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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百十四話 窮地

迫り来るエネルギー弾を避けながら僕は隙を窺う。


ディザスターの攻撃は相変わらずの密度ではあるが別の言い方をすればこの密度で悠遠を落とせないということはこれがディザスターの最大なのだろう。


上下さらには前方から迫るエネルギー弾は予測出来ない量ではあるが、『悠遠』の力を使えば回避出来ない量ではない。


「法則性。何か法則性は無いのか!?」


迫り来るエネルギー弾に視線を向けながら僕は法則性を探す。


体はなんとなく感じているのだ。ディザスターが放つ攻撃の法則性を。だけど、体は感じていても思考が追いついていない。


「悠人。法則性があるのですか?」


「本音を言うならこの攻撃密度に思考が追いついていないんだ。僕はそれほど魔術が得意じゃないから思考加速ロジカルアクセルの魔術は使えないし」


思考加速ロジカルアクセルですか?」


「思考加速系の能力を纏めてそう呼ぶんだ。まあ、思考加速ロジカルアクセルは難しくない部類なんだけどね」


「悠人は魔術が苦手ですからね」


「それを言われると辛いな」


そんな会話をしながらも僕の体は的確に回避のための動きを悠遠に伝えている。


宙返りした後の逆ブーストによる落下。落下をしながら体をひねりつつ前に飛び出す。


それだけの動作の中で何十というエネルギー弾を回避し続けている。デタラメなように見えながら正確な動き。


「法則性さえ見つければ回避するのは難しくないんだ。やり方はいろいろとあるけど今は」


「今気になったのですけど、ディザスターは五機ありますよね。見えている以上全機エネルギー弾を放っているようですが、この場合の冷却装置はどう働いているのでしょうか」


「出力的に考えて放った後のクールダウンが必要だよ。いくら優秀なエネルギーライフルでも使い続ければ銃身が歪むからね。だから」


「だから、その法則性を見つけ出せばいいですね。任せてください」


「メリル?」


「これは副操縦士の仕事です。ですから、やらせてください」


「わかった」


断る理由はない。今の悠遠を操るだけでも精一杯。そんな中で法則性を探すことも加えたら撃墜されかねない。


いくら空の民としての直感があってもやるべきではない。


今は回避に専念するだけ。本当なら攻撃したいけど。


「その前に、撤退状況は?」


「撤退完了まで半分程過ぎたというところみたいです。モニターではイグジストアストラル、ストライクバーストの両機が最後尾で護衛しながら下がっています」


「よかった。ちゃんと逃げれているんだね」


「はい。ですが、『守護』の能力限界が近づいています。後二十分ほどで限界に来るようです」


問題はそれかもしれない。悠遠の翼はエネルギーをほぼ無尽蔵に作り出すが無限に有しているわけじゃない。そんな都合のいいエネルギーなんてない。


作り出すエネルギー量を使用量が上回ればエネルギーはだんだん少なくなっていく。


今の悠遠が使っているのは『守護』と『悠遠』だけ。『悠遠』には『創聖』のエネルギーを、『守護』にはそれ以外のエネルギーを注ぎ込んでいるためエネルギー量に関してはそれほど問題は無かったけど、さすがに長時間、かれこれ一時間近くは回避しているからね。


「二十分か。それまでに法則性を見つけないと」


「はい。必ず探します。ですから」


「うん。メリルなら出来るよ。僕はメリルを信じて全てを回避するだけ。それだけだから!」






『不安か?』


後方を振り返ったイグジストアストラルの鈴に対して同じように最後尾で撤退を援護しているストライクバーストに乗るマクシミリアンが話しかけてきた。


「うん。心配。悠人もメリルもあれだけの攻撃の中で無事とわかっていても心配」


『確信しているのだな』


「だって、悠人は最強のパイロットだから。そして、乗っているのは最高の機体。むしろ、私達がいる方が足手まといになる」


『そうか? イグジストアストラルにはアストラル機装が三つあるではないか。それを最大限まで利用すればいくらでも追いつけるのではないか?』


「私は下手だから」


それは鈴自身がわかっていること。


ソードウルフを楽々と乗りこなし今ではベイオウルフという最高クラスの機体に乗るリリーナはかなり才能があると言っていい。もちろん、悠人は言うまでもない。


対する鈴は機体は強い。イグジストアストラルとい絶対に破壊出来ない機体に乗りアストラル機装を三つ装備する。


機体及び装備では世界最強だろう。だが、それまでだ。操作技術には何も結びつきはしない。


『下手が理由となりえるのか?』


「それは」


『操作技術がいくら劣っていようとも、戦うのはお前の意志だ。それに応えてくれる機体もお前は持っているではないか』


鈴は沈黙する。そして、レバーを握り締めた。


本当は行きたい。イグジストアストラルな悠遠の盾となりながら戦える。衝撃は耐えればいいだけ。後は、鈴の意志のみ。


『どうするのだ? 我はどちらをしても何も言わない。例えどんな存在だとしても我らの道を阻まぬのなら我はその意志を尊重しよう。それが我が天王としての役割だ』


「あなたはどうして、私達の敵になったの?」


その言葉にマクシミリアンは笑みを浮かべる。


『全てはアカシックレコードに記述されていたから、ではいささか不安な回答ではあるな。言うならば、我が望む道を進んだから、とだけ言っておこう』


「そっか」


その言葉を聞いた鈴が小さく息を吐いてイグジストアストラルの体を翻した。ストライクバーストはイグジストアストラルがいる方向を振り向かない。


『行くのか?』


マクシミリアンが尋ねる。その言葉に鈴は頷いた。


「うん。私は私がしたいように戦うよ」


『行くがいい。我が天神の力があればこれくらいの数を護衛するのは造作もない』


「お願い」


それだけ言うと鈴はイグジストアストラルの出力を最大限まで上げた。そして、聖砲ラグランジェの力を最大限まで使い加速する。目指すはディザスターと戦う悠人の場所に。


もし、鈴が来たなら悠人はどういう顔をするだろうか。怒る? いや、呆れる?


でも、きっとこういうに違いない。


仕方ないと。


「悠人、待ってて。今、助けに行くから」






「っつ!」


悠遠の体をエネルギー弾がかすめる。まともな被弾はまだ少ないけれどこのままじゃいつか直撃して撃墜されてしまう。


「悠人、これ以上は危険です。すぐさま撤退してください!」


「大丈夫だよ。まだ、大丈夫」


「でも!」


「くっ」


『悠遠』の力で近距離転移を行いながら僕は自分の状態を再確認する。


戦闘開始からすでに三時間強。その間ずっと戦い続けていた。最初はストライクバーストと全力の戦闘。慣れない四本の腕を使った全力戦闘は体に大きな負担を残し、今は回避を間違えれば死ぬ可能性のある状況での戦闘。


ある意味極限の戦いを二回続けた僕の疲労はどうやらピークに達していたらしい。


「ちょっとなまったかな」


おそらく、僕がこっちに移り住んでから無為に過ごしていた時間が悪かったらしい。あの後に長時間の全力戦闘はほとんど無かったから。


これだけ回避だけに神経を注いでいたならこうなるのも無理はない。


「無茶です。これ以上はどう考えても」


「無茶だとしても、今はやらなければならないんだよ」


額に滲む汗を感じながら僕は『天剣』を引き抜いた。そして、刃を作り出す。周囲の魔力粒子を吸い極太の刃を持つ『天剣』を構える。


「悠人。どうするつもりですか?」


「法則性を見つけたんだろ?」


「それは」


「教えて」


連続で回避しながら僕はメリルを促す。すると、メリルは静かに僕の前に一つのデータを示した。


「ディザスターは二十の砲を肩に、三十の砲を足に持っています。発射感覚はそれぞれゼロコンマ二秒から三秒にかけて一定の感覚でエネルギー弾が放たれています」


「クールタイムは約六秒?」


「はい。それぞれの砲のクールタイムは六秒。足からの砲撃は止まることなく続きますが肩の砲は二秒間だけ止まります」


「それを五機がカバーしてるんだね」


「はい。五機がそれぞれ連携してクールタイムを取ることで隙を限りなく少なくしています」


「つまり、一機破壊すればいいんだね」


「いえ。少なくとも肩の砲さえ破壊出来れば」


「ちょっとくらいは休めるよね!?」


僕はそう言いながら宙返りしつつ『天剣』を振り抜いた。だが、『天剣』の刃はディザスターのエネルギーシールドによって受け止められる。


だが、これでディザスターの一機は攻撃が出来ない。しかも、それで流れは崩れる。


「だからこれで!」


すかさず僕は『悠遠』の力を使ってディザスターの頭上付近まで移動していた。そして、極太の刃をもつ『天剣』を振り上げて構える。


「これで、どうだ!」


そして、一気に落下した。ディザスターの身体を『天剣』で斬り裂きながら地面まで落下する。そして、地面スレスレで『悠遠』の力を使い上空に舞い戻った。


だけど、僕は小さく舌打ちをしてレバーを握り締める。


『天剣』の刃を完全に入れたはずなのにディザスターに目立った外傷は見当たらない。


「リアクティブアーマーですね。私達が知っているものよりもかなり特殊性がありますが」


「砲は一つ破壊出来た。メリル、今の『天剣』の出力はわかる?」


「少しだけ待ってください。今調べます」


『天剣』の刃も使って攻撃を弾きながら僕は悠遠を動かしていく。ほんの少しずつズレているから、このままいけば撃墜されるのはそう遠い未来じゃない。


その前に一機だけでも破壊出来れば。


「わかりました。出力は350ギガEです」


「ギガE? 何の数値?」


いきなり聞いたことのない単位を聞いて少しだけ困惑する。多分、『天剣』の出力を聞いたから音界における出力単位だと思うけど、こっちはギガEなんてない。


「えっと、とりあえず、今のFBD中の悠遠のエネルギー消費一時間と同じ値です」


「『天剣』のエネルギーがすごいのはわかったけど、刃じゃリアクティブアーマーを破壊するのは難しいかな」


「どういうことですか?」


「リアクティブアーマーの原理は同じエネルギーをぶつけて威力を相殺するもの。『天剣』みたいなエネルギーの刃はエネルギーを集中することでリアクティブアーマーの理論上の限界を突破して防御が可能なんだ。しかも、ディザスターは継ぎ目のないリアクティブアーマー。エネルギーの刃で突破するのはやっぱり無理だったね」


悠遠を大きく後退させながら僕はディザスターを睨みつける。


一体、どれだけの出力機関を積んでいるのだろうか。数にもよるけど、ディザスターを開発出来る天界の技術はすごいよね。


「ですが、ベイオウルフの砲撃で簡単に破壊していたはずですが」


「ディザスターの最大の弱点がそれなんだよ。ダークエルフのリアクティブアーマーと違ってディザスターのリアクティブアーマーは一つの装甲から出来上がっている。つまり、面での攻撃は防御力が下がるんだ」


「ダークエルフのリアクティブアーマーはいくつかの装甲を継ぎ接ぎしていましたよね?」


「そういうわけじゃないけど、ダークエルフは近接特化の機体。だから、射撃を無効化するリアクティブアーマーだったんだ。対するディザスターは斬撃を無効化するリアクティブアーマー。対空砲火も激しいから射撃は難しい」


「八方塞がりですね。こういう時に誰かもう一人いててくれたなら」


「仕方ないよ。今は、僕達の力で、っつ」


衝撃。激しい衝撃と共に右腕が欠損したアラームが鳴り響く。ついに直撃してしまった。


「右腕を肩からパージ!」


「はい!」


すかさず右腕が肩から外される。右腕は肘から先が完全に無くなっていた。後は左腕だけ。


左手に握っていた『天剣』を鞘に収め急下降する。だが、容赦なく悠遠を狙ってエネルギー弾が迫ってくる。このままじゃ、落とされる。


「くそっ!」


回避が、間に合わない。


『諦めろ、悠人。もうすでにお前の敗北は確定している』


「まだだ。まだ、終わらないよ!」


ゲイルの言葉が重くのしかかる。それを感じながらも僕は必死にペダルとレバー、そして、精神感応によって悠遠を動かす。


「終わらない。まだ、終われない。僕は絶対に負けられないんだ!」


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