうと魔術を発動させるが光の紐はびくともしない。


「これで」


打ち上げられていた都がグラムを振り上げる。そして、朱雀に向かって振り下ろした。


「終わりです!」


避けられない朱雀を守るために綺羅は防御魔術を展開する。だが、それを一瞬で砕いてグラムは朱雀の体を切り裂いた、かのように思えた。


だが、グラムの切っ先が弾かれる。後方から飛来した一本の矢によって。


グラムが地面を砕く。その隙に朱雀は後ろに下がっていた。


都が振り返るとそこには激しく剣と弓をぶつけ合う周とテオロの姿がある。あんな状態でグラムを弾く矢を放ったということなのか。


「命拾いしたわ。エンジェルリング。距離が近ければ近いほど効果を増す拘束魔術。まさか、うちにやられることを計算して罠を張っていたなんてな」


「それが当たらないとは思いませんでしたけどね」


エンジェルリングを引きちぎった朱雀を睨みつけながら都はグラムを構える。


「それにしても、見た目はレイピアやのに剣と同じ幅があるみたいやな」


「気づいていましたか?」


「当たり前や。あんたは剣と同じ使い方でグラムを振るうからな。持ち主が望む姿をとるのが神剣。杖という鞘を抜いて現れる真の姿がそれである以上、よっぽど隠したいことがあんねんな」


「女の子は隠し事が多いということです」


「同感や。そして、さよならや」


その瞬間、都の足下を中心に巨大な魔術陣が煌めいた。都はとっさにグラムを地面に突き刺す。


だが、魔術陣は消えない。かき乱したはずの場所が一瞬にして修復されて元の魔術陣を作り出す。


「これで、終わりや!」


朱雀が拳を地面に叩きつけた瞬間、都を中心に爆発が起きた。そんな中で都はすかさず腕を振る。その手にあるグラムを投げつけるように。


「受け取ってください! 周様!」

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