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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第百八十三話 見た未来

頸線が地面を駆ける。それを見たギガッシュが慌てて距離を取ろうとするが頸線に気を取られた好きにブラックレクイエムが放った収束砲によって貫かれていた。


七葉は周囲を警戒しながら物陰から顔を出す。七葉の視線の先にあるのはイージスカスタムが格納されている格納庫。だが、そこを守るように20のフュリアスが盾を構えながらエネルギー弾を放っている。


「あちゃ。これはちょっと難しいな」


同じように物陰に隠れた光がレーヴァテインを飛ばすがそのレーヴァテインはエネルギー弾によって迎撃される。


今までのパイロットとは技術が全く違う。


「やっぱり、ここに戦力を集中させているか」


楓がブラックレクイエムを抱えながらブラックレクイエムに内蔵されたエネルギーバッテリーを取り替える。楓自身の遠隔操作で動かすことは可能だがブラックレクイエム単体でも魔力を必要とするためエネルギーバッテリーを内蔵しているのだ。


パチンとしっかりエネルギーバッテリーをはめながら楓は全員の顔を見渡した。


「ここまでは私と光だけでも守りながら行けた。ここからはサポートしている余裕なんてないよ」


「わかってるよ。でもね、ここから安全に離脱するならどうしてもイージスカスタムの力が必要だからね。カズ君は危ないからここでいててね」


そう言いながら七葉は小さく息を吐いて、そして、物陰から飛び出した。


あくまで第76移動隊において第5分隊という後方担当の七葉は戦闘要員としては本来第2分隊に属する。その戦い方は頸線を利用した三次元移動と手数の多さによる戦い方。


三次元移動というかなり珍しい行動によって慣れない敵を攪乱し、手数の多さで圧倒するのは初見殺しの技術でもあった。


だから、七葉は駆ける。様々な場所に頸線を打ち込みながら。


ギガッシュ達が七葉に向けてエネルギーライフルを構える。だが、向けているのは六機だけ。残る機体は周囲を警戒している。


見ていないわけじゃない。見ながら警戒している。だから、楓も光も迂闊に飛び出せない。


「警戒しているのは六機だけど、下手に突撃すれば全機襲いかかってくるかな。でも、甘くみないでね!」


七葉が頸線を走らせたのとギガッシュがエネルギーライフルの引き金を引いたのは同時だった。


張り巡らせた頸線にエネルギー弾が直撃して周囲に散る。それを見ながら七葉は頸線に飛び乗った。ギガッシュはその七葉に銃口を向けるが七葉器用に頸線から飛びのいて別の頸線に乗る。そして、さらに頸線に跳び移る。


本来なら狭い路地裏で使用する壁キック移動の亜種で七葉が開発した三次元移動。もちろん、真似できる人はいない。


「まず一機!」


走らせていた頸線がギガッシュの体を切り裂いた。他を警戒していたギガッシュがすかさずエネルギーライフルを七葉に向けるが、七葉に向けた瞬間、楓と光の二人が物陰から飛び出した。


「チャージバレット、行って!」


「一斉掃射や!」


楓と光が同時に最大限の火力で収束砲とレーヴァテインを放つ。だが、それは突如として現れたエネルギーシールドによって受け止められた。


「まずっ。七葉! 下がって!」


楓がすかさず言葉を飛ばすがそれより早く七葉の周囲の建物が崩壊した。その中から姿を現すのはイージス。それが七機もいる。


頸線を突き刺していた建物も崩壊し、七葉はとっさに後ろに下がった。だが、そんな七葉に銃口が向いている。


「なな!」


和樹の声と共にエネルギー弾が放たれた。それは一直線に七葉を狙い、そして、突如として割り込んだイージスがエネルギー弾を受け止めた。割り込んだと言うより七葉によって投げられたと言う方が正しいか。


呆ける三人を振り向きながら七葉は笑みを浮かべた。


「大丈夫だよ。私の頸線は物体を切るだけじゃないから」


「そっか。頸線を使って投げたんだ」


物陰に隠れていた楓がカグラの先に魔力を収束させながら呟く。


イージスが現れた瞬間、七葉は近くの一機に崩壊した建物に繋ぎとめていた頸線を放ってぐるぐる巻きにしていたのだ。そして、そのまま射線上を塞ぐようにイージスを投げた。イージス自体が未だにエネルギーシールドを展開していたためイージスは結果的に敵の七葉を守ったように見える。


さすがのそれには敵も動揺するのかイージスの一機が七葉に斬りかかった。だが、斬りかかったイージスは七葉に到達するより速く頸線によって四肢を切断される。


魔力を持つ頸線はフュリアスにとっては天敵。だからこそ、相手はこういう作戦を取ったのだろうが七葉はそれよりも一枚上手だった。


槍を握り締め、七葉は目の前のイージスの動力部に一突きする。それだけでイージスは機能を停止した。


残ったイージスやギガッシュが後ずさりした瞬間、それで何かが輝いた。


無数の光弾が的確に降り注ぎ周囲を一瞬にして火の海に変える。それを頸線でガードしながら七葉は空を見上げた。そこには竜言語魔法の書物を開くリースの姿。リースは七葉の隣まで降下し着地した。


「今の、雨霰(セントリア)? 殺したの?」


周囲の光景に絶句しながらリースは服の袖についた煤を払う。


「汚れた」


「いやいやいや。自分で起こした惨事だよね!?」


「大丈夫。生き物は別の場所に転移させた。だから、大丈夫」


「大丈夫って。相変わらずリースさんってぶっ飛んでるね」


「それほどでも」


「褒めてないから」


七葉が呆れたようにため息をつきながら前を見る。


雨霰(セントリア)によって焦土と化した前方には無傷の格納庫が存在していた。さすがに、無傷と言うのに違和感を覚えるが、リースなら造作もないと七葉は無理矢理納得する。


「なな。大丈夫だよな」


「なんとかね」


心配で駆けよってきた和樹に返事をしながら七葉は前に踏み出した。すでに楓と光は周囲を警戒するように武器を構えている。リースも竜言語魔法書を開いて周囲を警戒している。


そもそも、あんな光景を見ていたなら誰も近づかないとは思うのだが。


「行こう」


七葉は和樹の手を引っ張って歩き出した。そして、思い出す。


『曇り無き真実の未来』で見た光景を。


燃え盛る首都。


この一帯だけは火の海に包まれており、この光景だけ見ていたなら燃え盛る首都だろう。


つまり、この光景は、


「カズ君!」


七葉が名前を叫んだのと格納庫が爆発するのは同時だった。格納庫から現れたのはイージスカスタムを含むフュリアス。その中には、レヴァイサンの姿もあった。


その中に一機、ギガッシュの肩に搭載された砲が火を吹くのと同時にそこから金属の塊が一斉に放たれた。七葉はとっさに頸線を盾にして和樹を守るように動くが放たれた金属の破片は盾を砕き、七葉の体を傷つける。


「がっ」


痛み。それを感じるより早く七葉は和樹の腕の中に倒れていた。そして、体中から灼熱の痛みが七葉の体を貫く。だが、七葉は体を動かせない。


「なな! なな!」


和樹は必死に七葉の名前を呼ぶ。だが、血まみれの七葉はその声が聞こえていないかのようにぐったりしていた。そんな二人にエネルギーライフルを握り締めたイージスカスタムが銃口を向ける。


七葉が見た光景とは少し違う、血まみれの和樹ではなく血まみれの七葉の光景。


楓はとっさに防御魔術を二人に張ろうとする。だが、それより早くレヴァイサンのエネルギー砲が火を吹き楓はを弾き飛ばした。


光はすかさずイージスカスタムにレーヴァテインを飛ばすがその全てが途中で撃ち落とされる。


リースは二人を守ろうと前に進もうとするが、ギガッシュが肩の砲から放つ金属の破片が完全にリースの前進を阻んでいた。


「なな!」


血まみれの七葉に必死に治癒魔術を施す和樹に向かってイージスカスタムが引き金に指をかける。


「ダメ!!」


リースの叫び声と共にエネルギー弾が二人を狙った放たれた。

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