第二百三十三話 想い
スランプが酷い。文章がなかなか書けません。
「悠聖!」
アルネウラと優月とのシンクロを解除した瞬間、オレの胸の中に優月が飛び込んできた。オレは優しく優月を抱き締める。
優月を取り戻してからすぐさまシンクロをし、シンクロ状態をずっと維持していたため優月は抑えきれなかったのだろう。現に中破した悠遠の中から苦笑した悠人がこちらを見ている。
「悠聖だ。悠聖の匂いだ」
『良かったね、悠聖。こういう展開を待ち望んでいたよね?』
「オレがむっつりみたいに聞こえるんだが」
『「事実だよ?」』
「否定はしないが声を揃えるな」
オレは苦笑をしながらも優月の頭を撫でる。いつも三人、いや、四人一緒だったんだ。ちょっと前までアルネウラだけだったけど、二人を取り返したからもう怖くはない。
後は、こいつらを守り共に戦うだけ。そして、ディアボルガを取り戻す。
『それにしても、悠人が鈴を選ぶなんてね』
「私も驚いた。悠人はメリルを選ぶものだと思っていたのに」
悠人の方を見ると悠人に鈴が背負われている。おそらく、体力の限界だったのだろう。
イグジストアストラルは今まで行方不明だった。その間はずっと戦い続けていたらしい。つまりは体力も精神も限界のはずだ。
「ちょっと違うだろうな」
オレは苦笑しながら二人を見る。
「悠人はオレと同じだよ。守りたいものがたくさんあるから全部守ろうとする。そういう主人公なんだよ」
『悠人は悠聖と違って人気だもんね』
「アルネウラ。それ違うよ。悠人は年上に好かれているだけだよ。むしろ、マスコット?」
『悠人って小さいよね。つまり、学校にはショタコンが大勢いるってことだね』
「いつの間にか都島学園が変態の巣窟になっているような気がするんだが」
オレは小さく溜め息をついて歩き出す。とりあえず、基地に戻るか。
「そちらもそちらで色々とあったようだな」
ルーイの言葉に振り向くとそこにはリマを引き連れたルーイの姿があった。まるで離さないとでも言うかのようにリマはその手を握り締めている。
まあ、ルーイのエリュシオンは大破したからな。ルーイが生きているのが不思議なくらい破壊されたし。
「まあ、オレからすればどうして生きているのかが不思議だけどな」
「簡単だ。エリュシオンの特性を利用しただけだ。攻撃が当たる寸前で逆噴射を行いながら電源をカット。コクピットギリギリまで破壊されることで死んだように見せることが出来る」
「ったく、心臓に悪いからな」
さすがルーイと言うべきか。まあ、あの時のリマの取り乱しようはすごかったからな。ルーイもそれは反省しているみたいだし。
ともかく、無事で良かった。
「悪いな。心配かけたようで」
「謝るならリマにしておけよ。さて、基地に戻るとしますか。色々と聞きたいことがあるしな」
「ああ。色々とな」
そう言いながらオレとルーイはこっちに向かってくるガルムスを睨みつけた。
「お帰りなさい」
基地に戻った僕達を待っていたのは少し寂しそうな表情をしたメリルだった。悠遠のコクピットから素早く飛び降りつつメリルの前に立つ。
「心配かけたかな?」
「少しだけです。悠人は必ず戻ってくると信じていましたから」
「そっか」
「悠人。悠人は鈴と付き合うのですか?」
「やっぱり気にしてた」
おそらくメリルは戦っている最中のことを見ていたはずだ。だから、僕と鈴のやり取りを知っている。
メリルとしては戦いよりも気になることだったのだろう。だから、僕は言う。
「僕は」
「メリル!」
だが、僕の言葉は遮られた。横手から飛び込んできたリマがメリルを抱き締めることによって。苦笑したルーイも近づいてくる。
悠聖さん達は先に向かったのかな?
「元気そうだな」
「まあね。一度死んだけど」
「貴重な体験だったじゃないか。こうして無事生きているから過ぎたことだ」
そう言いながらルーイは僕の背中を軽く叩いてくる。まるで、心配かけるなとでも言うかのように。
寝ていたのは一日か二日ほどだったかもしれない。でも、その間でたくさんの心配をかけてしまった。特に、アル・アジフさんはいっぱい心配しているだろうな。
「ルーイ。ここからアル・アジフさんと連絡を」
「それならこれを使え」
悠聖さんが僕に向かってデバイスを投げてくる。それを受け取ると続いて通信機が投げられた。
「悠聖さんは先に向かったんじゃ無かったんだ」
「先に向かったわけじゃなく孝治達と連絡を取っていたんだ。一応、オレも一時音信不通だったからな」
「そうなの? そう言えば、全員揃っているね」
確か、冬華さんや優月さんが連れ去られてそれを取り戻すために動いていたはずだ。優月さんがここにいるということは悠聖さんは冬華さんも取り戻したのだろう。
二人とダブルシンクロをした悠聖さんは世界でも最強クラスの実力。こうなればみんなの力を合わせれば何だって出来る。
「ところで、悠人は本当に目指すのか?」
その言葉に僕は頷きを返した。
それはもう決めたことだから。それを覆すことはしない。
「目指すよ。戦いの無い世界を。それを実現するために僕は力を使う」
「なるほどね。それについて聞きたいことが一つだけあるんだが、いいか?」
「いいですよ?」
「戦いが終わった後はどうしようと考えている? 周は後のことも考えている。あいつは全てが終わっても『GF』として尽力するつもりだ。だけど、お前はそれが見えない。終わったらどうするつもりだ?」
その言葉に僕は言葉を返せなかった。
悠聖さんが言うことは正しい。そして、僕が考えていることは一つだけ。
「死んで全てを終わりにする、というならオレはお前を止める。死んで全てを終わらせるなんて」
死ぬつもりだった。死ねなくてもどこかに消えるつもりだった。だって、戦いが終わったら僕の力は必要とされてないから。
音界は音界の人達のものであり、全てが終わればメリル達が音界を動かしていくから。
「やっぱりな。オレは周の理想に影響されているんだ。もしそうなるなら終わってからを考えておけ」
「うん」
「時間はまだあるんだ。ゆっくり考えろ。後、通信開いているから」
「誰と?」
「アル・アジフと」
僕は通信機をデバイスにつけて耳に当てた。
『聞いていますか? あなたはいつもそうです。人の話を無視するか聞いていなくて私が考えていることを全て裏をかいて楽しんで。現に、今でも通信を切らずに放置して。確かに現代では通信費はタダですよ。昔みたいにこんなけ通信するだけで何百円と金がかかることなんてありません。電話会社も存在していませんし。というかデバイスが開発されすぎています。それを考えてもタダとは便利すぎじゃないですか? お金を取るべきですよね?』
「あの、僕に言われても全くわからないだけど」
そう言葉を返すとデバイスの向こうで絶句するような音がした。多分、悠聖さんだと思ってたら僕だったから驚いているのだろう。
『無事だったようじゃな』
「アル・アジフさん。心配かけたよね」
『心配なんてしておらぬ。そなたは必ず生きていると我は信じていたからの』
「ありがとう」
言葉ではそう言うがアル・アジフさんはきっと心配していたはずだ。だって、アル・アジフさんは僕のお母さんみたいな人だから。
『元気で良かった。今は悠聖といるようじゃし、このまま元気な姿を見せてくれそうじゃな』
「うん。ねぇ、アル・アジフさん。クロラッハのことなんだけど」
『あやつは桁が違うからの。色々と話を聞いた以上、クロラッハは常に進化していく存在じゃ。あやつに勝とうとするなら悠久の時の中で、悠遠の時間最強に君臨する機体を使わねばならない』
「そんなに、なんだ」
『今は無事に帰ってくるがよい。我はそなたを待っているぞ。またな』
「うん、ありがとう。またね」
僕はそう言って通信を切った。そして、悠聖さんに返す。
「いいのか?」
「うん。また、会えるから」
「そっか。なら、オレから返す言葉はないな。ガルムスから作戦会議室に来るよう言われているけど」
そう言いながら悠聖さんがメリル達を見た。メリルはリマに抱き締められ頬ずりされている。さすがのそれはメリルにとっても迷惑なのかさすがに嫌そうにしていた。
その光景をルーイにリマと一緒に援軍で来てくれたナイト、セリーナさん、ゲッペルが笑っている。確かに微笑ましい光景だよね。
「今はいいか」
「いいのかな?」
「いいんだよ。再会は時には一番大事なことがあるからな。離れていたなら尚更だ」
「そうだね」
僕も鈴を救い出した時は思わず僕の欲望を忠実に出しちゃったから、そういうのはよくわかる。
むしろ、いっそのこと本当に忠実になろうかな。
「ねえ、悠聖さん。悠聖さんはなんでハーレムを作っているの?」
「ハーレムって。いや、まあ、否定はしないけど、肯定もしたくはないな。理由としてなら、大事だからかな」
「大事だから?」
「アルネウラも優月も冬華もみんな大事だから」
そう言いながら悠聖さんは近くの二人の頭を撫でた。二人は嬉しそうに目を細める。
「守っていきたいんだ。オレは昔、恋人を守れなかった。悠人と同じだな」
その話は聞いたことがある。周さんと悠聖さんの絶体絶命のピンチの際に悠聖さんの恋人が二人を救うためにその命を使ったって。
僕と同じだ。ルナも僕を守るために僕の前で死んだ。
「もう、失いたくない。だから守るんだ。大事だから。ずっと、ずっと死ぬまで共にいたいから」
「そうなんだ」
「まあ、後はオレの器量次第だ。三人も養えるかどうかにもなってくる。だけど、オレはやってみせる。そう決めたから。お前だって同じだろ。想いを告げるんだ」
悠聖さんは何故僕がそんなことを聞いたのか完全にわかっている。
僕はまだ迷っている。迷っているからこそ不安が生まれている。それに悠聖さんは気づいている。
悠聖さんは決断したんだ。僕だって同じだ。僕だって戦いを止めると決断した。そう決めたから。だから、こっちも決めないと。
僕は守りたい。だから、言わないと。
「メリル」
僕はメリルの名を呼んだ。それにみんなが振り向く。視線が集まる中、僕はメリルに想いを告げた。
「ずっと君を守りたい。僕は君を守りたい」
その言葉は始まりで、そして、僕の決意でもあった。
そろそろ物語は終盤。多分、三月までには終わるはず。