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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二百七話 悠遠の六翼

両手にエネルギーライフルを取り出しながらイージスカスタムは戦場を駆け抜ける。その姿を見たアージュやオルフェウスなど様々なクロラッハ側レジスタンスのフュリアスがイージスカスタムに向けてエネルギー弾を放つがそれはイージスカスタムが持つエネルギーシールドが受け止めていた。


イージスの強化版であるイージスカスタムにとって並みのフュリアスは敵ではなく。、世代遅れのフュリアスは言うまでもない。


自前のエネルギーシールドを頼りに突き進む七葉は苦しそうな表情でレバーを握り締めていた。


七葉が持つレアスキルである『曇り無き真実の未来』を希望神としてのスキルである『希望の未来を掴む能力』で連続発動させているからだ。


『曇り無き真実の未来』という無差別に発動する能力を強制的に連続で発動させるのは体に負担がかかる作業だ。だが、それを乗り越えて手に入れた情報は七葉にとってかなり重要な情報となりえる。


「これくらいでいいかな」


七葉が手に入れた情報は二つ。


イージスカスタムを撃破できる敵フュリアスは存在していない。つまりは味方の誤射で撃破される可能性はある。


イージスカスタムだけではこの情勢をひっくり返すことは不可能。防衛ラインを突破された瞬間にこちらは瓦解し、あの機体が来たとしても情勢をひっくり返すことは不可能になる。


それは七葉が手に入れたかった情報をしっかり手に入れられたということでもあった。


だから、七葉はすかさずその情報を文章形式にして悠聖に送りつける。この戦場で最も信頼し、最も頼りになる人物に。


「お兄ちゃん。お願い。力を貸して」






デバイスが震えた瞬間、オレは動きを止めていた。隣にいるリリィも同じように動きを止める。オレはデバイスを取り出して立体ディスプレイに繋げた。そこに書かれていたのは、


『24分間情勢を食い止める手段を構築して。戦力図はこれだけ』


情報の送り主は七葉。


「七葉」


「えっ? そうなの?」


「間違いない。生きてたんだ。生きて来てくれたんだ。あいつ」


目じりに浮かぶ涙を必死に堪えてオレは飛翔を再開しながら頭の中で陣地を再構成する。


敵の陣形もあるからかなりやりやすい。こちらの壊滅した場所、無傷の場所から考えて陣形を頭の中で考える。


対空防御はこの際無視してもいいだろう。24分耐えきる陣形にしなければならない。


「なら、この陣形だ」


そう言いながらオレは七葉に返信する。凸型の陣形を。


本当なら凹型の陣形がいいかもしれない。だけど、七葉がいる以上、イージスカスタムがいるはずだ。それはイグジストアストラルとの二枚看板で戦線を形成出来る。


「七葉。頑張れよ」


「悠聖ってシスコン?」


「まあ、否定はしないな。昔のあることから七葉には甘いところがあるし」


「羨ましい」


そう呟いたリリィの頭をオレは撫でた。そして、速度を上げる。


「このまま追いつけるのか? アレキサンダーに」






「来た」


悠聖からの返信に対して七葉は二つのスキルを同時に発動する。そして、その結果に七葉は満足してその情報を作戦司令部ではなく全体通信で敵味方関係なく飛ばした。


どう考えても暴挙。だけど、その暴挙を乗り越えた先には形成を逆転する最大にして最高の好機が訪れるから。


「みんな、聞いて! 私とイグジストアストラルが戦闘に立つ! だから、24分間だけ時間をください! そしたら、必ず、悠人が、歌姫の騎士が全てを逆転するから!! だから、力を貸して!」


そう言いながら両手に持つエネルギーライフルの引き金を空中のフュリアスに向かって引く。そして、最前線に立つ。


ここからは引かない。そう言うかのようにイージスカスタムはエネルギーシールドを展開しながらエネルギーライフルを構える。


「誰も力を貸してくれなくても、私だけでも」


『そういうわけにはいかないでしょ』


その言葉と共に四つのメインスラスターと板の様なサブスラスターをたくさんつけた灰色のフュリアスがイージスカスタムの横に降り立つ。それと同時に後方からの射撃が的確に敵フュリアスのコクピットを打ち抜いていく。


静かに降り立ちながらも攻撃が当たらないように動く姿を見て七葉は機体のパイロットが一流だと簡単にわかった。


『戦線を支えていれば悠人がなんとかするなら私はそれを支えるだけ』


『僕ちんの技術があればそれくらい簡単なのですよ。さあ、音ちゃん、僕ちんの活躍を』


『そういう冗談はどうでもいい』


その言葉と共に新たな機体が現れる。真っ赤な装甲と二対のメインブースターとサブスラスターがついたまるで蝶の翼を持つ機体。それを戦闘に緑色の装甲をした同じようなフュリアスが続く。


『人界の奴らが頑張ってるんだ。音界の奴らが頑張らないわけにはいかない。その作戦、大丈夫なのか?』


「大丈夫だよ。神の名において、希望神の名において証明するから」


『希望神? 聞いたことのない名前だな。まあ、いい。そんなこと言われて戦線崩壊したら』


「しないよ」


七葉は笑みを浮かべながら希望の言葉を放った。


「私は全ての希望の未来を見ているから」






「さて、時間はそんなに無いの」


激しく動き出した敵を見ながらアル・アジフが呟く。こちらも対応するように動きだしているがその動きは遅い。


『アル・アジフさん。僕達は今から最前線に』


「少し待つのじゃ、全員」


呆れたように言いながらアル・アジフはデバイスを操作してこれから行う指示を全員に送りつける。


『これは』


それにルーイが驚いたような声を発した。何故なら、アル・アジフが送りつけたのは悠遠にここにある全ての悠遠の翼を装着するためのやり方だったからだ。


それだけを見てこの場にいる全員がアル・アジフが何をさせようとしているのかを理解する。


「今から20分間。我らは悠遠を現段階での最高の状態にする。おそらく、この戦線を押し返すにはそれほど強力な手段が必要じゃろう」


『ですが、これは可能なのでしょうか。確かに、悠遠は全ての悠遠の翼を装着できるようにしています。ですが、それを行っても悠遠のシステムが耐えきれるかは別の話だと聞いています』


「FBDシステムを使っている時点で大丈夫じゃ。あれは通常駆動の七翼持ちの悠遠より出力が高いのじゃぞ。それに、我を誰だと思っている」


『アル・アジフ。いえ、リーズイット・エレナントの疑似人格』


メリルの言葉にアル・アジフは静かに魔術書アル・アジフを開く。


『ちょっと待ったちょっと待ったちょっと待った。アル・アジフさん。それさえすれば僕はこの状況を引っ繰り返せるの?』


悠人の言葉に毒気が抜けたのかため息をついたアル・アジフが魔術書アル・アジフを閉じた。


「そうじゃ。ここにある六つだけで悠遠はこの戦場にいる全ての敵を簡単に蹴散らせるであろう。どうする?」


『どうするも何も、僕達に選択肢は与えられていないと思うが?』


『あっ、やっぱり? でも、俺は賛成だ。こいつじゃ空を飛ぶ機体はどうにもならないし』


『もう少し考えてから話せ。俺としては勝算は本当にあるのかと尋ねるが』


「100%」


すがすがしいまでの即答で返されて言葉が止む。それだけの自信があれば彼らの取る手段は一つだけだった。


『やり方を教えてくれ。僕達はあなたの方法に協力する』






「ねえ、メリル」


僕は電源を落とした悠遠の中でメリルに語りかけた。メリルは薄暗い明りを頼りに悠遠の説明書を読んでいる。


「アル・アジフさんがえっと」


「リーズイット・エレナント。フュリアスの開発者として有名ですね。ストライクバースト、エターナルを設計したと言われています」


「じゃあ、アル・アジフのことも」


「魔術書アル・アジフ。魔剣運命。神器レヴァンティンと神器隼丸。秘剣七天。そして、聖剣デュランダル。それを開発した製作者としての名前でも有名です」


魔術書アル・アジフはアル・アジフさんが持っているし、魔剣運命は孝治さんが。神器の二つは海道兄妹。秘剣七天は亜紗さんが持っている。


そう考えると、第76移動隊と縁が深い人物になるよね。


「疑似人格ってのは」


「魔術書アル・アジフは意志を持つ武器です。その意志が宿ったのが今のアル・アジフ。中身は普通の女の子ですが」


「でも、そんな情報をどうやって集めたの?」


「歌姫の力です」


まるで懺悔をするようにメリルは言う。


「あなたのことが気になった時に私はあなたとあなたの近くにいう人達のことを私の力を使って調べました。リリーナのこと、鈴のこと。もちろん、海道周や白川悠聖のことなども調べました。だから、最も特殊な人生を歩んでいたアル・アジフが私は特に覚えているのです。それが知ってはいけない情報だとしても」


「知ってはいけない情報?」


「私の力は過去を見ました。そして、はっきりと見てしまったのです。世界が滅ぶ様を」


その時になって僕はようやく気づくことが出来た。メリルが震えているのを。


「私の力は今までの因果と共に見てしまったのでしょう。だから、怖かった。これからの未来が予言されているようで怖かった。だから、目をそむけたかった。でも、私は見てしまった。はっきりと、その様子を。怖いのです。私は、今の私が未来に世界が滅んだ時を想像するのが怖いのです。生きたい。たくさん生きて、悠人と共にいたい。そう思っているのに。こんなことなら、悠人と出会わなければ私は苦しまずに」


「メリル。違うよ」


生きたい。それは誰だって同じはずだ。僕だって、鈴だってリリーナだってみんな生きたいに決まっている。


「本当ならルナと一緒に生きたかった。二人でたくさんの場所を回りたかった。たくさん会話をして、たくさん一緒に過ごして、たくさん愛し合って、いつかは子供を産んで欲しかった。ルナを失ってからそんな後悔ばかりだよ。でもね、僕はルナと出会わなかったことを望まない。今の僕はルナがいたからここにいるんだから。だから、僕は抗う。いくら世界が滅びようとも、いくら世界が敵にまわろうとも、アル・アジフさんが敵にまわろうとも周さんが敵にまわろうとも、僕は戦う」


それは覚悟。今から使う絶大な力を振るうための宣言。


「僕は僕の守りたい者のために、僕のわがままでみんなを守るんだ。僕のために。だから、僕はメリルを守るよ。必ず、絶対に、この命を変えてでも」


その瞬間、悠遠の電源が入った。だが、僕は何もしていない。悠遠が自動で電源を入れたのだ。


僕は驚きながらも現れた画面を見つめる。そこにはこう書かれていた。


第一翼『悠遠』OK

第二翼『栄光』OK

第三翼『天聖』OUT

第四翼『天剣』OK

第五翼『創聖』OK

第六翼『豊翼』OK

第七翼『守護』OK


EX『連結』OK

EX『砕破』OK

EX『聖剣』OUT

EX『拡張』OK


その文字群に僕は小さく頷く。作業が完了したらしい。全ての悠遠の翼が僕に力を貸してくれる。


「メリル、行こう」


「はい。悠人。共に行きましょう」


『悠人、準備は完了じゃな』


画面が戻る。周囲に映し出されるのは周囲の光景。もちろん、アル・アジフさんの姿もある。


「うん。行ってくるよ。みんなを守るために」


「行ってきます」


『皆を頼んだぞ』


「「はい!」」






イグジストアストラルの背中の砲が一斉に放たれる。それによって数機のフュリアスが貫かれるがそれ以上の数のフュリアスがイグジストアストラルに向かってくる。


『きりがない!』


そんな言葉を叫びながらセリーナのフュリアスであるエリュシオンがエネルギーライフルの引き金を引く。


凸型陣形になったこちらは真っ正面から敵とぶつかり合っていた。相手は凹型陣形になりこちらの先頭を潰そうとしている。


普通なら簡単に崩れるだろうが最前線を支えているのはエース級の人達。何機かは落とされたが逆に何百という機体を落としている。


「くっ」


被弾による衝撃を受けながら鈴は一斉に砲を放つ。いくら敵の密集地点に撃ったところで今の威力では薙ぎ払うことは出来ない。チャージする時間もない。


聖盾ウルバルスに隠れながらのチャージは可能だが、この状況ではすべきじゃない。


「どうすれば」


小さく呟きながらも鈴は必死にイグジストアストラルを動かす。


避けるのではなく当たるために。イグジストアストラルを盾として少しでも多くの人を助けるために。


『ちっ。時間はまだか?』


『もう少しだよ!』


七葉の声に鈴は時計を見る。すでにこの状況が開始してから20分以上の時間が経っていた。それでも、後数分が長い。


イージスカスタムは地上を駆け回りながら地上の降下部隊を次々に撃破している。流れるように滑りながら対艦剣の一撃で切り裂くのだ。もちろん、距離があればエネルギーライフルの引き金を引く。


おそらく、空中ではイグジストアストラルが、地上ではイージスカスタムがいなければ今頃戦線は崩壊していただろう。


『もう少しで来るから。現段階で最強のフュリアスが』


『悠遠か。だが、かなりマズいぞ。このままだと全体的に瓦解する!』


「させない。そんなことは絶対にさせない!」


そう言いながらも鈴は少し前に出ながら全ての砲からエネルギー弾を放つ。だが、焼け石に水というべきか、敵の勢いは衰えない。


「私だって戦えるんだから! 悠人の役に立てるんだから!」


『ならば、お前から倒させてもらおう!』


マクシミリアンの声が響いた瞬間、空から降ってきたストライクバーストがイグジストアストラルを上から蹴りつけた。イグジストアストラルはギリギリ腕でガードするが勢いは落ちることなく地面に向かって落下する。


そして、イグジストアストラルは地面に叩きつけられた。


『ストライクバースト!』


そんなストライクバーストに方向転換をしたイージスカスタムが斬りかかる。だが、ストライクバーストはそれを軽々とエネルギーソードで受け止めた。


『お前達を捕まえておけば戦線に穴が空く。だから、付き合ってもらうぞ、結城鈴、希望神』


『だれが付き合うかだよ! 鈴はすぐさま上昇して!』


「わかった」


ストライクバーストを蹴り飛ばしイグジストアストラルが空へと舞い戻る。ストライクバーストはイグジストアストラルを追いかけようとするがイージスカスタムが完全にそれを防いでいた。


「マズい。戦線に穴が。すぐに戻らないと」


『終わりだ、虫けらが!!』


その瞬間、上空から莫大な量のエネルギー弾がイグジストアストラルに向かって降り注いだ。避けられない量のエネルギー弾に鈴は耐えきるために姿勢を固定させ体を強ばらせる。


だが、衝撃が襲ってくることはなかった。鈴が目を開けたそこには、


虹のように様々な色が煌めく光壁を展開して攻撃を受け止める光の六翼を持つフュリアスの姿。


『ちょっと遅れたかな。でも、大丈夫だよ。僕がいる』


この戦況をひっくり返す存在、悠遠だった。

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