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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第百九十七話 破壊者

孝治はすかさず前に踏み出した。そのまま運命を力任せに上から下に叩きつける。だが、それは軽々とヘラクレスの斧によって受け止められた。


「へぇ、お前が花畑孝治か」


「そうだ」


孝治は素早く後ろに下がる。ヘラクレスはすかさず純白の斧を振るうが孝治はそれを軽々と片手で受け止めた。


「強ぇな。今まで戦ってきたなかで一、二を争う強さだ。まさか、俺様の一撃を受け止めるなんてな」


「お前は正によって足止めされていたはずだ。なのに何故、ここにいる?」


「シュナイトの旦那が隠してくれたんだよ。そんなどうでもいいこと話す前に」


運命が斧を弾く。いや、ヘラクレスが斧を引いたという表現が正しいか。孝治はとっさにリバースゼロを取り出した瞬間、ヘラクレスが動いた。


単純な力任せの一撃。その一撃を孝治が運命で受け止めた、はずだった。だが、孝治は大きく吹き飛ばされる。ガードした上から。


「殺し合おうぜ!!」


「ヤバいッスよ。まさか、ヘラクレスが本当に実在していたなんて」


「そんなに有名人なの?」


「戦闘狂だ。天界でも扱いに困っていた」


「アーク・レーベさんよ、魔王に対する最終兵器と名を打って最後まで俺様を使わないつもりだったな」


その言葉にアーク・レーベは頷いた。


「お前は自分の欲望を満たすためだけに戦っている。そんなお前を戦線に出せば無関係な人すら殺すはずだ」


「はっ、魔界を滅ぼすのに無関係もねぇだろ? 俺様達は選ばれた種族。地上を這う虫けらを消し去るのに罪悪感を抱えろとでも言うのか?」


「狂ってる」


ルネがナイフをホルダーから抜く。それを見ながらヘラクレスは笑みを浮かべた。


「そんなチンケな武器で俺様を倒そうっていうのか? はっ、無名な虫けらが考えそうなことだ」


「だったら、雷速の速さでぶち抜くッスよ!!」


紫電がバチっと弾けた瞬間、加速した刹那の蹴りがヘラクレスの顔面を捉えていた。そのまま側頭部を蹴り抜いて距離を取る。


刹那の速度はよほどの感覚が無ければ捉えることが出来ない。それこそ、世界でも数が少ないだろう。ただし、対抗策はかなりの数があるが。


「くっくっくっ、軽いな」


「化け物ッスね」


雷速。雷に匹敵する加速の蹴りは常人な一撃で絶命、いや、蹴りの威力で弾け飛ばすことすら可能な力を持つ。刹那はその雷速を使った肉弾戦が中心なので打ち抜くタイミングはわかっているはずだった。


だが、ヘラクレスはそれを軽いといった。速度の関係から威力は極めて高いはずなのに。


刹那は速度が命。あれで軽いとなれば刹那が打てる手はほとんどない。


「じゃ、重い攻撃、行ってみようか」


ルネがナイフを投擲する。ヘラクレスはそれをつまらなさそうに斧で弾き、ルネを睨みつけた。だが、ルネは再度ナイフを投擲する。


もちろん、ヘラクレスはナイフを弾くために斧を振り回し、そして、ナイフをすり抜けた。


「なっ」


ヘラクレスが目を見開いた瞬間、背後から迫ったナイフがヘラクレスの腕を微かに切り裂いた。切り裂いたと言っても薄皮一枚ほどだ。


正面から迫っていたナイフも薄皮一枚を切り裂く。斧が通り抜けたはずなのに。


「な、なんだ。今のは」


「今ので驚いていたら駄目かな? 君、死ぬよ」


ルネがナイフを投擲しながら走る。走るごとにナイフを投擲しながら。


ヘラクレスはとっさに後ろに下がる。本能的な恐怖から下がるのは人として当たり前の行為だが、今回ばかりはそれは間違っていた。


ルネは投擲するものをナイフから槍に持ち替える。その瞬間にヘラクレスは自らの失態を悟った。


距離を取るということはルネに投擲する数を増やすということ。いくら斧で弾いているとは言えいくつもの切り傷が出来始めた腕を見ていればそれはマズいことだとわかる。


だから、ヘラクレスは前に出る。それに反応したルネは飛び上がりながら背中から剣を抜き放ちそのまま振り下ろす。軽い音と共に剣と斧がぶつかり合った。


「軽い。軽いな!」


そのまま斧を振り抜くがルネはとっさに飛び上がって斧を避けた。ヘラクレスは上に飛んだルネを見て、そして、表情を固まらせる。


そこには大小様々な武器が浮かんでいたからだ。ヘラクレスを取り巻くようにナイフと槍が宙に浮き、上には剣槍斧フレイル弓頸線ナイフ等々、様々な武器がヘラクレスを狙っている。


「重い攻撃を受けて、軽いと言える?」


その言葉と共にあらゆる武器がヘラクレスを狙って飛んだ。ヘラクレスの体は一瞬にして武器まみれとなり武器の山が出来上がる。


ルネはその位置に浮遊したままトドメの一撃を放とうと腕を動かした瞬間、武器の山が吹き飛んだ。


「重かった。だが、軽い。軽すぎる。そんな攻撃で俺様を倒せると思っていたのか?」


「全く」


「なら、何故」


「だって、もう発動しているから」


その言葉と共にヘラクレスの体を魔力の鎖が絡まり付いた。ヘラクレスは力任せに砕こうと力を込めるが鎖は砕けない。


それもそのはず。ヘラクレスを縛る鎖は周囲に飛び散った武器が描いた特殊な魔術陣によって発動しているから。


そもそも、刹那の一撃でヘラクレスは倒せなかったのだ。ただ、重いだけの一撃でヘラクレスを倒せるわけがない。だから、ルネは仕込んでいた。


吹き飛ばされるであろう武器の位置を計算して魔術陣を描けるように。


「重い攻撃かどうかはわからないけど」


ヘラクレスの周囲に魔術陣が浮かぶ。ヘラクレスを囲むように展開された魔術陣は莫大な魔力を纏っていた。


「私の最大級の一撃。君に叩きつけてあげる! セイクリッドエクスプロージョン!!」


その瞬間、光が爆発した。莫大な光がヘラクレスを包み込み、膨大な熱量と共に内部を灼熱で焼き尽くす。


地面に描かれた拘束魔術と結界内のみに作用する特殊な炎属性魔術のコンボを放ったルネは小さく息を吐いて距離を取った。


「これならさすがに無傷でいられないよね」


「これを無傷でいられたら炎帝がいなければどうにもならないッスよ」


「いや、炎帝の火力の前ではこれも霞むのではないか?」


「私のセイクリッドエクスプロージョンは範囲を圧縮しているだけだから、面なら中村光に負けるし通常範囲の威力なら炎帝に負けるし」


「魔術の範囲を圧縮する時点で次元を飛び越えた強さッスけどね」


そもそも魔術のタイプが違うのだから比べること自体が間違っている。


三人は楓の名前を言っていないが、楓は三人の中では比べる事自体がおこがましいくらい上の存在だからだ。アル・アジフや茜もここに位置していたりする。


セイクリッドエクスプロージョンが次第に光を弱めていく。それを見た三人は身構えた。そして、光が止んだそこには無傷のヘラクレスの姿があった。


「そんな」


ルネが絶句する。それほどまでに絶望的な光景。


「重い、いい一撃だった。だが、まだまだだ。俺様を倒せるような一撃には足りえない。覚悟は出来たか? 俺様が破壊してやる」

「破壊ッスか。破壊者の名に相応しい言い方ッスね」


嫌な汗を流しながら刹那が吐き捨てる。その言葉にルネが小さく首を傾げた。


「破壊者?」


「ヘラクレスの二つ名だ。まさか、刹那が知っているとは」


「これでも情報収集は怠らないッスよ。だけど、これはかなりマズいッスね」


ヘラクレスは笑みを浮かべたまま一歩を踏み出す。対する刹那は一歩後ろに下がった。


刹那では無理。ルネでも駄目だった。セイクリッドエクスプロージョンの威力から考えてアーク・レーベもヘラクレスにダメージを与えるのは難しいだろう。


「どうした? 棒立ちのまま破壊されるか? まあ、それもいいけどな」


「そっか。ようやく自分のターンが来たと思っているんだ」


その言葉と共に刹那と違ってルネが前に一歩踏み出す。対するヘラクレスはさらに前に一歩を踏み出して斧を振り上げた。だが、そんなヘラクレスに横から何かが迫る。


とっさに斧を戻してヘラクレスはそれを受け止めるがヘラクレスは力任せに吹き飛ばされた。


「なっ」


素早く体勢を戻して着地したヘラクレスが見たのはルネの近くに浮く巨大な剣。


「ベガルタ。これがこの子の名前。さあ、準備が整うまで付き合ってもらうから!」

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