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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百三十六話 罠

忙し過ぎてダメでした。ちょっとは落ち着くので更新を進めていきたいです。アル・アジフと楓の本気は次の話になりますが。

麒麟工房で一番高い建物である管制塔。その屋上に浩平とリースの二人はいた。


森からの偵察から返った二人はすぐさまこの位置で周囲の監視を行っていたのだ。もちろん、場所はばればれなのだが、絶好の狙撃ポイントだと言っていい。見晴らしがいいからこそ真っ先に狙われるが、そこは竜言語魔法がある。


「リース、寒くないか?」


「大丈夫。浩平の体は温かい」


「それならよかった」


もちろん、こんな場所であろうが二人のバカップルぷりは健在である。二人は体を寄せ合ってお互いに温め合っている。


音界の気候は温暖ではあるが、麒麟工房は少し高い位置にあり、管制塔の屋上はフェンスすらないのでむしろ風によって寒かったりする。


「周囲に敵影はなし。そっちは?」


「魔法探知にもひっかからない。光学迷彩で隠れているわけじゃない」


「目視でも異常がないからまだ、敵はきていないみたいだな。というか、完全に罠が大量にあるとわかっているだろうに」


「わかっていても攻めてくると思う。話が本当なら本命だけでも生き残れば十分だから」


「アレキサンダーか。『無限進化』だったっけ? 永久に進化を続ける化け物スキル」


「噂だけしか聞いていない。だけど、最後まで進化したら極一部を除いて止められない」


その極一部とは正が行った間違った進化なのだが、それをリースは語らない。浩平には理解できないようだから。


「来た」


だが、そんな浩平は別の言葉を発する。そして、隣に置いていた通信機に手を伸ばした。


「敵影確認。数600。降下している。ポイントはA-5と、C-8H-1だ! 三方向から敵が来ている!」


『了解した』


すぐに通信機からアル・アジフの声が返ってくる。その声は冷静であった。


『予想通りじゃな。まあ、想定より数が少ないのが難点じゃが、おそらく光学迷彩で隠れているのじゃろう。虱潰しに任せたぞ』


「了解」


そう言いながら浩平はフレヴァングを構える。対するリースも静かに竜言語魔法書を開いた。


「さて、久しぶりの精密射撃といきますか」






「第一段階。浩平の遠距離射撃。これで一割程度は減らすことが出来るじゃろうな」


麒麟工房の中央。そこで巨大な魔術陣の上で魔術書アル・アジフを開くアル・アジフは静かに笑みを浮かべた。


その笑みは獰猛な肉食獣のような笑みであり、その笑みは悪魔の笑みだった。


「第二段階。その炎に焼く尽くされるがよい」






噴火。


その光景を見ていたものからすれば完全にそうだろう。


麒麟工房を攻めるフュリアスの軍団の半分はレヴァイサンのような地上を歩いて侵攻する部隊だった。残りの半分は空を飛び警戒するクロノス。


そんな地上を侵攻するレヴァイサンやアキシオン、ガルシオンなどが森をかきわけ麒麟工房を目指して進んでいた瞬間、突如としてフュリアスが炎に呑みこまれた。それは連鎖するように噴き上がり、辺り一帯のフュリアスを、上空のクロノスごと焼き尽くしていた。


森に燃え広がる炎はすぐさま発動した魔術によって水がかけられすぐに消火される。だから、この少しの間だけでも誰が見ても被害は限りなく大きいものだった。


だが、それでも敵の侵攻は止まらない。生き残ったフュリアス以外にも光学迷彩で隠れていたであろうフュリアスが現れ進んでくる。それはまるで捨て駒のように。


そんな捨て駒のように地上を進むフュリアスの何機が急に動きを止めた。そして、そのまま地面に倒れ込む。完全に機能停止したのだ。しかも、コクピットが開いているところを見ると、パイロットを殺すことなく動力源だけを破壊しているらしい。


その行為に進軍が少しだけ止まる。止まることによって敵の攻撃から離れようとでもするかのように。だけど、それがアル・アジフの罠だと知らずに。






「ターゲット確認」


カグラを構えた楓は静かに呟いた。その視線の先にあるのは立ち止まったフュリアス部隊の姿。


浩平がフレヴァングから放つ弾丸はフュリアスの最大の弱点である魔力の弾丸であり、パイロットを傷つけることなくフュリアスの動力部を撃ち抜いている。


その技術は完全に桁違いであり、その効果はフュリアス部隊が防御陣形を敷きだすほどだった。


「リース? こちら楓」


通信機を口元に近づけて楓は口を開く。


「隠れたまま向かってくる敵の場所は?」


『数8。クロノスが光学迷彩を纏い近づいている。場所はT-113』


「113か。わかった。位置を確認したよ。他には?」


『無い』


「無い?」


その言葉に構えたカグラの先がブレる楓。アル・アジフの予想ではもっとたくさん来るのだと思っていたから。


予想が外れた、とは楓は思わない。光学迷彩のクロノスを隠れ蓑に確実に近づいているはずだから。


「じゃ、上か」


楓は空を見上げた。見上げてカグラの先を空に向ける。


空に向けられたカグラはその穂先で魔力の収束を開始した。圧倒的なまでの魔力があっという間に収束される。


「大気の魔力の乱れを生み出してあげる。光、よろしくね」


その言葉と共に楓は空に向けて収束砲を放った。






空を駆け抜けるエネルギーの柱。光はそれを見ながら静かにレーヴァテインを構えた。そして、光の周囲に大量のレーヴァテインのコピーが現れる。


360°あらゆる角度に展開されたレーヴァテイン。それを展開しながら光は笑みを深める。


「さあ、始めようか」


笑みを浮かべながら、これから始まる虐殺に対して笑みを深めながら光は周囲を見渡した。


魔力粒子が楓の砲撃によって流動し不規則なパターンを生み出す。それは光学迷彩を行うデバイスですら予測不可能な動きであり光の周囲で光学迷彩で隠れていたクロノスが姿を現せる。


クロノスが一斉に光に向けて攻撃を放とうとする。だが、それより早くレーヴァテインは四方八方に向けて放たれていた。






空に咲き誇る爆発。それは連鎖的に拡大し空中に隠れていたクロノスを一掃する。


光のレーヴァテインコピーによる絨毯爆撃。それを空中で放ったのだ。爆発に巻き込まれたクロノスは一溜まりもなく蹴散らされていく。


その光景をイージスカスタムの中で見ていた七葉は小さく息を吐いた。


「うわっ、強いね」


『本当に光とは戦いたくないよ』


七葉に言葉を返すのはベイオウルフに乗るリリーナ。その背中には今までとは違う装備が背負われていた。


メインブースターは噴射口が二つ、斜め上と斜め下に向いている。そのメインブースターに寄り添うようにベイオウルフの高さと同じくらいの長さで上下に広がる姿勢を制御する安定翼でもあるスラスター。さらに、その上下の真ん中からは安定翼が横に伸びている。


新たなブースターの特徴は安定翼が継ぎ接ぎだらけに見えるところだ。


『魔界でも話題になるけど超広範囲の絨毯爆撃。本来の絨毯爆撃は一撃が強力なだけに対し、光の場合は一撃が即死級だからね。まともに相手をすればこちらが保たない』


「確かにすごいよね。本当に味方で良かった」


『敵の姿勢を釘付けにしてくれるしね。さあ、行こうか』


ベイオウルフがゆっくりと前に進む。それと同時にベイオウルフが身につけていたマントが地面に落ちた。


光学迷彩を施された最新のマントだ。もちろん、防御力はないし、防御力どころかほんの少しでも動けば光学迷彩は解除される。


だけど、動いていないという条件ならどんなジャミングやレーダーにも対応出来る。


突如として現れたベイオウルフに一番近くにいたレヴァイサンは動きを止め、そして、急加速をしたベイオウルフによって蹴り飛ばされていた。


蹴り飛ばされたレヴァイサンにエネルギーライフルを向けて引き金を引くベイオウルフ。その光景に我を忘れて見入っていた他のフュリアスがベイオウルフに向けてエネルギーライフルを構えた瞬間、頸線が周囲のフュリアスを切断していた。


イージスカスタムが光学迷彩のマントを脱ぎ捨てて動き始める。


「さあ、行こうか」


そう言いながら七葉はコクピットの中で笑みを浮かべた。






「動き始めたようじゃな」


アル・アジフはそう言いながら静かに魔術陣に魔術陣を重ねた。


同一魔術の複合発動。


難しいが練習すれば誰だって出来るだろう。だが、アル・アジフを取り巻く魔術陣を見たなら誰だって絶句するはずだ。


立体式魔術陣。


立体の魔術陣を組み上げることで発動及び維持に莫大な時間と魔力を必要とする魔術陣で、極めて強力な魔術を使用出来る。だが、コストパフォーマンスから考えれば効率は悪い方である。


その立体式魔術陣を組み上げてかつ重ね合っているのだ。


その難易度は極めて高い。周や孝治クラスなら二重までなら可能かもしれない。リースでも四重が限度だろう。しかし、アル・アジフはすでに二十を超える立体式魔術陣を重ね合っている。


「さあ、クロラッハよ、見るがよい。これが世界最強の魔術師の技じゃ」


その言葉と共に魔術が完成した。


「グランドパニッシュ」

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