第百九十一話 変革者
2500000文字超えました。いやー、ペースはかなり落ちています。お気に入り登録も200を超えやる気はどんどん上がっています。ある意味怒涛の展開が続くかもしれまんせんが誤字脱字に我慢して読んでください。
というか、これって終わる時何文字くらいになるんでしょうかね? 全九章(予定)で現在三章途中。つまり、10000000文字くらい? むしろ、いつ終われるのかが全く想像につきません(笑)
その感覚にアーク・レーベは思わず近くの窓に駆け寄っていた。そして、戦慄する。
「概念を、破壊された?」
アーク・レーベの視界に映っているのはアーク・レーベがいる建物から離れた浮遊大陸にある真っ白な塔。その最上部にある飾りが砕け散っているのだ。
アーク・レーベが感じた感覚は孝治が運命を使って概念の運命を斬り裂いた時に起きた波動だった。だからこそ、アーク・レーベはあの塔が破壊されたことに気づいたのだ。
「バカな。あれがなければ大陸は大変なことに」
「どうかなさいましたか?」
その言葉にアーク・レーベが振り返る。そこにはレイリアの姿があった。アーク・レーベは小さく頷く。
「聖天神レイリア、頼み事がある」
「あ、はい」
真剣な表情で言うアーク・レーベにレイリアは息を呑んで頷いた。
「部屋の右手にある三番棚の上から六段右から二段の場所に避難計画書がある。それを今すぐ引っ張り出してすぐさま避難計画の準備に取りかかれ」
「あ、アーク・レーベ様?」
唐突な言葉にレイリアは反応出来ない。普通ならそうだろう。だが、今は普通の状況ではない。それがわかっているのはアーク・レーベだけだった。
「頼んだ。お前だけが頼りだ」
そう言いながらアーク・レーベは窓を開ける。さすがのそれにはようやくレイリアが反応をした。
「アーク・レーベ様。どこへ」
「協力者の元へ。聖天神、いや、レイリア。天界の民の一人として頼む。みんなを救ってくれ」
「何が起きるというのですか?」
その言葉にアーク・レーベは険しい表情で空を見上げた。そして、小さく呟く。
「終末だよ」
孝治が地面を蹴る。そのまま運命を左から右に振り抜いた。だが、運命は相手の兵士を吹き飛ばすだけでダメージを与えられない。
「押せ! そのまま押せ! 数の差で押し潰せ!」
ユリウスがすかさず号令を上げて部隊を前に出すがそれはすぐさま降下してきた正達によって一瞬にして押し戻された。
正はレヴァンティンレプリカを構えて孝治の横に並ぶ。
「孝治。エネルギーバッテリーを装着するんだ。君の運命はエネルギーバッテリー無しでは戦えない」
だが、正の言葉を無視するように孝治は前に踏み出す。そして運命を振り向く。だが、案の定と言うべきか、運命は兵士の鎧を力任せに叩くだけだった。
兵士の鎧は魔鉄製。軽くて丈夫。だが、魔術に弱い。その分純粋な打撃に強い。
だから、運命のようなエネルギーバッテリーを装着しなければ魔力を乗せられない武器ではエネルギーバッテリーを装着しなければ勝つのは難しい。
力や技術がなくなるわけではないため普通に強いが。
「孝治、聞いているのかい? 孝治!?」
「掴んだ」
その瞬間、運命が漆黒の軌跡を描いた。それに沿うように前にいた兵士の鎧が裂けた。
その光景に正は開いた口が閉まらない。何故なら、運命はエネルギーバッテリー無しでは魔力を刃に纏わせる基本なことが出来ない。つまりは巨大な鈍器となると思っていていい。
それなのに、孝治は魔鉄の鎧を斬り裂いた。ありえない、いや、ありえることにはありえるが音姫のような超絶剣技がなければ不可能だ。
「いい剣だ」
「孝治。今、何をしたんだい?」
「運命に魔力を纏わせただけだ」
「いや、だから出来ないようにしたって」
「ならば、乗せることが可能な魔力の波長を当てればいい」
その言葉に正は完全な放心状態となっていた。
魔力の波長は個人に差があり同じものは双子などを除いてほぼありえない。つまり、波長を合わせるのは不可能又は難しい。だが、そんな中で孝治はさも簡単に合わせてみせたのだ。
正が苦労して孝治の波長に合わせられないようにした設定すらも凌駕して。
「波長を変えるのは不可能ではないだろ?」
「いや、かなりの訓練かレアスキルが必要なんだけど」
「そうなのか?」
その言葉に正は確信する。レアスキルではなく孝治本人の技量だということを。常人では辿り着けない領域のものを孝治はものの数分で会得したのだ。
そんなことを聞かされたらありえない存在とも言える正以上にレアな存在だろう。
「だが、まあ、いい。運命はやはりこうでなければ」
そう言いながら孝治はエネルギーバッテリーを装着しスルメを口に含む。
戦闘中にあるまじき行為が一つあるが、誰も気にしない。何故なら、エネルギーバッテリーを装着し終えた孝治は一気に前に踏み出したからだ。
正に見えたのは七つの軌跡。それと共に孝治は駆け抜けてユリウスに肉薄していた。ユリウスは目を見開き杖を孝治に向けようとする。だが、それより早く運命が杖を砕きユリウスの横っ面を吹き飛ばしていた。
「今すぐ部隊を引け。さもなくば命が無いと思え」
「くっ、だが、お前達は我らに弓を引いた。我らの力の前でお前は」
「ふーん。たったこんな練度の部隊を抱えているのに余裕なんだ」
その言葉にユリウスが振り向き絶句する。そこには無傷のルネと刹那がユリウス以外の全員が倒れた大地に立っているのを見たからだ。
ルネは『ES』でトップクラス、刹那は魔界でトップクラスとはいえ力の差がありすぎる。
「ば、バカな。300用意した兵が全滅」
「残念だったな。このまま退却しろ。動けるものはたくさんいるはずだ」
「あ、悪魔め。ありえん。ありえない。こんな力の差があってたまるものか。ありえな」
「ありえるのだよ、特別自治区代表ユリウス」
ドスっと地面に杖を突き立てながら純白の翼を持つアーク・レーベが降り立った。あまりの状況にユリウスは泡を吹きかけている。
「アーク・レーベ。何故」
「少しだけずるをさせてもらった。花畑孝治。それがお前の選択か? 世界を変える変革者にでもなるつもりか?」
その言葉に孝治は気づく。
おそらく、アーク・レーベは最初からユリウスが失敗することはわかっていたのだろう。だから、ここに来る準備をしていたのだろう。
孝治達からすればアーク・レーベは未だに天王と共にいる予想だった。だから、孝治は驚いていた。
しかし、アーク・レーベは戦闘が始まったから来たわけではない。孝治自身が運命を振るったことに反応して動き出したのだと孝治は気づいた。
「変革者か。より人を救えるならば俺はその名をもらおう」
「それが多大な混乱を生むとわかっていても?」
「そうだとしてもだ。俺達は決めた。天界を救うと。ならば、変革者となり俺達は前に進むしかないだろう」
「そうか」
アーク・レーベが杖を地面から引き抜く。それに反応して刹那とルネが身構えた。だが、それを正が手で制する。
「二人共、周囲に倒れている兵士を移動させるよ。今回ばかりは介入しない方がいい。心ゆくまで二人で戦わせよう」
「正。すまない」
「君と僕の仲じゃないか」
そうは言いながらも正は眉をひそめていた。
理解出来ないのだ。アーク・レーベがここにきた理由が。正も孝治と同じように気づいていた。だが、部隊を編成するわけではなく、アーク・レーベは単身でここにやってきた。
マクシミリアンならともかくアーク・レーベ一人でここにいる四人を倒せるわけがない。
その疑問は孝治も感じている。だが、孝治は別の感情も感じていた。
それは、諦め。
「花畑孝治。お前の変革を我は否定する! よりよき清浄な世界のために、お前を倒す!」
「ならば、語ってもらうぞ」
孝治は運命を構える。
「お前が、いや、お前達がひたむきに隠す何かをな!」