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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百三十七話 ちょびっと本気

その時、地面が割れた。


三方向からやって来ていたフュリアスの群れが一瞬にして地割れに呑み込まれたのだ。


広域殲滅戦略級魔術『グランドパニッシュ』


ただ、地面を割るだけの魔術だが、詠唱時間及び効果がそれほど期待出来ない魔術でもあった。


本来の規模は最大300mほどしか地割れを引き起こせない。しかも、深さは10mが限度。すぐに登られる上に範囲も大きくはない。


ただ、特殊な特徴として魔術陣を重ねることで範囲と深さを重ねた分だけ倍増させることが出来る。そのため、これだけは重ねた術者の実力が丸分かりなのだ。


「アル・アジフか」


その様子を離れた場所でアレキサンダーの中で見ていたクロラッハは小さく呟いた。


アル・アジフの話はゲイルから聞いていた。人界で敵に回してはいけない六人三家の名前と共に。


全ての情報を持つと言われる里宮家。世界最強を数多く輩出する白百合家。世界の半分の財産を持つと言われるグローリア家。


その三家と共に、世界最強の一角であるギルバート・R・フェルデ。無敵でもある善知鳥慧海。現代史上最高の天才であるアリエル・ロワソ。第76移動隊の隊長である若き天才海道周。若き世界最強の白百合音姫。そして、究極にして森羅万象の魔術を使用するアル・アジフ。


その六人三家を敵に回す場合は戦力の半分を消し去ることを覚悟しろと言われていた。だが、クロラッハはあの時まで信じていなかった。


進化の頂点にいるクロラッハにとってその程度簡単だと考えていたからだ。だが、フルーベル平原の戦いで圧勝したはずのこちらは敗北をした。それは第76移動隊がいたから。


たった並の20人ほどで勝てるような敵ではないとわかっていた。だからこそ、クロラッハは考えを改めていた。


「想定を見直さなければな」


クロラッハはグランドパニッシュを知らない。グランドパニッシュを知る者なら麒麟工房にアル・アジフがいるとわかるだろう。それは麒麟工房に近づくことが死と同じ意味であることを示す。


だが、クロラッハはそれに対して笑みを浮かべる。


「アル・アジフ。お前がどれだけ強いかわからないが、我が進化の糧になるがいい」


絶対的な自信と共にクロラッハは笑みを浮かべる。


だが、クロラッハは知らなかった。麒麟工房において最も警戒しなければならない人物はアル・アジフではないことを。






「豪快」


リースが小さく呟くのを見ながら浩平は苦笑した。


「同じことをしようとする奴のセリフじゃないよな?」


「浩平は豪快な女の子は嫌い?」


「よく考えてみろよ。第76移動隊の面子を」


その言葉にリースは第76移動隊の面子を思い浮かべる。


「この中で豪快じゃない奴は何人いる?」


「アリエ、夢、事務員くらい?」


よくよく考えると第76移動隊の大半は技が豪快というか豪華だ。


例えば、状況に応じて武器やスタイルを使い分ける真の万能である周。単独で敵部隊に斬り込み制圧可能な音姫。レアスキルの重力魔術を操りあらゆる壁を破壊する由姫。天然でありながら計算された攻撃を行う都。銃撃の乱舞を行う浩平等々。


第一特務に匹敵する戦闘能力と豪快さだったりもする。


「だから、リースが豪快でもオレは嫌いにならない。それに、リースはリースだろ。俺はリースの全部が好きなんだ」


「浩平」


リースが顔を真っ赤に染める。


「射的でクラスメート(女子)に腕を自慢しながら遊んでいたり体育の授業のバスケで本職を翻弄してダンクを決めた時に黄色い歓声(女子)に対して手を振ったり一部の男子と結託して女子更衣室を覗きに行ったり部屋に隠したらバレるからって男子の部屋にエログッズを置いて時々通っていたり女子とデートしていたりしたけど私は信じていたから」


「信じてないよな!? ストーカーになってるよな!?」


「私と浩平の愛の鎖は千切れないと思っていてよかった」


「リースの愛が重い」


「私って邪魔?」


「可愛いなこんちくしょう!! 俺のそばにずっといればいいだろ」


「愛しています、旦那様」

「いつまでやっているのよ」


いつの間にか来ていた冬華が呆れたように溜め息をついた。冬華に気づいたリースが軽く手を上げる。


「護衛?」


「挨拶するか尋ねるかどっちかにしなさい。そうよ。まだ完治していないから本気は出せないけど、あなた達の集中時間を稼げるでしょ?」


「俺一人で十分なんだけどな」


「本当なら白騎士と一緒に迎撃する予定だったけど調子が完全じゃないから仕方ないじゃない。むしろ、私は護衛してもらう側かもね」


「なるほどね。まあ、この数は大丈夫だろ。さて、リース。奴らに一泡ふかせてやりますか」


そう言いながら浩平が操作出来る全ての銃を並列に構えた。


その数はゆうに千を超えるだろう。それほどの銃をフレヴァングと共に防御態勢を敷いたフュリアスの群れに向ける。


イージスを前面に押し出しエネルギーシールドの力で前に進む敵はこの距離からの狙撃では倒せないという状況だった。


「リフレクトもビリヤードもいらない。俺達はただ、純粋な力だけで敵を薙ぎ払う。ただそれだけのことをしてやろうぜ」


「うん。浩平と私の二人の力で」


全ての銃口に竜言語魔法によって書かれた魔法陣が煌めく。それにその場にいた冬華は鳥肌が立っていた。


一発の威力が高いわけじゃない。一発毎に込められた魔力は子供でも出せるようなほど多くはない。だが、その込められた竜言語魔法が問題なのだ。


全ての銃口に込められた弾丸はシェルバレットと呼ばれるシールド貫通を目的としたエネルギー弾。かなり硬いが中身は空洞である。その中に竜言語魔法が込められているのだ。


つまり、着弾した時点で竜言語魔法が炸裂する遠距離への近距離攻撃。


「リース。準備はいいな」


「いつでも」


浩平が笑みを浮かべてフレヴァングの引き金を引く。


「「シェルブラスト!!」」


二人の言葉が重なると同時に千を超えりゃ竜言語魔法を封じたエネルギー弾がフュリアスの群れに向かって放たれていた。






爆発。


簡単な表現ではあるが今の状況を表すならそうなってしまうだろう。巨大な爆発が起きたかと思えばその爆発はフュリアスの群れを呑み込んでいた。


それを見ながら楓は小さく息を吐く。


「リースの竜言語魔法かな? 本気の竜言語魔法じゃないみたいだけど」


本気なら今頃地形ごと消し炭になっているだろう。それが分かっているからこそ楓は小さく息を吐く。


これで三方向からやってきたフュリアス部隊の内二方向のフュリアス部隊を撃破することが出来た。後は楓が担当する一方向のみ。そちらは攻撃していないからかこちらに向かってせめてきている。


「みんなちょっとだけ本気みたいだけど、私は少し本気を出してみようかな」


その言葉と共にカグラの先を向ける。それと同時に楓の近くに浮かぶブラックレクイエムの先も同じ方向を向いた。


「清浄の輝きを今ここに」


魔力が収束を開始する。


「栄光の輝きを今ここに」


収束は次第に大きくなりバレーボールほどの大きさになる。


「輝きで全てを包み込め」


バレーボールほどの大きさの収束した魔力が一気に小さくなった瞬間、光が溢れた。


「エクスブラスト!!」


溢れた光が一瞬にして指向性を持って吹き飛ばす。前にある空間を喰らい尽くしながら一瞬にして残ったフュリアス部隊を呑み込んだ。


ブラックレクイエムの排熱機構が動き大きな蒸気を噴き出す。その威力に楓は少しだけ満足そうに笑みを浮かべた。


「まずまずかな」


そういいながら静かにカグラを下ろす。


エクスブラストが駆け抜けた後は完全にえぐり取られていた。まるで、喰らい尽くされたかのように。


「とりあえず、80%。ギリギリ、間に合うかな」


そう言いながら笑みを浮かべる楓はまるで悪魔の様だった。まるで、今消し去ったフュリアスを実験動物扱いしたかのように。


「もう、時間がないんだから、邪魔だけはさせないよ、クロラッハ」






消え去ったフュリアス部隊。残っているのは出撃していないクロノスだけだった。その事実にクロラッハは体を震わせている。もちろん、怒りで。


「アル・アジフだけではなかったのか」


その言葉に応えるものはいない。三方向からのフュリアス部隊はそれぞれアル・アジフ、浩平&リース、楓によって撃破され、上空のフュリアスも光によって撃ち落とされた。


魔術がフュリアスの天敵だと知っていても、ここまで圧倒的な戦力差をみせつけられたことは一度もない。


「アレキサンダーの準備をしろ。我が直接出て、そして、アル・アジフを破壊する」

こんなところで意味深なセリフを残す楓ですが、真相は第三章では語られないので気長にお願いします。

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